操作マニュアル(Ver.2.0)

研究用試薬
操作マニュアル(Ver.2.0)
2003 年 9 月改訂
2002 年 6 月作成
目 次
1.はじめに
1. 操作マニュアルのご使用にあたって
2. 測定原理
2.製品内容
1. 構成試薬
2. 製品一覧(発売準備中の製品を含む)
3. 保存方法と使用期限
4. 使用上又は取扱い上の注意
5. 別途必要な装置・器具
3.使用手順
1. 検体(DNA)の調製
2. PCR
3. ハイブリダイゼーションと検出
4. 測定結果の判定法
5. 操作概要フローシート
4.DNA の抽出
5.アガロースゲル電気泳動
1. 必要な装置・器具
2.操作手順
6.トラブル対策
7.参考文献
8.資料請求及び問合せ先
1.はじめに
1.1 操作マニュアルのご使用にあたって
ワクナガ MPH-2 HLA タイピング試薬は、HLA クラスⅠおよびクラスⅡの遺伝子型を決定する
ための研究用試薬シリーズです。本製品には、解析対象とする HLA 領域によって製品ごとに異
なる試薬と、製品間で共通の試薬がありますが、全てのシリーズ製品は同一の操作で実施できま
す。尚、従来製品(MPH HLA タイピング試薬およびジーンカラーHLA-DR )の操作法と異なった
ところがありますので、使用される前には本操作マニュアルをよく読んでご使用下さい。また、従
来製品の試薬と混合して使用しないで下さい。
1.2 測定原理
本試薬は DNA タイピング法の1つである PCR-SSOP(Sequence Specific Oligonucleotide
Probe)法を応用した、PCR-MPH(Microtiter Plate Hybridization)法に基づいています。この
PCR-MPH 法は以下の 3 つのステップから成ります。
1) PCR
本試薬では 5’末端をビオチンで標識したプライマーを用いて検体の HLA 遺伝子のエクソン領
域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅します。この反応により、ビオチンで標識された増幅
DNA が得られます。
ビオチン標識プライマー
HLA 遺伝子
PCR
2) ハイブリダイゼーション
増幅 DNA をアルカリ変性処理により1本鎖 DNA とし、あらかじめプローブが固定された各ウエ
ルに加えてハイブリダイゼーションを行います。ウエルに固定されているプローブは各 HLA タイ
プに特異的な配列となっており、増幅 DNA はその HLA タイプに対応したプローブと特異的にハ
イブリダイズします。
増幅 DNA
増幅 DNA
プローブ
プローブ
判定 ウエル(陰性 ウエル)
判定 ウエル(陽性 ウエル)
3) 発色および判定
増幅 DNA がハイブリダイズしたウエルは、ビオチンに結合した酵素標識アビジンの酵素反応
により緑色に発色します。複数のウエルを用い、その HLA タイプに特異的な発色(陽性ウエル)
のパターンを見ることで、HLA 遺伝子のタイプを判定します。
基質
発色
酵素 標 識アビジン
酵素 標 識アビジン
増幅 DNA
プローブ
プローブ
判定 ウエル(陽性 ウエル)
1
判定 ウエル(陰性 ウエル)
2.製品内容
2.1 構成試薬
各製品は、以下の試薬から構成されています。
-15℃以下に保存する試薬
①増幅液(クラス I 用又はクラス II 用)
②プライマー液(各製品専用)
③DNA ポリメラーゼ液
2∼8℃に保存する試薬
④変性液
⑤中和液
⑥10倍濃度洗浄液
⑦酵素用希釈液
⑧酵素液
⑨発色液
製品例:ワクナガ MPH-2 HLA タイピング試薬 HLA-A
⑩基質液
⑪停止液
⑫プレート1(ストリップ 8 本)
⑬プレート 2(ストリップ 8 本) ※ 製品により⑬プレート 2 を含まないものがあります。
・プレートシール
・変性用チューブ
2.2 製品一覧
クラスⅠ
HLA-A
HLA-B
HLA-C
HLA-A2
HLA-A26
HLA-B15
HLA-B40
HLA-B16
クラスⅡ
(24 検体)
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
HLA-DR
HLA-DR1
HLA-DR2
HLA-DR3/11/13/14
HLA-DR4
HLA-DR12/8
HLA-DQ
(24 検体)
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
( 〃 )
2.3 保存方法と使用期限
各製品には【-15℃以下保存】と表示された内箱が入っています。製品は冷蔵でお届けします
が、到着後はこの内箱を直ちに冷凍庫にて保存して下さい。その他の試薬は冷蔵庫(2∼8℃)
で保存して下さい。
使用期限は、製造から12ヵ月です。(製品上面に貼ってあるラベルに記載)
2
2.4 使用上又は取扱い上の注意
1) 試薬に関する注意事項
・各製品は研究用試薬です。疾病の治療・診断・予防を目的として使用しないで下さい。
・使用期限を過ぎた試薬は使用しないで下さい。
2) 使用者の危険防止に関する注意事項
・試薬類を飲んだりなめたりしないで下さい。
・試薬が皮膚に付着したり、目や口に入ったりしないよう十分注意して下さい。また誤って皮膚
に付着したり、目や口に入った場合は、直ちに水で十分に洗い流すなどの応急処置を行い、
異常があれば医師に相談して下さい。
3) 汚染の防止
PCR で増幅した遺伝子により、他の検体や試薬が汚染されると誤ったタイピング結果の原因
となります。そのため PCR 反応前の検体および試薬の汚染防止には最大限の注意を払って
下さい。
<作業の区分けによる汚染防止>
・物理的に汚染を防止するために、PCR 反応の前後でエリア(部屋)を変えて操作を行って下
さい。また、使用するピペットおよびチップはそれぞれのエリア専用とし、互いに持ち込まない
ようにして下さい。
・PCR 反応後の操作では専用の作業着を着用し、使用したプラスチック手袋は使い捨てにし
て他の場所に持ち込まないで下さい。
・作業終了後は実験台を 0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液(家庭用の塩素系漂白剤を 10 倍に
希釈したもの)で拭いて下さい。
<汚染の除去>
・増幅した遺伝子による汚染が疑われた場合には、直ちに 0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で
拭いて下さい。
4) 廃棄物に関する注意事項
PCR 反応液(増幅 DNA)を扱ったチップ等は 0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液の入った容器
に捨て、そのまま密封して廃棄して下さい。PCR 反応液の入ったチューブはそのまま密封し
て廃棄して下さい。DNA はオートクレーブでは分解されません。エアロゾルを発生して汚染の
原因になりますのでオートクレーブはしないで下さい。
5) その他の注意事項
・本測定における吸光度は、増幅 DNA に大きく左右されます。PCR 増幅効率が低い場合、正
しい結果が得られないことがあります。また冷蔵で長期保存された DNA を用いた場合や、
PCR 増幅を阻害する不純物や DNA 分解酵素が混入した場合は PCR 増幅ができないことが
あります。
・本製品は、改良のため予告なく仕様を変更することもありますのでご了承下さい。
3
2.5 別途必要な装置・器具
(1)PCR
・PCR 装置(サーマルサイクラー)
■ 以下の機器を推奨します。
・GeneAmp® PCR System 9600-R(Roche Molecular Systems)
■ 動作確認中の機器
・GeneAmp® PCR System 9700(Applied Biosystems)
GeneAmp® PCR System 9600-R
・GeneAmp® PCR System 2400(Applied Biosystems)
・マイクロピペット
・滅菌済みチップ
・滅菌済み 0.2mL PCR 用チューブ
・遠心分離器
(2)ハイブリダイゼーション
インキュベーター
・インキュベータ(37℃に設定できるもの)
■ プチインキュベータ(和研薬社)を推奨します。
・プレートウォッシャー 注1)
・マイクロピペット
・マルチチャンネルピペット(50μL 分注用)
■ 検体数が多い場合、連続分注できるものがあると便利です。
プレートウオッシャー
例)・8 チャンネル電動マルチチャンネルピペット
(マトリックス社)
・96 穴ディープウエルプレート
・滅菌済みチップ
・遠心分離器
8 チャンネル電動マルチチャンネルピペットと 96 穴ディープウエルプレート
注1):プレートウォッシャーをお持ちでない場合
は、以下の用手法による試験も可能です。
・ディスペンサー(ロビンス社)
・マニホールド(シグマ社)
・アスピレーター
ディスペンサー
マニホールド
(3)解析
・プレートリーダー(415 nm の波長が測定できるもの)
・パーソナルコンピュータ
■ 解析ソフトウエアによる判定に使用します
(Windows98 以上での動作確認済みです)。
4
プレートリーダー
3.使用手順
3.1 検体(DNA)の調製
検体(DNA)は DNA 濃度が約 50μg/mL となるように調製します。(10∼200μg/mL の範囲で
使用可能です。) DNA 抽出・調製の際には、増幅 DNA が混入しないように注意し、増幅 DNA を
扱う部屋とは別の部屋で操作を行なって下さい。
なお、DNA の抽出方法は、4.DNA の抽出を参照して下さい。
3.2 PCR
(1) PCR 反応溶液の調製
注)以下の操作は手袋を着用して行ってください。
1)増幅液、プライマー液を融解し、氷上に置きます。
2) DNA ポリメラーゼ液はそのまま氷上に置きます。
■ 各試薬は混和した後、軽く遠心して壁についた液を落としておきます。
3)検体数分の PCR 用チューブを用意し、あらかじめチューブに検体を識別するための印ま
たは検体名を記入しておきます。
4)PCR 用チューブに下記の量の試薬を添加します。複数の検体をタイピングする場合は、
各試薬をあらかじめ混和し、95μL ずつ分注することもできます。
1 検体あたりの組成
①増幅液(クラス I 又はクラス II 用)
85.0μL
②プライマー液(各試薬用)
9.5μL
③DNA ポリメラーゼ液
0.5μL
計
95.0μL
■ PCR 反応溶液のコンタミネーションを確認する場合はネガティブコントロール用の反応
チューブ(検体 DNA が含まれていない増幅液)を用意して下さい。(コンタミネーション
の確認は「5.アガロース電気泳動」を参照して下さい)。
5)4)の PCR 用チューブに、検体 DNA 5μL を加えます。
■ 1 検体毎にピペットのチップを交換してください。
6)蓋をしっかり閉め、内容液を充分混和した後、軽く遠心して壁についた液を落とします。
5
(2)PCR 反応
PCR 用チューブを PCR 装置にセットし、下記の条件で PCR 反応を行います。
PCR 反応条件
96℃ →
96℃ →
62℃ →
72℃ → 4℃
5 min
30 sec
1 min
1 min
Hold
40 サイクル
■ この PCR 反応はおよそ 3 時間で終了します。
■ この条件は GeneAmp® PCR System 9600-R を用いた場合のものです。他の装置を
用いる場合は、アニーリング条件あるいはサイクル数の変更が必要となることがありま
す。詳細は弊社までお問い合わせください。
■ PCR 反応が正常に行なわれたかどうか(増幅 DNA)の確認は、「5.アガロース電気泳
動」 を参照して下さい。
3. 3 ハイブリダイゼーションと検出
(1) 準備
・37℃に設定したインキュベータを用意します。
■ 機種によっては、設定温度と庫内温度が異なるものがありますので、実際に温度計
で庫内温度を測定し、37℃になっていることをご確認下さい。
・⑤中和液、⑧酵素液、⑩基質液を氷上に置きます。
・⑤中和液、⑧酵素液、⑩基質液以外の試薬(④、⑥、⑦、⑨、⑪、⑫、⑬)を常温に戻します。
・⑥10 倍濃度洗浄液を精製水で 10 倍希釈して、洗浄液とします。
・⑫プレート 1、⑬プレート 2 を常温に戻してからアルミ袋を開封し、検体数に応じた数(1 検
体あたり 1 本)のストリップをプレート枠にセットします。
・検体数に応じた液量(1 検体あたり 1.5mL)の⑦酵素用希釈液、⑨発色液をそれぞれ取り
分け、37℃に温めておきます。
■ ⑫プレート 1、⑬プレート 2 の 2 種類のストリップを用いる製品では、1 検体あたり
1.5mL
■ ⑫プレート 1 の 1 種類のストリップを用いる製品では、1 検体あたり 750μL
(2) ハイブリダイゼーションと検出の手順
※ インキュベータの庫内温度が 37℃になっていることを確認して下さい。
※ 分注した酵素用希釈液、発色液が 37℃に加温されていることを確認して下さい。
※ 中和液が氷上に置かれていることを確認してください。
※ 以下の操作からハイブリダイゼーション開始までは必ず手袋を着用してください。
6
1) 検体数分の変性用チューブをセットして、④変性液を 300μL 分注します。
2) 変性用チューブに PCR 反応終了後の検体反応液(増幅 DNA) 90μL を加えて混和し、
常温で 5 分間放置します。
■ 変性液はアルカリ性ですので、取扱には十分ご注意ください。
3) 変性用チューブに、氷中で冷やしておいた⑤中和液を 900μL 添加し
て混和します。
■ 反応液には増幅された DNA が含まれていますので、 蓋を開ける
ときに反応液を飛び散らせたり、手につけないように注意して下さい。
■ 次のステップに移るまでは、各サンプルを氷中に置いて下さい。
4)プレート枠にセットした⑫、⑬の各ウエルに 3)で調製した溶液を 50μL
ずつ分注します。
■ 反応液には増幅された DNA が含まれていますので、蓋を開ける
ときに飛び散らせたり、手に液をつけないように注意して下さい。
5)プレートにプレートシールを貼付けた後、37℃のインキュベータ内に 60 分
間置きます。
■ プレートシールは、ウエル内の液の蒸発を防ぐためにしっかり貼り付
けて下さい。
■ この条件は和研薬社製のインキュベーター 「プチインキュベーター」
を用いた場合のものです。他の装置を用いる場合は、条件の調整が
必要となることがあります。
6)各ウエルを洗浄液 300μL で 3 回洗浄します。
7)あらかじめ 37℃で温めておいた⑦酵素用希釈液に 1/100 容量の⑧酵素
液を加えて混和し、酵素溶液とします。
■ 必要量を用時調製してください。(「3.3.(1)準備」 を参照)
■ プレート 1 枚の場合、⑦酵素用希釈液 6mL に⑧酵素液 60μL を加えて調製します。
8)7)で調製した酵素溶液を各ウエルに 50μL ずつ分注し、37℃のインキュベータ内に 15 分
間置きます。
9)各ウエルを洗浄液 300μL で 3 回洗浄します。
10)あらかじめ 37℃で温めておいた⑨発色液に 1/100 容量の⑩MPH-2 用基質液を加えて混
和し、 発色基質液とします。
■ 必要量を用時調製してください。(「3.3.(1)準備」 を参照)
7
11)10)で調製した発色基質液を各ウエルに 50μL ずつ分注し、
37℃のインキュベータ内に 15 分間置きます。
■ 陽性ウエルはこの間に
緑色に発色します。
12)⑪停止液を各ウエルに 50μL ずつ分注します。
13)プレートリーダーを用いて 415nm での吸光度を測定します。
3.4 判定法
各判定ウエルの陽性・陰性を判定表に記載しているカットオフ値をも
とに判定します。各々のウエルの吸光度がカットオフ値以上を示す場
合を陽性とします。判定ウエルの陽性・陰性のパターンから HLA 遺伝
子のタイプを決定します。なお、判定を簡便に行うための専用の判定ソ
フトを無料にて用意しておりますのでご利用下さい。
8
3.5 操作概要フローシート
PCR
準備
①増幅液:85μL
②プライマー液:9.5μL
③DNA ポリメラーゼ液:0.5μL
・インキュベーターの電源を入れ、37℃に設定す
る。
・⑤中和液、⑧酵素液、⑩基質液を氷上におく。
・⑥10 倍濃度洗浄液を精製水で 10 倍希釈して洗浄
液を調製する。
・検体量に応じた⑦酵素用希釈液、⑨発色液をとり
わけ 37℃に加温する
PCR用チューブ(0.2 ml 容)
検体 DNA:5μL
PCR:96℃5 分
→ [96℃30 秒、62℃1 分、72℃1 分]×40 サイクル
→ 4℃ホールド
ハイブリダイゼーション
④変性液:300μL
④変性液と増幅 DNA を変性用チューブに入れ、混
和し、5分間放置する。
増幅DNA:90μL
変性用チューブ
⑤中和液:900μL
各ウエルに中和した溶液を 50μL 分注する
氷上で冷やしておいた⑤中和液を変性用チュー
ブに入れ混和する。
⑫プレート 1、⑬プレート 2 を常温に戻してからアルミ
袋を開封し、検体数に応じた数(1 検体あたり 1 本)
のストリップをプレート枠にセットします。
37℃のインキュベータ内に 60 分間置く
洗浄
洗浄液
洗浄液:
⑥10 倍濃度洗浄液を精製水で 10 倍に希釈
して調製する。
300μL/ウエル × 3 回
酵素溶液を添加: 50μL /ウエル
酵素反応
洗浄
37℃
洗浄液
酵素溶液:
⑦酵素用希釈液(37℃に予め温めておく)
に、1/100 倍量の⑧酵素液を混合し調製す
15 分間
300μL/ウエル × 3 回
発色基質液を添加: 50μL /ウエル
発色
37℃
15 分間
⑪停止液を添加: 50μL /ウエル
測定
415nm での吸光度測定を行なう
判定
9
発色基質液:
⑨発色液(37℃に予め温めておく)に、1/100
倍量の⑩基質液を混合したもの
4.DNA の抽出
DNA の抽出・調製例としては、以下のような方法があります。
(1) 市販の DNA 抽出キットを使用する場合の例
・SepaGene (三光純薬)
・QIAGEN Blood & Cell Culture DNA kit (QIAGEN)
(2)一般的な DNA の調製方法
・EDTA 採血した血液 5 mL を 1500rpm で 5 分間遠心し、上清(血漿)をピペットを
用いて除き、白血球を含むバッフィコートを回収します。これに溶血用溶液(10 mM
Tris-HCl(pH7.6)、10 mM EDTA、50 mM NaCl)で2回(10 mL + 5 mL)洗浄(縣
濁・遠心)します。溶血が不十分な場合はこの操作を繰り返します。
・沈殿を 3 mL の Lysis 溶液(10 mM Tris-HCl(pH 7.6)、5 mM MgCl2、10 mM NaCl)
に縣濁して、50 μL の 10% SDS とプロテイナーゼ K 溶液(10 mg/mL)をそれぞれ
加え、42∼50℃で穏やかに撹拌しながら一夜インキュベートします。
・これに 0.25 等量の飽和酢酸ナトリウム溶液を加えて、15 秒間激しく振ります。1500rpm
で 15 分間遠心後、上清を新しいチューブに移します。これに等量のイソプロパノール
を加え、ゆっくり撹拌します。
・得られた DNA をピペットマン(1 mL が量りとれるもの)を用いて、溶液と共に吸い
取り、1.5 mL の遠心チューブに移します。10,000rpm で遠心を 10 秒間行ない、上清
を捨てます。これに 70% エタノールを加えて遠心し、上清を除き、風乾後(10 分程
度)、適当量の TE(10 mM Tris-HCl、0.1 mM EDTA(pH 8.0))に溶解し、検体とし
ます。
(3) リンパ球を特異的に回収する磁気ビーズを用いて白血球以外の成分が十分に除かれて
いる場合の調製法
・白血球 106 個にプロティナーゼK溶液(0.5 mg/mL プロティナーゼ K, 10 mM Tris-HCl (pH
8.8), 0.5% Tween 20)500μL を加えよく混和後、65℃で 60 分間インキュベートし、さらに
95℃で 10 分間インキュベートします。
5.アガロースゲル電気泳動
増幅 DNA(PCR 反応が正常に行なわれたかどうか)の確認と、コンタミネーションが生じていな
いかの確認は 2%アガロースゲル電気泳動で行います。
5.1 必要な装置・器具
・アガロース(電気泳動用)
・ゲル作製器(ミニゲル用トレイ)
・泳動用バッファー(1×TBE(トリス-ホウ酸緩衝液)など)
・エチジウムブロマイド溶液
・泳動用分子量マーカー
ゲル作製器と電気泳動装置
10
・色素液
・三角フラスコ(200∼300 mL)
・電気泳動装置
・ マイクロピペット
・電子レンジ
・紫外線(UV)照射器
・ポラロイド写真撮影装置
紫外線照射器とポラロイド写真撮影装置
5.2 操作手順
(1) 準備
1)
泳動用バッファー(1×TBE など)
1×TBE を使用する場合は、10×TBE のストック溶液を調製し、希釈して使用すると便利
です。
<10×TBE を 1 L 調製する場合>
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
108 g
ホウ酸
55 g
エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム(EDTA)
7.43 g
これらを蒸留水で溶かして1 L とし、室温で保存します。
2)
6×色素液
グリセロール
3 mL
ブロモフェノールブルー(BPB)
25 mg
キシレンシアノール FF(XC)
25 mg
0.5 M EDTA 溶液(pH8.0)
100μL
これらを蒸留水で 10 mL とし、4℃で保存します。
3)
エチジウムブロマイド溶液(10 mg/mL)
ストック溶液としてエチジウムブロマイド 500 mg を 50 mL の滅菌水に溶かして調製しま
す。
溶液は 4℃で遮光保存します。
■ エチジウムブロマイドは毒性および変異原性がありますので、作業中は使い捨て手
袋を使用して、直接皮膚に触れないようにして下さい。また、廃棄の際には、適切な
処理を行なって下さい。
(2)手順
1) ゲル作製器(ミニゲル用トレイ)をセットします。
2) 三角フラスコに、泳動用バッファー(1×TBE)100 mL と 2 g の電気泳動用アガロース粉末
を加えて、電子レンジで溶解します。
11
3) 50∼60℃(手で持てる程度)に冷ました後、エチジウムブロマイド溶液(10 mg/mL)を 10μ
L 加えます。
4) よく攪拌した後、ゲル作製器(ミニゲル用トレイ)に流し込みます。
5) アガロースが完全に固まったら、サンプルコームを静かに抜きます。
6) 泳動用バッファーで満たした電気泳動装置の中にアガロースゲルを設置します。
7) 各増幅 DNA 5μL に対して 1μL の 6×色素液を混合した後に、
その混合溶液をピペットで各ウエルにアプライします。
8) 泳動漕の電極を接続します。試料側を陰極(黒)、反対側を陽極(赤)に
接続します。
9) 電圧 100V で 15∼20 分程度電気泳動を行います。
10) 電気泳動終了後、紫外線(UV)照射器にアガロースゲルをのせて観察し、
必要に応じてポラロイド写真撮影装置で写真撮影を行って下さい。
■ 紫外線(UV)照射の際は、保護メガネを着用して下さい。
12
6.トラブル対策
1.検体(DNA)の調製
現 象
抽出した DNA の濃度が
薄い(10μg/mL 以下)
抽出した DNA の濃度が
濃い(200μg/mL 以上)
考えられる原因
PCR に用いる推奨 DNA 量
の範囲内でない
対 処 方 法
エタノール沈殿等により DNA を濃縮して下さい。
DNA を推奨 DNA 量の範囲内になるように滅菌
水などで希釈してご使用下さい。
2.PCR/アガロースゲル電気泳動
現 象
(1)
バンドが全 く見
えない
分子量マーカーも含め
て見えない
考えられる原因
アガロースゲルにエチジウム
ブロマイドが含まれていない
逆方向に泳動している
(2)増幅 DNA のバンドは
見えるが、泳動用分子
量マーカーのバンドが見
えない
(3)分子量マーカ−のバ
ンドが見えるが、増幅
DNA のバンドが見えな
い
泳動に用いた分子量マーカ
ー量が少ない
対 処 方 法
泳動アガロースゲルをもう一度エチジウムブロマ
イドを含む泳動バッファーで染めて下さい。
アガロースゲルに色素(青色)が見られなけば、
泳動漕の電極を逆に接続していた可能性があり
ます。電極の接続を確認して下さい。
分子量マーカーの濃度を確認して下さい。
増幅液の入れ忘れ
検体 DNA の入れ忘れ
検体 DNA が古い、保存状
態が悪かった、DNA 分解酵
素が混入していたなど
PCR 装 置 の温 度 設 定条件
が正 しくなかった(間 違 って
いた)
PCR 反応液の残量を確認して下さい。
検体 DNA を加えてもう一度行ってください。
再度、検体 DNA を分離・精製して下さい。
PCR 装 置の温 度 コントロー
ルができていない
各装置のセルフチェックを行って下さい。
故 障 の場 合 は各 装 置 メーカーにお問 合 せ下 さ
い。
*弊社製品は GeneAmp® PCR System 9600-R
を使用して PCR 反応条件を設定しています。他
の装置を用いた場合は、アニーリング条件、ある
いはサイクル数の変更が必要になることがありま
す。
ヘパリンが除去できる DNA 抽出法を行って下さ
い。(EDTA 加血液やクエン酸塩加血液由来の
サンプルでは問題ありません。)
ヘパリン採取した血液から分
離・精製したサンプル DNA
を用いた
13
3.2.(2)PCR 反応の” PCR 反応条件”に従って
プログラムを設定して下さい。
現 象
(4)増幅 DNA のバンドが
薄い
考えられる原因
検体 DNA が古い、保存状
態が悪かった、DNA 分解酵
素が混入していた など
PCR 装 置の温 度 コントロー
ルができていない
加えられた検体 DNA 量が
PCR に用いる推奨 DNA 量
( 10 ∼ 200 μ g/ m L ) の 範 囲
内でない
(5)ネガティブコントロー
ルでバンドがみられる
構成試薬①∼③のいずれか
に増幅DNAまたは検体DN
Aが混入している(コンタミネ
ーション)
対 処 方 法
再度、検体 DNA を分離・精製して下さい。
あるいは加える DNA を増減させて PCR を再度、
行って下さい。
各装置のセルフチェックを行って下さい。
故 障 の場 合 は各 装 置 メーカーにお問 合 せ下 さ
い。
*弊社製品は GeneAmp® PCR System 9600-R
を使用して PCR 反応条件を設定しています。他
の装置を用いた場合は、アニーリング条件、ある
いはサイクル数の変更が必要になることがありま
す。
検体 DNA の濃度を確認して下さい。
また、検体 DNA 中に PCR 阻害物質(ヘモグロビ
ン、塩、ヘパリンなど)が含まれていると PCR を抑
制することがありますので、これらを含まないもの
を使用して下さい。
次のステップには進まないでください。
現在使用している構成試薬①∼③のみで PCR
を行い、試薬へのコンタミネーション確認を行っ
てください。コンタミ ネーションが確 認 された場
合、その構成試薬①∼③は全て破棄し、新しい
ものを使用してください。
3.ハイブリダイゼーションと検出
現 象
(1)発 色 が全 くみられな
い
考えられる原因
増幅 DNA がない
サンプルの変 性 ができてい
ない
ハイブリダイゼーションの温
度が最適でない
洗浄操作が適切でない
発色操作が適切でない
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対 処 方 法
アガロースゲル電気泳動で増幅 DNA を確認して
下さい。
変性液、中和液を適量加えていたかどうか確認
してください。また変性液と増幅 DNA を加える際
に、混 和 が十 分 であったかどうか確 認 して下 さ
い。
ハイブリダイゼーション時の温度が 37℃になって
いることを確認して下さい。
洗浄液の代わりに水などで洗浄していなかった
かどうか確認して下さい。
酵素液、基質液を適切な順序で入れたかどうか
確認して下さい。
酵素溶液と発色基質溶液を加える順序を間違え
ていないか確認して下さい。
発色液と停止液を間違えて使用していないか確
認して下さい。
現 象
(2)全体的に発色が弱い
考えられる原因
増幅 DNA の増幅効率が悪
い
増幅 DNA のアルカリ変性が
充分でない
各試薬が常温に戻っていな
かった
ハイブリダイゼーションの温
度が最適でない
洗浄液の温度が適切でない
酵素溶液・発色基質溶液の
調製を間違えた
発 色 反 応 時 の 温 度 (37℃)
が低い
(3)全体的に発色が高い
(バックグラウンドが高い)
各試薬が常温に戻っていな
かった
ハイブリダイゼーションの温
度が最適でない
洗浄液での洗浄が不充分
酵素溶液・発色基質溶液の
調製を間違えた
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対 処 方 法
アガロースゲル電気泳動でチェックして下さい。
変性液、中和液を適量加えていたかどうか確認
して下さい。また変性液と増幅 DNA を加える際
に、混 和 が十 分 であったかどうか確 認 して下 さ
い。
操作開始前に冷蔵庫から取出した試薬が常温
に戻っていたかどうか確認して下さい。
インキュベーター内の温度のチェックを行い、調
節して下さい。使用する装置によっては、条件の
変更が必要になることがあります。
洗浄液を常温にして下さい。
試薬の混合比が間違っていないか、操作の確認
をして下さい。
発色は酵素反応ですので適切な温度であること
が必要です。インキュベーター内の温度が 37℃
であるかどうか確認して下さい。
操作開始前に冷蔵庫から取出した試薬が常温
に戻っていたかどうか確認して下さい。
インキュベーター内の温度のチェックを行い、調
節して下さい。使用する装置によっては、条件の
変更が必要になることがあります。
洗浄が不充分な場合、バックグラウンドが高くなり
ます。操作の確認をして下さい。
試薬の混合比が間違っていないか、操作の確認
をして下さい。
7.参考文献
1.Kawai, S., Maekawajiri, S. and Yamane, A.: A Simple Method of Detecting Amplified DNA
with Immobilized Probes on Microtiter Wells.
Analytical Biochemistry 209: 63-69, 1993
2.Kawai, S., Maekawajiri, S., Tokunaga, K., Juji, T. and Yamane, A.: A Simple Method of
HLA-DRB Typing Using Enzymatically Amplified DNA and Immobilized Probes on
Microtiter Plate.
Human Immunology 41: 121-126, 1994
3.Kawai, S., Maekawajiri, S., Tokunaga, K., Kashiwase, K., Miyamoto, M., Akaza, T., Juji, T.
and Yamane, A.: Routine low and high resolution typing of HLA-DRB gene using
PCR-MPH
(Microtiter
Plate
Hybridization)
method.
European
Immunogenetics 23: 471-486, 1996
8.資料請求及び問合せ先
湧永製薬株式会社
バイオ事業開発部
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