2015 年度 薬理学総論 本試験

2015 年度 薬理学総論 本試験
1. 各設問に簡潔に答えなさい。(各 5 点)
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
初回通過効果とは何か、説明しなさい。
薬物のクリアランスについて説明しなさい。
薬物の腸肝循環について説明しなさい。
選択毒性とは何か、説明しなさい。
二重盲検とは何か、説明しなさい。
臨床研究の倫理審査について説明しなさい。
2. 下記①〜④の薬物が経口投与され、一部が胃から吸収される状況を想定する。各薬物の血液中/胃液中の
濃度比が高い順に並んでいるものを a〜e から選んで◯をつけ、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を用いて
理由を述べよ。ただし、血液と胃液の pH をそれぞれ 7.4、1.4 とする。(10 点)
① 弱酸性薬(pKa = 3.4)
② 弱塩基性薬(pKa = 6.4)
③ 弱酸性薬(pKa = 8.4)
④ 弱塩基性薬(pKa = 9.4)
a.
b.
c.
d.
e.
①
④
①
②
③
>
>
>
>
>
②
③
③
①
②
>
>
>
>
>
③
②
②
④
④
>
>
>
>
>
④
①
④
③
①
理由:
3. ロール・プレイングの経験を踏まえ、薬物治療におけるインフォームド・コンセントについて述べよ。(10 点)
4. 適当な答えを a~e から 1 つずつ選び、○をつけよ。(各 2 点)
(1) 生物種と、それに由来する薬物の組み合わせとして、正しいのはどれか。
① アオカビ
-
ベンジルペニシリン
② 西洋ヤナギ
-
ビンクリスチン
③ ニチニチソウ
-
アスピリン
④ ベニテングタケ
-
ムスカリン
⑤ スイート・クローバー
-
ワルファリン
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(2) イオン輸送系と、それを阻害する薬物の組み合わせとして、正しいものはどれか。
① Na+-Ca2+交換体
-
ジゴキシン
+
+
② Na , K -ATP アーゼ
-
トリアムテレン
+
+
③ H , K -ATP アーゼ
-
オメプラゾール
+
④ Na /Cl 共輸送体
-
ヒドロクロロチアジド
⑤ Na+/K+/2Cl-共輸送体
-
フロセミド
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(3) G蛋白質連関受容体 (GPCR) とその効果器について、正しいものはどれか。
① Gq/11 はアデニル酸シクラーゼを抑制する
② CREB は、cAMP 産生後に PKA を介して活性化される転写因子である
③ GRK (G protein receptor kinase) は GPCR の脱感作メカニズムに関与する
④ ホスホリパーゼ Cβの活性化により、細胞内カルシウム濃度が上昇する
⑤ ジアシルグリセロールは CaM キナーゼを活性化する
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(4) ①完全作動薬単独、②完全作動薬+部分作動薬、③逆作動薬単独、④逆作動薬+拮抗薬、⑤拮抗薬単
独を同量ずつ投与した時の反応が、大きい順に並んでいるものはどれか。
a. ① > ② > ③ > ④ > ⑤
b. ② > ① > ④ > ⑤ > ③
c. ① > ② > ⑤ > ④ > ③
d. ① > ② > ④ > ③ > ⑤
e. ② > ① > ③ > ④ > ⑤
(5) 薬物の反復投与または同時投与による反応について、正しい記述はどれか。
① 作用機序が同じ 2 薬物を同時に投与した場合、相加作用が得られる
② 作用機序が異なる 2 薬物を同時に投与した場合、相乗作用が得られる
③ 作用機序が異なる 2 つの作動薬間で見られる脱感作を異種脱感作という
④ 受容体のダウンレギュレーションは、作動薬の短期間・頻回投与により生じる
⑤ 受容体のアップレギュレーションは、受容体の反応性が過敏になることである
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(6) 一般的な治療薬の投与可能範囲に含まれる値はどれか。
① 極量
② 50%有効量
③ 最小有効量
④ 最小中毒量
⑤ 最小致死量
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(7) 実習で用いたカフェインの薬理作用として、正しいものはどれか。
① ホスホジエステラーゼ阻害作用により心筋 cAMP を増加させ、心機能を抑制する。
② アデノシン受容体に拮抗することにより、中枢抑制作用を示す。
③ 腎血流量を増大させることにより、弱い利尿作用を示す。
④ 胃液分泌を亢進させることにより、消化性潰瘍の発生を促すことがある。
⑤ 大量投与により、痙攣や昏睡などを起こす可能性がある。
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(8) 実習で用いたラット横隔神経・横隔膜標本に対する薬物の作用について、正しいものはどれか。
a. デカメトニウム(C10)は、筋直接刺激による横隔膜収縮を抑制する
b. d-ツボクラリンは、筋直接刺激による横隔膜収縮を抑制する
c. スキサメトニウム(サクシニルコリン)は、神経刺激による横隔膜収縮を抑制する
d. ヘキサメトニウム(C6)は、神経刺激による横隔膜収縮を抑制する
e. アトロピンは、神経刺激による横隔膜収縮を抑制する
(9) 受動拡散による薬物の生体膜通過に必要な条件はどれか。
① 脂溶性であること
② 蛋白質と結合していないこと
③ 非イオン型であること
④ 弱酸性であること
⑤ 分子量 50〜100 程度の小分子であること
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(10) 経口投与した薬物の生体利用率(F)を求める式はどれか(ただし po は経口投与、iv は静脈内投与)。
① F = (AUC)po
② F = (AUC)iv/(AUC)po
③ F = (AUC)po/(AUC)iv
④ F = (AUC)po + (AUC)iv
⑤ F = (AUC)iv - (AUC)po
(11) 肝血流律速型の代謝を受ける薬物はどれか。
① ジアゼパム
② プロプラノロール
③ リドカイン
④ インドシアニングリーン
⑤ ワルファリン
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(12) 薬物と主な代謝酵素の組み合わせとして、正しいものはどれか。
① アセトアミノフェン
-
CYP1A2
② モンテルカスト
-
CYP2C8
③ オメプラゾール
-
CYP2C9
④ アトルバスタチン
-
CYP2C19
⑤ アミオダロン
-
CYP3A4
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(13) 消失半減期 3 時間の薬物を持続点滴静注した時、血中濃度は約何時間後に定常状態に近づくか。
a. 3 時間
b. 6 時間
c. 12 時間
d. 24 時間
e. 48 時間
(14) 高血糖を起こしやすい薬物はどれか。
① インスリン
② グリメピリド
③ メトホルミン
④ オランザピン
⑤ プレドニゾロン
a. ① ②
b. ① ⑤
c. ② ③
d. ③ ④
e. ④ ⑤
(15) 無顆粒球症を起こしやすい薬物はどれか。
① チアマゾール
② レボチロキシン
③ ヘパリン
④ サラゾスルファピリジン
⑤ チクロピジン
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(16) 薬害 SMON(亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害)の原因薬物はどれか。
a. ソリブジン
b. クロロキン
c. キノホルム
d. サリドマイド
e. ジエチルスチルベストロール
(17) 薬物動態上の相互作用を起こしやすい組み合わせはどれか。
① ニトログリセリン
-
シルデナフィル
② インドメタシン
-
テオフィリン
③ バルプロ酸
-
ワルファリン
④ レボドパ
-
ベンセラジド
⑤ ジゴキシン
-
フロセミド
a. ① ②
b. ① ⑤
c. ② ③
d. ③ ④
e. ④ ⑤
(18) 薬の効果が減弱する可能性が高い患者はどれか。
① 結核の患者
② てんかんの患者
③ 肝機能障害のある患者
④ 腎機能障害のある患者
⑤ セント・ジョーンズ・ワートを服用している患者
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(19) 酵素活性が著しく低い人の割合が、欧米人より日本人の方が大きいものはどれか。
① CYP3A4
② CYP2D6
③ CYP2C19
④ アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)
⑤ N-アセチル転位酵素(NAT2)
a. ① ②
b. ① ⑤
c. ② ③
d. ③ ④
e. ④ ⑤
(20) 小児の薬物治療に関連する記述として正しいものはどれか。
① 薬物投与量は年齢で決めるのが最もよい
② 体重は細胞外液量とよく相関する
③ 細胞外液量の割合は年齢とともに減少する
④ 新生児はグルクロン酸抱合能が未発達である
⑤ 出生後、CYP3A7 は急速に減少し、CYP3A4 が急速に増加する
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(21) 血中薬物濃度モニタリングが必要とされる薬物の特徴として、正しいのはどれか。
① 治療域が広い薬物
② 血中濃度と薬効に相関が見られない薬物
③ 体内薬物動態の個人差が大きい薬物
④ 薬力学的な薬効評価パラメーターがない薬物
⑤ 血中濃度と毒性に相関が見られる薬物
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(22) 真のプラセボ反応の大きさを知るためには、何を測定する必要があるか。
a. 実薬投与群の反応と、プラセボ投与群の反応
b. プラセボ投与群の反応と、無投与群の反応
c. 実薬投与群の反応と、無投与群の反応
d. 実薬投与群の反応と、プラセボ投与群の反応と、無投与群の反応
e. 知ることはできない
(23) 臨床試験各相の主な目的として、誤っているのはどれか。
① 第Ⅰ相試験
-
忍容性を調べる
② 前期第Ⅱ相試験
-
薬物動態を調べる
③ 後期第Ⅱ相試験
-
至適用量を調べる
④ 第Ⅲ相試験
-
薬効を検証する
⑤ 第Ⅳ相試験
-
長期投与における有用性を確認する
(24) 歴史的な臨床試験について、正しい組み合わせはどれか。
① 高木兼寛
-
日本初の比較試験
② 華岡青洲
-
世界初の全身麻酔実験
③ Austin Bradford Hill
-
世界初の RCT
④ Harry Gold
-
世界初の比較試験
⑤ James Lind
-
世界初の二重盲検試験
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤
(25) ヘルシンキ宣言に関する記述として誤っているのはどれか。
① ニュルンベルク綱領の精神を引き継ぎ、1964 年に作られた
② 世界保健機構(WHO)が作った倫理指針である
③ 人体実験は絶対に行ってはならないとしている
④ 診療における医師の倫理を述べたものである
⑤ 最新版は 2013 年のフォルタレザ改定版である
a. ① ② ③
b. ① ② ⑤
c. ① ④ ⑤
d. ② ③ ④
e. ③ ④ ⑤