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クォーク物理学研究室
目的
強磁場の振る舞いの見積もり、及び強磁場方向の決定
B093348 谷崎 麗未
強磁場の検出方法の提案
高エネルギー原子核衝突によって生じると考えられる強磁場の直接的検出に向けた基礎研究
•原子核衝突が相対論的運動をしていることを考慮した時の磁場の振る舞いの解析の完成
•直接的検出方法として提案した磁場に依る曲率の電荷依存性の検出に必要となる強磁場方向の決定
背景
Magnetar 1015[G]
高エネルギー原子核衝突において、強磁場が生成される可能性が約30 年前に予言されている。
これは、強い磁場を持つことで知られているMagnetar(中性子星)よりも103倍以上も強く、宇宙で
最も高強度であると考えられている。
カイラル磁気効果 実光子崩壊 真空複屈折 などの
様々な興味深い物理機構
運動量p の電子が
磁場B 中を進む時
磁場に依る曲率の電荷依存性の測定
p[GeV ] = 0.3 × B × R[Tm]
運動量1GeV の電子が
B = 1014[T] の磁場中を
運動するとき
生成粒子は強磁場によるローレンツ力を受け、
電荷の符号によって逆向きの方向に曲がる。
この違いの検出により強磁場の生成を検出する!!
この検出には磁場方向の決定が必要
裏
表
→ 1fmで1.5 度程度
曲がる。
反応平面の表裏に対応
磁場の方向の決定のために事象毎の反応平面の表裏の決定手法を提案し考察
しかし、この強磁場生成の実験的検出は未だ行われていない。
高エネルギー原子核衝突
我々は強磁場生成の直接的検出を目指している。
~1018[G]
磁場の見積もり
グラウバー模型による原子核衝突時にParticipant proton が作る磁場の計算
相対論効果に依るビーム軸方向のローレンツ収縮まで考慮
相対論的運動をする荷電粒子が作る磁場



e0 v  R
(1  v 2 / c 2 )
B(r , t ) 
4 R 3 [1  (v / c) 2 sin Rv ]3 / 2
結果
( cf. 辻 亜沙子 卒業論文 )
磁場の衝突径数・エネルギー依存性
Stopping powerを考慮した時の磁場
Full stoppingを仮定した時の磁場
(by Lienard-Wiechert Potential)
静止した核子はすべて角運動量を持ち、反応平面に
垂直な方向を軸として回転し続けると仮定
1.ウッズサクソン分布に従って原子核を作成
(Z 方向は相対論効果により1/γ)
2.Participant protonが作る磁場を足し上げる。
3.統計をためてヒストグラムを作り、
ガウスfitして中心値を磁場として採用
Netprotonのrapidity分布
RNN(Nnet proton/Nparticipant proton)
Bsp 
N participant _ proton
ZDC:Zero Degree Calorimeter
• 衝突点からビームラインの両サイドの115m離れたところに設置
• 反応傍観部(衝突に関与しなかった入射原子核の核子)の
エネルギーを検出する
1. ZDC 検出器エネルギー重心Qの算出
Aside(前方)とCside(後方)のZDC検出器の
エネルギー重心を求める
衝突径数b = 6~10[fm]
付近で磁場は最大になる。
高エネルギー実験での、
衝突した核子のすり抜けの効果を考慮
N net _ proton
前方(Aside)と後方(Cside)のZDC検出器に入射した
反応傍観部中性子のエネルギー重心のずれによる検出
ALICE実験の鉛鉛衝突√sNN = 2.76TeVの
実データを使って解析
Full stoppingを仮定した磁場計算
Stopping powerを考慮した磁場計算
反応傍観部中性子による反応平面の表裏決定
 B fs
Net proton : 陽子-反陽子
→ HIJINGによる見積もり
-1<η<1での陽子と反陽子の差
結論
・相対論的運動を考慮した強磁場の
振る舞いを求めた!
・強磁場の方向を決定づけるための
反応平面の表裏を区別する手法を
確立した!
今後は、これらの結果をふまえて
強磁場生成の直接的検出を目指す!!
エネルギー重心:円状に分布
中心の原点からのずれを修正
AsideとCsideのエネルギー重心の
成分毎の相関を確認
Multiplicity, 衝突点座標 x, y
XとYの相関係数の式
それぞれに対し中心は0.1cm程度揺らいでいる
b=6の磁場の分布
 X , Y 
事象毎のエネルギー重心の式
Q X , Y  
z 方向の厚みがなくなり、原点までの距離が近くなったため
ΦAーΦC
反応平面の分解能
i 1
4
i
r:towerの中心座標
E:towerのエネルギー
エネルギー重心の
平均を0に戻した
結果
XA
vs.
AsideZDCとCsideZDCのエネルギー重心の相関
XC 楕円
XA
vs. YC
e
e
e
e
( 4  x ) 2

2 2
2
i
i
YA
vs.
XC
円
YA
vs. YC
○<YAXC>
No correlation
v
相関が強いところのみの選別(multiplicityやエネルギー重心でカット)
VZEROで測定された反応平面と組み合わせるなどで精度向上!!
同座標同士で相関が見える!
反応平面が360 度方向で決定可能
●<XAYC>
分解能をよりよくするためには…
異座標同士に相関はないが
楕円
σ=2.141でχ二乗が最小
表裏の決定手法としては有用!
□<YAYC>
|Qx| < 1.5
|Qy| < 1.5
−0.03 < Vx < 0.01
0.15 < Vy < 0.19
−20 < Vz < 20
反応傍観部中性子のエネルギー
重心が前後方で対称であることが
検出できている
)
データに対するf(x)のχ二乗が一番最小のσを求める
データとf(x)のΧ二乗
2
Non-zero correlation
円
折りたたまれたガウス分布の式 (5σの範囲内)
( 4  x ) 2

2 2
Qx
Qy
Vertex x
Vertex y
Vertex z
E
ガウス分布が折りたたまれていると推測! (→)
f ( x )  C (e
i
Pb+Pb√sNN=2.76TeV LHC10h
■<XAXC>
平均の反応平面の分解能は
Aside反応平面ΦAとCside反応平面ΦCの差から求める
( 2  x ) 2

2 2
i
i

 ri Ei
i 1
ローレンツ収縮無しの時に比べて3~4倍の磁場
( 2  x ) 2

2 2
i
4
事象毎の磁場の揺らぎ
→初期のparticipant分布の影響
x2

2 2
 X  X Y  Y 
 X  X   Y  Y 
i
RHICエネルギー: ~1014[T]
LHCエネルギー: ~1015[T]
→
3.前後方ZDCでの相関
2.Recentering
前後方のエネルギー重心の
2 次元ヒストグラム
エネルギー重心に依る反応平面の式
 Qy
反応平面  arctan 
Q
 x




Aside、Csideでそれぞれ独立に
反応平面を求めることができる!