臨床発達心理学 第04回 精神遅滞とその支援(1)

精神遅滞
臨床発達心理学 第04回
精神遅滞とその支援(1)
1.知的能力が平均より低いこと
↑ 標準化された知能検査で平均より2SD以上低い指数である
2.適応能力における障害があること
↑ その年齢のものが、その社会において期待される生活能力
3.発達期において発症すること
テキスト p72-89
発達の遅れ
ダウン症
姿勢運動の障害(脳性マヒなど)
Web上では次のページに詳しい情報がある
http://www1.odn.ne.jp/dr_otto/knowledge_01.htm
栃木県地域精神保健ネットワーク:精神発達遅滞
http://www.cmh.ne.jp/mdisease/s-chitai.html
(比)知能指数
1.知的能力が平均より低いこと:
知能検査,発達検査で測定する
精神水準(精神年齢):
発達や知能を年齢の尺度で表現する知能は,赤ちゃんから
成人まで徐々に伸びていく
知能の程度を「××歳くらいの高さ」という感じで表現する
知能指数(比知能指数)
知能指数(偏差知能指数)
精神年齢(MA)
× 100
知能指数(IQ)=
生活年齢(CA)
問題点
しかし,精神年齢には限界がある。
精神年齢は比率尺度ではない。
偏差値知能指数
偏差知能指数と正規分布
各年齢段階での偏差値を知能指数とする。
平均=100、標準偏差=15(ウェクラー式)
平均的能力より2標準偏差以上低い,つまりIQが,70未
満であると,平均より低いと言える
1
2.適応能力における障害があること
知能と同じように,標準化された測定尺度を用いる
AAMD Adaptive Behavior Scaleなどを用いる
適応行動の3領域の少なくとも1つの領域の得点,または,す
べての領域の総合得点が平均よりも2標準偏差以上低いこと
○概念的スキル:言語,読み書き,金銭の概念,自己管理
○社会的スキル:対人関係,責任,自尊心,騙されやすさ,無邪気さ,
規則を守ること,遵法,被害者となることを避ける
○実用的スキル:日常生活活動,日常生活に有用な活動,職業スキ
ル,安全な環境の維持
ただし,多くは本人をよく知る人からの情報によることが多い
3.発達期において発症すること
およそ,18歳未満にて発症すること
現実には,多くの精神遅滞は就学までに発症し
ている。さらに,その原因は乳児期以前あるい
は胎児期にさかのぼることが多いと言える(精神
遅滞の原因を参照)
日本ではABSの日本語版があったが,現在は絶版とのこと
したがって,日本では簡便なチェックリストによって,判
断することが多いようである。
精神遅滞の分類(1)
遅滞の程度による分類
精神年齢
軽度精神遅滞 50-70
9-12歳
中等度精神遅滞
35-49
6-9歳
重度精神遅滞 20-34
3-6歳
最重度精神遅滞
20未満
3歳未満
IQ
栃木県地域精神保健ネットワーク:精神発達遅滞
http://www.cmh.ne.jp/mdisease/s-chitai.html
精神遅滞の原因
(1)胎児病・胎芽病:妊娠中にウィルスや薬物などにさら
された場合。サイトメガロウィルス,アルコールなど。
(2) 水頭症など
(3)新生児仮死などによる脳障害:
(4)先天性代謝異常:フェニルケトン尿症,クレチン症な
ど
(5)染色体異常:ダウン症候群など
など
精神遅滞の分類(2)
その原因による分類
病理的要因
なんらかの病理的な原因(基礎疾患など)がある場合
妊娠中の感染症や周産期の脳障害,あるいは染色
体異常などが考えられる
環境的要因(心理的要因)
養育環境に問題がある場合,子どもの精神発達が遅
れることがある
環境の問題が中心である場合,療育的支援で発達を
取り戻す場合がある
特に原因が考えられない場合(生理的要因)
胎芽病,胎児病
薬物によるもの
睡眠薬のサリドマイド
抗血液凝固剤のワーファリン,抗けいれん剤のバル
プロ酸ナトリウムなど
先天性アルコール症候群:母の飲酒による
たばこ:母の喫煙になどによる
2
サイトメガロウィルス感染症の脳
感染症
図 先天性サイトメガロ
ウイルス感染症の脳の
割面(前額断)
脳の割面に多数の出血
と破壊を認めた。
胎盤を通して子宮内で胎児に感染する病原微生物と
してはTORCHが有名
Tはトキソプラズマ、Oは他の微生物(以前は梅毒、最
近は水痘ウィルス)、Rは風疹、Cはサイトメガロウィ
ルス、Hは単純ヘルペスウィルス
小頭症、脳内石灰化、血小板減少症がみられますが、
先天性風疹症候群では、加えて白内障、難聴、心奇
形が認められます
脳発達障害の原因 :東京神経科学総合研究所
http://www.tmin.ac.jp/medical/13/develop1.html
新生児仮死と低酸素性虚血性脳症
出生前後の呼吸・循環の劇的な変化にうまく適応できない
と,低酸素状態に陥り,様々な問題を引き起こす
これらの状態を新生児仮死という。新生児仮死の多くは
胎児期の低酸素状態に引き続いておこる
出生児のこれらの状態は,アプガー指数で評価される
1分後のアプガー指数が7以下であれば仮死と判定
される。5分後の数値は,脳性マヒなどの予後と相関
するといわれる
新生児仮死と障害
図1. 新生児仮死による低
酸素性虚血性脳症の頭部
MRI
大脳の部分的障害
低酸素性虚血性脳症によって、大
脳皮質が部分的に障害され後遺症
として以下のようなものがあげられ
る
脳性麻痺や知的障害を示す症
例(図1)
大脳の奥にあり随意運動の交
通整理をしている基底核が障
害されアテトーゼ型脳性麻痺を
示す症例
成人の脳梗塞のように大脳が
広範囲に障害され重症心身障
害におちいる症例
脳発達障害の原因 :東京神経科学総合研究所
http://www.tmin.ac.jp/medical/13/develop1.html
染色体異常とダウン症
ダウン症の人には,染色体の異常がある
−21番目の染色体の異常(他は2本組なのに21番
目は3本組になっている
発達が「遅れている」と言うこと
テキスト p73
「追いつく」かどうか?
発達の「遅れ」,つまり「知的能力の障害」をどの
ようにとらえるのか?
個人の「能力」?
人との関係性の中で変化するもの?
しかし,現実の世界では,「不利益」を受けていること
も確かである
これは,遅滞の程度にもよる
私たちの生き方の問題とリンクしてくる
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