2014年度数学IB演習第12回

2014 年度数学 IB 演習第 12 回
理 I 24, 29, 30, 31, 35, 36 組
1 月 6 日 清野和彦
数理科学研究科棟 5 階 524 号室 (03-5465-7040)
[email protected]
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/index.html
問題 1. 次の無限級数の和を求めよ。
(1)
∞
∑
1
2 + 5n + 4
n
n=1
(2)
√
√
√
√
3 − 2 2 5 2 − 7 17 − 12 2
+
+
+ ···
2−1+
2
4
8
問題 2. 次の無限級数が収束するか発散するかを判定せよ。
)n
∞ (
∑
1
(2)
1+
n
n=1
∞
∑
n(n + 1)
(1)
2n
n=1
(3)
∞ (√
∑
n=1
n2
+1−n
2
)
(4)
∞
∑
1
n
log
n
n=2
問題 3. 無限級数
1+
1
1
1
1 1 1 1 1 1 1 1
+ + + + + + + +
+
+
+ ···
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
が発散することは講義(のレポート問題)で夏学期に示した。一方、第 1 回演習の解答プリントで
1−
1 1 1 1 1 1 1 1
1
1
1
+ − + − + − + −
+
−
+ · · · = log 2
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
(1)
であることを証明した。以上の二つのことから、式 (1) 左辺の交代級数は条件収束級数である。と
いうことは、項の順序を並べ替えて別の値に収束するようにできる。その例として、
1+
1
1
1
1
1
3
1 1 1 1 1 1
− + + − + +
− +
+
− + · · · = log 2
3 2 5 7 4 9 11 6 13 15 8
2
となっていることを、式 (1) を使って(パズルのようにして)示せ。
問題 4. 無限級数
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
+
−
+
+
−
+
+
−
+
+
−
+· · ·
3
2
5
7
4
9
11
6
13
15
2 3·2
2·2
5·2
7·2
4·2
9·2
11 · 2
6·2
13 · 2
15 · 2
8 · 28
の和を求めよ。
2014 年度数学 IB 演習第 12 回解答
理 I 24, 29, 30, 31, 35, 36 組
1 月 6 日 清野和彦
数理科学研究科棟 5 階 524 号室 (03-5465-7040)
[email protected]
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/index.html
無限級数については、第 1 回の演習で
単調減少で 0 に収束する数列から作った交代級数は収束する
ということと
絶対収束する無限級数は収束する
ということを既に学んでいます。今回はその続きですので、ぜひ第 1 回のプリントも参照してみて
ください。
問題 1 の解答
(1) n2 + 5n + 4 = (n + 1)(n + 4) と因数分解できますので、
1
1
1
1
=
=
−
n2 + 5n + 4
(n + 1)(n + 4)
3(n + 1) 3(n + 4)
です。よって、
)
N (
∑
1
1
1
=
−
n2 + 5n + 4 n=1 3(n + 1) 3(n + 4)
n=1
(
) (
) (
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
=
−
+
−
+
−
+
−
+ ··· +
−
6 15
9 18
12 21
15 24
3(N + 1) 3(N + 4)
1 1
1
1
1
1
= + +
−
−
−
6 9 12 3(N + 2) 3(N + 3) 3(N + 4)
N
∑
となり、
∞
∑
n=1
n2
1
1 1
1
1
1
1
13
= lim
+ +
−
−
−
=
+ 5n + 4 N →∞ 6 9 12 3(N + 2) 3(N + 3) 3(N + 4)
36
です。 □
√
2−1
の等比級数です。よって、
2
)n
√
√
∞ (√
∑
2−1
2−1
4 2−2
√
=
=
2n−1
7
1 − 2−1
n=1
√
(2) この無限級数は、初項 2 − 1、公比
2
となります。 □
2
第 12 回解答
問題 2 の解答
(1) ダランベールの判定法を使ってみましょう。
an+1 (n + 1)(n + 2)
1+
2n
n+2
=
=
=
an n+1
2
n(n + 1)
2n
2
2
n
n→∞
−−−−→
1
2
となって 1 より小さい値に収束するので、この無限級数は収束します。 □
(2) コーシーの判定法を使ってみましょう。
√
(
)n2 (
)n
√
1
1
n
n→∞
n
= 1+
|an | =
1+
−−−−→ e
n
n
となって 1 より大きい値に収束するので、この無限級数は発散します。 □
√
(3) 第 n 項の分子分母に n2 + 1 + n を掛けることにより
√
1
1
n2 + 1 − n = √
>
2
2n + 2
n +1+n
が分かります。一方、
∞
1 ∑ 1
1
=
2n + 2
2 m=2 m
n=1
∞
∑
は発散します。(問題 3 にも書いたように、1 +
1
2
+
1
3
+
1
4
+ · · · が発散することは夏学期に学びま
した。)よって、元の級数も発散します。 □
(4) 無限級数の収束や発散を示すのに広義積分と比較するのが有効な場合があります。この問題は
その方法が有効です。
∫ ∞
[
]∞
1
dx = log(log x)
=∞
x log x
2
2
です。一方、n ≤ x ≤ n + 1 において
1
1
>
n log n
x log x
ですので、
∫ N +1
N ∫ n+1
∑
1
1
1
>
dx =
dx
n
log
n
x
log
x
x
log
x
2
n=2
n=2 n
N
∑
という不等式が成り立ちます。よって、N → ∞ とすることにより、問題の無限級数が発散するこ
とが分かります。 □
コメント
ダランベールの判定法もコーシーの判定法も、
問題の無限級数を無理矢理等比級数と思い込む
という考え方による判定法です。実際、
an+1 an = |r|
∑∞
n=1
lim
an が初項 a、公比 r の等比級数なら、
n→∞
√
n
|an | = lim
n→∞
√
n
|a||r| = |r|
3
第 12 回解答
です。ただし、等比級数でないものを無理矢理等比級数扱いしているのですから、|an+1 /an | や
√
n
|an | の極限値が本当に公比であるわけではありません。これらの値はその極限値の近くをふら
ふらしてしまっています。ですから、この極限値がピッタリ 1 になってしまう場合については、1
より大きいところでふらふらしているのか、小さいところでふらふらしているのか、1 より大きく
なったり小さくなったりしているのかを極限値だけから判断することができないので、判定不能と
いうことになってしまうのです。
問題 3 の解答
まず、
1 1 1 1 1
+ − + − + · · · = log 2
2 3 4 5 6
のすべての項を 2 で割ることにより、
1−
(1)
1 1 1 1
1
1
1
− + − +
−
+ · · · = log 2
2 4 6 8 10 12
2
が得られます。これのすべての項の前にわざと 0 を挟み込みます。もちろん和は変わらないので、
0+
1
1
1
1
1
+0− +0+ +0−
+ · · · = log 2
2
4
8
10
2
です。これと元の無限級数 (1) を項ごとに足し合わせると
1 1 1
1 1
3
− + + 0 + − + · · · = log 2
3 2 5
7 4
2
1+0+
となります。これから 0 の項を取り除くと、欲しい結果になります。 □
コメント
これは条件収束級数 (1) の並べ替えの一例に過ぎません。次のように項の並べ替えでいろいろな
値に収束させられます。
p と q を自然数とすると、
1
1 1
1
1
+ ··· +
− − − ··· −
3
2p − 1 2 4
2q
1
1
1
1
1
+
+ ··· +
−
−
− ···
+
2p + 1 2p + 3
4p − 1 2q + 2 2q + 4
1
p
= log 2 + log
2
q
1+
となる。
例えば、p = 1, q = 2 として、
1−
1 1 1 1 1 1
1
− + − − + − · · · = log 2
2 4 3 6 8 5
2
p = 1, q = 4 として、
1−
1 1 1 1 1
1
− − − + −
− ··· = 0
2 4 6 8 3 10
4
第 12 回解答
p = 9, q = 4 として、
1+
1
1
1
1
1
+ ··· +
− − ··· − +
+ · · · = log 3
3
17 2
8 19
など、いくらでもできます。
講義で学んだように、一般に
∞
∑
ak が条件収束級数のとき、項を並べ替えることによって任意の実数に収束させること、お
k=1
よび、+∞ にも −∞ にも発散させることができる。
が成り立っているのですから、上のようなことができるのは当然なのですが、具体的にどう並べ替
えたらどのような値になるかを見定めるのはとても難しいと思います。
問題 4 の解答
問題の無限級数を並べ替えると
1
1
1
1
−
+
−
+ ···
2 2 · 22
3 · 23
4 · 24
(2)
となります。これは log(1 + x) の 0 におけるテイラー展開
log(1 + x) = x −
にx=
1
2
x2
x3
x4
+
−
+ ···
2
3
4
を代入したものなので、log(1 + 12 ) = log
3
2
−1<x≤1
に収束しています。
一方、無限級数 (2) は絶対収束してます。実際、例えばダランベールの方法を使うと
1
n
1
(n+1)·2n+1 lim = <1
= lim
1
n→∞ n→∞
2(n
+
1)
2
n·2n
です。絶対収束する無限級数は足す順序によらずに同じ値に収束しますので、元の無限級数も log
3
2
に収束します。 □
コメント
上の解答では無限級数 (2) が log
3
2
に収束していることを log(1 + x) がテイラー展開可能である
ことを既知として書いてしまいました。そのことを仮定せずに証明するなら、例えば次のようにな
ります。
まず、
(1 + x)(1 − x + x2 + · · · + (−1)n−1 xn−1 ) = 1 + (−1)n−1 xn
から
xn
1
= 1 − x + x2 − · · · + (−1)n−1 xn−1 + (−1)n−1
1+x
1+x
を得ます。これを 0 から
1
2
まで積分して
(
)
∫ 12
1
1
1
1
1
xn
n−1
n
log 1 +
= −
+
−
·
·
·
+
(−1)
+
(−1)
dx
2
3
n
2
2 2·2
3·2
n·2
0 1+x
5
第 12 回解答
となります。0 ≤ x ≤
1
2
において
xn
≤ xn
1+x
0≤
なので、
∫
1
2
0≤
0
xn
dx ≤
1+x
∫
1
2
xn dx =
0
1
n→∞
−−−−→ 0
(1 + n)21+n
となります。よって、
∞
∑
n−1
(−1)
n=1
(
)
∫ 12
3
1
xn
n
= lim log − (−1)
dx
n→∞
n · 2n
2
0 1+x
∫ 21
3
3
xn
n
= log − (−1) lim
dx = log
n→∞
2
2
0 1+x
となって示せました。
また、解答では無限級数 (2) が絶対収束していることをダランベールの判定法を使って示しまし
たが、もっと直接次のように示すこともできます。
無限級数 (2) の第 n 項の絶対値は
1
1
≤ n
n
n·2
2
という不等式を満たし、無限級数
1+
は公比が
1
2
1
1
1
1
+
+ 3 + 4 + ···
2 22
2
2
の等比級数なので収束します。というわけで、無限級数 (2) は絶対収束していること
がわかります。
絶対収束と条件収束の違い
∞
∑
±
an を収束するかどうかわからない勝手な無限級数とし、a±
を演習第 1 回の問題 4 の
n と S
n=1
ヒントにあるように定義します。(ここにもう一度書けばよいのですが、時間がなくなってしまい
∞
∑
ました。申し訳ありませんが、第 1 回のプリントを参照してください。)ただし、
a±
n は収束す
n=1
るかどうかわかりません。正の無限大に発散している可能性もあります。だから S ± は実数だけで
なく ∞ も許して考えることにします。
さて、絶対収束するというのは、S + も S − も発散しない場合、つまり、S + も S − もちゃんと
∞
∑
数になる場合です。この場合、
an やこれの足す順序を変えたものというのは、0 からスタート
n=1
して S + というストックからちょっとずつ足し、S − というストックからちょっとずつ引いていっ
てどちらのストックも使い果たした後の状態ですので、ちょっとずつ足したり引いたりする順序を
どうしようとも、その値は S + − S − にならざるを得ません。
同じように考えると、S + は発散しているが S − は収束している場合には、
+
−
∞
∑
an は足す順序を
n=1
どう変えようとも正の無限大に発散してしまうし、S は収束しているが S は発散している場合
∞
∑
には、
an は足す順序をどう変えようとも負の無限大に発散してしまうことがわかるでしょう。
n=1
微妙なのは S + も S − も発散している場合です。この場合、S + というストックも S − というストッ
クも無尽蔵なので、S + から足すものを出し S − から引くものを出して行くと絶妙のバランスで「最
後に」有限の値が残る場合があります。それが条件収束です。標語的にいえば「−∞ < ∞−∞ < ∞」
第 12 回解答
6
となっている場合なのです。こう考えると、条件収束というのはいかにも危うい収束に見えるの
ではないでしょうか。足す順序を変えてしまうということ、例えば、S − から引く掛の人が居眠り
している間に S + から足す掛の人ががんばってしまうと、その後引く掛の人ががんばってもどち
らのストックも無尽蔵なので、その後両方の掛が同じようにがんばるならもうその差は埋められ
ない、とか、S + の掛と S − の掛の人がとても息が合っていて、いつもたがいにほとんど打ち消
し合うように出してくれば、「∞ − ∞ = 0」が実現される、とか何でも起こりそうだという感じ
がわかってもらえると思います。例えば、π に収束させようと思ったら、まず、π を上まわるまで
∑ +
+
a+
an が発散しているのだからこれはできます。次に、π を下回るま
1 + a2 + · · · と足します。
で a−
n を引きます。これを繰り返すと π に収束するのです。また、+∞ に発散させたければ、ま
−
−
+
ず、1 を上まわるまで a+
n を足し、b1 を引き、次に、2 を上まわるまで an を足し、b2 を引き、
とすればできます。証明は省略しますので、詳細は自分で補って下さい。
このように、条件収束級数においては、有限個の数の和からは推し量れない現象が起こるので、
一般的な取り扱いが大変難しくなってしまうのです。