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宮医報 828,2015 Jan.
年 頭 所 感
年 頭 所 感
宮城県医師会会長 嘉 数 研 二
新年明けましておめでとうございます。
昨年は台風や大雨,土砂災害など,全国的に自然災害の多い年でした。そ
の被害も甚大かつ悲惨なもので,豪雨によって発生した土砂災害により 40 人
以上の死者・行方不明者を出した広島市北部の被害,60 人近くの犠牲者を出
した思いもかけない御嶽山噴火など,地球温暖化による環境の変化が地球上
の生物に致命的な影響を与える前兆を感じさせるものでした。しかし,中国
が国の威信をかけて演出したアジア太平洋経済協力会議(APEC)での
「APEC ブルー」は一時的にせよ,人類がその気になれば地球の環境改善は不可能ではないことを強く印
象付けたものであったと思います。あらためて犠牲になられた方々には心より哀悼の意を表するものです。
東日本大震災発生以来,3年 10 か月が経ちますが,被害が甚大であった沿岸部被災地は,いまだ復旧
すら進んでいない地域も少なくありません。宮城県内における仮設住宅,借上住宅に住む方々は今も約
7万人おられ,うち5万人がプレハブ仮設住宅に住んでおられます。
私ども医師会では被災された会員に関しまして,それまでの補助金を受給してもなお自己負担額が多
額な被災医療機関に対して,「緊急的医療機能回復分特別支援補助金」の追加支援を進め,平成 25 年度
末には終了しましたが,今回,特に被害が甚大であった医療機関の復旧状況を確認すべく,2度目のア
ンケートを実施し検討を行っております。近々その結果を報告したいと思います。
国の社会保障と税の一体改革を進める中で,昨年の消費税増税と同時に行われた診療報酬改定は,団
塊の世代が後期高齢者となる 2025 年の超高齢・少子社会に対応すべく医療・介護体制の方向付けがより
明確になりました。住み慣れた地域で生活できる医療の提供に向けて,患者が急性期後の受け皿病床や
在宅に適切に移行するための改定であり,在宅医療の充実が重要なポイントの一つです。主治医を中心
として,医科,歯科,薬局,訪問看護ステーション,介護事業所等が連携し,急変時の対応や看取りを
含めた在宅医療を提供できる体制(地域包括ケアシステムの一環でもある)を構築し,患者のニーズに
対応した質の高い在宅医療の提供が求められています。しかし,これらはハードル(施設基準,算定要
件)が高く,一部の在宅療養医療機関を除き実施困難であり,国は在宅医療や地域包括ケアシステムを
本気で進めようとするならば,これらのハードルを取り除かねばならないと考えます。
病床機能報告制度及び地域医療構想(地域医療ビジョン)において,病床機能報告制度の運用は平成
26 年度から開始され,医療機関が担っている医療機能−a.高度急性期機能,b.急性期機能,c.回
復期機能,d.慢性期機能 を都道府県に報告する必要があります。都道府県は,平成 27 年度から医療
機関から報告された情報を活用し,二次医療圏ごとに各医療機能の必要量等を含む地域の医療提供体制
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宮医報 828,2015 Jan.
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の目指すべき地域医療ビジョンを策定していきます。これは 2014 年6月 18 日に可決(参議院)された
「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」が根
拠法となっており,2025 年に向けて地域医療体制の整備と地域包括ケアシステムの構築が本格化してい
くことになります。私たちは,大きく変化する医療政策の流れを十分理解した上で各医療機関にとって
最適な方向を選択する必要があります。
さて,今年の最も大きな事業である宮城県医師会館・宮城県地域医療連携支援センター建設において,
解体工事が終了し,平成 26 年 11 月5日に起工式が執り行われました。村井宮城県知事をはじめ,伊東
保健福祉部長そして各郡市医師会会長先生方,本会役員,関係各位のご出席の下,厳かに執り行われま
した。大きく変革していく医療政策に対応すべく,宮城県全体の地域医療・介護福祉の連携を実現化さ
せるためのコントロールタワーとなる地上6階建ての免震構造で,地下に駐車場を設け,2階の大ホー
ルをはじめ,多くの会議室が新設され,学会や医会の会議に今まで以上に利用される事が期待される会
館に生まれ変わることになります。今後とも会員各位,並びに関係者各位のご支援とご助力をお願い申
しあげる次第です。
今年度も役員一丸となって,国民・県民のためのより良い医療政策の推進に取り組んで参りたいと思
っておりますので,よろしくご理解とご協力をお願い申し上げ,新年のご挨拶と致します。
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