パブリケーション

平成 27 年度 つくば実習「柔道」班 指導案 メンバー:川戸湧也・中村賢・今野岳・古内孝明・村澤綾子・内田暁・忽那健太・三田沙織 担当教員:三田部勇 1. 単元名 柔 道 2. 対象学年 中学校第1学年 男女 18 名(男子 12 名/女子 6 名) 3. 授業場所 筑波大学武道館 2F 柔道場 4.
単元目標 (1) 次の運動について、技ができる楽しさや喜びを味わい、基本動作や基本となる技ができるようにする。
ア 相手の動きに応じた基本動作から,基本となる技を用いて,投げるなどの攻防を展開すること。 (2) 柔道に積極的に取り組むとともに,相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を守ろうとすること,分担し
た役割を果たそうとすることなどや,禁じ技を用いないなど健康・安全に気を配ることができるよう
にする。 (3) 柔道の特性や成り立ち,伝統的な考え方,技の名称や行い方,関連して高まる体力などを理解し,課
題に応じた運動の取り組み方を工夫できるようにする。 5.
単元について (1) 柔道の一般特性 柔道は,武技,武術などから発生した我が国固有の文化であり、相手の動きに対応して、基本動作や
基本となる技を身に付け、相手との攻防を通して勝敗を競い合う楽しさや喜びを味わうことのできる運
動である。また、武道においては伝統的な行動の仕方が重視されると共に、礼儀作法を尊重して練習や
試合ができることを重視する運動でもある。 また、武道は中学校において初めて学習する内容であるため基本的な技能を身に付けることが重要で
ある。その中で自身の技能段階に応じた課題を発見し、解決のために取り組むことが求められる。なお、
柔道は身体接触を伴う対人的な運動であるため、安全に対する配慮を大きく必要とする。 (2) 生徒(中学生)から見た一般特性 ほとんどの生徒にとって日常生活において柔道の特性である身体接触による個人の攻防といったも
のに触れる機会はない。また、柔道は、ほぼ全ての生徒が中学生になって初めて経験する運動である。
しかし、柔道はオリンピックの種目として採用されていることや、世界選手権や国際大会が民間のテレ
ビ局を通じて放送されていたりすることから、その認知度は高いと考えられ、興味・関心が高い生徒も
存在すると考えられる。一方で、柔道活動中の事故が度々報道されたこともあり、「痛い」「怖い」「危
ない」などのイメージを抱いている生徒が多いことも事実である。 柔道の特性を分類すると、二人で組み合うことの楽しさ、新しい技を学ぶ楽しさ、相手を投げる楽し
さ、技の攻防による楽しさ、固技において相手を抑え込み、制圧する楽しさ等がある。しかし、所作や
礼法など、重々しさや緊張感が感じられる運動でもある。さらに、相手に投げられることや、押さえ込
まれることによる恐怖感や受身の際に畳を打つことや技を掛け損じた際には痛みを伴う運動でもある。 (3) 中学校における「武道」実施状況について 武道必修化に合わせて 2012 年に文部科学省が全国の公立中学校を対象に行った調査では、柔 道 を 実
施 す る 中 学 校 は 64.1% であり、剣道(37.6%)、相撲(3.4%)に比べて非常に多くの学校で実施さ
れていることが明らかとなっている。 (4) 単元構成・教材作成の意図 柔道活動中における重大な事故の問題は、現行の学習指導要領の実施を契機に多数報道され、社会問
題となった。平成 24 年度より中学校において新学習指導要領が全面実施され、武道が必修化されたこ
とによって、今までよりも多くの生徒が柔道の持つ潜在的な危険性に晒されるおそれがあり、柔道授業
における事故の危険性が懸念されている。また、実際の指導現場において、教師は、授業時間や授業環
境、教師の指導力に対する不安など様々な制限や障壁があると野瀬(2009)や鹿屋体育大学生涯スポーツ
実践センター(2010)は報告している。一方、花田(1985)や高橋(1986;1987)は生徒が柔道に抱い
ているイメージに関する調査を実施した。その結果、中学生・高校生男子において柔道は「男らしい」
「たくましい」という形容詞に代表されるように身体の鍛錬効果についての認識は高いものの、「激し
い」「痛い」というイメージも強く、生徒においては非好意的・逃避的であるとしている。これらの研
究成果から、授業においては柔道を専門としない保健体育教師においても安全が確保でき、より効率の
良い授業の展開について考察していく必要があると考えられる。さらに、その授業計画で用いる教材は
生徒にとってわかりやすく、面白く感じられ魅力のあるものである必要があると言えよう。 そこで、本単元では、生徒が分かりやすく面白いと感じて取り組める教材を用いながら、生徒の柔道
への負のイメージを払拭できるよう、受け身を中心とした学習からスムーズに投げ技に入るよう構成し
た。通常、学校現場では、安全上の配慮から、単元の前半又は第 1 学年は固め技から入るような授業が
多く見られる。しかし、ここではあえて、受け身の動作に器械運動の要素を取り入れながら、安全上の
学習を踏まえスムーズに投げ技へ移行できるような構成にし、受け身から立ち技への単元を提案したい。 授業を行うにあたり、安全かつ効率よく進行するために、また、生徒にとってわかりやすく面白いと
感じられるために、縦や横に回転する、高さのあるところから身体を操作しながら勢いを制御するなど、
共通した運動特性を持つ器 械 運 動 を 活 用 し た 準 備 運 動 の提案を行う。 さらに、授業内容の効率化と一層の充実を図るために、受 身 の 学 習 か ら 投 技 の 学 習 へ の 発 展 を 重
視 し た 教 材 を工夫することを提案する。そして、学習を促進する教具の工夫として「 人 体 図 」の活用
の提案も併せて行う。「人体図」は、教師が指導したい身体の意識ポイントの視覚化を図ること、教師
と生徒の共通認識を深めることをねらいとする。 (5) 授業者の授業観 本授業では受身の習得、つまり受身の動きを身に付けることが大きな課題である。そして今回の授業
で取り組む前受身では上半身を前腕で支える姿勢づくりが、後受身では背中に丸みを持たせる姿勢づく
りが、横受身では頭を起こす姿勢づくりがそれぞれ必要とされる。したがって授業ではこれらを中心に
指導を行いたい。 姿勢づくりを重視した動きを身に付ける指導法として、器械運動を対象として意識するポイントを焦
点化・視覚化する指導法がある。この指導法では運動に必要な身体の意識ポイントを焦点化・視覚化す
ることによって、よりよい運動・動き方を導く指導法である。この考え方を参考に本授業に部分的に取
り入れ、受身の際の姿勢づくりについては「縦と横のアーチ」というキーワードを設定し、動きの意識
を焦点化し、掲示物や学習カードにおいて図示することで視覚化を図った。この指導法を用いて生徒に
受け身の姿勢づくりを意識させていきたい。 6.
単元計画(7 時間取扱い) 7. 学習活動に即した評価規準 •
•
運動への
運動についての
関心・意欲・態度 思考・判断 運動の技能 運動についての
知識・理解 相手を尊重しあうため •
受身や相手の転がし方 •
投げ技の学習で基本と •
技の名称や学習した技
の作法、所作を守ろう
(投げ方)を身に付け
なる受身の動作ができ
術的なポイントについ
としている。 るためのポイントを見
る。
て,学習した具体例を
危険な動作を行わない
付けている。
動きの中で、学習した
挙げている。
、他の組との間隔を十 •
安全上の留意点を他の
受身を正しく行うこと 分にとって活動する。 練習場面に当てはめて
ができる。
•
いる。 •
正しい姿勢で相手と組
むことができる。 (参照:評価規準の作成のための参考資料、国立教育政策研究所)
※ 今回は、模擬授業提案のため、評価計画については省略してある。
8. 本時の学習 (7 時間中の 3 時間目) (1) 本時の目標 •
•
動きの中で、学習した受身を正しく使うことができるようにする。(技能) 受身や相手の転がし方(投げ方)を身に付けるためのポイントを見付けることができるように
する。(知識、思考・判断) (2) 準備・資料 柔道着 18 着・ホワイトボード 1 つ・電子タイマー1 つ・エクササイズ用リング 9 個
(3) 本時の展開 指導上の留意点
段階
時間
学習活動
評価の観点と規準
00 分
導入
(3 分)
1.
整列、挨拶、出欠確認をする。
•
柔道着の着方で時間のかかる生徒には、柔
•
3 列縦隊に整列。
道着を上手く着ることができる生徒に補助
•
座礼にてあいさつ。
をするよう伝える。
•
出欠確認および健康観察
•
見学者の確認
•
整列では畳の目に合わせて座り、前後左右
に一枚分の間隔を取るように指示し、安全
面に十分配慮する。
•
○ ○ ○ ○ ○ ○
爪が伸びていないか、ヘアピンなどをして
いないか確認し、安全上必要な事項ができ
ていない場合は、ヘアゴムに替えさせるな
○ ○ ○ ○ ○ ○
どの指示をする。
•
○ ○ ○ ○ ○ ○
書くよう,観る視点を指示する。
•
○ ○ ○
3分
(8 分)
2.
準備運動を行う。
•
“ダイナミックストレッチ”を行う。
•
回転運動(マット運動)を行う。
•
前転・後転、開脚前転・後転を 2 回ずつ
見学者には、学習カードに気付いたことを
始業の挨拶は、座例で行い、礼法について
確認できるようにする。
(教材案 2—①および 3—①を参照)
•
ストレッチでは体の上部からほぐしてい
くようにする。
•
教師は、動作を大きくわかりやすく示すと
ともに、積極的に声を出して、場を盛り上
げるように工夫する。
•
ストレッチをやめるときは、全員が動きを
ストレッチでは教師の動
止めて注目してから次の動きへ移るよう
きをまねしながら間断な
にする。
く体を動かしてみる。
•
•
“二人組で転がる運動”で受身のポイント
を学ぶ。
受身のポイントについて生徒に発問しな
がら再度説明する。
•
足の裏を合わせて座り、右側から太もも→右
腰→背中→左腰→左太ももと順番に設置し
ながら元のように座る。これをペアで協力し
ながらおこなう。
•
右側からできた生徒は、左側からも行うよう
指示する。
3.
本時のねらいを確認する。
•
はじめの隊形に整列・着座する。
ポイントを復習して、正確に受身を取るこ
•
本時のねらいについて板書で確認する。
とができるようにすることに加えて、柔道
•
この授業では、前回学んだ基本の形と意識
的な動きの中で受身を取る学習を行うと
板書
いうことを確認する。
【受身を確実にできるようにしよう。】
【動きの中で受身を使えるようにしよう。】
•
見学者も安全に授業を行うためにガード
役などで授業に参加できるようにする。
•
前回学習した受身について,感覚と動きの
復習を十分に行なわせ、正しい受身の定着
を図る。
•
前回と今回で学習する受身について柔道
的な投げの動きの中での使い方を指導す
る。
•
受身がまだ十分にできない生徒において
はスピードや力を抑えた状態から始める
ように声かけを行う。
展開 1
11 分
4.
(7 分) •
•
受身のポイントとなる意識を復習する。
•
頭を打たない・体を衝撃から守るために
はじめの隊形に整列・着座する。
「アーチ姿勢をキープすること」につい
掲示物を見て意識するポイントを学ぶ。
ての理解を深めさせる。そのため、教師は
掲示物
強調してインストラクションで伝えるよ
うにする。
•
人体図を用いるとともに、該当する部位を
手でさすなどして説明を行う。縦・横のア
ーチの 2 点を意識するように、説明をする。
体操競技的な表現では
「胸を含む」姿勢という。
5.
3 種類の受身の確認を行う。
・前受身の復習(膝立ちから)
(教材案 2—②および 3-②を参照)
•
すべての受身について、3 回練習→アドバ
イスをうけ修正→3 回練習という順で指導
する。
•
それぞれ受身の学習では生徒が実施した
後に、人体図で説明した意識するポイント
を踏まえて多くの生徒ができていない点
を 1 つずつ指摘して、改善を促す。後受身、
横受身も同様に行う。
膝立ちの状態から前に倒れる。顔の前で“三角
形の窓”を作り、それを崩さないようにして、
•
指先から肘までで畳を叩く。
・後受身の復習(蹲踞から)
大きくはっきりと数を数える。また、指摘
する際は、前受身では「縦・横のアーチ」
を、後ろ受身では「縦のアーチ」を、横受
身では「横のアーチ」を強調して指導する
ようにする。
※ 技術的なポイントや専門的な助言について
の詳細は教材案に示した。
前後左右に十分な間隔を取る。狭いときは互い違いになる
など、安全を配慮した工夫を行う。畳を打つ位置は体から
45 度くらい開いた位置で叩く。また指は閉じる。
・横受身の復習(仰向けから)
横受身では手だけでなく、脚でも畳を
打つようにする。
そのために、打つ手と同じ側の脚を伸
ばす。逆の足は立てて、畳を底辺、膝
を頂点に三角形を作るイメージ。
展開 2
18 分
6.
手押し相撲を行う。
(教材案 2—③および 3-③を参照)
(7 分)
•
3 人組をつくる。
•
•
2 人が向かい蹲踞の姿勢で押し相撲をする
人組をつくる。柔道の特性上、同性の組を
•
負けるか 3 回続けて勝ったら交代する。
つくるようにする。その場合に余る生徒が
•
5 分間対戦を行う。
いた際には 4 人組とする。
•
受身を行った隊形からすばやく背の順で 3
2 人が対戦している間、もう 1 人は周りと
ぶつからないように安全を確保するとと
ガード
もに、受身が正しくできているかを見る。
受
受け身に必要な身体の意識ポイントに注
意しながら行う。
取
•
ゲーム性の強い教材を採用ため、周囲の安
全と規律を維持するような声かけを積極
的に行う。
【押し相撲動画】
(教材案 2—④および 3-④を参照)
25 分
•
(10 分)
リングを用いて相手に崩され、転がされる
際の横受身について学ぶ。
7.
リングを用いて横受身の学習を行う。
•
(取)リングを使って転がす。
げ、受の体重を前方に掛けさせてバランス
•
(受)リングをつかんで横に転がる。
を崩す。さらに合図で左足を右足の後ろに
•
はじめの 3 分間は足の形の学習をする。
引き、体を後ろに回して受の生徒を前方に
•
つぎの 3 分間は手の形の学習をする。
転がすように指導する。
【横受身の教材 1 動画】
•
•
教師の合図で、取はリングを胸まで引き上
はじめ、受は転がされる際にリングから手
を離さず、受身の際の足の形の学習をする
ように指導する。またその際に取は相手を
崩して転がすことを意識できるように指
導する。
•
3 分経過後、受は転がされた際に左手を離
し、転がされる際の横受身、特に手の形に
ついて学習する。
•
受の生徒は帯に体重を預けるようになる
ので、取の生徒には体制を維持するよう徹
底する。受身の学習を実施していない生徒
については、押し相撲と同様に安全の確保
を徹底する。
応用
35 分
8.
膝立ちで組み合って、横受身の学習を行う。 (教材案 2—⑤および 3—⑤を参照)
(12 分)
•
お互いに右組で組み合う。
•
取は受を前方に引き出し、転がす。
•
受は転がるタイミングで横受身を取る。
•
8 分間 3 人でローテーションする。
•
全員を教師に注目させてからインストラ
クションを始める。
•
【横受身の教材 2 動画】
目標としてイメージを具体的に持たせる
ために膝車の完成系を示して説明をする。
•
受・取ともに膝立ちの姿勢状態で行い、も
う一人は周囲とぶつからないように安全
を確保する。
•
この後の学習を考慮して、投げに関する助
言ではなく、受の受身の体勢や動きに関す
る声かけを中心に行う。
•
取の生徒に指導する際は、先ほどの横受身
の学習 1 と同様に、前方に引き出すという
点を中心に指導する(相手を崩す感覚を学
ぶようにする)。
u
動きの中で、学習した受身を正しく使うこ
とができる。(運動の技能)
u
受身や相手の転がし方(投げ方)を身に付
けるためのポイントを見付けている。
(運動についての思考・判断)
まとめ
47 分
9. 学習カードの記入をする。
•
今日の授業を通して気付いた点について
発表させ、意識するポイントを共有する。
(3 分)
10. 整列、挨拶、健康観察、次回の説明
•
見学者にも、感想や気付いたことについて
•
はじめの隊形に整列。
発表させ、授業に参加できるようにする。
•
健康観察をおこなう。
•
次回の授業の説明を聞く。
(膝車)を学習することを伝える。
•
教師の合図で座礼を行い、授業を終了する。 •
受身の学習から投げ技の学習に接続する
•
次回は、本時の受身の学習に加えて投技
イメージがもてるようにする。
9. 本時で設定した教材、教材で達成すべき学習課題、達成の基準 1.
学習課題 • 準備体操等を通して、本単元のポイントとなる意識を理解する。
• 本時の内容ならびに目標を理解する。
• 「アーチ」という、授業内のキーワードについて理解する。
• 受身の復習では「アーチ」の意識をもって取り組む。
• 押し相撲や横受身の学習 1 では、受身の復習で学んだ意識を柔道的な一連の動きの中でも保持し、
十分な受身ができるようになる。
• 横受身の学習 2 では相手の力や動きに応じて転がされるという柔道的な一連の動きの中でも意識
を保持し、十分な受身ができるようになる。
2.
条件・ルール ① 準備体操 どちらの運動もペア(あるいは 3 人組)で行う。
はじめに“ダイナミックストレッチ”を行う。教師の動きを模倣しながら、体を動かしながら伸
ばす。ストレッチでは体の上部からほぐしていく。ストレッチでは間断なく体を動かす。
続いて、回転運動(マット運動)を行う。前転〜開脚後転までを行い、体を丸めるという動きを学
ぶ。
最後に、二人組で転がる運動を行う。二人組を作って、一人が自分の足の裏を合わせて座り、右
側から太もも→右腰→背中→左腰→左太ももと順番に設置しながら元のように座る。ペアで体を動
かしながら、ポイントとなる「縦のアーチ」と「横のアーチ」について意識を強調し、学習する。
【運動の順番】 • 首を回す→肩を上下させる→肩を回す→腰を回す→腰を反らせる→膝を回す→屈伸する→腰割
りをする→アキレス腱を伸ばす→手首足首を回す。
• 前転→後転→開脚前転→開脚後転
• 足の裏を合わせて座り、右側から太もも→右腰→背中→左腰→左太ももと順番に設置しながら
元のように座る。ペアで交代して、逆回転もやってみる。
【達成基準】 • 教師の動きをまねて運動をしている。
• 行うストレッチの意図を理解して実施している。
• ペアの生徒に積極的に声をかけている。
• 教師から指示された動きについて意識して実施している。
② 受身の復習 整列した隊形のまま、左右前後に一間ずつ十分な間隔をとって、それぞれの受身の確認を行う。
まず、教師の掛け声に合わせて一斉に 3 回受身を行う。その後、教師から改善のためのアドバイ
スを受けてさらにもう 3 回受身を行う。
【各受身のポイント】
受身の役割は顔や背中、お腹などを投げられたり技を掛け損じたり、その他体勢が崩れた際に
自分の体を守るために用いる技術である。そのため最も重要なことは顔や背中、お腹を畳に打た
ないようにするということである。
前受身 膝立ちの姿勢から顔の前で三角形を作り、指先から肘までを一度に着く。その際に顔・胸・お
腹が畳につかないように「縦のアーチ」と「横のアーチ」に注意する。
後受身 蹲踞(そんきょ)の姿勢から、お尻を後ろに落として、お尻→腰→背中の順で畳に着く。腕は
体から 45 度開いた状態で畳を打つ。その際、頭を打たないように「縦のアーチ」に注意する。
横受身 仰向けの姿勢から、両足を上げて受身をする方向に体を向ける。右の横受身の場合は右足を伸
ばし脚全体で畳を打つようにし、左足は曲げて足の裏で畳を打つようにする。右手は体から 45
度ほど開いたところを打ち、左手は帯の結び目あたりに置く。その際、頭を打たないように「横
のアーチ」に注意し首を少し起こす。
【達成基準】 •
「アーチ」ができているか。正しい受身の体勢ができている。
•
教師の指摘を受けて、そのポイントに注意をして修正している。
•
教師の合図に合わせて、受身を行えている。
③ 押し相撲(後受身の学習) 3 人組を作って、5 分間対戦をする。お互い向かい合って、教師の掛け声で手を押し合う。バラ
ンスを崩した方は後ろ受身を取る。なお、対戦を始める前にグループのメンバーに 1〜3 と番号を
振り、対戦順を決める(1vs2→2vs3→3vs1・・・)。
このとき対戦していないもう 1 人は対戦している 2 人が周りとぶつからないように安全を確保す
るとともに、後受身が正しくできているかを見る。
受け身に必要な身体の意識ポイントに注意しながら行う。
【達成基準】 •
相手の力に応じて、受身が取れる。
•
受身が正確に使える。
•
仲間の安全を配慮して行動できる。
④ 横受身の学習 1 押し相撲のグループのまま行う。
本教材はリングを用いて実施する。先ほどの押し相撲で 1 となった生徒(取)は起立した状態で、
2 の生徒(受)が膝立ちの姿勢でリングを持つ。3(ガード役)は周りとぶつからないように安全
を確保するとともに、意識ポイントを押さえた受け身が正しくできているかを見る。
教師の合図で、取はリングを胸まで引き上げ、受の体重を前方に掛けさせてバランスを崩す。さ
らに合図で左足を右足の後ろに引き、体を後方に回して受の生徒を前方に転がす。
はじめの 3 分は受身を取らずに、取の生徒の動きについていくようにする。つぎの 3 分で取がし
っかりと転がすことができるようになってから、受の生徒は左手を離して、横受身を取る。
これを交代しながら 3 人全員が実施する。
【達成基準】 •
相手の力に応じて、受身が取れる。
•
受身が正確に使える。
•
仲間の安全を配慮して行動できる。
⑤ 横受身の学習 2 引く続き、3 人組で行う。
本教材は膝車の学習過程を活用して実施する。受・取の生徒は膝立ちの状態で実施する。残りの
一人は周囲とぶつからないように安全を確保する。取は受に対して 90 度体を開いたところで、受・
取ともに右組で生徒は引き手と釣手を持ち相手を前方に引き出し、相手を前方に転がす。その際に
受は横受身を取る。
これを一人 2 回投げたら交代して 3 人全員が実施する。
【達成基準】 •
受身を取る際に「アーチ」ができているか。正しい受身の体勢ができている。
•
相手を前方に引き出し、崩せている。
•
取の生徒は引き手を離さないで転がしている。
3. 専門的な指導・助言(予想される生徒のつまずきとそれに対する発問やフィードバック)
• 受身の際に頭を打つ 顎を引いて縦のアーチを強く意識する。
• 相手を崩せない 受身の学習なので、受の生徒が崩れるきっかけを作ってあげるようにして実施する。
• 受身を取ることができずに、手をついてしまう いきなり受身を打とうとするのではなく、ゆっくりとしたスピードの動きの中でまずは転がって
みるところから始めて、徐々にスピートや強さを高めていくと良い。
• 軸がぶれる 顎を引いたり、なにか目標物を見たりしながら行うと良い。
4. 学習資料 別紙 1 参照
引用・参考文献 花田敬一他(1984)武道に対するイメージについて−比較格技の立場から−,日本体育学会大会号(36)740
鹿屋体育大学生涯スポーツ実践センター(2010)中学校における武道必修化に関するアンケート調査 調査報告書
小俣幸嗣(2012)初心者から指導者まで使える武道の教科書,pp6-71,成美堂出版
文部科学省(2012)柔道の授業の安全な実施に向けて
文部科学省(2013)学校体育実技指導資料第 2 集柔道指導の手引(三訂版)
文部科学省(2008)中学校学習指導要領解説 保健体育編,東山書房
中村賢(2014)動きを変える意識誘導型指導法,『楽しい体育の授業』2014 年 4 月号〜2015 年 3 月号,明治図書
野瀬清喜他(2009)武道必修化に伴う柔道指導法のあり方について(第 1 報)—学習指導要領改訂と保健体育編改
善の趣旨や内容を中心に—埼玉大学紀要教育学部 58(2):17-34
高橋進他(1986)柔道に対する高校生の意識構造について(その 2)—学年差における意識の差異—,武道学研究 19-2
高橋進他(1987)柔道に対する中学生の意識構造について,武道研究 20-2.
別紙 1
柔道☆学習カード 7回中 回目の授業 学習した日 月 日 ( ) 色 ・ 番号 ・ 氏名 ☆<身体の意識ポイント>は、意識したポイントを振り返り、図に印をつけましょう。 ☆<技能ポイント>は、項目を読み、よくできた◎、できた○、できなかった×をそれぞれつけましょう。 ★は意識ポイントと関連する項目です 1.前受け身 <身体の意識ポイント> 技能ポイント項目 額の前で三角形の窓を維持できた 指先から肘を意識してたたみをたたく ことができた ★受け身をしたときに顔・胸・お腹がたたみ につかなかった 2.後ろ受け身 <身体の意識ポイント> 技能ポイント項目 たたみを打つ角度40度くらいを意識できた 腕全体でたたみをたたくことができた ★頭を打たずに受け身ができた 3.横受け身 <身体の意識ポイント> <技能ポイント項目> たたみを打つ手と同じ側の脚をのばすこと ができた 手と脚でたたみをたたけた たたみを打たない方の脚を立てて三角形を 作ることができた ★受け身をしたとき背中がたたみにつかな かった 4.膝立ちで組み合った体勢からの横受け身 <身体の意識ポイント> ²
取りの技能ポイント あてはまるもの番号に○をつけて振り返りま 受けの生徒に対して・・ しょう。 90度に体を開いて右組みで組むことができた 前方に引出してバランスを崩せた 動きの中で、受け身をとる練習では、 受けを横転させることができた 1 縦のアーチだけ意識できた 引き手をはなさずに受け身をとらせた 2 横のアーチだけ意識できた 3 両方のアーチを意識できた 4 両方のアーチを意識できなかった 5.今日の学習で気づいたこと、学んだこと、次回の課題などを書きましょう