ヒトiPS細胞由来肝細胞 Application Note 3 Cellartis® Enhanced hiPS-HEP ∼毒性評価のための新しい細胞モデル ∼ はじめに 創薬には15年 以 上の歳月を要します。そのため、医薬品開発の後期に予期せぬ毒性を検出して新薬候 補の開発を中止する ことは、製薬業界では大きな損失となります。肝毒性は、開発後期に候補薬が消えていく主な要因のひとつです。 肝毒性に関する現在のモデルシステムと安 全 性評価は十 分なものではなく、薬物試 験のために改 良された新たな細胞モデ ルが必要とされています。 Cellartis ® Enhanced hiPS-HEPは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来の肝細胞です。凍結保存されたヒト肝細胞と 同様の薬物代謝機能酵素が見られ、肝毒性評価の新たなモデルとして利用できる可能性があります。 Application Note 3では、Cellartis ® Enhanced hiPS-HEPに対して臨床的に肝毒性が認められている薬物を曝露 し、WST-1アッセイを用いて細胞活性を測定しています。 細胞培養 曝露24時間後、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay hiPS-HEP (from ChiPS18) を融解し、96ウェルプレートに 定した。陰性対照(各化合物の溶媒のみ)における細胞生存率を ユーザーマニュアルに従って凍結品のCellartis ® Enhanced 播種した。一日おきに培地交換しながら、11日間培養した後、毒 性試験を開始した。 System(製品コード MK400)を用いてそれぞれ細胞活性を測 もとに、用量反応曲線およびTC50(細胞の50%が死滅する毒 性濃度)を算出した。化合物および用量ごとに4つのウェルの平 均値(n=4)をグラフに示した(平均値±標準誤差)。 毒性試験 臨床的に肝毒性が認められている化合物または非肝毒性化 合物(19ページ表4参照)を、最大濃度500 µMから2倍希釈系 また、Cellartis® Enhanced hiPS-HEPの3バッチについて 毒性試験を行い、再現性を確認した。 列で6用量を設定し、Cellartis® Enhanced hiPS-HEPに曝 露した。 【結果】 Structural Analog Structural Analog Levofloxacin Trovafloxacin Viability (%) Troglitazone Viability (%) Pioglitazone conc.(µM) conc.(µM) 図22. 構造類似体ペア(Pioglitazone / Troglitazone、Levofloxacin / Trovafloxacin)の用量反応曲線 各ペアのうち一方は肝毒性(TroglitazoneおよびTrovafloxacin)、他方は非肝毒性(PioglitazoneおよびLevofloxacin)である。 Cellartis Enhanced hiPS-HEPは肝毒性化合物のTroglitazoneおよびTrovafloxacinに対して感受性を示したが、非肝毒性の構造類 似体であるPioglitazoneおよびLevofloxacinでは影響を受けなかった(n=4、平均値±標準誤差)。 幹細胞研究用製品ガイド 18 ヒトiPS細胞由来肝細胞 Amiodarone Viability (%) Viability (%) Benzbromarone Application Note 3(続) conc.(µM) conc.(µM) Flutamide Viability (%) Viability (%) Tolcapone conc.(µM) conc.(µM) Viability (%) Imipramine 図23. Cellartis Enhanced hiPS-HEPに対して 24時間曝露した肝毒性化合物5種の用量反応曲線 n=4、平均値±標準誤差 conc.(µM) 表4. 化合物情報とアッセイ結果のまとめ 19 Compounds Status Label (FDA) Severity (FDA) Clinical DILI (Xu . 2008) Sandwich PHH= Gold standard (Xu . 2008) Cellartis Enhanced TC50 hiPS-HEP (μM) Troglitazone WD NA Positive Positive Positive 73 Pioglitazone - - Negative Negative Negative - Trovafloxacin WD NA Positive Positive Positive 118 Levofloxacin - - Negative Negative Negative - Benzbromarone WD NA Positive Positive Positive 90 Amiodarone BW 8 Positive Positive Positive 48 Tolcapone BW 8 Positive nt Positive 113 Flutamide BW 8 Positive Negative Positive - Imipramine AR 3 Positive Negative Positive 154 幹細胞研究用製品ガイド ヒトiPS細胞由来肝細胞 Application Note 3(続) 120 100 80 60 40 20 0 62.5 125 250 62.5 120 100 80 60 40 20 0 Pioglitazone Viability (%) Viability (%) 120 100 80 60 40 20 0 Imipramine 62.5 125 250 conc.(µM) conc.(µM) Tolcapone Troglitazone Viability (%) Viability (%) Viability (%) Benzbromarone 125 conc.(µM) 250 120 100 80 60 40 20 0 120 100 80 60 40 20 0 62.5 125 250 conc.(µM) hiPS-HEP batch fHEPMF10 fHEPMF17 fHEPMF24 62.5 125 250 conc.(µM) 図24. Cellartis Enhanced hiPS-HEPの3バッチの比較 3製造バッチ間で肝毒性化合物および非肝毒性化合物に対する反応に一貫性が認められた。 fHEPMF10、fHEPMF17、fHEPMF24の各バッチのデータはn=3、平均値±標準誤差を示す。 結論 Cellartis® Enhanced hiPS-HEPは薬物代謝酵素を発現しており、肝毒性化合物と非肝毒性化合物である構造類似体 (例えば、PioglitazoneとTroglitazone、LevofloxacinとTrovafloxacinなど)を正確に区別しました。 データから、Cellartis® Enhanced hiPS-HEPは臨床上で肝毒性が知られている化合物に対して感受性が高いことが確 認されました。 Xuらの研究(2008年)によると、凍結ヒト初代肝細胞のサンドイッチ培養ではImipramineおよびFlutamideに対して感 受性を示しませんが、Cellartis® Enhanced hiPS-HEPは臨床上予測される肝毒性を検出しました。また、肝毒性化合物 と非肝毒性化合物に対する反応は、Cellartis® Enhanced hiPS-HEPのバッチ間で安定していました。 参考文献 ・Xu J, et al, Cellular imaging predictions of clinical drug–induced liver injury. Toxicol Sci. 2008; 105 (1):98-105. 幹細胞研究用製品ガイド 20
© Copyright 2024 ExpyDoc