全国的に 17% 減少、関東地方では 22% 減少しています。

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ポリオのこと
全国的に 17% 減少、関東地方では 22% 減少しています。
生ワクチンか不活化かを悩まれてる親御さん、すでに他院で不活化をされてる赤
ちゃんが多い中、国の動きが遅れていましたが、平成 24 年9月から定期接種が決
まりました。
今回は、客観的な情報を知っていただいた上で、大切なお子さんにポリオに対す
る免疫をしっかりとつけていただくようにとの思いを込めて、ポリオのお話をいた
します。
ポリオウィルスは感染力が強いウィルスです。感染しても、麻痺などの症状が出
るのは 200 ∼ 1000 人に 1 人のため、海外で感染しても感染したことに気がつかな
いまま帰国(あるいは入国)してしまう ( すでにしてる ) 可能性があり、症状がな
くても、感染した人の便にはポリオウイルスが大量に排泄されます。
仮にポリオウィルスが国内に持ち込まれても、今のところは、ほとんどの人が免
疫を持っているおかげで、大きな流行にはなってはいません。
このままワクチンを受ける人が減って、免疫もつ人の割合が減ると、持ち込まれ
たポリオウイルスは免疫のない人からない人へと感染し、ポリオの流行が起こる可
能性があります。大切なお子さんのために、その事態だけは避けたいものです。
単純に統計と確率だけから考えると
●ワクチンを受けないままでいる場合、( ポリオウィルスが持ち込まれた
としたら )200 ∼ 1000 人に 1 人は麻痺を発症する可能性がある。
●初回が生ワクチン (OPV) だと百万∼数百万人に 1 人がワクチン関連麻痺
(VAPP) を発症する ( 認定されれば国からの補償がおりる )
●不活化ワクチン (IPV) だと 500 万回に 1 回、アナフィラキシーなどの重
い副反応をおこす ( 国からの補償はない )
裏面へつづく
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ポリオのこと
もう少し詳しく、ポリオの病気とワクチンのお話を書いてみますね。
●●ポリオ(急性灰白髄炎、いわゆる「小児まひ」
)とは?●●
ポリオウィルスは人から人へ感染します。感染した人の便の中に排泄(はいせつ)
されたウイルスが口から入りのどや腸に感染します。感染力は強いです。
感染したウイルスは 3 ∼ 35 日間(平均 7 ∼ 14 日間)腸の中で増えますが、ほと
んどは症状が出ない不顕性(ふけんせい)感染で終わり、一生、免疫が得られま
す。症状が出る場合は、ウイルスが血液を介して脳・脊髄(せきずい)へと感染
し、麻痺を起こすことがあります。
100 人中 5 人程度はカゼに似た症状がでて、発熱に続いて頭痛、嘔吐(おうと)
が現れます。一部の人は永久に麻痺が残ります。麻痺の発生率は感染した人の
200 ∼ 1,000 人に 1 人の割合です。呼吸筋の麻痺で呼吸困難になり死亡すること
もあります。
日本では 1950 年代から 60 年代に大流行しました。ピーク時には約 6500 人の
患者さんが発症して、2000 人を越える死者が出た年もあります。身近に起きる恐
ろしい感染症だったんです。
そこで、国内で、生ワクチンを接種したところ、患者さんは激減し、81 年以降、
野生株のポリオの患者さんは報告されていません。
しかし、アフリカやインドなどでは今でもポリオが流行しており、世界の交流が
盛んになってる現在ではウィルスが日本へ侵入してくる ( いる ) 可能性がありま
す。ポリオを根絶した中央アジアのタジキスタンや中国で昨年、海外から入って
きたポリオウイルスが流行し死亡者も出ました。
ワクチン接種をしない選択をする人が増えれば、日本でも同じことが起こる可能
性があります。
日本の子どもをポリオから守るために、社会としての免疫を保つことは大切です。
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ポリオのこと
●●ポリオのワクチンについて●●
∼経口生ワクチン (OPV) と不活化ワクチン (IPV) の2種類があります∼
経口生ポリオワクチン(OPV)の利点と問題点
< 利点 >
①現在のところ定期接種のため、公費負担(無料)で接種できる。
②経口投与のため注射に伴う痛みや副反応(発赤、腫脹、ショックなど)がない。
③万一、接種で重い健康被害が生じた場合、国が認定すれば、予防接種法に基づき「予防接種健康
被害救済制度」により各種補償がうけられる。
< 問題点 >
①ポリオ生ワクチンを服用すると本人または家族を含め周囲の人にポリオウイルスが感染するワク
チン関連麻痺 (VAPP) の危険が百万∼数百万人に一人の割合である。日本では、2001 年度以降の 10
年間で 15 人で、保育園などや親への二次感染を含めると 21 人です。
<補足>
①平成24年9月以降に、IPV が定期接種になると OPV は中止になる可能性はあるが、その場合は
IPV3回追加接種となります。
欧米諸国等先進国ではこの VAPP のない不活化ワクチンが主流となっています。
不活化ポリオワクチン (IPV) の利点と問題点
< 利点 >
①ワクチンの効果は高く、充分に血液抗体価を上昇させ免疫がつき、またウイルスの排泄がない
ので VAPP の可能性はない。
②平成24年9月から定期接種になります。
< 問題点 >
①外国では普通に使われているワクチンだが、日本で承認されてないので、万が一、重い健康被
害が生じた場合は、残念ながら、予防接種法(定期接種)や独立行政医薬品医療機器総合機構法(任
意接種)に基づく給付をうけることができず、ワクチンによっては輸入ワクチン副作用被害救済
制度による補償となり、ワクチンによっては輸入業者が保険を設定している場合もありますが、
現実には国内承認ワクチンのような救済制度はありません。国内の法律による救済制度がないと
いう現実も十分に納得した上で受けるようにしてください。
②定期化までは、有料となる。
③副反応
軽い副反応:筋肉注射のため、接種部位の疼痛、赤くなる、腫れる。発熱など。これらの症状は
通常数日で自然に軽快します。他に筋肉、神経損傷もあり得ます。
重い副反応:非常にまれに、アナフィラキシーショック反応を起こす可能性がある。
当クリニックでは、これまでのお話を踏まえた上で、ご希望ある方には、
IPV( 不活化ポリオワクチン)を 2012 年 4 月から始めております。
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ポリオのこと
<IPV の接種方法 >
基本的には筋肉注射(筋注)を行います。接種場所は、1 ∼ 2 才までは太もも(大腿)
、それ
以上の年齢では腕(三角筋)に接種します。
● IPV 4 回法のスケジュール
接種間隔
1 回目
2 回目
生後 2 ヶ月∼
1 回目から
4 ∼ 8 週間後
3 回目
4 回目
2 回目から
6 ヶ月後
(2 ∼ 8 ヵ月後 )
4( ∼ 6) 歳
● すでに1回生ワクチンを接種している場合
VAPP の可能性はうんと低くなるので、2 回目も生ワクチンで充分に安全です。
それでもご希望があれば IPV 追加をいたします。
1 回目
接種間隔
生ワクチン接種から 2 ヶ月
以上経過した任意の時期
2 回目
3 回目
1 回目の IPV から
8 週間後
4(∼ 6)歳
(生ワクチンと
あわせて 計 4 回)
● 年齢が少し高く 1 度もポリオワクチンを受けてない場合(1 歳以降)
接種間隔
1 回目 2 回目 3 回目
4 回目
1 ∼ 2 ヶ月毎に 3 回接種
4∼6歳
※昭和50年∼52年生まれの親御さん
この年代の方は理由はわかってませんが、ポリオワクチンを2回接種していてもポリオの免疫が
低いことが知られており、生ワクチンを飲んだ子の便から二次感染を起こすことが低い可能性で
すがあります。自費になりますがワクチン追加をおすすめいたします。
●生ワクチンをご希望の場合
指定場所で赤ちゃんと一緒、赤ちゃんがいなくても受けることができます。
●IPV をご希望の場合
当クリニックでいたします。8 週間あけて 2 回することで充分に免疫がつきます。
医療法人社団めぐみ会
南大沢メディカルプラザ 小児科
院長
〒192-0364
東京都八王子市南大沢 2-25 フォレストモール南大沢 2F
TEL: 042-670-5922
ま つ い え り こ
松居えり子
日本小児科学会認定専門医
http://www.m-medicalplaza.com/s/