― 報 告 書 ― 「地域教育の実践について」 平成 25 年 12 月 社団法人入間青年会議所 地域教育委員会 はじめに 現在、子どもたちを取り巻く環境において、少子高齢化や人口の減少、過疎化、コミュ ニティの希薄化など様々な社会問題が顕著になってきている時代にあり、これらのことが 子供の成長に大きな影響を与えています。 このような時代背景から、社団法人入間青年会議所では地域の子どもは地域で見守って いこうと 2009 年より地域教育を推進する委員会を立ち上げ、運動を進めてまいりました。 2013 年度社団法人入間青年会議所は『誠心誠意』~まちの主役が自立した地域社会を創る というテーマの下、子どもと「家庭(親)・学校・地域」が共に成長することで子どもを取り 巻く教育環境を変えていこうと考え運動して参りました。 そして、我々社団法人入間青年会議所が一年間の運動を通して市民の皆様と学んだこと を報告書として取りまとめさせて頂きました。 入間市の未来を支える子どもたちが健やかに成長するためには、行政・市民・各種団体 それぞれが主体者意識を持ち、 「誠心誠意」まちに対して、そして子どもたちに対して向き 合うことが必要です。この報告書がこれからの入間市をより良いまちにしていく一助とな ることを期待致します。 ― 目 次 ― 1.親子のコミュニケーション 2.年上を敬い、年下を尊ぶこと 3.地域教育のモデルケースを目指して 4.地域教育の実践について 1.親子のコミュニケーション ◎現状と課題 東日本大震災の震災直後、日本人の助け合いの精神や絆・繋がりといったものが海外 を含めた多くのメディアで取り上げられました。誰に対しても「感謝」する心を持ち、 お互いを助け合う精神こそ、日本人らしさの象徴ではないでしょうか。 しかしながら現代社会においては、家庭の中の親と子どもの関係さえ希薄化してきて いるように感じられます。親が子どもに対して感謝の心を持つことで、子ども達はその 大切さを学びます。互いに感謝の心を通じて、親と子がつながり、また人と人とが繋が り、絆を深めていくことが必要になってきています。 ◎親守詩(おやもりうた)の実施 親守詩とは、子守唄とは反対に子から親へ普段なかなか口に出しては言えない感謝の 心を5・7・5の俳句に乗せて歌った詩(うた)です。入間市教育委員会にご後援を頂き、 市内小学 1~4年生に募集用紙を配布し、親だけでなくおじいちゃん・おばあちゃん、も しくは先生など日頃よりお世話になっている方への感謝を言葉にして表現して頂きまし た。校長先生を始め、教職員の皆様のご協力を頂き 2,025 通もの親守詩が集まりました。 この親守詩を文化創造アトリエアミーゴや入間市市民活動センターにて展示を行い、 市民の目に触れることで子どもたちから大人への感謝の心を伝えることができたと感じ ております。最終的に全ての作品を詩集にまとめ、各学校及び教育委員会に配布させて 頂きました。 「文化創造アトリエアミーゴでの親守詩展示風景」 「親守詩作品集」 ◎感謝の心を育むために 親守詩を実施した後に、校長先生から国語の教材としてまた総合学習の時間に活用し て頂いたとの報告がありました。また、PTAの方からも詩集に自分の子どもが書いた 親守詩を見る機会があり、改めて親としての責任を感じましたなどの声が寄せられまし た。 親守詩を活用することで、子どもたちが感謝の心を持つ大切さを理解し、それを言葉 にして表現することを学びます。また、これを見た大人たちも改めて大人としての責任 を自覚し、子どもたちに対してだけでなく、周りの方々への感謝の心を持つことができ ると考えます。今後も親守詩を活用して頂き、子どもたちの感謝の心を育む教育が必要 であると考えます。 2.年上を敬い、年下を尊ぶこと ◎現状と課題 かつてゲーム機などが無かった昭和の時代、子どもたちの遊び場の多くは屋外にあり、 尊敬できるお兄さんお姉さんに交じって様々な年齢の仲間と体を動かして遊ぶ中で、自然 と年下を尊び、年上を敬うことを学んでいきました。しかしながら、2012 年度の入間市市 民意識調査にもあるように放課後の遊び場が減少している傾向にあり、家の中でTVを見 たりインターネットをしたり、公園に行ってもゲームをしていたりと以前のように子ども たちが自然とそういった上下関係を身に付けることが難しくなってきました。学校生活で しかそういった人間関係の在り方を身に付けることができない事が、他人との上下関係に 違和感を覚えるなど中一ギャップといった社会問題が繋がっているのではないでしょうか。 年上の子が年下の子の面倒を見る、年下の子が年上の子の言うことに耳を傾ける。こう いったことはこれから社会に出ていく上でも必ず必要となり、年上を敬い年下を尊ぶこと は日本人としての心の豊かさであると考えます。 ◎わんぱく相撲入間大会における中学生スタッフの活躍 2013 年 6 月 9 日に入間市市民体育館で行われた「第 19 回わんぱく相撲入間大会」では、 入間わんぱく相撲推進会議主催の下、市内小学生 847 名の参加により盛大に開催されまし た。その裏では 225 名に及ぶ運営スタッフの協力がありました。そして 2013 年度は、大会 当日のスタッフに中学生を起用することを提案致しました。 大会ボランティアスタッフを募集したところ、向原中学校、金子中学校、東町中学校か ら 24 名もの生徒が集まり、場内アナウンスを始め、救護班、各土俵での記録係など年下の 小学生のために率先してご協力頂き、指導にあたって頂きました。 「場内アナウンスを担当」 「中学生スタッフ全員での集合写真」 「大会終了後の懇親会 感想や来年への意気込みを語る」 ◎中学生スタッフを通して ご活躍頂いた 24 名の中学生スタッフに対して後日行ったアンケート調査には、「始めは 戸惑ったけどすごく楽しかった」 「大人のスタッフに声を掛けられてうれしかった」「小学 生がすごく可愛くて元気をもらいました」「ぜひ来年も参加したい」など、多くの前向きの 意見を頂きました。 こうした機会を増やしていく事が、年上の子が年下の子の面倒を見るといったかつて当 たり前のように行われていた人間関係を築いていく事に繋がると考えます。少年時代にこ のような道徳心を養うことができれば、大人になっても自分より年下の者の面倒を見るこ とができる心豊かな人間性を育むことができるのではないでしょうか。 ぜひ来年以降も中学生が活躍できる場を提供し、率先してボランティアスタッフに参加 頂けるようご協力を頂きたいと存じます。 中学生スタッフアンケート調査結果 3.地域教育のモデルケースを目指して ◎現状と課題 現在入間市では、 「次世代育成支援行動計画」や「元気ユースプラン」また「子ども未 来室事業」の中に、 「家庭・学校・地域」が協働して子どもたちの育成に取り組むことが 記載されております。具体的には学校と地域が繋がりを作り、有効的に地域の人材を活 用することで子どもたちの成長を支える環境を整備していく事が目的です。 入間市立の小中学校においては、市民ボランティアが総合学習の時間を利用した読み 聞かせやお茶摘み体験等が行われております。また、地域の人材活用という点では各学 校が自由に利用できる市民ボランティアリストが作成され、今後の活用が期待されてお ります。 ◎あずま幼稚園との協働事業 社団法人入間青年会議所では 2009 年より入間市立あずま幼稚園と協働し、あずま幼稚園 を中心とした地域における地域教育の実践活動を行ってまいりました。月 1 回程度の会議 を開催し、地域や保護者を巻き込んだ様々な事業を実施しております。 例えば、2011 年には当時発足させたおやじの会が中心となり地域住民や職員と協働で園庭 の芝植えを行い、お昼のお弁当の時間や運動会などで現在も友好的に活用されております。 ・親学勉強会の実施 毎年 1 回、年長の保護者 40 名ほどを対象に親学勉強会を開催し、家庭内における親子 のコミュニケーションの大切さを伝え、親としてどうあるべきかを改めて考えて頂く 機会としています。 ・誕生日会における地域ボランティアの活用 毎月の誕生日会にお楽しみの時間として地域ボランティアによる催し物、様々な体験 を実施しています。 「霞川の魚を見て触る園児」 「クラシックギターに初挑戦」 ・その他の協働事業 2013 年には園児と父親が一緒に参加する料理教室を実施し、食育を通して父親が家事 や育児に積極的に参加する意義を学んで頂きました。また、万燈祭りにブース出店を 行い、お手伝い頂いた保護者や職員と地域の方々が交流する機会となりました。同時 に、お祭りに参加した園児の郷土愛の醸成に繋げる事ができたと考えます。 「お父さんと一緒に料理教室」 「万燈祭りでのブース出店」 ◎地域の力を活用すること このように、保護者だけでなく地域のボランティアを活用することで園児に様々な体 験を通して感動を与え、心豊かな人間性を育む一助となったと考えます。また、参加し た市民ボランティアに園児に対する関心を持って頂き、あずま幼稚園を中心とした地域 教育の一端を担うことができました。 現在作成されている学校ボランティアリストは、入間市教育委員会によって管理され ておりますが、行政を通さないと利用できなかったり、活動内容や連絡先が分からない ものが多数あったりすることから、より学校や地域が利用しやすい形へ改良する必要が あると考えます。 4.地域教育の実践について ◎現状と課題 入間市教育委員会では「子ども未来室事業」を中心に、子どもたちが健全に成長し自立 するための様々な事業を展開しています。その中でも、学校の先生をはじめ、PTA、各種 団体と協働し、 「地域教育フォーラム」や「地域交流研修会」などを通して行政や学校側が 市民と向き合う機会を作ってきました。 しかしながら 10 年後、20 年後の入間市がどうなっているのかを想像することは難しく、 様々な社会問題が顕著化し、教育の予算も職員の確保も今まで以上に難しくなると考えま す。だからこそ、地域の力を活用し、市民主体の地域になることが持続可能な社会、持続 可能な子どもたちの教育環境の構築に繋がるのではないでしょうか。 子どもたちの教育を行政や学校ばかりに任せるのではなく、地域の大人たちがそれぞれ の役割を担う意識を持ち行動して頂くことが最も重要な課題です。また、地域の大人たち の主体性を育むためにも学校を拠点とした新たなコミュニティを形成することが必要であ ると認識しています。 ◎11 月第 1 例会「学校へ行こう!~地域参加を始めよう~」を通して 2013 年 11 月 8 日に開催された 11 月第 1 例会においては、入間市教育委員会のご後援を 頂き、文部科学省コミュニティスクール推進委員の岸裕司様をお迎えし、 「学校を拠点とし た地域コミュニティの形成について」をテーマにご講演頂きました。 その中で、入間市と同規模の人口である千葉県習志野市秋津地域におけるコミュニティ スクールについてご紹介頂き、実際に学校と地域とが融合した社会の実現に向けて市民が 積極的に学校運営に参画し、それを行政が全面的にバックアップするといった新しい住民 自治の考え方を知りました。市民の参加を生涯学習の一環と捉え、子どもたちの成長を地 域全体で支えていくといったまさに地域教育を実践している地域でありました。その成果 として、子どもたちの学力面や精神面での向上が結果として現れていることも知りました。 また、入間市民の方々と一緒に「子どもたちの教育に地域として携われること」をテー マにグループディスカッションを行いました。その結果、「子どもと地域が関わりを持つ機 会が少ない」 「学校への意見が言いにくい」といった意見や「地域のリーダーが必要だ」と いった建設的な意見も出ました。市民とのこうした議論を繰り返すことが子どもたちの成 長を地域で支えていく意識向上に繋がり、地域教育の普及に貢献することができると考え ます。 ◎地域教育を実践するために 入間市では、平成 28 年度より「地域コミュニティスクール」の設置を視野に地域交流研 修会などで行政・学校と市民・各種団体が継続した議論を進めてまいりました。これは、 入間市独自のものであり、文部科学省が推進している『学校運営協議会制度』とは異なる ものとなっています。 社団法人入間青年会議所でも、 『学校運営協議会制度』や入間市内の小中学校おいて行わ れている地域との連携などを調査し勉強会を実施しました。所属メンバーの中からは、「入 間市の取り組みが先進的であり、比較的恵まれた地域であると感じました。」といった意 見や「文部科学省の推進するコミュニティスクールと入間市独自の地域コミュニティスク ールの違いが良く理解できなかった。」などの意見が出ました。 さて、入間市教育委員会が提唱する「地域コミュニティスクール」は市民にどの程度理 解されているものなのでしょうか。入間市教育委員会にご後援頂いた 11 月第 1 例会「学校 へ行こう!~地域参加を始めよう~」を通して、市民がその必要性を理解し主体的に行動 する意識を向上させることができたと考えておりますが、実際にどういった形で子どもた ちに携わることができるのかが明確ではありません。こうしたことからも、 「地域コミュニ ティスクール」がどういったものなのかを市民に対して明確にする必要があります。また 学校や市民、各種団体がどのように携わっていくべきなのか、その情報や方向性を市民に 分かる形で発信して頂きたいと考えます。 入間市独自の「地域コミュニティスクール」制度では、それぞれの地域において市民と の会議が実施されても、学校の教育方針や運営などを決定する権限はあくまで教育委員会 に残す形となり、実際に行われた市民との議論は有効に活用されることなく、形だけのも のとなってしまう可能性があります。このような会議において、市民の建設的な意見が主 役され実行されることなく、ないがしろにされてしまうことを危惧しています。 入間市の小・中学校がそれぞれの地域において必要とされ信頼される存在であるために も市民が一定の責任と権利を持ち、主体的に議論に参加できる場所が必要であると考えま す。 おわりに 地域教育を推進することの目的は何でしょうか。子どもたちの成長を支えるために、地 域住民がその地域の子どもたちを支えていく必要性を感じて頂き、主体的に行動すること に他なりません。本年度地域教育委員会では「共育」というテーマの下、 「家庭・学校・地 域」それぞれが成長するつまりは子どもたちのために自ら考え行動することで、地域教育 を推進することができると考え、様々な事業を実施して参りました。 2 月第 1 例会では親守詩を通して家庭における親と子の在り方を改めて見直し、お互いに 「感謝」の心を持つことがより良い信頼関係、より良い家庭教育環境を作っていくことに 繋がると考え事業実施に至りました。2,025 人もの子どもたちにご協力頂けたこと、また作 品集が多くの保護者や先生の目に触れたことで、大人としての在り方を改めて見直す機会 となりました。日頃から互いに感謝し合える関係作りをこれからも進めていくべきだと考 えます。 また 6 月第 1 例会では、第 19 回わんぱく相撲入間大会にて、多くの小学生の参加者と共 に 225 名ものスタッフにご協力頂きました。わんぱく相撲推進会議のメンバーを始め、多 くの市民と協働する中で地域教育の必要性を発信できました。また、新たに中学生スタッ フを起用することで、年下の子どもたちを自然と支えることができる心豊かな人間性の醸 成に繋がりました。 そして 11 月例会では、他の地域におけるコミュニティスクールの実例を交え、入間市に おいてこれから導入される「地域コミュニティスクール」について行政・市民と議論する 機会を作りました。コミュニティスクールの本来の目的は学校と地域が共に協力し、子ど もたちの健全育成のために、互いにメリットを共有することで持続可能な地域社会を創る ことです。今後、入間市でも本来の目的に沿ったコミュニティスクールが展開されていく 事で地域教育が拡がっていきます。 「いるま生涯学習プラン 21」には市民と行政が協働するまち、学びを通してコミュニティ が充実する心が通い合うまち、主体的な学びと活発な市民活動があるまちとの記載があり ます。 我々社団法人入間青年会議所は今後も行政・市民と協働し、地域の子どもたちを地域で 見守っていく社会の実現を本気で目指していくべきです。そして入間市の発展のために青 年らしく英知と勇気と情熱を持って積極的な運動を邁進していきます。 社団法人入間青年会議所 地域教育委員会 委員長 不破 誠
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