CHOCOLAT 1 ショコラの原料のカカオポッドと呼ばれるカカオ果実は、赤道を中心とする南北 20℃以内で、 年間平均気温が、27℃以上の高温多湿な地域で栽培されています。 収穫されたカカオポッドは、発酵させて種子を取り出し、乾燥させた物が、原料カカオ豆となります。 多品種の原料カカオ豆のほとんどは、欧米のショコラメーカーに送られます。 カカオは、様々の方法で焙煎され、 外皮(ハスク)を除かれ、カカオニブになります。 カカオニブには、約 55%の油脂(カカオバター)が含まれ、 油脂分を含んだまま粉砕微粒化し、液状になったものはカカオリカーと呼ばれ、そこからカカオバターをとり除いた物が、 カカオケイク、油分を残しそのまま冷却凝固したものがカカオマス(パートドカカオ)になります。 カカオマスには、リカーやケイク、バターを成分調節して練り上げ、凝固させたものあります。 カカオパウダー(ココア)は、カカオケイクとカカオバターを成分調整して作られますが、 上級品はカカオバターを 20~25%を残した、カカオケイクをさらに微粒化して作られます。 ◎ショコラとは、カカオケイク、カカオバター、カカオマス、カカオパウダーなどを主原料として、 必要により、糖類、乳製品、香料、カカオバター以外の油脂(パーム油、ヤシ油)添加物などを加えて 練り上げたもの全般を指します。 メーカーによっては、他メーカーから原料カカオやショコラを入手してブレンドしたり、 原材料から焙煎、微粒化,ブレンド、商品化までを一貫製造するメーカーなど、個性を競っています。 ●カカオの品種系統 カカオは、16 世紀スペインにより南米からヨーロッパに伝えられ、18~19 世紀には、イギリス、フランス、 アメリカなどの植民地支配下の南米やアフリカ、アジア諸国の赤道直下地帯に広まり栽培されました。 近年、新興国としてマレーシアやインドネシアなどでも盛んに栽培されていますが、 現状では、生産された上質のカカオ豆のほとんどがヨーロッパで消費されています。 主な品種は、以下の3系統で、産地などにより微妙な風味が異なり、種類が細かく分けられています。 クリオロ種 (3~4%) ファラステロ種(90% ) トリニタリオ種(6~7%) カカオの原種である代表的な品種。薫りが強く苦みが少ない着香用のブレンド豆として、 ベネズエイラ、スリランカ、ジャワなどで栽培される。病虫害に弱く栽培が困難。 苦みが強く癖がないベース豆として、西アフリカ、東南アジアなどで広く栽培。耐性あり。 交配種。薫りと耐性を併せ持ち、着香用のブレンド豆として、ベネスエイラ、 トリニダードトバコ等、中南米で栽培。比較的栽培が容易。 ●ショコラの分類(フランス) 成分や品質の分類と規格 ・chocolat(ショコラ)カカオマス 35%以上(内カカオバター 18%以上) ・chocolat de couverture(クーベルチュール)クーベル用ショコラ カカオマス 35%以上(内カカオバター 31%以上・非脂肪カカオ 16%以上) カカオ由来のカカオケイク・カカオマス・カカオパウダーを主原料とし、油脂、糖類、香料は、 それぞれ、カカオバターと乳脂肪、蔗糖、バニラ系のみに限定され、乳化添加物はレシチンのみを 0.5%以下使用することを厳格に規定されている。 主にクーヴェル(カバー)に使用されるショコラ。カカオ分の含有量が多いほど高級品だが カカオ品種、焙煎や粉砕製法、副材料のクオリティも品質の重要な要素で、歴史ある欧州の ショコラメーカーが、品質、衛生、全てにおいて信頼されています。 ・pâte glacé(パータグラッセ)調節不要ショコラ(コーティングチョコ) カカオに糖分、植物性油脂を加えて菓子のコーティング等に開発された食材。 カカオは3%以上でパーム油、ヤシ油などを添加し、タンペラージュの必要がない。 用途や色形状による呼称、俗称。 ・スイート (fondant フォンダン ,noir ノワール , amer アメール ) ・ミルク (aulait オーレ ,lacté ラクテ ) ・ホワイト (blanc ブラン ,ivoire イヴォワール ) 他、~フォンセ(foncé 色濃い ) ~カラー (~de couleur フレバー及び色付き )、~メナージュ (~ ménage 家庭用) ~キュイル(~ cuire 調理用全般) 、 ~クロケ(~ croquer そのまま食用にできる板チョコ全般)など多様。 * グリュエドカカオは、元来ハスクですがメーカーにより、カカオニブも配合されてます。 ●ショコラの分類(日本の成分規格) ・純チョコレート カカオ分 35%以上、カカオバター 18%以上。 ・純ミルクチョコレート カカオ分 21%以上、カカオバター 18%以上、乳固形分 14%以上、乳脂肪分 3%以上 ・準チョコレート カカオ分 15%以上、カカオバター 3%以上、脂肪分 18%以上。 ・準ミルクチョコレート カカオ分 7%以上、カカオバター 3%以上、脂肪分 18%以上、 乳固形分 12.5%以上、乳脂肪分 2%以上 ・洋生チョコレート(コーティングチョコ)成分規格なし。 CHOCOLAT 2 ●ショコラの異なる成分型 ショコラは、45°C~に加熱溶解することで、構成される成分が均一に分離分散します。それらはやがて結びつき 成分型を構成します。 その成分型は、粗くいびつな不安定型から、徐々に温度や攪拌などの外的な条件によって 構成分子の並び方が、滑らかで規則的な安定型まで変異します。成分型には数種類(γ、α、β、βʼ・・)が存在します。 それぞれの成分型の凝固速度は異なり、不安定な成分型のものほど、凝固結合に時間を要するため、 成分分離を起こし、遊離した油分などが、白い斑点や模様(ブルーム)として現れ、結びつきが脆く固まるため、 表面の艶は損なわれ、内部の食感も違和感が残る物になります。 安定型が多く構成されたショコラは、5°C以上の温度差で、速やかに滑らかに凝固するので、 ショコラを艶やかに、口溶けよく美味しく固めるために、より安定した成分型(βʼ)をより多く構築することが必要です。 ●タンペラージュ・Tenperage(テンパリング・調節) 成分型を安定型に調節することをタンペラージュ(テンパリング)と呼びます。 現代において、ショコラを製造するメーカーは、すべてを溶解、均質化を図り、撹拌しながらタンペラージュ調節して より多い安定成分型を作り、成形後、更に熟成凝固させて、クオリティーの高い完成品を出荷しています。 ●タンペラージュの種類 冷却法・・・大規模工場向き。 45°C以上に加熱溶解したショコラを、凝固温度(25~28℃)まで冷却撹拌し、溶解温度(30~32℃)まで 再加熱する方法。 ・ショコラの成分型をすべて一から安定化させる方法。 メカニズム 45℃以上に溶解されたショコラを、攪拌冷却しながら、徐々に成分型を変異させてゆき、 再加熱する際にすべてクオリティーの高い安定成分型に変異させる。 注意点 長時間(1 時間以上、メーカーによっては 24 時間)をかけないと安定成分型が出来にくい。 少量のショコラを冷水(10~15℃)で冷やして温水(45℃前後)で暖める方法は、 短時間で完成するため、安定成分型ができにくい。 ショコラに水が 2%以上混入すると粘度がまして作業が困難になるので、注意が必要。 種付け・シード(コポ)法・・・一般パティサリー、ショコラティエ向き。 45℃以上に加熱溶解したショコラに、刻んだタンペラージュ済みのショコラを加えて撹拌冷却し、 凝固温度まで混入し続け、溶けずに残ったショコラが溶けるまで溶解温度に再加熱する方法。 ・安定型のショコラを、冷却媒体に使用することで、効率よく安定型を作る方法。 メカニズム 約 40℃以下で、温度が下降をたどる過程で溶解した安定成分型は不安定化しない。 安定した成分型は、不安定成分型と結び付く核となり、安定化させる。 凝固点から融点に再加熱する際にも安定成分型が作られる。 注意点 タンペラージュ済みの安定成分型構造を持つショコラが必要。近年、タンペラージュ用の 安定成分型のシード(種)も開発、販売されているが、添加物のため使用は、作り手の見識に委ねる。 マーブルダブリル法(タブラージュ)・・・熟練ショコラティエ向き 45℃以上に加熱溶解したショコラの半量をマーブル台に広げて練りながら(ダブリル)凝固温度まで冷却し 固まりがでてきたら残りの半量数回に分けて加えて練り温度と状態を調節する。 ・タンペラージュが不完全なショコラを効率よく安定化させられる。 メカニズム マーブル台上で練りながら効率よく変異した成分型が、たされた不安定成分型の核になり安定化させる。 注意点 熟練の技能が必要。不衛生。 融点溶解法 ショコラを溶解温度を維持して溶かす方法。 ・安定しているショコラのみを利用する方法。 メカニズム 安定成分型は、溶解温度では不安定化せず溶解できる。 注意点 密閉された空間で長時間(8 時間以上)かかるため専用の機械が必要。 近年では電子レンジでも短時間で実行できるため、少量のタンペラージュに向く。 ●トランペ(作業)ショコラの作業は、安定成分型が出す潜熱(発熱)によって、冷めにくくなるが、 湯煎やテンパリングマシンなどで30~32℃に保温することで、より一層温度低下なく固まらず長時間作業できる。 18 度前後の室温環境で、作業する事により、ショコラは速やかに凝固する。 低温すぎたり、高音すぎると、ツヤが悪くなったり、固まりすぎたり、固まらなくなるので常に、室温には留意が必要。 チョコレートの温度と結晶構造の変化 ℃ 変質 60 50 冷却法 (水冷・コポ法(種付け法) 均一 45 冷不 却安 定 β 40 不 安 定 32 溶解 30 冷却法 (マーブル) 溶解法 (長時間 電子レンジ) 安定β' 凝固 26 安 定 β' 常温 20 安 定 型温 15 不安全温度域 クーベルチュールノワール成分例 カカオ分70% 30% 28% 42% カカオ分50% 糖分その他 カカオケイク カカオバター 50% 20% 30% 作業温度域 安全温度域 クーベルチュールラクテとブランの成分比較 ラクテ ブラン 30% 糖分その他 30% 6% 無脂乳固形分 14% 24% 乳脂肪分 (ミルクバター) 21% 16% 24% カカオケイク カカオバター 35%
© Copyright 2024 ExpyDoc