山 梨 労 働 局 発 表 平成27年9月10日 労働安全衛生法違反の疑いで建設会社を書類送検 ∼ 伐木作業中墜落防止措置を講じなかった疑い∼ 厚生労働省山梨労働局都留労働基準監督署(署長 風間 勝)は,平成 27 年 9 月 10 日(木),下記 1 の被疑者を労働安全衛生法違反の疑いで甲府地方検察庁に書類送検した。 事件の概要等については,下記のとおり。 記 1 被疑者 (1)井口建設株式会社 (本社所在地:山梨県上野原市新田 1140) (2)井口建設株式会社の現場代理人 (36 歳 男性,以下「被疑者」という。) 2 事件の概要 平成 27 年 7 月 1 日午前9時 30 分頃,井口建設株式会社が山梨県上野原市内におい て施工する治山工事現場において,同会社の労働者(64 歳 男性,以下「被災者」とい う。)が,法肩(駐車場の端)の支障木をチェーンソーで伐倒した後,駐車場にて伐倒し た支障木を一定の長さに切りそろえる「玉切り作業」を行っていたところ,当該支障木 の一部が法肩から斜面にすべり落ちた。当該支障木がすべり落ちる際に,牽引するた めに支障木に取り付けていたロープが作業を行っていた被災者の足にひっかかり,バ ランスを崩した被災者は支障木とともに法肩から斜面(高さ 25 メートル,勾配 78 度) を墜落し死亡した。 被疑者は,被災者が法肩(駐車場の端)の支障木を伐倒していた作業時,労働安全衛生 法上定められた安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じる必要があったにもか かわらず,何ら必要な措置を講じていなかったものである。 3 法違反の内容 (1)違反条文 ア 労働安全衛生法第 21 条第 2 項 労働安全衛生規則第 519 条第 2 項 イ 労働安全衛生法第 21 条第 2 項 労働安全衛生規則第 521 条第 1 項 (2)違反内容 労働安全衛生規則第 519 条第 1 項において,事業者は,高さ 2 メートル以上の作業床 の端,開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には,囲い,手す り,覆い等を設けることとされている。また,同条第 2 項において,囲い,手すり,覆 い等を設けることが著しく困難なとき,又は,作業の必要上臨時に囲い等を取りはずす 時は,防網を張り,労働者に安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じなければなら ないとされている。 本件は,法肩(駐車場の端)の支障木を伐倒していた作業箇所の地形や作業の性質等か ら,囲い,手すり,覆い等を設けることが著しく困難であったため同条第2項の規定に より被疑者は労働者に安全帯を使用させる等の措置を講じなければならなかったもの であるが,被疑者はこれらの措置を講じなかったものである。 また,労働安全衛生規則第 521 条第 1 項において,事業者は,高さ 2 メートル以上の 箇所で作業を行う場合において,労働者に安全帯等を使用させるときは,安全帯等を安 全に取り付けるための設備を設けなければならないとされている。 本件は,当該設備の設置も怠っていたものである。 4 当署における今後の方針 当署においては,これまでも墜落・転落災害を含めた労働災害発生防止のため,事業 場や工事現場などに対する監督・個別指導を実施してきたものであり,引き続き,監督・ 個別指導等を通じて,安全対策の徹底を図るとともに,重大悪質な違反行為については, 厳正な態度をもって臨むこととしている。 【災害発生現場の様子】 被災者が伐倒していた 支障木 被 災者 が 作 業 を行 っ て いた 駐車場端を北側から撮影 災害現場を西方から撮影 関係法令 労働安全衛生法(抄) 第二十一条 1 2 (省略) 事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危 険を防止するため必要な措置を講じなければならない。 労働安全衛生規則 第五百十九条 1 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそ れのある箇所には、囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなけれ ばならない。 2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に 囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険 を防止するための措置を講じなければならない。 第五百二十一条 1 事業者は、高さが二メートル以上の箇所で作業を行なう場合において、労働者に安全帯等を使用さ せるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。 2 事業者は、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等及びその取付け設備等の異常の有無 について、随時点検しなければならない。
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