Research Report 2016年12月 タカナシ乳業株式会社 〒241-0023 神奈川県横浜市旭区本宿町5番地 TEL:045(361)1141(代) 高齢者に対するアミノ酸含有ゼリーの効果について 研究成果2題を発表!! 2016 年 11 月 4~5 日 第 4 回日本介護福祉・健康づくり学会にて発表 タカナシ乳業株式会社(本社:神奈川県横浜市 代表取締役社長:髙梨信芳)は、アミノ酸研究の第一人 者である大谷勝博士と、医療法人社団三聖会三聖病院および明日佳グループとの共同研究によって、アミ ノ酸含有ゼリー摂取が高齢者の栄養状態や運動機能の改善に役立つ可能性を明らかにしました。これら の研究成果は、第 4 回日本介護福祉・健康づくり学会(11 月 4~5 日)で発表しております。 研究成果のまとめ 1. アミノ酸含有ゼリーの摂取は、低栄養の寝たきり高齢者において、体重の維持や増加に効果があること が示唆されました。 2. アミノ酸含有ゼリーの摂取は、リハビリテーションに通う高齢者において、全身筋肉量に変化を及ぼし、運 動機能の改善に役立つ可能性が示唆されました。 現在、日本は世界でも類を見ない超高齢化社会に突入しており、高齢者の健康を取り巻く様々な問題に 直面しています。例えば、高齢者では食欲低下などによって栄養摂取の状態が悪くなり、体重や筋肉量が 減少し、低栄養や筋力低下を招くサルコペニアになるリスクが高くなります。特に、寝たきり高齢者の多くは タンパク質・エネルギー欠乏(protein energy malnutrition:PEM)と呼ばれる低栄養状態であると言われて います。PEM の患者では、病状の回復が遅れ、入院日数の増加、肺炎感染の高リスク化等の様々な弊害 が知られています。また、サルコペニアは高齢期、特に後期高齢者において生活機能の低下や転倒・骨折 に密接に関係しています。従って、低栄養やサルコペニアの予防・改善は、高齢者医療・介護における重要 な課題となっています。 近年では、高齢者の健康状態改善に対するアミノ酸摂取の有効性が注目されています。特に、ロイシン などの分岐鎖アミノ酸(BCAA) ※ 1 は筋肉の合成を促進するため、既に低栄養の改善目的で使用されていま す。従いまして、正しい食事指導のなかで適量のアミノ酸を摂取することは、高齢者における効果的な栄養 状態の改善が期待されます。 今回、弊社では低栄養の寝たきり高齢者および通所リハビリテーションに通う高齢者を対象に、アミノ酸 含有ゼリーを用いた 2 つの臨床試験を実施しました。試験に用いたアミノ酸含有ゼリーは高齢者の嗜好性 が高いコーヒー味としました。但し、カフェインによる影響を受けないようにカフェインレスとしました。そして、 このアミノ酸含有ゼリーの摂取が要介護高齢者の栄養状態や筋肉量、運動機能に及ぼす影響を調査しま した。 ※1 分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acids,BCAA):分子構造に分岐があるアミノ酸で、タンパク質を構成するアミノ 酸では、ロイシン、イソロイシンおよびバリンの 3 種の必須アミノ酸がこれにあたる。 (試験 1) 低栄養(血清アルブミン値 3.8 g/dL 以下)の寝たきり高齢者 15 名 ※ 2 (平均年齢 88.4 歳;PEG ※ 3 患者 5 名を含む)は、試験食であるアミノ酸含有ゼリー(1 個 73 g 当たり BCAA+アスパラギン酸を 700 mg を含む) を 1 日 2 個、2 ヶ月間摂取し、試験前後の体重を比較しました。その結果、入院高齢者全体では試験前後で 体重が維持されていました(図 1A)。また、PEG 患者(5 名)のみを抽出して解析したところ、平均体重が有 意に増加していました(図 1B)。 一般的に高齢者では体重減少が問題となっており、特に入院している場合は身体活動の低下から筋肉 が失われ、体重が減少しやすいと考えられています。今回の試験では、アミノ酸含有ゼリーの摂取が高齢者 の栄養状態を改善し、体重の減少を抑制し、さらには増加する可能性が示唆されました。 【図1】 (A) 入院高齢者全体 60 (B) 維持 P < 0.05 P < 0.05 60 50 体 重 Kg PEG患者 50 40 体 重 Kg 30 20 10 40 30 増加 20 10 0 0 1 2 ヶ月 0 0 1 2 ヶ月 図 1. アミノ酸含有ゼリーを摂取した寝たきり高齢者の体重の変化(2 ヶ月間) ※2 被験者 16 名のうち体重測定が困難な患者 1 名を除き、15 名にて解析した。 ※3 PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy):経皮内視鏡的胃ろう造設術の略。胃ろうによって直接胃に栄養を入 れることが可能となります。 (試験2) 通所リハビリセンターに通う被験者 15 名(平均年齢 76.3 歳)を年齢、性別、歩行能力に有意差 のない 2 群に分け、アミノ酸含有ゼリー(コーヒー味;1 個 73 g 当たり BCAA+アスパラギン酸を 700 mg を含む)、もしくは非アミノ酸含有ゼリー(リンゴ味;1 個 73 g)を 1 日 2 個、4 週間摂取し、 リハビリテーションを通常通り実施しました。そして、身体組成測定および TUG テスト ※ 4 を実施 しました。その結果、アミノ酸含有ゼリーを摂取した群(アミノ酸摂取群:7 名)では、非アミノ 酸含有ゼリーを摂取した群(対照群:8 名)と比較して、全身筋肉量の平均変化量が増加する傾向 (P = 0.068)がありましたが、TUG テストの変化量に有意な差はありませんでした(図2)。 また、全身筋肉変化量と TUG テスト変化量の相関を解析したところ、試験前後の全身筋肉変化 量が増加すると、TUGテストで計測する時間が有意に短縮することで、(P < 0.05)、運動機能が 改善されることが示されました(図3)。つまり、今回の試験において、アミノ酸含有ゼリーの摂 取が試験前後で全身筋肉量を増加させることで、運動機能を改善する可能性が示唆されました。 ※4 TUG テスト(Time Up and Go テスト): 歩行能力や動的バランス、敏捷性などを総合して機能的移動能力を評価する テスト方法。椅子に座った状態から起立し、歩行して 3m 先のコーンを回って元の椅子に戻って座るまでの時間を測定 する。 【図2】 (A) 全身筋肉変化量 (kg) (B) TUG変化量 (秒) P = 0.068 n.s 1.5 TUG変化量(秒) 全身筋肉変化量(kg) 2.0 1.0 0.5 0 -0.5 -1.0 -1.5 アミノ酸 非アミノ酸 5 4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4 -5 アミノ酸 非アミノ酸 図2. 全身筋肉量および TUG の変化量の比較(4 週間) (n.s 有意差なし) 【図3】 図3. 全身筋肉変化量と TUG 変化量の相関 今回、2つの臨床試験において、高齢者が 1 日に 1,400mg のアミノ酸を含むゼリーを摂取した際の効果 を検証いたしました。その結果、低栄養の寝たきり高齢者においては、体重の維持や増加が観察され、栄 養状態の改善に役立つ可能性が示唆されました。通所リハビリテーションの高齢者においては、前述と同 量のアミノ酸ゼリー摂取が、全身筋肉量に影響を及ぼし、運動機能を改善させることが示唆されました。ま た、両試験において試験食のアミノ酸含有ゼリーが美味しいと好評でした。これらの結果は、BCAA とアスパ ラギン酸を含むアミノ酸ゼリーの摂取が、高齢者の健康状態の維持や改善に役立つ可能性があると考えら れます。 【お問い合わせ先】 タカナシ乳業株式会社 法務・広報部 担当:長井 〒240-0005 神奈川県横浜市保土ヶ谷区神戸町 134 横浜ビジネスパーク テクニカルセンター1F TEL:045(338)1828 FAX:045(338)1845
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