講演図表

外来種被害防止行動計画
-外来牧草を利用する立場から-
公益財団法人 神津牧場
清 水 矩 宏
はじめに
○我が国の畜産は、明治以来近代化を図ってきたが、その端緒となっ
たのは外来牧草の導入であった。それまでの野草の利用に代わって収
量性も栄養価にも優れていた外来牧草は、大きな武器となったのであり、
それを国策として利用してきた経緯がある。
○ところが、最近生物多様性の価値観が認識されるなかで、このような
有用性とは関係なく、エイリアンと言う出自だけで存在が否定されようと
している状況が出来している。出自による差別は人権侵害ではないかと
言うのが、外来牧草を利用してきた畜産や緑化セクターの感じではない
だろうか。
○しかし、このような二律背反的な状況を対立ではなく、いかに乗り越え
ていくかを双方ともに考えなければならない。
牧草導入の歴史
牧草導入の歴史
我が国畜産の構造
外来種被害防止計画
○野生化して世代交代を行い、自然生態系に定着し、何らかの悪影響
を及ぼすものをリストアップし、抑制または制限を図る。
○従来指定されてきた要注意外来生物148種類については、本リスト
の候補種とすることが議論されており、この中には牧草が含まれている:
オニウシノケグサ (Festuca arundinacea) トールフェスク
カモガヤ (Dactylis glomerata) オーチャードグラス
ネズミムギ (Lolium multiflorum) イタリアンライグラス
ホソムギ (Lolium perenne) ペレニアルライグラス
オオアワガエリ (Phleum pratense) チモシー
○また、日本生態学会による侵略的外来種ワースト100にも、オニウシ
ノケグサ、カモガヤが含まれ、外来牧草が目の敵にされている。
外来種被害防止計画
○外来牧草は、畜産サイドだけではなく、緑化サイドでも重要な役割を
果たしている有用性の高いものである。
○このような有用性を持ったものに対しては、中立か被害を惹起してい
るものとは異なる考え方で調和を図っていくべきと考える。
リスト作成の基本方針作成の議論の中でも、「有用性が高く利用されて
いる種については、利用者の理解と協力を得た上で、利用の回避・抑
制、侵略性のない代替種の開発・普及又はリスクを低減若しくは増大防
止するための管理の実施・普及を促す」とされている。
外来牧草の特性
○外来牧草には弱点がある。
・寒地型牧草 → 夏の高温に耐えられず夏枯れを起こす
・暖地型牧草 → 冬の低温に絶えられず越冬ができない
・人為的に攪乱されたところにしか侵入しない
○しかし、本質的には野生化する生理生態的特性を具備している
・種子による繁殖をし、かつ多産性
・種子が休眠性を持ち、土壌シードバンクを形成しやすく、長命
○日本に渡来して百年以上を経過した寒地型牧草の中には、日本の
風土に定着すべく独特のエコタイプを形成している種も見受けられる。
これらの種は、路傍にエスケープして定着しているので、今後も群落を
拡大する可能性がある。
外来牧草の特性
○主要な牧草については長年育種を行ってきた。その結果、エスケー
プして定着しているエコタイプの中から有望品種を選抜し、日本の環境
条件により適応した品種が育成され、普及・栽培に供してきた。従来は、
外来牧草を有用作物としての遺伝資源として捉え、その利用性を高め
ることに邁進してきたのが実態であり、その結果管理地外へのエスケー
プについて配慮はしてこなかった。
○今後は、生態系や生物多様性の保全といった観点からも、まったく新
しい分野としてその野生化に関する生態学的及び遺伝学的アプローチ
が求められよう。その方向として、雑草性の除去については、休眠性の
除去、不稔性の付与などが可能性としてはあげられる。
外来牧草の特性
○外来牧草が利用できないのなら、在来野草に活路を求めることにな
る。
外来牧草の特性
○放牧利用の代替草種
・ノシバ 山地酪農
・ススキ
○採草利用の代替草種
・ノビエ メヒシバ
・飼料イネ イネホールクロップサイレージ
○栄養価改善のための代替草種
・在来マメ科野草
現時点で大きくパラダイムの変更をしない限り、我が国の家畜の需要を
賄える国産の代替資源は見当たらないのが実態である。
家畜生産と生物多様性の調和に向けて
○後出しジャンケンに正当性があるか?
外来牧草を使用の抑制か制限を前提とする「侵略的外来種リスト」に記載することは一
方的に生物多様性の価値観を押しつけることになり、後出しジャンケンに等しいことに
なる。外来牧草の利用が抑制されることは、現在の畜産経営に大きな打撃を与えるこ
とは明白である。畜産側に大きなパラダイムの変換を求めることであり、我が国の食生
活にも直結する問題であることを認識した上で総合的な対策がとられるべきである。そ
れだけ大きな問題である。
○どちらも傷つかないで解決する方法は?
海外からの飼料の輸入に依存することによって、国内の生産を中止すれば、生物多様
性の問題は解決する。
しかし、これは食糧の安全保障の面から自給率を向上させようとしている国策とは合わ
ない。また、仮に輸入品で代替できたとしても自給品よりもはるかにコストアップになり、
かつ為替変動による不安定化をもたらせ経営を直撃することになる。また、その中に非
意図的に外来雑草が混入して侵入してくるリスクが大きいことは周知のことで、新たな
問題を生起する。従ってこの選択肢は現実的ではないと言えよう。
家畜生産と生物多様性の調和に向けて
黒川の提案
家畜生産と生物多様性の調和に向けて
日本国内における外来植物に関する論文数
(赤坂ら2014)
研究目的
侵入経路
論文数(英文)
6 ( 4)
侵入されやすい生育地
32 (12)
種特性
47 (27)
生態影響
36 (26)
管理手法
36 ( 9)
その他
13 ( 2)