平成27 年度 長崎市自然環境調査報告書:昆虫類

平成 27 年度 長崎市自然環境調査報告書:昆虫類
長崎市自然環境調査委員
田 中
清
≪平成 27 年 4 月~平成 28 年 2 月≫
1.昆虫の観察に適した地域、貴重種、外来種
新たに発行される自然環境ガイドブックに現状が示してあるので参考にして下さい。特に貴重種
については、記録がある地域を調査しても、まったく確認できなかった地点がけっこうありました。
たとえば、ムカシトンボのある生息地では、樹木が生い茂り、生息していた水域が暗くなりヤツデ
などの低木や蘚苔類が消滅して産卵場所が失われていました。ヤゴの採集も試みましたが発見でき
ませんでした。また、クロツバメシジミのある生息地では、護岸工事、遊歩道の整備で岩場と食草
のタイトゴメが消失したため、幼・成虫を確認できませんでした。
このように、昆虫を守るためには、人間がある程度手を入れて環境を維持すること、昆虫の生息
環境に配慮した開発も必要だと思いました。
以下に、市内ではあまり見られなくなった昆虫をいくつか紹介します。
チョウトンボ(EN)
オニヤンマ(VU)
コカブトムシ(EN)
モンキタマムシ(EN)
アオマダラタマムシ(VU)
コムラサキ(VU)
2.長崎市の昆虫について
文献に記録がある昆虫のうち今年は約 900 種を確認できました。そして、調査の中で新たに確認
できた昆虫もありました。スジグロシロチョウは旧市内では記録がありませんでしたが、数ヵ所で
確認されました。今後の動向を注視したいと思います。さらに、新たに生息が確認されたのがスジ
ベニボタルです。これまで長崎県に生息するホタル科昆虫は 9 種とされていましたが、これで 10
種になりました。このホタルはミズゴケが生える湿地に生活しています。
スジグロシロチョウ
スジグロシロチョウ(♂)
モンシロチョウ
スジベニボタル(左:♂
右:♀)
3.今年は蚊焼沖にある無人島の昆虫を調査しました。
黒島と野島の昆虫は本土と同じです。それでも、黒島では、岩礁からなる小さい島ながら、タイ
トゴメで貴重種のクロツバメシジミが確認されました。そして、黒島より大きい野島は対岸からの
距離が短く、チョウやハチなどの往来が確認されました。また、野島には人の手が入っていない砂
浜があり、海浜性植物と海浜性のゴミムシやゾウムシが確認されました。
以下に、島内で見られた昆虫のいくつかを紹介します。
ナガサキアゲハ
クロツバメシジミ(CR)
キチョウ
クロウリハムシ
カネタタキ
オンブバッタ
オオハナアブ
クマバチ