食物アレルギーとは、食物によって引き起こされる免疫反応を介して、 体に不利益な症状が起こることを言います。 「免疫」とは、私たちの体の中に細菌やウイルスなどの病原体が入って きたときに、それらを除いて体を守るために備わっている働きです。その 免疫が、食べ物に過剰に反応してしまうことがあり、全人口の1~2%の 人が、何らかの食物アレルギーを持っていると考えられています。 そこで、今回は食物アレルギーの対応についてご紹介します。 食物アレルギーがある場合、特定のアレルゲン物質を食べないよう除 去する必要があります。しかし特定のアレルゲン物質が形を変えて、様々 な加工食品に含まれているので、気がつかずに食べてしまう可能性があ ります。うっかり口に入れてしまわないよう、表示をしっかり確認しましょ う。 現在、患者数が多く重篤度が高い、以下7品目が特定原材料として表 示することが義務付けられています。その他、以下 20 品目の表示が勧 められています。 ※食品中に特定原材料が10ppm以上含まれている場合表示 必ず表示が必要なもの 〈義務〉 7 品目 卵 乳 小麦 そば 落花生 えび かに 表示が勧められているもの 〈推奨〉 18 品目+2 品目 あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、 さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、 ゼラチン、バナナ、カシューナッツ、ゴマ ※カシューナッツとゴマの2品目が新たに加えられることになった(H25.9.20) ただし、アレルギー表示が法律の対象外で、食品中に特定原材料が含ま れていても、表示の記載がないものもあります。 アレルギー表示が法律の対象外のもの ・外食 ・容器包装されていない食品(量り売りのお惣菜や店頭売りのパン・ケーキ等) ・容器包装の表示可能面積が30cm2以下のもの 以下の食品にアレルギーがある場合の、除去食品・代替食品等 【鶏卵アレルギー】 〈除去食品〉 ・鶏卵 ・鶏卵を含む加工食品 マヨネーズ、洋菓子(クッキー、アイス、ケーキ、プリン)、練り製品(かまぼ こ、はんぺん、ちくわ)、肉類加工品(ハム、ウインナー)、エッグと表示され た加工食品、オムレツ、オムライス、かに玉、親子丼 etc ・その他の卵(魚卵含む) ※鶏肉はアレルゲンとなる場合もある 〈紛らわしいが食べても大丈夫な表示〉 ・「卵殻カルシウム(焼成・未焼成)」 〈代替食品〉 ・肉料理のつなぎ・・・片栗粉、すりおろしたジャガイモやレンコン ・揚げ物の衣・・・・・・・小麦粉や片栗粉を水で溶いてからめる ・洋菓子の材料・・・・ゼラチンや寒天、重曹やベーキングパウダー ・彩りとして・・・・・・・・コーン、黄パプリカ、カボチャ、ターメリック、サフラン 〈卵を除去することにより不足しがちな栄養素〉 ⇒ タンパク質 卵(M サイズ)1 個のタンパク質 : 約6g ↓ 相当量 ↓ 魚1/2切れ(30~40g)、 肉(30~40g)、 納豆1パック(約40g) 絹ごし豆腐1/2丁(130g)、 牛乳コップ1杯(180ml) 【牛乳・乳製品アレルギー】 〈除去食品〉 ・牛乳 ・牛乳を含む加工食品 ヨーグルト、チーズ、バター、アイスクリーム、生クリーム、ミルク、乳糖、 練乳、乳酸菌飲料、チョコレート、バターや乳製品を使用した調味料 etc 〈紛らわしいが食べても大丈夫な表示〉 ※牛乳の成分は入っていない ・「乳化剤」、「乳酸菌」、「乳酸カルシウム」、「乳酸ナトリウム」、「カカオバター」 〈代替食品〉 ・ホワイトソース・・・豆乳、ジャガイモやカボチャを煮崩したポタージュ、 アレルギー用ルウ、アレルギー用マーガリン ・洋菓子の材料・・・・豆乳、ココナッツミルク、アレルギー用ミルク、 チョコレートやココアの代わりにはキャロブ ・クリーム・・・・・・・・・果物やさつまいもをピューレにして、でんぷんを混ぜて 火にかける 〈乳製品を除去することにより不足しがちな栄養素〉 ⇒ カルシウム 牛乳100mlのカルシウム量 : 約113mg ↓ 相当量 ↓ アレルギー用ミルク180ml 、調整豆乳320ml、 小松菜60g(2株) ひじきの煮物小鉢1皿(29g)、 干しさくらえび大さじ1~2杯(5g) ※乳製品以外では、小魚・青菜・海藻類にカルシウムが多く含まれています。 また、ビタミン D と一緒に摂取することによりカルシウムの吸収率が上がる ので、きのこ類や魚料理と組み合わせるのがおすすめです。 【小麦アレルギー】 〈除去食品〉 ・小麦粉(薄力粉・中力粉・強力粉・デュラムセモリナ小麦 etc) ・小麦を含む加工品 パン、うどん、マカロニ、パスタ、麩、餃子の皮、小麦を使ったルウ etc 〈紛らわしいが食べても大丈夫な表示〉 ・「大麦」、「ライ麦」、「オーツ麦」、「麦芽糖」、「醤油」 ※醤油の原材料には小麦の表示があるが、完成した醤油に小麦の タンパク質は残らないので、大丈夫 〈代替食品〉 ・ルウ・・・・・・・・・・・・・・・・米粉や片栗粉(でんぷん)でとろみをつける ・パン、ケーキの生地・・・米粉、雑穀粉、そば粉、芋やおから ・揚げ物の衣・・・・・・・・・水で溶いた片栗粉、細かく砕いたコーンフレーク、 細かく切った春雨 〈小麦粉類を除去することにより不足しがちな栄養素〉 ⇒ エネルギー 6枚切りの食パン1枚のエネルギー量 : 約160kcal ↓ 相当量 ↓ おにぎり中1個(100g)、 乾麺1/2食分(45g) じゃがいも2個(190g)、 さつまいも中1本(120g) 間違った除去食による成長の遅延や、低栄養などの栄養障害が心配されま す。除去食は必要最低限にとどめて、自分の食べられる範囲内を知ることも 大切です。勝手に決めてしまわずに、アレルギーのある場合は医師に相談しま しょう。また、他の食材で必要な栄養素を補えるよう工夫することも大切なの で、管理栄養士にも、ぜひご相談ください。 管理栄養士 持木 美香
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