12月の追加緩和を検討するECB

大和スペシャリストレポート
12月の追加緩和を検討するECB
大和総研 経済調査部
山崎加津子
10月22日のECB(欧州中央銀行)理事会
○金融政策の変更はなし
「月額600億ユーロの資産買取を2016年9月まで
継続する」ことを確認
○追加緩和策を検討していることをドラギ総裁が明言
・ 資産買取の期間延長、規模拡大、買取対象拡大
・ 中央銀行預金金利の追加利下げ
⇒12月の追加金融緩和の可能性が高まった
追加緩和検討の背景① 根強いユーロ圏のデフレ懸念
%5
ECBの政策金利:10月0.05%
インフレ率(前年比):9月-0.1%
コアインフレ率(前年比):9月+0.9%
4
3
+2%
2
1
0
-1
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(注1)ECBが目標とするインフレ率(消費者物価上昇率)は前年比+2%を若干下回る水準
(注2)コアインフレ率は食品・アルコール・たばこ・エネルギーを除く
(出所)Eurostat、ECBデータより大和総研作成
物価低迷の主因は原油安
前年比%、%pt
5
うちエネルギー価格の寄与度
インフレ率
4
3
2
1
0
-1
-2
07
08
09
10
(出所)Eurostatデータより大和総研作成
11
12
13
14
15
追加緩和検討の背景② 外需減速懸念
前年比%
100
対ブラジル輸出
対ロシア輸出
対中国輸出
75
50
25
0
-25
-50
07
08
09
10
(出所)Eurostatデータより大和総研作成
11
12
13
14
15
外需に比べてユーロ圏の内需は堅調
前年比%
4
0
-5
2
-10
0
-15
-2
-20
-25
-4
小売売上高
消費者信頼感(右目盛)
-6
07
08
09
10
(出所)Eurostatデータより大和総研作成
11
12
13
14
15
-30
-35
2つの不透明要因
○欧州に押し寄せる大量の難民
○フォルクスワーゲンの排ガス不正問題
⇒どのような影響を経済に及ぼすか?
難民問題で想定される多様な経済効果
<短期的>
・ 難民申請者に衣食住を提供するための政府支出増
・ 警官、教員、保育士などの雇用増(=政府支出増)
・ 社会不安の高まりで消費者マインド悪化?
<中長期的>
・ 若い労働力の供給で人口高齢化のペース鈍化?
・ 安い労働力の供給で物価抑制?失業率上昇?
フォルクスワーゲンの排ガス不正問題の波及効果
○フォルクスワーゲンにとっては甚大な信用失墜で、
多額のリコール費用と訴訟費用が発生する大問題。
⇒悪影響がどこまで及ぶかまだ見当がつかない
○他方でこの問題で自動車販売そのものが落ち込んで
しまうのか、雇用や投資の全般的な調整要因となる
のかはこれから確認する必要がある。
旺盛な乗用車需要
万台
1300
ユーロ圏の新車登録台数(12カ月累計)
1200
1100
1000
900
800
700
91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15
(出所)ACEAデータより大和総研作成
ドイツの10月の企業景況感悪化は限定的
%
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
ifo景況感指数
サービス業景況感
07
08
09
10
11
(出所)ifo経済研究所データより大和総研作成
12
13
14
15
16
12月3日のECB理事会までのチェックポイント
○物価動向とインフレ見通し
○外需、とりわけ新興国の需要の回復力
○ユーロ圏の内需回復の強さ