2012 年度 電子回路論 中間試験 問題と解答例 1. 図 1-1 の線形回路について,以下の問いに答えよ。(10 点) 3 kΩ Z0 9V v0 6 kΩ 図 1-1 図 1-2 (1-1) Thevenin の定理を使えば, 図 1-1 の回路は図 1-2 のように簡略化することができる。これを参考にして, 図 1-1 の回路の出力インピーダンス Z0 を求めよ。下の選択肢から選んで答えよ。 (a) 1 kΩ (b) 2 kΩ (c) 3 kΩ (d) 4 kΩ (e) 5 kΩ (f) 6 kΩ (g) 7 kΩ (h) 8 kΩ 1 1 1 ⇒ 2 [kΩ] (b)が正解。 3 6 (1-2) 図 1-1 において 9 V の電源は,図 1-2 では何 V の電源に置きかえられるか?下の選択肢から選んで答え よ。 (a) 1 V (b) 2 V 9 ⇒ (c) 3 V (d) 4 V (e) 5 V (f) 6 V (g) 7 V (h) 8 V 6 6 [V] (f)が正解。 3 6 2. 図 2-1 は,授業で最初に説明した C-R 一次フィルターで,左側が入力,右側が出力となる。以下の問いに 答えよ。(20 点) Vin 10 μF Vout 100Ω 図 2-1 (2-1) この回路は次のうちどのような機能をもつか?下の選択肢から選んで答えよ。 (a) 電圧変化の大きい信号成分のみを通過させる。 (b) 電圧変化の小さい信号成分のみを通過させる。 (c) 上限と下限の間の特定の周波数成分のみを通過させる。 (d) 上限と下限の間の特定の周波数成分のみを遮断する。 ⇒ high pass filter になっているので(a)が正解。 (2-2) この回路の時定数を計算せよ。 ⇒ 1 ms に決まっている。 (2-3) 入力を 0 V から 10 V に変化するステップ電圧としたときの出力電圧波形をできるだけ正確に描け。図に は目盛りを設定し,時間軸の 1 目盛りを時定数に等しくすること。 (2-4) この回路の周波数特性(電圧利得と位相)を描け。周波数は対数表示,利得(gain)は dB 表示となっている こと,電圧利得を A を dB 表示するときは 20 log A となることに注意せよ。円周率を 3 としてもよい。 1/4 3. 大学合同のパーティーの飾りつけ(decoration)で,発光ダイオードを光らせることになった。K 大学の学生 たちは直流電源のみで一定の強度の光を出す回路を提案したが,豊橋技術科学大学で「技術を創る」こと を学んでいる学生たちは,光の強度が時間とともにゆっくり変化する図 3-1 のような回路を提案した。当 然豊橋技術科学大学の提案が採用された。交流電圧源は可変周波数のものとし,周波数を 1 Hz 程度より低 くすることにした。以下の問いに答えよ。(20 点) vi 3V ID 順電流 ID (mA) R VD 図 3-1 順電圧 VD (V) 図 3-2 (3-1) 入手した赤色発光ダイオードの特性を図 3-2 に示す。直流電源電圧を 3 V として,交流電圧 vi が 0 V の とき発光ダイオードの順電流 ID を 22 mA とするには,制限抵抗 R を何 Ω とすればよいか?下の選択肢か ら選んで答えよ。 (a) 10 Ω (b) 20 Ω (c) 50 Ω (d) 100 Ω (e) 200 Ω (f) 500 Ω (g) 1 kΩ (h) 2 kΩ 負荷線は(3 V, 0 mA)と(0 V, 60 mA)を結ぶので、その傾きより 50 Ω。(c)が正解。 ⇒ (3-2) (3-1)で選択した条件で,vi が-1 V から+1 V まで変化したとき,発光ダイオードに流れる電流の範囲を 〇〇 mA から〇〇mA のように表現して答えよ。 ⇒ vi が-1 V のとき、負荷線は(2 V, 0 mA)と(0 V, 40 mA)を結ぶので、ダイオードの特性曲線との交点の電流は 5 mA。vi が 1 V のとき、負荷線は(4 V, 0 mA)と(0 V, 80 mA)を結ぶので、ダイオードの特性曲線との交点の 電流は 40 mA。5 mA から 40 mA。 (3-3) (3-2)の条件において,発光ダイオードの最大瞬時(instantaneous)消費電力はいくらか? ⇒ ダイオードに 40 mA 流して 2 V の電圧降下があるときが最大電力となる。80 mA。 (3-4) (3-2)の条件において,制限抵抗 R の最大瞬時消費電力はいくらか? ⇒ 抵抗に 40 mA 流して 2 V の電圧降下があるときが最大電力となる。80 mA。 4. 図 4-1 は MOS トランジスタを使用した増幅回路である。以下の問いに答えよ。(40 点) 図 4-1 (4-1) 図 4-1 の回路は何と呼ばれるか?下の選択肢から選んで答えよ。 (a) ソース接地増幅回路 (b) ドレイン接地増幅回路 (c) ゲート接地増幅回路 ⇒ (a)の「ソース接地」が正解に決まっている。 (4-2) R1 と R2,RS,C1 と CS の目的は何か?それぞれ最も適切なものを下の選択肢から選んで答えよ。 (a) 直流バイアス(bias)点を決定する。 2/4 (b) 直流バイアス点が変動しにくいようにする。 (c) 交流成分を通過させる。 (d) ゲートに加わる交流電圧を大きくする。 (e) 出力電圧を取り出す。 ⇒ R1 と R2 はゲートにバイアス電圧を与えている。(a)が正解。直流 R1 と R2 とともにバイアス点を決定する と同時に電流帰還抵抗となり、バイアス点を安定させる。バイアス点安定化が最も重要な機能となるので、 (b)が正解。C1 は結合容量、CS はバイパス容量となり、いずれも交流成分を通過させる。(c)が正解。 (a) ゲート・ソース間電圧 VGS と (b) ドレイン・ソース間電圧 VDS と ドレイン電流 ID の関係。 ドレイン電流 ID の関係。 図 4-2 (4-3) 使用する MOS トランジスタの特性を図 4-2 に示す。電源電圧 VDD を 15V とし,帰還抵抗 RS=0 Ω とし たときのバイアス点のドレイン電流を 2.0 mA,ドレイン・ソース間電圧を 10 V とする。想定すべき直流負 荷線を(b)図に描け。 ⇒ (15 V, 0 mA)と(10 V, 2.0 mA)を結ぶ線となる。 (4-4) (4-3)の負荷線をもとに,ドレインにつながる負荷抵抗 RL として適当な値を設定せよ。 (a) 500 Ω (b) 1.5 kΩ (c) 2.5 kΩ (d) 3.5 kΩ (e) 4.5 kΩ (f) 5.5 kΩ (g) 6.5 kΩ (h) 7.5 kΩ ⇒ 負荷線の傾きより 2.5 kΩ。(c)が正解。 (4-5) (4-3)および(4-4)の条件で,バイアス点におけるゲート・ソース間電圧 VGS はいくらになるか? 下の選択 肢から選んで答えよ。ただし,ゲート・ソース間電圧とドレイン電流の関係が図 4-2(a)の実線(solid line)で 表されているものとする。 (a) 1 V (b) 1.1 V ⇒ (c) 1.2 V (d) 1.3 V (e) 1.4 V (f) 1.5 V (g) 1.6 V (h) 1.7 V ドレイン電流が 2.0 V のとき、ゲート・ソース間電圧は 1.3 V となっている。(d)が正解。 (4-6) 下の文は,電流帰還バイアスの設計を述べている。下線部分に入るべき適当な語句または値を答えよ。 (4-3)から (4-5)のようにしてバイアス点を設定しても,温度が変化したり,製品間のばらつきがあったり して,4-2(a)図の特性は必ずしも実線のようにはならないので,バイアス点が状況によって変動する。その 変動の幅が破線(broken line)で示された範囲であるとする。帰還抵抗 RS が 0 Ω であったとすると,特性の変 動によりドレイン電流はおよそ (1) 1 mA から (2) 3 3/4 mA の間で変動する。バイアス点におけるドレ インの対地電位が 15 V に近くなると,出力波形の高電圧側が欠落し,信号が正しく増幅されない可能性が ある。そこで,バイアス点を安定化するため,帰還抵抗 RS を使用する。バイアス点のドレイン電流を 1.6 mA から 2.4 mA の間に抑えるためには,帰還抵抗 RS の値は, (3) 150 Ω 程度が適当である。 RS をこのように設定したとき,バイアス点のドレイン電流を 2.0 mA とすると,ソースの電位は接地電位 に対して (4) 0.3 V 上昇しているので,ゲート電圧(接地電位から見たゲートの電位)は (5) 1.6 V と なっている必要がある。抵抗 R1 を 100 kΩ に決めると R2 は, (6) 12 kΩ 程度が適当である。 キャパシタ C1 と CS の静電容量は,交流信号を通過させるのに十分大きい値とすると,設計した回路の入 力インピーダンスは (7) 11 kΩ となる。バイアス点における相互コンダクタンス(授業で出てきた gm)は 13 mS 程度であるので,ドレイン・ソース間抵抗(授業で出てきた rd)が負荷抵抗 RL に比べて非常に大きい としたときの電圧増幅率は (8) 33 (-33) 倍 程度となる。 ⇒ 図から数値を読取りますので、誤差が生じます。採点のときは、正解に相当な幅を持たせます。 5. 図 5-1 は MOS トランジスタを使ったドレイン接地増幅回路である。次の問いに答えよ。(10 点) 図 5-1 (5-1) H 電気㈱の採用試験でグループ討論があり,電子回路のことが話題になった。K 大学の Y 君は, 「大学で ドレイン接地回路を学んだが,ドレインと接地電位の間には直流電圧が加わっているので,ドレイン接地 という名称は実態と異なる。しかも電圧増幅率が 1 よりも小さいので,回路設計の現場ではほとんど役に 立たない。」と発言した。しかし豊橋技術科学大学で「技術を究める」ことを学んだあなたは,この回路の 意味と重要性をよく理解している。Y 君の意見に反論する下の文の下線部を完成させよ。日本語または英 語を使用してよい。 また, 例文を参考にしてもよい。 (日本語は 200 字以上 300 字以内,英語は 100~150 words 程度) (反論) 確かにドレインは直接接地されていないので,誤解されやすい名称ではある。また電圧増幅率が 1 より小さいので,電圧増幅器としては役に立たないようにも思える。しかしよく考察すると,ドレインは 定電圧原を介して接地されており、この電圧は入力信号の如何にかかわらず一定なので、小信号解析にお いては(交流的には)接地されていると考えてよい。これが「ドレイン接地」たる所以(ゆえん)だ。この回路 は入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いので、緩衝増幅器としての機能が期待できる。 このため内部インピーダンスが高いセンサからの信号を受けたり、入力インピーダンスが低いデバイスに 信号を出力する目的に使用できる。私も以前は Y さんと同じような考えを持ったが、豊橋技術科学大学で 電子回路の授業を受けてずいぶん判るようになった。Y さんとも技科大で一緒に学びたかったですね。 ⇒ Y 君の面子を完全に潰さないようにしつつ、自分をアピールするのがいいと思います。最後の一文は余計。 4/4
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