2009 年度 京都女子大学 HP 用過去問題解説(日本史) 問題解説

2009 年度 京都女子大学 HP 用過去問題解説(日本史)
◎問題解説
京都女子大学の日本史問題の特色のひとつに、各方式で大問1題、史料問題が出題されている
という点が挙げられます。それも、教科書・史料集に掲載されている重要史料から出題される場
合と、教科書に掲載されていない未見史料から出題される場合の両方があります。そこで今回は、
2009 年度一般入試前期B方式(1/31 実施)のⅠ(古代~中世の文学作品に関する史料問題)を例
に取り上げ、アドバイスしたいと思います。
また、2009 年度はここ数年間出題されていなかった正誤判定問題が出題されています。比較的
受験生の苦手な形式ということを考慮して、2009 年度一般入試前期A方式(1/29 実施)のⅠ(奈
良・平安時代の貨幣・税制・土地制度に関する問題)を題材に、正誤判定問題対策についてもア
ドバイスしたいと思います。
●2009 年度
一般入試前期B方式(1/31 実施) 大問Ⅰ(古代~中世の文学作品に関する史料問
題)
A・Gは教科書や史料集に掲載されている頻出史料ですが、その他は未見史料です。史料文中
や設問(選択肢も含む)の中にヒントがないかどうか検討することが必要です。
【設問および解答方法について】
A
「百斉国」「明王」「仏の像」がキ-ワ-ドです。つまり、百済の聖明王が仏像・経典を伝え
たということが読み取れるので、仏教公伝の史料とわかります。公伝の年代は『上宮聖徳法王帝
説』や『元興寺縁起』などの 538 年説と『日本書紀』の 552 年説と2説あります。史料は『上宮
聖徳法王帝説』です。空欄①は仏像が伝えられた際に、仏像を崇拝することを主張した蘇我稲目
に欽明天皇がこれを授け崇拝させたことがわかれば解答できます。
B
「和銅」という年号から、7世紀前半、元明天皇の時代とわかります。設問2の選択肢に
7世紀前半のものは『風土記』しかありません。また、史料の地名の由来・風物・伝承の報告を
命じていることが読み取れれば、『風土記』と判断できます。
C
「薬師寺」「景戒」から、日本最古の説話集である『日本霊異記』と判断できます。
D
「延暦」から9世紀前半と時期がわかります。「真言」「加持」から真言宗・加持祈と想定
できれば、空海の漢詩文集『性霊集』と解答できます。
E
「凌雲集」は平安初期に編纂された最初の勅・漢詩文集です。藤原冬嗣に『凌雲集』に漏
れてしまったものを収録するように命じていることが読み取れれば、
『文華秀麗集』とわかります。
F 「延喜」は 10 世紀前半、醍醐天皇の時代の年号です。
「紀友則」
「凡河内躬恒」
「壬生忠岑」
から『古今和歌集』と判断でき、空欄には編纂者の一人である紀貫之が入ります。
G
教科書に掲載されている頻出史料です。
「六波羅殿」は平清盛で、平氏の栄華が記されてい
る『平家物語』とわかります。空欄は清盛の娘で安徳天皇の生母である平徳子が、壇の浦で入水
したのち救助され大原寂光院に隠栖したことがわかれば、建礼門院と解答できます。
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◎学習方法のアドバイス
史料問題はまず史料に慣れることが最も大切です。史料文のどこかに必ずヒントがあるので,
そこからその史料が何について書かれているかを判別しましょう。教科書に掲載されている史料
を見ておくことは当然ですが,その上で史料問題集に取り組んでおけば万全です。問題集も、あ
れこれ手を出すより、一冊の入試問題集を丁寧に消化して、しっかりと知識を定着させるように
した方が効果的です。余裕があれば、一問一答式の史料問題集などを使って、問われやすい点を
確認した上で、もう一度史料にあたるようにするとよいでしょう。さらに、史実をよく研究し、
出来事の因果関係を深く理解するようにすることも大切です。本学は史料に対する関心が高く、
史料問題は必ず出題されると考えておいた方がよいでしょう。
次に正誤判定問題ですが、これは入試において差がつきやすい出題型式で、正確な知識が必要
になります。ある程度知識を身につけたうえで正誤判定問題を多く解く練習が必要となります。
その時に、選択肢の内容をしっかり吟味することが大切です。時期や時代の矛盾がないかどうか、
人名・地名・数字・歴史用語が正しく用いられているか、歴史的背景・内容・意義・結果の因果
関係に誤りはないかどうか、などが検討する事項です。正誤判定問題を解くことによって、正確
な史実を理解し、定着することができます。また、センター試験では正誤問題が多く出題される
ため,併願する受験生には一石二鳥となります。短期間でできる,薄いコンパクトなものを1冊
解いてみることをおすすめします。
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