第4章 医療提供体制の現状、目標及び整備方針 1 基本的考え方 (1)医療連携体制の構築 現状と課題 ○限られた医療資源を有効に活用して県民が安心して医療を受けることができる体制を構築す るためには、医療機関相互の機能分化と連携を推進し、地域の中で切れ目のない医療を提供 できる地域完結型の体制を整備する必要があります。 ○本県では、日常的で身近な医療を提供する初期医療から入院医療を主体とする二次医療、高 度・特殊・専門的な医療を担う三次医療に至るまで、重層的な医療体制の整備を推進してき ました。こうした体制の下、多くの医療機関で患者紹介、施設・設備の共同利用、診断、研 修など様々な連携が行われています。 ○医療機関における連携への取組みの状況をみると、65%の病院に医療連携体制に対する窓口 が設置されており、地域連携クリティカルパス(急性期から慢性期まで治療に携わるすべて の医療機関が共有して用いる診療計画書)は、大腿骨頸部骨折、がん、脳卒中を中心に整備 が進められてきております。 ○今後は、患者の視点に立って、適切な医療機能を提供できるような体制を構築することが求 められています。そのためには、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、患者が一貫した 治療方針のもとで、必要な医療を受けることができるような連携体制をより一層進めていく 必要があります。 医療機関における連携への取組みの状況 ※( 病院(143 施設) 医療連携体制に対する窓口の設置 )は% 診療所(1,268 施設) 93(65.0) 地域連携クリティカルパスの導入状況 大腿骨頸部骨折 23(16.1) 7(0.6) がん 24(16.8) 62(4.9) 脳卒中 20(14.0) 5(0.4) 87(60.8) 110(8.7) 保健医療、福祉サービス提供者との連携窓口 ※「医療・薬局機能情報システム」より集計(平成 24 年 11 月 1 日現在) 対 策 ○行政は、県民に対して、医療連携の現状や医療機能ごとの医療機関の状況等について、わか りやすく情報提供を行います。 -36- ○各医療機関の医療機能に応じて機能分化を進め、地域において必要な医療連携体制の構築を 促進します。 ○地域における医療連携を推進するため、地域連携クリティカルパスの導入と効果的な活用を 推進します。地域連携クリティカルパスの導入により、医療連携の円滑化や医療の標準化、 診療の継続性の確保・効率化等の効果が期待されるとともに、患者にとっても、自分が受け る医療の全体像が把握でき、診療参加意欲の向上や不安の解消につながると考えられます。 ○主な疾病や事業に応じて、地域の医療連携体制を支える中核的な医療機関の整備を促進しま す。 ○医薬分業を進め、医師、歯科医師及び薬剤師が各々の専門性を発揮しつつ相互に連携し、患 者の治療に当たる体制整備を促進します。 ○県境周辺地域では、隣接県の医療機関を利用している実態があり、これらの地域の医療連携 体制の整備に当たっては、必要に応じて隣接県の医療機関とも連携を図るよう配慮します。 ○地域医療再生基金を活用した実効性のある医療連携体制の構築 ・各医療圏域ごとに地元医師会等関係機関の参画を得て、循環器疾患の診療体制や救急患者の 受入体制の充実等を図ります。 ・県医師会が中心となって、ICTを活用した医療機関同士の情報共有と連携を推進する全県 的なネットワーク基盤の構築が進めることとしています。 〔宇摩圏域〕 ①脳卒中地域連携・相談機能の強化 脳卒中患者について、急性期から維持期までの地域連携パスを構築するとともに、医療関 係者や患者・家族が患者情報を共有するための患者管理手帳を整備します。 ②心筋梗塞患者における救急隊-病院連携体制の構築 急性心筋梗塞患者について、救急車から二次救急病院に心電図データを伝送し、専門医が 治療方針や搬送先を決定することにより、治療開始までの時間短縮を図るための、救急隊 と病院の連携体制を構築します。 〔松山圏域〕 ①中予地域空床管理ネットワークシステム(仮称)の構築 中予地域の二次救急病院を中心とした医療機関が、相互に空床情報を共有する「中予地域 空床管理ネットワークシステム(仮称)」を構築し、救急病院における空床の確保や救急 患者の受入等をよりスムーズに行います。 -37- 〔八幡浜・大洲圏域〕 ①広域医療連携型心血管事故予防システムの開発 特定健診で把握された未治療高血圧者や医療機関で加療中の高血圧者を対象に、生体セン サーにより血圧等の遠隔モニタリングを行うとともに、保健センターとも連携して遠隔で の生活習慣指導を行い、高血圧の進展や心血管事故の発生を抑制します。 ②小児先天性心疾患患者に対する地域医療連携システムの確立 先天性心疾患を有する患者を対象として患者データーベースを構築し、先天性心疾患患者 に関する関係施設間での連携システムを確立します。 ③心電図伝送システム整備事業 急性冠症候群を初めとする循環器疾患について、救急車から二次救急当番病院に心電図デ ータを伝送する設備を整備し、専門医が受信データを基に治療方針や搬送先を決定するこ とを可能とすることで、治療開始までの時間短縮を図ります。 〔宇和島圏域〕 ①地域リハビリテーション構築を目指した連携推進 南予地域において、急性期、回復期、維持期まで切れ目のないリハビリテーションを実施 するため、地域の医療連携システムや院内の多職種協働の仕組みづくりを推進するととも に、在宅復帰を目指した地域リハビリテーションの充実に取り組みます。 〔全県域〕 ①地域医療連携支援ネットワーク構築事業 県下の医療機関等を対象に永続して地域連携の支援ツールとなる医療情報ネットワークシ ステムを構築することにより、医療機関の情報の共有化及び地域医療連携を促進し、患者 への切れ目のない医療サービスの提供や生涯にわたる健康づくりを図るほか、医師不足が 深刻な地域医療の維持にもつなげます。 -38- 図 住民・患者の視点に立った医療連携体制のイメージ かかりつけ薬局 -39- (2)プライマリ・ケア 現状と課題 ○プライマリ・ケアの担い手であるかかりつけ医、かかりつけ歯科医は、身近な地域の医療機 関として、 ・患者の病気等の治療を行うとともに、患者とその家族全体の状況を把握し、医学的な相談 等に対応する。 ・患者の病状等に応じて必要があれば、他の医療機関、医師、福祉医療サービス等の紹介を 行う。 ・患者が複数の医療機関や介護施設等からサービスを受ける場合、それらのサービスが適切 に行われるよう、患者の視点に立って調整を行う。 ・急性期の治療を終えた患者の病状管理や生活指導、療養支援を行う。 ・必要に応じて、患者の日常的な保健予防について指導助言を行う。 など、生活の中で、幅広い視点から、患者を支える医療サービスを行っています。 ○本県では、従来から、かかりつけ医の役割を重視し、医師会や医療機関が中心となって、か かりつけ医の普及・啓発やかかりつけ医の機能強化に取り組んでいますが、今後、在宅医療 を含めた医療連携体制を構築していくためには、身近な地域の医療機関としてのかかりつけ 医・歯科医・薬局の役割はますます重要になると考えられます。 対 策 ○かかりつけ医による在宅医療の取組みの強化や、時間外においても、かかりつけの患者やそ の家族からの連絡を受けることができる体制づくりについて、かかりつけ医のチーム化、グ ループ化の可能性も含めて検討します。 ○総合的な診療に対応できる医師が求められているため、大学における養成や、卒後の養成の あり方を検討します。 -40- (3)地域医療支援病院の整備の目標 現状と課題 ○地域医療支援病院は、かかりつけ医等から紹介された患者を中心に医療を提供するなど、地 域の医療機関の機能分化・連携を進めるうえで重要な役割を担っています。 〈地域医療支援病院の主な承認要件〉 ・他の病院又は診療所から紹介された患者に対し、医療を提供する体制が整備されていること。 具体的には、①地域医療支援病院紹介率が 80%を上回っていること、②地域医療支援病院紹 介率が 60%を上回り、かつ、地域医療支援病院逆紹介率が 30%を上回っていること、③地域 医療支援病院紹介率が 40%を上回り、かつ、地域医療支援病院逆紹介率が 60%を上回ってい ること、のいずれかに該当すること。 ・共同利用のための体制が整備されていること。 ・救急医療を提供する能力を有すること。 ・地域の医療従事者に対する研修を行う能力を有すること。 ・原則として 200 床以上の病床を有すること。 ・集中治療室等の施設を有すること。 ○本県の地域医療支援病院の整備状況は、次のとおりです。 医療機関名 対 二次医療圏 承認年月日 愛媛県立中央病院 松山圏域 平成22年10月29日 松山赤十字病院 松山圏域 平成17年5月23日 喜多医師会病院 八幡浜・大洲圏域 平成11年8月11日 策 ○すべての二次医療圏において地域医療支援病院を整備することを最終的な目標として、地域 において協議を進め、関係者の合意形成に努めます。 -41-
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