17.エチレンは二重結合をもつ平面分子であり、アセチレンは三重結合を

17.エチレンは二重結合をもつ平面分子であり、アセチレンは三重結合をもつ直線分子で
ある。下記の問いに答えよ。
(1) それぞれの分子の形をとる理由を混成軌道の概念より説明せよ。特に、炭素の基底状態、
励起状態および混成状態の電子配置を示せ。
(2) それぞれの分子のとる混成軌道を図示し、二重結合および三重結合がどのような軌道の電子
雲の重なり合いでできた結合かを説明し、結合エネルギーや結合距離の差異について述べよ。
エチレン:sp2 混成軌道 C=C 133.9pm C-H 108.7pm
炭素の基底状態 [He](2s)2(2p)2 →昇位→[He](2s)1(2px)1(2py)1(2pz)1 → [He](sp2)3(2px)1
3つの等価な軌道ができるので、平面三角形の結合した構造となる。C 同士は二重結合
二重結合(一つのσ結合と一つのπ結合((2px)1 同士の分子軌道))
アセチレン:sp 混成軌道 C=C 120.2pm C-H 106.3pm
炭素の基底状態[He](2s)2(2p)2→昇位→[He](2s)1(2px)1(2py)1(2pz)1→ [He](sp)2(2px)1(2py)1
C 同士が三重結合となり、直線構造となる。
3.3
混成軌道と分子の形
三重結合(一つのσ結合と二つのπ結合((2p
)
x)1、(2py)1 同士の分子軌道)
電子対が重要な役割を演じる.つぎの項目から,有機化合物のメタン,エチレ
ン(エテン),アセチレン(エチン)を例に取り,それぞれの分子の中心原子であ
三重結合の方が二重結合より結合エネルギーが大きく、結合距離が短い。
る炭素原子の sp3 混成軌道,sp2 混成軌道,sp 混成軌道の電子雲の方向と,こ
18.水、アンモニアおよびメタンは、それぞれ折れ曲がり型、ピラミッド型および正四面
れらの軌道による共有結合の形成について述べる.
体型の分子構造をとり、それら分子の結合角は、それぞれ約 105°、約 107°および約 109°
である。下記の問いに答えよ。
3.3.2
sp3 混成軌道とメタンの共有結合
(1) 上記3つの分子がそれぞれ異なる形をとる理由を、混成軌道の概念により説明せよ。そ
の際、水分子の場合は酸素原子について、アンモニア分子の場合は窒素原子について、メ
図 3-3-1 に,メタン(CH4)の分子構造と中心原子の炭素の原子価軌道(AO),
および,その AO から形成される sp3 混成軌道を示す.
タン分子の場合は炭素原子について、基底状態、励起状態および混成状態の電子配置を記
せ。
(2) それぞれの分子のとる混成軌道の電子雲を図示し、結合角が異なる理由を述べよ。
章 化学結合と物質
水 O
アンモニア N
メタン C
基底
[He](2s)2(2p)4
[He](2s)2(2p)3
[He](2s)2(2p)2
励起
[He](2s)1(2px)1(2py)2(2pz)2
[He](2s)1(2px)1(2py)1(2pz)2
[He](2s)1(2px)1(2py)1(2pz)1
混成
[He](sp3)1(sp3)1(sp3)2(sp3)2
[He](sp3)1(sp3)1(sp3)1(sp3)2
[He](sp3)1(sp3)1(sp3)1(sp3)1
結合
二つの孤立電子対の強い反発
角の 二つ共有結合と孤立電子対の
を表す点(:)を sp3 混成軌道の電子雲の中に描いている.
両矢弧線で示し,太線は孤立電子対間の強い反発,中太線は孤立
中程度の反発
理由
有電子対間の中間の強さの反発,細線は共有電子対間の弱い反発
側の図は,1 本の結合線で 1 つの sp3 混成軌道と 1 対の共有電
めて示している.
等価な4つの混成軌道
図孤立電子対と3つの共有電子
3-3-1. メタンの分子構造と炭素原子の原子価軌道の
AO (2s 軌道と3つの
2p 軌道),および,これらの AO から形成された4つの sp3 混成軌道
対の中程度の反発
4つの共有結合同士の弱い反
の電子雲の形.
メタン分子中の結合
∠H C H は 109.5゜と
ることがある.図 3-3-1
正四面体の重心と,隣接
2 つの頂点の 3 点が成す
な 値 を, 六十 分法 を用
109 度 28 分と記して
(109゜28´= 109.4666…
109゜28´は,正四面体型
の分子の理想的な結合角
値である.
図 3-3-1 右下の sp3 混成
の電子雲の方向は,4
sp3 混成軌道に 1 個ずつ
を配置すると,4 つの軌
電子間反発が均等で釣
った状況の方向である.
がって,sp3 混成軌道の
雲は,正四面体の頂点方
向いていると説明される
発
分子の立体構造を説明できる混成軌道をつくるために,まず初めに立体構造
を決める要素の,中心原子に共有結合した原子の位置と,結合した 2 つの原子
間の結合距離,および,中心原子を含む 3 つの原子が成す結合角度(bond angle)
を知る必要がある.なお,結合角度は内角(interior angle)を用いる.
アンモニア分子(NH3)と (b) 水分子(H2O)のルイス式と構造式,窒素
メタンは中心原子の炭素に 4 つの水素原子が共有結合(単結合)した分子であ
と酸素原子の sp3 混成軌道を用いた立体構造と共有結合の表現,お
り,4 つの炭素-水素間の結合距離(C H 結合距離)は等しい(等価である).
,分子内の電子対間の静電反発の強弱のイメージ.
これは共有結合の強さが同じことを示す.水素 炭素 水素の 6 つの結合角度
∠H C H も等価である.これらの分子構造のデーターから図 3-3-1 中の構造
孤立電子対を表す点(:)を sp3 混成軌道の電子雲の中に描いている.
は,3 対の共有電子対(図中の結合線)の間の静電反発よりも,
外角(exterior angle)を
角度に用いることはない