空気圧利用の救助ロープ発射器の開発について - 東京消防庁

消防科学研究所報 16号(昭和54年)
空気圧利用の救助ロープ発射器の開発について
ホ*寧事
己正義雄
正正光
藤竹口西
斎小樋小
1.はじめに
東 京 消 防 庁 管 内 の 中 高 層 建 物 火 災 は . 昭 和 48年
には 684件であったが, 52年には 798件 と 楠 加 の 傾
向がみられる。火災の際に早期に避難することが
できず,高所に取り残された人を救助するため,
はしご車,ヘリコプターなどの消防装備の強化,
救助隊員による高度な訓練などが行われている。
一方,都内の 4階 以 上 の 中 高 層 ビ ル に つ い て , 火
災時にはしご車で被災者の救出ができるかどうか
3500件 に つ い て 調 査 し た 結 果 . 全 体 の 3分の lは.
道路が狭かったり.電線が障害となるなどの理由
で , は し ご 車 が 架 て い で き な い こ と が 47年 の 調 査
で明らかになっている。このような現状に対処す
るため.空気圧利用による救助ロープ発射器の試
写真
作を行なった。
2
. 構造及び特長
(1)構造
内に導入きれ,
1
ピストンが後退する。メーンパル
プは,パネで閉止の状態になっているが,
メーン
ハルブ部のピストンが後退することによりパルプ
救 助 ロ ー プ 発 射 器 は . 写 真 1に示すように発射
器本体をキャタビラ車にぎ装したものである。
シリンダ
発 射 器 主 要 部 の 構 造 は , 図 lのとおリ砲身.庄
) ンダ
力空気タン 7,バルブシ 1
等で織成されて
にあけてある孔からタンク内の圧縮空
気が一気に砲身内に流入し, )単頭が押し出される。
発射器本体及ぴ架台の諸元は次のとおリである。
発射器本体
いる。ゴム弾頭に救助ロープを結んだものを装て
全長;約 900mm, 砲 身 長 : 520mm, 口径
んし, 9.9kgjcm'以下の空気圧力で発射することが
空 気 タ ン ク 容 量 :1
5e
,弾頭:ゴム製 2kg
できる s
(
l08mmφX300mm)
発射原理は. まず,タンク上部にある注入パル
プを聞き.空気タン
7に圧縮空気を充てんする。
発射の際は.発射レパ
本 体 重 量 :35k呂(スタンド.付属品を含め約 1
0
0
k
g
)
架台(キャタピラ車)
を引くことによりタンク
走 行 エ ン シ ン 出 力 :6.5PSj2000r.p.m
内部の圧縮空気がメーンパルプ後部のシリンダー
車第三研究室
l08mm
..本郷消防磐
(ガソリン)
走行速度
キ事*臨港消防署
(4
1)
:4.5kmj時
し
グ
〕
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70
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50
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40
μrf>1~
発射角度
、
マ o 、4R〉
9.9、
マ.0 、 九
80 0
圧力〈場)
0
'
a
(
J
高
さ
3
(
)
2ゆ
10
120
弾 頭 着 地 点 (m )
図2
5m
m
φ ロープ使用の場合
{官、》
(-・-9
.
9怒 l
8
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, 701-x-7.0矧 45
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一 企 ー5
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40
飛 30
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う
高
さ
1
0
20 30 40 50(1
I
l
)
弾頭着地点
図3 1
2
m
m抽ロープ使用の場合
することができる。
4
. 考案
将来さらに軽量な架台にぎ装し.取扱いを容易
本試作器は,現在のところ発射器自体の重 量 は
約 35kgでレあるが,
ゴ ム 弾 頭 (2kg), 8
e
型空気ボ
ンベ,スタンドなどの付属品を含めた重量が.約
にするため.写真 3に示すような発射時の反動力
を吸収する緩衝装置を取り付けて.今後,性能実
験を行なう予定である。
lOOkg,また,これをき'装したキャタピラ車の重 量
が約 350kgて・あるから総重 量 は約 450kgとなる。
この緩衝装置 I
J.,発射器本体後部にオイルシリ
ンダーを設け,発射時の反動力の作用で.発射器
空気圧力 9
.9kg/
c
m
'
て'
発射した場合の反動力の最
O
O
m
mはど油圧を受けながら後退させるこ
本体を約 l
高値は.約 750kgであるから.現用のキャタピラ車
とによゥて衝撃力を吸収し,緩衝効果を得るよう
程度の重量であれば,発射時に十分に安定を保持
に設計されている。
(43)
800
ハU
ハU
勺,氏U
反動力
K
ハ
ー
ハU
RV
ハU
n
v
LK
(
)
~
4つ
U
写真
)
(
5
6
ヴ
8
9
I
F
力 ('
?
"
,
f
)
s緩衝装置を取付けた状態
10
図4
助あるいは避難方法の問題点としては,
5
. むすび
今いl
の試作器では, 一 応
、
,
ロ一一フを
要救助者に届けることは可能であっても.そのロ
キャタピラ車にぎ装
ープを使って無事に避難.あるいは救助がどの程
したが,発射器本体を直接救助車の上部に取り付
度安全に出来るかは,かなり疑問であるー従って,
けることも可能である。又,発射器の応用面とし
体力や技術の無い人が火災階などから避難するた
ては.船舶火災での人命救助あるいは,消防艇か
めには,打ち上げたロープの先端を確実に固定す
ら消防ホースを陸上に延長する際などにも活用で
る簡易な器具のほか.軽長t
な梯子.保身具なと補
きるものと思、われる。
助器材の開発が必要であり,今後の研究課題であ
現在.中高層建物火災におけるロ
プによる救
ると考えている。
(4
4)