平成27年 3月 9日 輸 入 粗 飼 料 の 情 勢 全 酪 連 購 買 部 購 買 推 進 課 北米コンテナ船情勢 北米西海岸港湾労使交渉、暫定合意に 昨年 5 月からスタートした北米西岸港湾労使交渉は、現地時間の 2 月 20 日、ようや く暫定合意に至りました。政府から派遣された労働省長官と連邦調停局の仲介により 新規 5 年の労働協約が使用者・労働者側双方の代表の間で暫定的に合意されました。 この暫定合意により、使用者側のロックアウト(労働者をヤードに入れさせない)や 労働者側のストライキといった最悪の事態が発生する危険性は解消され、2 月 21 日か ら港湾作業が夜間シフト・休日シフトともに再開されましたが、約 4 か月間に及ぶ労 働者側の怠業戦略の結果、コンテナヤードでの滞貨、コンテナ船の沖待ちなどスケジ ュールの遅延は依然として続いています。 オークランド港、ポートランド港だけではなく、シアトル港、タコマ港においても 本船の抜港が続いており、これらの港で通常の作業に回復するには、さらに多くの時 間を要すると考えられています。スケジュール調整のため、日本を抜港する船会社も 出てきており、全体の出入船のスケジュールの回復には2-3か月は必要とも言われ ています。さらには、後ろ倒しを繰り返してきた本船の一部では予約が過剰に集中し、 船社による一方的な予約のキャンセルや積み残しなどが多発している状況も見られ引 き続き注意が必要です。 新規の船積予約についても各港ともに非常に取りにくい状況が続いており、今後の 日本向けのスケジュールは未だ不明瞭な部分が多いと言えます。 一方で、暫定合意とほぼ同時期に中国が旧正月を迎えたため、中国向けの貨物の量 が通常よりも少なく、未だコンテナヤードには貨物が滞留している状況ではあるもの の貨物の出入りのピークは過ぎており、港の混雑は当初予想されていたよりも早く終 結するのではないかとの見方も出ています。 海上運賃動向 各船会社が 3 月 4 月付で GRI( General Rate Increase : 海上運賃の一斉値上げ)を 通知してきています。値上げ幅は$100~$600 と船会社により差がありますが、航路に よっては海上運賃が一気に倍近くになることもあり荷主側の抵抗も予想されます。 -1- ビートパルプ 1.米国産 1)旧穀 地域差はありますが、製糖及びペレットの生産は 3 月から 5 月中旬まで行われます。 1 月初め、日本向けの主産地であるミネソタ州およびノースダコタ州は例年に比べて暖 冬気味で、保管在庫の品質に若干の懸念がありましたが、2 月に入ってからは最高気温 がマイナス 5 度、最低気温はマイナス 15-20 度(いずれも摂氏)前後と例年並みの良 好な保管環境となっています。しかしながら、気候に関しては依然として先が読めず、 春先に暖かくなりすぎると保管中に腐食等のダメージを受けることもあり生産数量が 減少する可能性が考えられます。 2)新穀 新穀の作付けはアイダホ州・ミシガン州などの早い地域で 3 月末、ミネソタ州・ノ ースダコタ州では 4 月 10 日前後からスタートする見込みです。ニューヨーク州などの 東海岸では例年では見られない降雪量について盛んに報道されていますが、中西部で はむしろ降雪量は少なく、土壌水分の元となる降雪が望まれています。 2.中国産 中国産ビートパルプについては、日本・韓国、双方において全く話題になっていま せん。中国国内では、輸出向けを抑え今後も確実に増加する国内向けへ供給を集中さ せる動きが出て来ています。そのため、今後しばらくは中国産ビートパルプが輸出市 場には十分量出てこない可能性が高いと言われています。 アルファルファ 日本における北米産アルファルファの年間輸入数量は年々減少傾向にありますが、世 界的な需要を見ると、中東諸国の中で最も家畜が飼育されているサウジアラビアへの 輸出が増えて来ています。今後、サウジアラビアが買い付けるグレード等によっては、 日本にとって新たな脅威となる可能性もあり注視していく必要があります。 -2- 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 2014 年累計 日本 38,117 31,609 28,187 36,972 28,890 37,421 424,287 韓国 13,532 17,394 14,224 14,975 12,368 12,420 159,887 UAE 17,694 27,430 22,289 27,968 22,164 14,392 305,300 台湾 6,357 6,153 6,015 6,544 4,523 4,174 68,830 中国 68,071 61,032 57,346 53,065 50,598 53,068 661,750 ベトナム 345 597 756 671 544 1,388 12,398 サウジアラビア 1,856 628 981 3,305 2,965 1,660 21,021 カナダ 1,657 1,493 1,906 1,939 1,464 1,849 20,583 インドネシア 606 427 322 354 296 244 2,633 マレーシア 164 147 95 70 135 32 1,144 その他 714 323 399 672 992 2,869 12,218 計 149,113 147,233 132,520 146,535 124,939 129,517 1,690,051 ※北米産アルファルファ輸出数量(単位:トン) 2014 年 7 月~2014 年 12 月 新穀について、最もスタートが早いエルセントロ地域では 1 月最終週ころから、徐々 に刈取りが始まっています。しかしながら、濃霧の発生や湿度が比較的高い時期があ ったため、高水分で仕上がったものが多く、現時点では、輸出向け品質は非常に限定 的で、米国内への流通もまだ始まっていないと言われています。また、3月1日には 降雨もあり、圃場へ刈取りに入れない状態になっており、そのような一部圃場では刈 遅れ品が出てくる懸念もあります。 価格については引き続きクラスⅢ乳価が下がっており(下図緑色の円参照)、現地酪 農家にとっての損益分岐点を下回る乳価レベルになりつつあります。そのため、乳価 と強い相関関係があるアルファルファの新穀価格は生産が順調に進めば更に軟化する ことが予想されています。現時点での米国内向けの価格は前年同期比でおよそ$50 ドル程度下がっているようです。 さらには、旧穀の在庫は港湾混雑により出荷がスローになっていることから産地で 滞留しており、今後新穀の出荷が例年に比べ遅れたり、旧穀在庫の出荷を促すために 価格が軟調傾向になる可能性もあり、今後の動向には注意が必要です。 -3- ※米国乳価クラスⅢ(赤)とカリフォルニア州アルファルファ平均価格(青)の相関 チモシー <米国産> 作柄に恵まれた14年産は13年産に比べて全体的に価格は軟化したものの、非灌 漑(ドライランド)が中心のアイダホ州では、他の牧草と比べ高値での取引が望める ことから作付けは増加する可能性があると言われています。 主産地のひとつであるワシントン州キティタスバレーでは、雪解け水を灌漑水とし て利用し生産を行いますが、今年は冠雪が少なく、新穀において2番刈を断念する農 家が出てくるのではないかと懸念されています。 また、ウォン高を背景に韓国からの引き合いが強くなっているものの、ローグレー ド品については各サプライヤー在庫を抱えているようです。一方、1 番刈のハイグレー ド(高級品)はほぼ成約済みです。 <カナダ産> 14年産はレスブリッジ(灌漑地域)、クレモナ(非灌漑地域)とも天候の影響を 強く受け、大部分がミドルグレード若しくはローグレード品となっており、プレミア ム品の発生は僅かとなりました。また、北米西海岸の港湾争議の影響を受け遅延して いた分の入船が重なったため、1月の全国の輸入量は前年同月比 131%でしたが、2 月 に入ってからは前年並みの数量に戻っているようです。 ブリティッシュ・コロンビア州での州政府とトラック組合との料金変更や車両の使 用年数の制限などについての交渉は継続中ですが、現時点で特に動きはありません。 -4- スーダングラス インペリアルバレーのスーダングラスの作付けは3月に入り本格化してくる見込みで す。種子価格は 45-50 セント/100 ポンドと昨年並みから昨年以下となっており、また 若干のキャリーオーバー(繰り越し在庫)もあることから種子における供給面での心 配は無さそうです。 2月15日付けの作付面積の報告によると、デュラム小麦は前年同月比214%の 51,951エーカーとなっており、いわゆる早播きスーダンへの影響が心配されて おります。一方、デュラム小麦の価格はEUやロシア・中国の小麦の生産量に増加が 見込まれたため、当初の予想に反し徐々に下がっており、スーダンの作付動向は予想 しにくい状況で、遅播きのスーダンの作付は増加するとの見方も出てきています。 3月中旬に発表される両品目の作付面積の動向が出てくれば、今年の傾向がある程度 見えてくると思われます。 クレイングラス(クレインは全酪連の登録商標です) 2月15日付の作付面積の報告によると、クレインは昨年同月比91%の15,6 05エーカーとなっております。作付面積の減少が今後の産地価格にどの程度影響を 与えるのか、もう暫く状況を注視する必要があります。 買付けの競合国である韓国のウォンは米ドルに対して引き続き強い状況です。労使 交渉のもつれによる船積遅延で国内在庫が逼迫しているのは日本だけでなく韓国も同 様で、15年産開始と同時に韓国から旺盛な引き合いがあった場合、産地価格に与え る影響は少なくないと予想できます。 -5- ストロー類(フェスキュー・ライグラス) ストローの収穫は既に終了しています。ライグラス及びフェスクのどちらも相当量 な雨当たり被害が発生しており、良品の供給余力は僅かとなっています。それに加え、 港湾労使交渉で遅れている船のスケジュールを回復させるため、主要な出荷港である ポートランド港を抜港する船社も出て来ており、船積みは難しい状況が続いています。 豪州産オーツヘイ 14年産の収穫は西・南・東の3州全てで既に終了しています。 品質全般の傾向として西豪州は雨当たりが多く、大半がローグレード品となり、南・ 東豪州は収穫時期の天候に恵まれハイグレード中心の作柄となりました。 在庫の状況については、総じて東豪州・南豪州のハイグレードは北米の港湾混雑の影 響を受け引き合いが強く、先の在庫はやや薄くなっていくと予想されています。一方、 ミドルグレードの在庫は豊富でローグレードはほとんど成約済みとなっているようで す。西豪州においてもミドルグレードの在庫に余裕はありますが、雨あたり品などの ローグレード、低価格帯のものはほとんど売り切れの状態です。 各産地とも共通していえることは、北米の港湾混雑の影響により、1~2ヶ月先ま で工場のプレススケジュールが埋まりつつあるという点です。同時に空コンテナの余 剰感もなくなってきており、船積みスケジュールの遅れが懸念されます。 以 -6- 上
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