2 電力、力率、コンデンサ、リアクトル

Ⅶ ちょっとした役立つ知識・データ
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電 力、 力 率、 進 相 コ ン デ ン サ
直列リアクトル、
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高 調 波
VA(ボルトアンペア)とW(ワット)の違い
WやkWは、よく耳にする電力の単位なのですが、それとVAやkVAという言葉を耳にしたことが
有ると思います。これは電気機器の電気の入り口(入力)と出口(出力)の話なのです。モーター
(電動機)で何kW というのは出力のことです。簡単に言えば、W(またはkW)は出力を表します。
私達が日常使っている交流の電気は、仕事に役立つ電力と役立たない電力で構成されています。
前者を「有効電力( P [W:ワット])」といい、後者を「無効電力(Q [Var:バール] )」といいます。
そして、仕事に役立つ電力(出力)を取り出すために、無効電力の分も含めて入力をしなければ
なりません。
この二つの電力を合わせた(ベクトル和)電力を「皮相電力(S〔VA:ボルトアンペア〕)」といいます。
なぜこのような現象になるかといいますと、電気製品はコイルできているものが多く(電動機や蛍光
灯の安定器等)、このコイルが電流を遅らせる働きをして、機器に加えた電圧と電流にわずかな
時間差(位相差)が生じ、電圧と電流を掛けたもの、いわゆるV・Aとして正味の仕事(電力)として
効力が出なく、出力が少なくなってしまいます。この少なくなる率を「力率(COSθ:コサインシータ)」
といい、皮相電力と有効電力と力率の関係は
P=S・(COSθ)
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〔W:ワット〕 となります。
有効電力、皮相電力とは
見かけ上の電力(皮相電力)と実際に使用できる電力(有効電力)は密接な関係にあります。
皮相電力を一定とすると、位相がずれる(=力率が悪化する)ことで実際に使用できる電力
(有効電力)は減り、位相のずれが少ない(=力率が良い)程実際に使用できる電力(有効電力)
が増えます。
つまり、皮相電力と有効電力の位相のずれが大きいほど、その機器は力率(≒効率)が悪いと
言うことです。
交流機器の電力仕様を表現するのに〔VA〕という単位が使われますが、有効電力(=〔W〕)
と区別し、単位で違いが分かるようになっています。
また有効電力のことを消費電力と表現する場合がありますが同じ意味です。
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力率の意味
交流回路において、周波数に影響を受ける誘導性リアクタンス及び容量性リアクタンスが
ありそれにより電流が遅れたり、進んだりする現象が発生する。
◎
誘導性リアクタンスは主としてコイル製品で(電動機、蛍光灯安定器、誘導加熱器等)
があり電流を遅らせる現象をする。
◎
容量性リアクタンスはほとんどがコンデンサーであり電流を進める役目がある。
(誘導性リアクタンスと正反対の性質)
負荷全体として大半が誘導性リアクタンスであるため、配電線回路では電流が遅れる。
その結果、電力を供給しても100%の電力消費が出来ない。あるいは、100%の
消費電力を期待するためには100%以上の電力を供給しなければならない。
ちなみに、インバータ機器の力率は 約100% とみなされています。
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進相コンデンサと直列リアクトル
1)一般の負荷回路は、電動機や蛍光灯安定器のようなコイル状のもの(誘導性リアクタンス)
が多いため低圧配電線及び高圧配電線において遅れ電流となり、送電側から見た力率は
遅れ力率となって送電(配電)効率が悪化する。
2)これを解消・緩和するため、誘導性リアクタンスと正反対の現象を示す、いわゆる進み電流
を発生するコンデンサを配電線回路に並列に接続する。
それにより、電源から見た総合力率は改善される。
3)一方、コンデンサの特性は、その容量性リアクタンスXc=
1
2πfc
で表わされるように、
その回路の周波数fに反比例して、コンデンサ自身のインピーダンスが影響を受ける。
近年、インパーター装置を持つ照明器具、電動機、直流変換装置等多種にわたり、いわゆる
高周波発生原が多くなり、その高周波発生装置から発生する多次高調波が電源回路に侵入し
上記 3)式で示したコンデンサの容量性リアクタンスXcが小さくなり、定格容量の
コンデンサに過負荷電流が流入し過熱・損傷・機器内部短絡事故を発生させる。
4)このコンデンサのトラブルによる派生事故を防止するため、高圧進相コンデンサの反対の
性質がある、コイルいわゆる直列リアクトルを接続し、高調波障害を抑制・防止する。
5)直列リアクトルは、コンデンサの進み電流の様な突入進み電流や外部からノイズ(高圧機器
の開閉サージ)からも抑制効果がある。
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高
調
波
近年配電系統において、高調波の発生により商用周波数(50,60Hz)の波形がひずみ、
色々な障害が出ている。その発生源(発生原因)、影響を受けやすい電気機器、対策等を
述べる。
配電系統で影響を受けやすい高調波は、低次奇数高調波つまり基本波に対して第3,第5,第7
程度である。
(例:第3高調波とは基本波60Hzにたいして、三倍の180HZの周波数である。)
1)発生源
①
電力変換装置:インバーター(動力機器、蛍光灯)、UPS(無停電電源装置)、
サイリスター等
②
交流アーク炉、OA機器、家庭電化製品(ビデオ、テレビ、エアコン等)
2)被害機器
① 発電機、電動機、コンデンサの過熱・焼損、蛍光灯の過電流による加熱、焼損。
②
③
過大電流によるブレーカの誤動作。
保護継電器特性の変化による誤動作。
③
情報関連機器に侵入する雑音(ノイズ)によるシステムダウン、誤動作。
3)対
策
①
発生抑制策
:交流入力のパルス数を多くとる電源装置を設置する。
②
低減策
:L-Cフィルタ、アクティブフィルタの取付け。
低圧回路にコンデンサを入れ吸収する。
③
:高圧コンデンサ焼損防止のため、直列リアクトルを設置する。
外部流出の抑制
:電源変圧器を多相化する。(例:3相⇒6相⇒12相のΔ結線)し
変圧器内部のデルタ回路で高調波を吸収・消耗する。
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