富士山入山料制度の改善点 奥井 元貴 フローチャート 0,発端 1,問題意識 2,現状分析 3,政策提言 0,発端 2014/07/15 日本経済新聞夕刊 13 ページ 1,問題意識 使途の不透明性 •富士山の環境整備 •登山者の安全対策 •富士山の情報発信 •などの内容の11事業 富士山保全協力金事業選定委 員会で具体的に決められた (後述) しかし予算配分は現在未定 徴収目的の曖昧さ •一般的な入山料,入域料の目的は3つ •①高額な金額による登山者抑制 •②環境保全のための管理費の徴収 •③登山者,入域者への保護費の徴収 富士山の入山料制度: 1 人 1000 円,任意徴収 ①の効果は果たせない ②,③の費用も十分ではない 徴収率の想定外の低 さ 任意徴収の難しさ •2013年 68.3% 2014 年度の山梨県の試算では 徴収率は 80%の予定だった •2014年 56.1%(山梨) 徴収コストの増大 静岡県発表 •2013年度 •収入 1497万円 •人件費等の事業費 704万円 問題意識 徴収する主体である行政(山梨,静岡両県)にとって 入山料の目的,使途が明確でないのは問題である。 2014 年度 7900 万円の入山料収入を試算 し 4400 万円を人件費等に使用 2,現状分析 富士山保全協力金の実績 期間 2013 年度 2014 年度 7/25~8/3 の 10 日間 7/1~9/14 の 76 日間(山梨) 7/10~9/10 の 63 日間(静岡) 徴収率 68.3%(山梨) 徴収合計金額 56.1%(山梨) 80%(山梨) 参考)徴収率試算1 1915 万 7950 円(山梨) 約 9701 万円(山梨,8 月末) 1497 万 4472 円(静岡) 約 4038 万円(静岡,8 月末) 2 億円(山梨) 参考)徴収合計金額試算 7900 万円(静岡) 事業費 7907 万円(静岡) 約 1 億 6000 万円(山梨,8 月 末) →実施されてまだ日が浅いので単純な比較はできない。 しかし試算の甘さ、それに伴う事業費の増加は確認できる。 富士山保全協力金使途2(山梨県) 大別すれば 3 つに分けられる。 人件費 • 富士山域の巡回を行う富士山レンジャーの増員 • 傷病患者等の搬送用車両のオペレーターの配置 • 通訳案内士の配置 設備投資 • 登山道の整備や案内看板、道標、手摺、防護柵等の補修 • 富士山の現地連絡本部や警察、救急隊等がいる五合目総合管理センター の機能拡大 • 安全登山のための啓発ビデオの制作 • 24時間対応可能なインターネット通訳サービスの提供 緊急に必要な経費 • 9月1日~15日まで、開山期間が延長したためかさんだ費用(公衆トイレや 安全誘導員、管理センターの運営費)の補填 試算は 2013 年度の実験的導入を受けて行われた。 山梨県のホームページを参考 http://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sgn/kyouryokukin0226-2.html#shito 1 2 →登山者から徴収した入山料を登山者保護に使う受益者負担の原則通り →しかし入山料のこうした事業内容はホームページにのっているだけで登山者に周知 されているとは言えない。 富士山登山者推移3 →2008 年から 2013 年までは年 3 0 万人を超える →2014 年は大幅に減少4、しかし入山料による登山者抑制の効果があるとは言い難い 富士山における登山者規制 マイカー規制 麓の町から登山口までの道路をシャトルバスやツアーバス、タクシーのみ通行可とする 規制。自家用車は麓の有料駐車場に停める。 今年は 7,8 月の繁忙期に 20~60 日間行われた。(昨年までは 10~30 日間程度) シャトルバス 30 分間隔 往復 1500~2000 円 シャトルタクシー 駐車代金 片道 3500~5000 円 1 台 1000 円 合計 2000 台駐車可 →バスの運行本数や駐車場の台数の制限により登山者抑制の効果は高い 期間は 7/1~8/31,環境省のページより作成 http://www.env.go.jp/park/fujihakone/data/fuji_tozansha.html 4 これは残雪により一部の登山道の開通が 10 日ほど遅れたことやマイカー規制の強化が原 因であるとみられる。 3 3,政策提言 a)目的について 一般的な入山料,入域料の目的(再掲) ①高額な金額による登山者抑制 ②環境保全のための管理費の徴収 ③登山者,入域者への保護費の徴収 これら 3 つの目的を満たす入山料制度を提案する。 ①登山者抑制 目標 2008~2013 年5の登山者数 30 万人を 2005 年時点の 20 万人まで抑制 (33%の抑制) 入山料自体で登山者抑制を行うのは高額な入山料設定が必要。 (現状の登山者数だと 10000 円で 39%の抑制効果67) また徴収が任意ではいくら高額にしても徴収率が下がるだけで無駄である。 入山料制度以外の方法で登山者抑制を行う。 ・マイカー規制の強化 ツアーバスの乗り入れを制限する。 →ツアーバスの乗り入れは現状より少ない枠数を決め、各ツアー会社に割り当てる。 シャトルバスを運行する民間のバス会社へ補助金を与え、増便させる。 シャトルタクシーを随時通行禁止に シャトルバスのない山梨側でもシャトルバスの導入を進める。 メリット ・確実に登山者数を減らせる デメリット ・ツアー自体が減少し、五合目まで行って帰る観光客まで減少 →観光に悪影響が出る ・増便の補助金の規模が大きくなりやすい ・タクシー会社の確実な収入源がなくなる 5 2014 年は最新の年だが、天候等の影響を加味し除外した。 6栗山浩一「富士山入山料の効果」2010 7これは入山料が強制徴収の場合を想定しているため、注意。 ②,③環境保全と登山者保護のための費用創出 現状の徴収率の低さでは事業費が入山料収入を上回る。 入山料を他の料金に上乗せする形で徴収する。(強制化) マイカー規制のシャトルバス料金に上乗せ 現状のシャトルバス料金はシャトルタクシーの料金より安いため、ある程度値上げして も登山者はシャトルバスを使いたいと考える。 →値上げ分をバス会社から県に入山料として払わせる。 ツアーバス,シャトルタクシー,バイクから料金を徴収 麓から登山口へ至る有料道路の通行料にある程度上乗せ →登山口へ至る道は他にないので払わざるを得なくなる。 ツアーバスやシャトルバスの通行料はツアー料金や運賃の形で登山客から支払われる。 既存の入山料制度(五合目で人員を割いて徴収する方式)は廃止 メリット ・払い漏れがなく確実な収入が望める ・既存の施設を生かすだけで入山料の徴収が行え、人件費もほとんどかからない デメリット ・入山料を登山客が直接支払うことはないため、登山客の環境保全意識が上がらない →ごみ処理などの費用がかさむ可能性がある b)使途について 登山者保護の現状の予算の使い方は維持し、a)によって新たに増えた入山料収入を登 山道以外の環境保全や登山者への環境保全の重要性を伝える。また随時インターネッ トのほかにポスター等で使途を明確に周知し監視される体制を作る。 富士山周辺の観光地での景観整備や富士山の清掃イ ベントの開催といった環境保全意識の向上や入山料 使途の周知に入山料収入を使う。 メリット ・使途が明確になり、登山者からの不信感が払拭される デメリット ・無駄な事業に使われる可能性が高くなる。
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