タイ都市部スラムにおけるタイのヘルスボランティア活動と直面する困難 ○柳田美智子(東京大学医学部附属病院) 長松康子(聖路加看護大学、国際看護学) 【目的】ヘルスボランティアはプライマリヘルスケアのキーコンセプトの1つ で、主に開発途上国において住民の健康増進に重要な役割を担っている。 タイでは、1985年に本格的に導入されて以来、栄養、健康教育、水分補 給、公衆衛生、必須医薬品、母子・小児保健、家族計画、精神保健、歯の 健康、環境保健、消費者保護、エイズ予防などに従事してきた。近年では、 農村部に限らず、人口流入が進む都市部の低所得地域においてもヘル スボランティア活動が行われるようになった。しかしながら農村部のHVに 関する報告はあるものの、都市部のHVの活動については不明な点が多 い。本研究はタイバンコクのスラム地区におけるHVの活動とその困難に ついて資料を得ることを目的とした。 【調査方法】バンコク・メトロポリタンのK地区HV17人に、年齢、性別、経 歴年数、HV以外の仕事の有無、HVとしての仕事内容(選択肢複数回答 可)、HV業務における困難についてインタビューを実施した。 調査地域は、バンコク中心部の低所得者居住地域で、宗教や社会階層の 異なる15のコミュニティーが混在していた。主な産業は数珠花つくりで、 住宅は木造平屋が多く、上下水道整備は不完全であった。路地はごみや 汚水で溢れ、野犬が放し飼いになっていた。 【結果】HVの年齢は21-81歳(平均59歳)で、8割が女性で、主婦が65%、HVとしての経験年数は2- キャンペーン中のHV達↑→ 19年(平均8.2年)であった。 業務内容は、家庭訪問(76%)、感染症予防キャンペーン(100%)、血圧測定(23%)、健康教育(94%)、 薬の提供(82%)、コンドームの無料配布(76%)、注射(0%)、事務(94%)であった。ヘルスボランティア をしていて困ったことがあると答えた者は12%で、その内容としては、知識不足と書類をうまくかけない ので時間がかかるというものであった。 【考察】HVが医療処置を行わない背景には、HVが高齢であることや、医療が整った施設が多く存在 し、地域保健師が活発に活動している地域的背景が関連していると推察できた。 【結論】都市部スラムのHVは、注射など医療的なサービスは行わず、感染症キャンペーンや家庭 訪問などを中心に活動を行うと共に、地域の一員であることを活用した地域・医療間のパイプライ ンの役割を担っていた。 【倫理的配慮】調査対象者には、目的と内容、調査協力の可否や回答内容により、不利益を被る ことはない旨を説明した上で、承諾を得た。 HV以外に仕事をしているか 1、ボランティアの属性 経歴年数 性別 年齢 30代, 0% 70代 18% 80代20代 6% 6% 40代 12% 60代 24% HVとして困ったことがあるか 無回答 6% 20年より上 0% 10代, 0% 男性 18% 11~15年 6% 女性 82% 50代 34% 1年未満 0% はい 12% 16~20年 18% はい 29% 1~5年 41% 主婦 65% 6~10年 35% 2、ヘルスボランティアとしてどのような仕事をしているか。(複数回答可) 感染症予防キャンペーン 薬の提供 注射 事務 している 0% コンドームの無料配布 していない 6% していない 6% していない 0% していな い 24% K地区の様子↑→ いいえ 88% 健康教育 血圧測定 家庭訪問 している 100% していない 77% ←ヘルスセンター ヘルスポスト↑ していない 18% していない 24% している 23% している 76% いいえ 0% している 94% ↑デング熱予防キャンペーンに 使われていた道具 ←ヘルスポストにある地図に はHVの家が青く塗られている。 している 76% キャンペーン中のHV達↑→ している 82% していない 100% している 94% ↑パンフレットに目を通している住民 ↑コミュニティーナースから技術指導 をうけるHV達
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