地域在住高齢者における余暇活動と転倒要因との関連 ~転倒予防運動

地域在住高齢者における余暇活動と転倒要因との関連
~転倒予防運動であるスクエアステップに着目して~
中村汐里(201111951,健康増進学)
指導教員:大藏 倫博,田中 喜代次
キーワード:転倒,余暇活動,体力
【目的】
転倒経験者は非転倒経験者に比べ開眼片脚立
体力が高く,運動を継続している者におい
ち以外のすべての項目で有意に劣っていた.
ても転倒は発生している.すなわち,低体力
このことから,日常的に身体活動量が少なく
や運動不足だけが原因で転倒しているわけ
体力が低下してしまっている者に対しては,
ではなく,他にも何らかの転倒原因があると
運動介入がもっとも有効な転倒予防の介入手
考えられる.そこで本研究は,転倒予防運動
であるスクエアステップを 1 年半以上実践し
ている者と,一般の地域在住高齢者を対象と
して,余暇活動量別に転倒経験者の特徴の違
いを明らかにすることを目的とした.
段であるといえる.一方,サークルに参加し
【方法】
法が有効かもしれない.
茨城県笠間市の 65 歳以上の地域在住女性
高齢者 430 人(うちスクエアステップサー
クル参加者 125 人)を対象とした.質問紙
を用いて過去 1 年間の転倒経験,疾患などの
既往歴,服薬状況について調査した. 体力測
定項目として,握力,5 回椅子立ち上がり,
5 m 通常 歩行速度,Timed up and go test
(TUG),開眼片足立ち を実施した.認知機
能はファイブ・コグテストを用いて評価した.
サークルに参加していない分析対象者は,身
体 活 動 量 ( Physical Activity Scale for
Elderly)を用い,余暇活動量の中央値によっ
てグループを分けた.
統計解析には,対応のない t 検定とχ2 検定
を用いた.有意水準は,危険率 5%を検定回数
の 3 で除したボンフェローニ調整を行い,危
険率 1.67%未満とした.
【結果と考察】
転倒経験者は,サークル参加者 125 人中 14
人(11.2%),余暇活動量の多い者 126 人中 18
人(14.3%),余暇活動量の少ない者 179 人中
42 人(23.5%)であり,サークル参加者は余
暇活動量の少ない者に比べて転倒経験者の割
合が有意に低かった.
各グループの転倒経験者と非転倒経験者の
体力を比較したところ,余暇活動量の少ない
ている転倒経験者は,非転倒経験者と比べて
TUG と歩行速度が優れていた.そのため,運
動実践者に対しては運動継続を推奨すると共
に,転倒に対する安全知識の向上を試みる方
認知機能に関しては,サークルに参加して
いる転倒経験者は非転倒経験者と比べて有位
に高かった.それ以外にグループ間で有意差
の認められた項目は無かった.
【結論】
本研究において,余暇活動量の少ない転倒経
験者は非転倒経験者に比べて体力が低かった.
それに対し,スクエアステップを継続してい
る転倒経験者は体力と認知機能が高かった.
余暇活動量の少ない者については従来どおり
運動介入などによる体力の維持・向上が転倒
予防に有効であるが,スクエアステップを継
続している者や活動的な者については転倒に
ついての知識や意識を高めることが有効であ
るかもしれない.
10
(
秒)
*
9
*
8
7
6
5
4
6.6
6.8
余暇活動量の多い
転倒経験者
(
N=18)
余暇活動量の少ない
転倒経験者
(
N=42)
5.6
サークル参加の
転倒経験者
(
N=14)
*:P<0.0167
図:各群のTUGの測定結果
6.1
非転倒経験者
(
N=245)