ポルフィリン構造異性体を集積化した電解重合薄膜の作製と その

第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙
ポルフィリン構造異性体を集積化した電解重合薄膜の作製と
そのエレクトロクロミック特性
Preparation and Electrochromic Behavior of Electropolymerized
Thin Films of Porphyrin Isomers
二川裕紀・阿部正明・小野利和・嶌越 恒・久枝良雄(九大院工)
【緒言】エレクトロクロミズム(EC)は、電荷の印加に伴って物質の光物性が可逆変化する現象であ
り、明瞭な発色や高い着色効率、敏速な EC 応答性や電気化学的安定性を有する EC 材料の開発が
求められている。これまでプルシアンブルーなどの無機系材料や π 共役高分子などの有機系材料を
中心に数多くの EC 特性が報告されてきたが、無機系材料では成形性や応答性に課題が残されてお
り、有機系材料では不安定ラジカル種の生成による耐久性の低下が問題視されている。近年ではこ
れらの問題点を解消するため、無機材料と有機材料を組み合わせた金属錯体の EC 特性に注目が集
まっており、その中でもポルフィリン金属錯体は、配位子自身の高い可視光吸収能や安定なレドッ
クス応答性から、EC 材料の研究対象として注目されている。一方で、中心金属イオンや置換基に
よる EC 機能の拡張に関しては報告例があるものの、環骨格自身に着目したアプローチに関しては
報告されていない。そこで我々は、ポルフィリン構造異性体である「ポルフィセン」に着目し EC
薄膜の創製及び評価を行った。ポルフィセン金属錯体は、ポルフィリン金属錯体とは異なる分光化
学的、構造化学的性質を有しており 1)、発色、応答性、耐久性に優れた EC 材料として有用である
と考えられる。本研究では、軸
配位子にチエニル基を有するル
テニウムポルフィセン錯体を合
成し、電解重合法を用いて ITO
ガラス基板上に薄膜化を行った
(Fig.1)。また作製したポルフィ
セン薄膜の EC 特性を評価し、
ポルフィリン薄膜との性質の違
いに関して比較検討を行った。
Fig.1 Schematic diagram of the preparation of porphycenes
【実験及び結果・考察】電解重合
polymerization thin film on ITO.
法を用いてポルフィセン集積型
薄膜を ITO ガラス基板上に作製した。また、作用電極として薄膜担持 ITO 基板、対極として Pt、
参照電極として Ag/AgCl を用い、0.1 M n-Bu4PF6-CH2Cl2 溶液中において作製したポルフィセン電
解重合薄膜の電解吸収スペクトルを測定した。印加電
位を-0.4 V から+0.4 V へと切り替えると薄膜の吸収
スペクトルが変化し、ルテニウムの酸化数が 2 価では
青色、3 価では緑色となる薄膜エレクトロクロミズム
が確認された(Fig. 2)。さらに、On-Off ポテンシャル
スイッチング実験(測定波長 609 nm)から、薄膜が良
好な応答性及び酸化還元安定性を有していることも
明らかとなった。当日は、ポルフィリン薄膜のエレク
トロクロミック挙動に関しても報告を行い、環骨格の
違いがエレクトロクロミズムの発色や応答性に与え
る影響に関しても議論する予定である。
Fig.2 Electrolytic absorption spectrum of the
Ru(TPrPc)(py-btp)2 thin film.
<参考文献>
1)T. Okawara, M. Abe, H. Shimakoshi, Y. Hisaeda., Chem. Lett. 2008, 37, 906.
発表者紹介
氏名
二川裕紀
所属
九州大学大学院工学府物質創造工学専攻
学年
修士 2 年
研究室
久枝研究室