2016年3月号(PDF/610KB)

み
みず
ずほ
ほ米国経
経済
済情
情報
20016年3月号
号
◆ トピ
ピック
利上げ
げに慎重
重な姿勢強
強めたFO
OMC
米国経
経済が勢いを取り 戻す中、FOMCはむ
F
しろ利上
上げに慎重
重
な姿勢
勢を強めた。20166年の利上
上げ回数は4回から
ら2回に減
減
り、政
政策金利の長期的
的水準も引
引き下げら
られている
る。
◆ 景気
気判断
勢いを
を取り戻しつつも
も、下向
向きリスクは残存
存
労働市
市場は強さを増し
し、製造業の悪化傾
傾向には一
一服感がみ
み
られる
る。しかし、海外経
経済の弱さは変わ
わらず、輸
輸出の悪化
化
や金融
融市場の不安定化
化が再燃す
するリスク
クが残る。
。
1.トピック:利上げに慎重な姿勢強めた FOMC
リスク評価の意見集約
米国経済が勢いを取り戻す中で開催された 3 月 15・16 日の連邦公開市場委
に失敗したイエレン議
員会(FOMC)では、リスク評価に対する意見集約はみられなかったものの、
長
従来と比べて利上げに対して慎重な姿勢が打ち出されている。
声明文では、前回に引き続き、先行きに対するリスク評価が提示されなか
った。リスク評価には上振れリスクも含まれる点に注意が必要だが、イエレ
ン連邦準備制度理事会(FRB)議長は、先行き下振れリスクが大きいとすべき
か、上振れリスクと下振れリスクが均衡しているとすべきか、FOMC 内の意見
集約に失敗したのである。声明文では、
「世界経済と金融市場の動向は引き続
きリスクをもたらす」という指摘に留まった(図表 1)
。
中央値でみると、2016
年内の利上げは 4 回か
リスク評価に対して一致した意見が見られなかったにもかかわらず、政策
金利見通しは、前回(昨年 12 月)と比べて全般的に下方修正された。
ら 2 回に減少。政策金
中央値でみると、2016 年の利上げ回数は前回の 4 回から 2 回へと大きく減
利の長期水準も 3.5%
少した(図表 2)
。イエレン議長は記者会見で、
「今年と来年の政策金利の中央
から 3.25%に低下
値は 0.5 ポイント低下した」と述べた。さらに、長期的な政策金利の水準に
ついても、3.5%から 3.25%に下方修正されている。
従来の利上げテンポと
短期的な視点に立つリスク評価については意見が分かれるものの、米国経
水準では経済見通しを
済に対する長期的な(根本的な)視点に立った評価では、FOMC 参加者らは概
達成できない、と考え
ね一致をみたことになる。イエレン議長も、政策金利見通しの修正と、経済
直した FOMC 参加者
予想そのものは前回と変わらない点を取り上げ、次のように説明した。
「今や
ほとんどの FOMC 参加者が、昨年 12 月の見通しを達成するには、一段と低い
政策金利経路が必要になったと考えていることになる。
」つまり、従来の利上
げテンポと水準では金融政策が引き締め過ぎとなり、経済見通しの達成が難
しくなる、と考え直したのである。
景気に中立的な政策金
サンフランシスコ連銀総裁らの推計によれば、景気に中立的な政策金利の
利の実質値(実質均衡
実質値
(実質均衡金利)
は2015 年 10~12 月期の時点でマイナス 0.1%である。
金利)はほぼゼロで、
予想インフレ率を 2%とすれば、足元の政策金利レンジ(0.25%~0.5%)は
金融政策は十分に緩和
十分に緩和的である。しかし、金融政策のスタンスを決定づける実質均衡金
的という推計もあるが、
利の推計には不確実性が伴うことや、未だに政策金利がゼロ近傍にあり、ネ
FOMC 参加者らは慎重姿
ガティブ・ショックが生じた場合の緩和余地が限られていることなどから、
勢
金融政策が緩和的であるのかどうか、より慎重な判断が必要とされる。FOMC
参加者らは、今回の会合に臨むに当たり、こうした見方を従来よりも強めた
ようだ。
混戦の大統領選候補者
共和党と民主党の大統領選候補者選びは混戦である(図表 3)
。共和党では
選び。極めて内向きな
トランプ氏の躍進と、それを阻もうとする主流派の動向が不透明感を生んで
発言が気がかり
いる。民主党ではヒラリー氏がリードしつつ、サンダース氏の追い上げも続
いている。日本をはじめ世界にとって気がかりなのは、こうした主要候補者
らが極めて内向きな発言をしていることだ。TPP を始めとするグローバリゼー
ションに対する否定的・懐疑的姿勢、日本に対する為替操作批判など、看過
できない状況にある。
1
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
図表 1
景気
3 月 FOMC 声明文の主要な変更点
2016年1月26-27日会合
2016年3月15-16日会合
判断・政策の変化
経済成長率は、昨年末に鈍化した。
ここ数か月間の世界経済と金融市場
の動向にも関わらず、経済活動は緩
やかに拡大した
前進
労働市場は一段と改善した。
最近の労働市場指標は、力強い雇用
の増加を含め、有効利用されていな
い労働力が「さらに幾らか」縮小し
たことを示している。
雇用
設備投資はここ数カ月間緩やかな
ペースで増加した。
設備投資
インフレ率は、エネルギー価格下落
と非エネルギー輸入品の価格下落を
反映し、委員会の長期目標である
2%を引き続き下回って推移してい
る。
インフレ率
(「リスクはバランスしている」と
の記述を削除)
見通しの
リスク
委員会は、海外経済と金融市場の動
向を注意深く監視し、労働市場やイ
ンフレ率、見通しに対するリスクの
バランスに与える影響を評価してい
る。
最近の幅広い指標は、力強い雇用を
含め、労働市場が一段と力強さを増
したことを示している
前進
スラックに関する記述が
削除
設備投資は軟調だ。
後退
ここ数カ月間のインフレ率は上向い
た。
前進
しかし、エネルギー価格下落と非エ
ネルギー輸入品の価格下落を反映
し、委員会の長期目標である2%を
引き続き下回って推移している。
世界経済と金融市場の動向は引き続
きリスクをもたらす
委員会は、インフレ率の動向を注視
している
足元で上向き
リスクバランスの判断は
なし
(資料)FRB より、みずほ総合研究所作成
図表 2
政策金利見通し
図表 3 大統領選候補者選びの動向
(共和党:1237 人以上獲得なら本選へ)
(%)
4.50
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
(人)
2,500
○ 12月見通し
● 3月見通し
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4.00
○──────────────●────────
2,000
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
○
-----------------------------------------------------------------------------------------------
○○ - - - - - - - - - - - - ●● - - - - - - -
1,500
○○
3.50
-----------------------------------------------------------------------
○
○○ - - - - - - - - - - - - - - - ○○○○○○ - - - - - - - - ●● - - - - - - -
○○○
------------------------------------------------------------------------
○○
3.00
1,000
トランプ氏の獲得数
●●●
○────────────────────────○────────●─────────○○─────────●●●●●────
500
─────────────────────────────────────────────
○○○○
○○
2.50
●●
○ - - - - - - - ●● - - - - ○○○○○○ - - - ●●●●●●● - ○
----------------------------------------------------------
●●●
●- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ●
0
●
------------------------------------------------------------------------
○○○○
勝者総取り分
●
1 9 23 29 1 5 6 8 12 15 22 1 5 19 26 3 10 17 24 7
○- - - - - - - -● - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
●●●
2
●●
3
4
5
6
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
○
2.00
○○
●●●
○
●
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
(民主党:2383 人以上獲得なら本選へ)
○○○○○ ●●●●●
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
○○
1.50
(人)
●●●●
5,000
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
○○○○○○○
4,500
●●●●
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
○○○
1.00
4,000
●●●
中央値
3,500
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
○○○○
3,000
●●●●●●●●●
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2,500
●
0.50
現在
現在
×
ヒラリー氏の獲得数
2,000
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
×
1,500
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1,000
500
0.00
2016年末
2017年末
2018年末
0
長期
1 9 2027 1 5 6 8 12152226 5 9 1926 3 7 1017 4 5 7 14
2
3
4
5
6
(資料)FRB より、みずほ総合研究所作成
(注)予備選・党員集会の日付と累積代議員数。
一部、別枠の議席数を含む。
(資料)各種報道より、みずほ総合研究所作成
2
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
2.概況:米国経済は勢いを取り戻しつつあるが、下向きリスクが残存
米国経済は勢いを取り
戻す動き
金融市場の動揺がおさまると共に、米国経済も勢いを取り戻す動きをみせ
ている。
労働市場は一段と改善している。非農業部門雇用者増加数は直近 3 カ月で
月平均+22.8 万人(前月差)と、雇用の堅調な回復を示す 20 万人の水準を上
回っている。労働参加率と就業率もともに上昇傾向をみせている。
注目されるのは、昨年より続いてきた製造業活動の悪化傾向に一服感がみ
られることだ。在庫調整圧力が和らぎ、新規受注や生産に回復の兆しがある。
内需の堅調さが製造業活動の持ち直しに寄与しているようだ。
しかし、米国経済に対する下押しがなくなったわけではない。ドル高や新
興国・資源国経済の減速が、引き続き輸出の抑制要因となっている。2 月の新
興国・製造業PMI(Markit)は 48.8 と前月から低下し、製造業の業況悪化
を示した。中国をはじめ新興国経済に明確な回復がみられず、輸出の悪化と
金融市場の不安定化が再燃するリスクが残存している。
製造業の生産は緩やか
に持ち直し
生産活動をみると、エネルギー部門で減産となる一方、製造業では生産が
緩やかに持ち直した。
エネルギー部門の 2 月の生産指数は 2 カ月ぶりに低下した。
公益の生産は、
気温低下に伴い暖房需要がはく落し、前月比減少した。掘削活動は 6 カ月連
続で減少した。
エネルギーを除く鉱工業生産指数は小幅ながら 2 カ月連続で上昇した(図
表 5)
。消費財の生産が減少し、IT関連、自動車も概ね横ばいにとどまった
が、設備機器、建設財等が全体を押し上げた。
製造業は業況の悪化が
製造業では、業況の悪化度合いが緩和している。2 月の製造業ISM指数は
緩和、非製造業は業況
49.5 と 5 カ月連続で改善・悪化の境目である 50 を下回ったが、前月から持ち
改善ペースが鈍化
直した(図表 6)
。生産、雇用、在庫が押し上げに寄与した。新規受注は横ば
いで、50 超の水準を維持した。業種別では、全 18 業種のうち、業況「改善」
を報告したのが 9 業種(1 月 8 業種)
、業況「悪化」を報告したのが 7 業種(1
月 10 業種)と、6 カ月ぶりに「改善」が「悪化」を上回った。企業のコメン
トをみると、
「海外需要は軟調だが、需要全体としてみれば堅調」
(化学)
、
「需
要はとても強い」
(一般機械)等前向きな内容も報告された。
さらに、
3 月の地区連銀製造業業況指数
(ニューヨーク、
フィラデルフィア、
後掲図表 18)
はプラス圏に戻り、
製造業の業況が上向いていることを示した。
一方、非製造業ISM指数(3/3)については 53.4 と前月から小幅に低下
した(図表 7)
。引き続き 50 の水準を上回っているものの、昨年夏頃からの低
下傾向が続いている。しかし、業種別では、全 18 業種のうち、業況「改善」
を報告した業種が増加する一方で(10 業種→14 業種)
、業況「悪化」を報告
した業種が減少した(8 業種→3 業種)
。2 月は、小売業が悪化に転じた。
3
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
図表 4
実質GDP成長率
図表 5
(前期比年率、%)
純輸出
政府支出
在庫投資
8
設備投資
住宅投資
個人消費
107
106
105
104
103
102
101
100
GDP
4
4.6
4.3
3.0
3.9
2.1
2.0
0.6
1.0
2
0
▲2
▲4
3
4
1
2
2013
3
4
2014
1
2
3
79.0
78.5
78.0
77.5
77.0
76.5
76.0
75.5
15/2
外需、在庫、設備が
マイナス寄与
▲0.9
(%)
(2007=100)
6
3.8
鉱工業生産と稼働率
15/8
4
16/2
(年/月)
鉱工業生産(除くエネルギー)
2015
設備稼働率(総合、右目盛)
(年/四半期)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
図表 6
(資料)連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
製造業ISM指数
60
58
56
図表 7
非製造業ISM指数
新規受注
生産
64
新規受注
事業活動
雇用
入荷遅延
62
入荷遅延
総合指数
在庫
総合指数
雇用
60
58
54
56
52
54
50
52
48
50
46
48
15/2
15/5
15/8
15/11
15/2
16/2
15/5
15/8
15/11
(年/月)
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
図表 8
景気の全体感を示す主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
成長率
2016/2
2016/3
3.9
2.0
1.0
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比年率、%
3.7
2.9
1.4
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
純輸出
寄与度、%Pt
0.2
▲ 0.3
▲ 0.3
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
在庫投資
寄与度、%Pt
0.0
▲ 0.7
▲ 0.1
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比、%
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 0.3
0.0
0.1
0.4
n.a.
n.a.
製造業ISM指数
DI
52.6
51.0
48.6
n.a.
49.4
48.4
48.0
48.2
49.5
n.a.
非製造業ISM指数
DI
56.5
58.2
56.9
n.a.
58.3
56.6
55.8
53.5
53.4
n.a.
前期比、%
▲ 0.5
0.6
▲ 0.8
n.a.
▲ 0.1
▲ 0.7
▲ 0.5
0.8
▲ 0.5
n.a.
非エネルギー部門
前期比、%
0.4
0.7
▲ 0.0
n.a.
0.4
▲ 0.2
▲ 0.3
0.5
0.1
n.a.
鉱工業 設備稼働率
%
77.7
77.9
77.0
n.a.
77.6
77.0
76.5
77.1
76.7
n.a.
%
76.0
76.2
76.0
n.a.
76.2
76.0
75.7
76.1
76.1
n.a.
月次実質GDP成長率
生産活動
2015/10 2015/11 2015/12 2015/1
前期比年率、%
実質GDP成長率
国内最終需要
企業業況
16/2
(年/月)
鉱工業生産指数
製造業
(資料)米国商務省、マクロエコノミック・アドバイザーズ、ISM、連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
4
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
3.家計部門:個人消費の拡大ペースが鈍化。住宅は横ばい圏の動き
労働市場が一段と改善する一方、個人消費の勢いは鈍化した。住宅市場は
横ばい圏の動きとなっている。
雇用は堅調
雇用は堅調である。2 月の非農業部門雇用者数が前月差+24.2 万人(1 月同
+17.2 万人)と加速し、市場予想(同+19.5 万人)も上回る結果となった(図
表 9)
。製造業が足を引っ張り、財部門が 5 カ月ぶりに減少する一方、教育等
サービス部門の増加ペースが高まった。
労働需給は改善
労働需給は改善している。労働参加率、就業率ともに上昇し、失業率(4.9%)
は低水準で横ばいとなった。不本意なパートタイム労働者やディスカレッジ
ド・ワーカーを含む代替的失業率(U6)は 9.7%と、前月(9.9%)から低下
した。
賃金は緩やかに上昇
1 月の時間当たり賃金上昇率
(農業を除く民間部門)
は前月比下落したが
(図
表 10)
、労働需給のタイト化が続いていることを踏まえれば、賃金の失速は一
時的であるとみられる。前年比ベースでは 2%台前半と緩やかな伸びを維持し
た。
小売売上高の勢いは鈍
化
小売売上高の勢いは鈍化した(図表 11)
。2 月の自動車販売台数(Autodata
Corporation)は年率 1,754 万台と前月(1,758 万台)から小幅に減少した。
最近の自動車販売台数は高水準ながらも、頭打ちしている。また、コア小売
売上高(自動車・ガソリン・建材・外食を除く)は 1 月分が下方修正され、2
月は横ばいにとどまった。年初の金融市場混乱により、逆資産効果が生じて
いた可能性がある。
消費者マインドは良好
な水準
消費者マインドは良好な水準にある。3 月のミシガン大学消費者信頼感指数
は前月から低下した。ミシガン大は、ガソリン価格が今後上昇するとの見方
が広がり、消費者の購買意欲が抑制された面があると指摘した。しかし、指
数の水準は過去に比べて高いレベルを維持している。
住宅着工は頭打ち傾向
2 月の住宅着工件数は前月比+5.2%の年率 117.8 万件と、3 カ月ぶりに増
加し、過去 2 カ月間の減少分を取り戻した(図表 12)
。2 月は戸建住宅の増加
が全体の押し上げに寄与した。地域別では、4 地域中、中西部、南部、西部の
3 地域が増加した。他方、先行指標である着工許可件数は同▲3.1%の年率
116.7 万件と、2 カ月ぶりに減少した。また、建築業者の景況感を表す住宅市
場指数は高水準にあるものの、伸び悩んでいる。
一時的要因に加えて、
2 月の新築住宅販売件数は前月比+2.0%の年率 51.2 万件となった。一方、
住宅価格の上昇が住宅
中古住宅販売件数は同▲7.1%の年率 508 万件となった。全米不動産協会(N
需要を下押し
AR)は、2 月の中古住宅販売減少の理由について、1 月の大雪による住宅購
入契約の減少(※)と、年明け以降の金融市場混乱による悪影響を指摘した。
また、中長期的な問題として、住宅価格が所得の増加ペースを上回って上昇
していることが、家計の住宅需要を冷え込ませると報告した。
(※)住宅の購入契約から引き渡し(販売統計にカウント)までには 1 カ月程度の期間がかかる。
5
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
図表 9
(前月差、万人)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
15/2
雇用統計
図表 10
時間当たり賃金
(前月比、%)
(%)
6.0
0.6
0.4
5.6
0.2
0.0
5.2
▲ 0.2
▲ 0.4
4.8
16/2
(年/月)
15/8
非農業部門雇用者数
15/2
16/2
(年/月)
後方3か月移動平均
失業率(右目盛)
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
図表 11
15/8
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
小売売上高
図表 12
(前月比、%)
2.0
住宅着工件数と住宅市場指数
(年率、万件)
130
70
1.5
60
1.0
115
50
0.5
40
100
0.0
30
▲ 0.5
85
▲ 1.0
15/2
15/8
コア
16/2
(年/月)
自動車・建材・ガソリン
20
15/3
(年/月)
外食
(資料)米国商務省、NAHB より、みずほ総合研究所作成
図表 13
家計部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
2016/2
2016/3
218
223
240
n.a.
295
280
271
172
242
%
5.4
5.2
5.0
n.a.
5.0
5.0
5.0
4.9
4.9
n.a.
時間
34.5
34.6
34.5
n.a.
34.5
34.5
34.5
34.6
34.4
n.a.
時間当たり賃金
前期比、%
0.6
0.6
0.6
n.a.
0.3
0.2
0.0
0.5
▲ 0.1
n.a.
小売売上高
前期比、%
1.4
1.1
0.3
n.a.
0.0
0.3
0.3
▲ 0.4
▲ 0.1
n.a.
前期比、%
0.9
1.1
0.4
n.a.
0.1
0.5
▲ 0.2
0.2
▲ 0.0
n.a.
台数、百万台
17.1
17.8
17.9
n.a.
18.2
18.2
17.3
17.6
17.5
n.a.
1966年Q1=100
94.2
90.7
91.3
n.a.
90.0
91.3
92.6
92.0
91.7
90.0
1985年=100
96.2
98.3
96.0
n.a.
99.1
92.6
96.3
97.8
92.2
n.a.
住宅着工件数
年率、千戸
1,158
1,158
1,135
n.a.
1,071
1,176
1,159
1,120
1,178
n.a.
住宅着工許可件数
年率、千戸
1,242
1,132
1,216
n.a.
1,161
1,282
1,204
1,204
1,167
n.a.
新築住宅販売件数
年率、千戸
497
488
510
n.a.
480
511
540
502
512
n.a.
中古住宅販売件数
年率、千戸
5,280
5,403
5,200
n.a.
5,290
4,860
5,450
5,470
5,080
n.a.
DI
57
61
62
59
65
62
60
61
58
58
週当たり労働時間
コア小売
新車自動車販売台数
ミシガン大消費者信頼感
カンファレンスボード消費者信頼感
住宅市場
2015/10 2015/11 2015/12 2015/1
前期差、千人
非農業部門雇用者数
失業率
個人消費
16/3
住宅着工件数
住宅市場指数(右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
雇用環境
15/9
NAHB住宅市場指数
n.a.
(資料)米国労働省、米国商務省、Autodata、ミシガン大、カンファレンスボード、NAR、NAHB よりみずほ総合研究所作成
6
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
4.企業・対外・政府部門:設備投資、輸出は低調
設備投資については、建設投資が概ね横ばいで、機械関連投資は低迷して
いる。
建設投資は概ね横ばい
建設投資(除く住宅)は横ばい圏で推移している。工場建設や電力施設を
理由に、2 月は 3 カ月ぶりに増加した(図表 14)
。
機械関連投資は低迷
機械関連投資は低迷している。機械関連の設備投資動向を示す資本財(国
防・航空機を除く資本財)の 1 月の出荷額は小幅ながら減少し、昨年秋頃か
らの減少傾向が続いた(図表 15)
。一方、先行きをみる上で重要な受注額は、
1 月に大幅に増加し、前月の急減分を取り戻す形となった。直近 2 カ月の受注
額の増減は、鉱業・石油・ガス機械による影響が大きい。このほか 2 月には、
発電機、金属加工機械、建設機械等の増加が全体の押し上げに寄与した。
企業の投資マインドは
安定
企業の設備投資マインドは安定している。3 月の地区連銀・製造業調査によ
る 6 カ月先の設備投資判断DIをみると、ニューヨーク、フィラデルフィア
とも上昇した。
輸入は概ね横ばい、輸
出は低調
1 月の実質輸出入はともに減少したが、輸出の減少幅が輸入を上回った(図
表 16)
。1 月の実質輸入は、食料品と自動車が増加する一方、資本財の大幅減
が響いた。実質輸入はこのところ増減を繰り返しており、均してみれば横ば
い圏の推移となっている。一方、実質輸出は、自動車を除き、幅広い品目が
減少した。また、2 月の輸出受注指数(製造業ISM指数の補助項目)は一段
と低下しており、ドル高、海外経済の減速が引き続き米輸出を抑制するとみ
られる。
連邦財政赤字は前年度
をやや下回る規模
2016 会計年度における 2 月の連邦財政収支は 1,926 億ドルの赤字となった。
歳入面(前年比+21.3%)では個人所得税の増加が全体を押し上げる一方で、
歳出面(同+9.1%)では利払い費、低所得者向けや医療関連支出の増加が全
体を押し上げた。また、2 月までの累計でみると、赤字額(2015 年 10~2016
年 2 月)は 3,530 億ドルとなり、前年度(3,866 億ドル)をやや下回る規模と
なった(図表 17)
。
7
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
図表 14 非住宅建設投資
図表 15 資本財出荷・新規受注
(年率、億ドル)
(年率、億ドル)
4200
720
4000
700
3800
680
3600
660
3400
640
3200
15/1
15/7
15/2
16/1
(年/月)
15/5
15/8
15/11
16/2
(年/月)
コア資本財受注
コア資本財出荷
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
図表 16 実質財輸出・輸入
図表 17 累積連邦財政収支
(億ドル)
0
(2013年平均=100)
114
112
110
108
106
104
102
100
98
15/1
▲1,000
▲2,000
▲3,000
▲4,000
▲5,000
▲6,000
15/7
10
16/1
(年/月)
輸出
12
2
4
6
8
(月)
2015年度
輸入
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
2016年度
(資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成
図表 18 企業・対外・政府部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
企業業況
設備投資
ニューヨーク(NY)連銀 現状判断
0.2
▲ 8.2
フィラデルフィア(PHL)連銀 現状判断
9.0
0.2
2.0
▲ 11.4 ▲ 10.1
▲ 5.9
2016/2
▲ 6.2 ▲ 19.4 ▲ 16.6
▲ 5.7 ▲ 10.2
2016/3
0.6
▲ 3.5
▲ 2.8
12.4
n.a.
コア資本財 受注金額
前期比、%
▲ 1.4
1.9
▲ 1.4
n.a.
0.6
▲ 0.9
▲ 3.5
3.4
n.a.
前期比、%
0.1
0.6
▲ 1.3
n.a.
▲ 1.0
▲ 1.2
0.6
▲ 0.4
n.a.
n.a.
前期比、%
9.3
0.5
0.1
n.a.
1.3
▲ 0.9
▲ 1.5
1.0
n.a.
n.a.
NY連銀 6か月先設備投資判断
17.2
16.6
13.7
14.6
12.3
12.7
16.2
15.0
12.9
15.8
PHL連銀 6か月先設備投資判断
14.1
17.5
14.0
8.4
6.8
24.6
10.7
9.4
2.5
13.3
貿易収支
10億ドル
n.a.
▲ 45
▲ 44
▲ 45
▲ 46
n.a.
n.a.
輸出
10億ドル
562
555
544
n.a.
183
181
180
176
n.a.
n.a.
▲ 133 ▲ 139 ▲ 134
10億ドル
695
694
678
n.a.
229
224
225
222
n.a.
n.a.
実質財輸出
2013年=100
103
104
102
n.a.
103
102
102
100
n.a.
n.a.
実質財輸入
2013年=100
109
110
109
n.a.
110
108
109
109
n.a.
n.a.
123 ▲ 123 ▲ 216
n.a.
▲ 137
▲ 65
▲ 14
輸入
財政
▲ 7.3
2015/10 2015/11 2015/12 2015/1
コア資本財 出荷金額
非住宅建設支出
輸出入
▲ 9.2 ▲ 11.8
55 ▲ 193
n.a.
財政収支
10億ドル
歳入
10億ドル
1,027
802
766
n.a.
211
205
350
314
169
n.a.
歳出
10億ドル
904
925
981
n.a.
348
270
364
258
362
n.a.
(資料)ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、米国商務省、米国財務省よりみずほ総合研究所作成
8
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
5.物価動向:コア・インフレ率は上向きの動き
輸入物価は下落率が縮
小
2 月の輸入物価指数は前年比▲6.1%(1 月同▲6.3%)と、下落率が小幅に
縮小した(図表 19)
。輸入物価は原油安・ドル高を背景に大きく低下している
が、前年同月に大幅に低下していた関係で、前年比ベースの低下圧力が弱ま
った。最終財(自動車、消費財、資本財)についても、下落率が縮小した。
国内企業部門の物価は
マイナス圏を脱する
2 月の最終需要・生産者物価指数(PPI)は前年比 0.0%(1 月同
▲0.2%)と、2015 年 1 月以来初めてマイナス圏を脱した(図表 20)
。エネル
ギーを含む財物価の上昇率はマイナス幅が拡大する一方で(1 月同▲2.5%→
2 月同▲2.7%)
、サービス物価の上昇率は、卸売業者や小売業者等のマージン
(利鞘)が高まったことを主因に加速した(1 月同+0.9%→2 月同+1.5%)
。
PCEデフレーターは
リテール部門では、インフレ率に上向きの動きがみられる。
上向き
1 月の個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率は前年比+1.3%(前月
同+0.7%)
、コアPCEデフレーター(食品・エネルギーを除く)上昇率は
同+1.7%(前月同+1.5%)と、いずれも加速した(図表 21)
。財物価の上昇
率はマイナス幅が縮小したほか、サービス物価の上昇率は家賃や医療費を中
心に高まった。コアの 3 カ月前比年率上昇率をみると、1 月は同+2.0%と、
昨年 4 月(+2.0%)以来の高さとなった。基調的な物価上昇率も加速した。
過去 1 年を振り返ると、ダラス連銀刈込平均PCEデフレーター上昇率は同
+1.6%から同+1.7%の狭いレンジで推移していたが、2 月は同+1.9%とレ
ンジを上抜けする形となった。
2 月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比+1.0%(1 月同+1.4%)
と鈍化した。一方、コアCPI上昇率は同+2.3%(1 月同+2.2%)と加速し
た。コアCPIの 3 カ月前比年率上昇率は+3.0%と、昨年夏頃を底に増勢が
高まっている。クリーブランド連銀の刈込平均CPI上昇率は前年比+2.0%
と前月から変わらなかった。
インフレ期待は低いが、
直近は持ち直し
市場取引ベースのインフレ期待は低い状態にあるが、3 月は持ち直した(図
表 22)
。サーベイ調査に基づくインフレ期待は 2 月に大幅に低下し、1979 年
の調査開始以降最も低い上昇率となった後、3 月は上向いた。
以上
9
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
図表 19
輸入物価
(前年比、%)
5
図表 20
(前年比、%)
0.5
(前年比、%)
0.0
2.0
▲ 0.5
1.0
▲ 1.0
0.0
▲ 1.5
▲1.0
▲ 2.0
16/2
(年/月)
▲2.0
0
3.0
▲5
▲ 10
▲ 15
15/2
15/8
輸入物価
図表 21
15/2
15/8
16/2
(年/月)
総合
うち最終財(右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
最終需要PPI
コア
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
PCEデフレーター
図表 22
(前年比、%)
2.0
期待インフレ率
(%)
2.8
1.5
2.3
1.0
1.8
0.5
1.3
0.0
15/2
15/8
総合
最終財
生産者物価
消費者物価
ミシガン大 期待インフレ率(5~10年先) (年/月)
(資料)ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
物価の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
2015/10 2015/11 2015/12 2015/1
▲ 10.0 ▲ 11.2
2016/2
2016/3
▲ 9.5
n.a.
▲ 10.7
▲ 9.5
▲ 8.3
▲ 6.3
▲ 6.1
n.a.
n.a.
▲ 1.6
▲ 1.6
▲ 1.7
▲ 1.2
▲ 1.0
n.a.
前年比、%
▲ 1.4
▲ 1.6
▲ 1.6
最終需要 生産者物価指数
前年比、%
▲ 0.8
▲ 0.9
▲ 1.2
n.a.
▲ 1.4
▲ 1.1
▲ 1.0
▲ 0.2
0.0
n.a.
コア生産者物価指数
前年比、%
1.0
0.7
0.3
n.a.
0.2
0.5
0.3
0.6
1.2
n.a.
消費者物価指数
前年比、%
▲ 0.0
0.1
0.5
n.a.
0.2
0.5
0.7
1.4
1.0
n.a.
コア消費者物価指数
前年比、%
1.8
1.8
2.0
n.a.
1.9
2.0
2.1
2.2
2.3
n.a.
PCEデフレーター
前年比、%
0.3
0.3
0.5
n.a.
0.2
0.5
0.7
1.3
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.1
n.a.
0.1
0.1
▲ 0.1
0.1
n.a.
n.a.
前年比、%
1.3
1.3
1.4
n.a.
1.3
1.4
1.5
1.7
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.3
n.a.
0.1
0.1
0.1
0.3
n.a.
n.a.
前年比、%
1.7
1.7
1.7
n.a.
1.7
1.7
1.7
1.9
n.a.
n.a.
%
2.7
2.7
2.6
2.6
2.5
2.6
2.6
2.7
2.5
2.7
期末値、%
2.0
1.9
1.8
1.5
1.7
1.8
1.7
1.6
1.4
1.5
コアPCEデフレーター
刈込平均 PCEデフレーター
インフレ期待
前年比、%
16/3
BEI(5年先5年)
図表 23
輸入物価指数
15/9
コア
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
輸入物価
15/3
16/2
(年/月)
ミシガン大 期待インフレ率
BEI(5年先5年)
(資料)米国商務省、米国労働省、ダラス連銀、ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
10
みずほ米国経済情報(2016 年 3 月号)
2016年 3月 2 4 日
発行
欧米調査部主席エコノミスト 小野 亮
03-3591-1219 makoto. ono@mizuh o-ri.co.j p
欧米調査部主任エコノミスト 風間 春香
03-3591-1418 haruka. kazama@mi zuho-ri.c o.jp
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