NH2CH2CO・中間体を経由する低温ラジカル反応

NH2CH2CO・中間体を経由する低温ラジカル反応
筑波大学 物理学類4年 北澤優也

始まりはマーチソン隕石中のアミノ酸
分子雲
観測されている分子の一例
H2, CO, NH3, CS, H2O, CH4
HCN, CH3CN, HC5N
H2CO, CH2NH, CH3OH
NH2CH2CN(アミノアセトニトリル)
アミノ酸
Garrod,R.T.(2013)の論文
「A THREE PHASE CHEMICAL MODEL OF HOT CORES : THE
FORMATION OF GLYCINE 」
でGlycine生成機構(T〜40K,55K,75-90K)が提案された。

Hot Core
分子雲コア
10
Glycine
40
55
75
90
120
200
Glycine
Glycine
昇華
生成ほぼ終了
T[K]


最も単純なアミノ酸であるGlycineの生成過程を調べ
る。
T~40KでのGlycine生成機構を検討する。
◦ Garrodによって提案されたGlycine生成経路(T~40K)につ
いて、エネルギー状態や最安定構造を求める。
 Glycine生成過程 (T~40K)
•
•
ダストを3-phaseモデル(気相+ice表面+bulk ice mantle)で仮定
ダスト表面でのラジカル反応(気相反応は効かない)
① CH2NH+H・+H2CO+3OH・
気相

② ・CH2NH2+H2CO+3OH・

③ ・CH2NH2+HCO・+2OH・+H2O

④ NH2CH2CHO+2OH・+H2O

⑤ NH2CH2CO・+OH・+2H2O

⑥ NH2CH2COOH+2H2O
Glycine
Ice表面
Bulk
ice
mantle

分子軌道を第一原理的に求めることで、分子の正確なエネ
ルギーや構造を予測する。
◦ Software : Gaussian09
 構造最適化計算 (UB3LYP/6-31G(d))

密度汎関数理論
◦ Kohn-Sham equation
1
− ∆−
2
𝑁𝑎𝑡𝑜𝑚
𝐴
𝑁
𝑍𝐴
+
𝑟 − 𝑅𝐴
𝜌 𝑟′
𝑑𝑟 ′ + 𝜇𝑋𝐶 𝜙𝑖 𝑟 = 𝜖𝑖 𝜙𝑖 (𝑟)
′
𝑟−𝑟
𝑒𝑙𝑒𝑐
𝜌 𝑟 = 𝑖=1
𝜙𝑖 𝑟 2 : 電子密度
𝑍𝐴 , 𝑅𝐴 :原子核Aの電荷、座標
𝜙𝑖 𝑟 : 分子軌道 𝜇𝑋𝐶 :交換相関ポテンシャル
𝜖𝑖 :Kohn-Sham軌道エネルギー
CH2NH + H・ + H2CO + 3OH・ → NH2CH2COOH(Glycine) + 2H2O
50
0
Energy [kcal/mol]
-50
①
0.000
-100
-150
②
-123.323
-200
-250
-300
-350
-400
③
-166.386
-235.666
④
-260.548
⑤
-355.110
⑥

①→②の反応と⑤→⑥の反応がエネルギー差が大き
く、反応が起こりやすい。
◦ ①→②:CH2NH+H・→・CH2NH2 (-123.323kcal/mol)
◦ ⑤→⑥:NH2CH2CO・+OH・→NH2CH2COOH (-94.562kcal/mol)

始状態から終状態までのエネルギー差が
355kcal/mol と大きいため反応障壁が低くなると考
えられる。この反応過程を使えば低温でもGlycineが
生成できる。

ただし、T=55Kの場合やT=75~90Kの場合に比べ
て反応にはH・と多くのOH・が必要となる。
◦ T=40K
CH2NH+H・+H2CO+3OH・→Glycine+2H2O
◦ T=55K
NH2・+OH・+CH3COOH+NH3→Glycine+H2O+NH3
◦ T=75~90K
HCOOH+CH3NH2+2OH・→Glycine+2H2O

T~40KでのGlycine生成は355kcal/mol(15.4eV)の
発熱反応であることがわかった。

すべての過程で反応物より生成物のほうがエネルギーが
低くなった。

H・と多くのOH・が存在すれば、この反応経路によって
Glycineは生成できると考えられる。

今後は遷移状態の計算をし, T~40KでのGlycine生成機
構を明らかにしたい。