2‐メチルプロピオニトリル - 日本化学物質安全・情報センター

SIDS in HPV programme & CCAP
SIAM 9, 29/06/1999
初期評価プロファイル(SIAP)
2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオニトリル)
物質名
:2,2-Azobis(2-methylpropionitrile)
構造式
:C 8 H 12 N 4
CAS No. :78-67-1
O/W 分配係数
logPow = 1.10 (OECD TG 107)
総合評価
勧告
本物質は現在のところ今後の作業の優先度が低い。
SIARの結論の要旨
環境
2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオニトリル)は容易に生分解されず(OECD 301C:28 日後に 0%)
,
水中で安定である(半減期=pH7 で 304 日)。
藻類のSelenastrum capricornutum(クロレラ目の 1 種)の 72 時間 EC50 は 9.4 mg/L 以上,72 時
間 NOEC は 4.2 mg/L である。Daphnia magna(ミジンコの 1 種)の試験では不動化の 48 時間 EC50
は 10 mg/L 以上,生殖の 21 日間 EC50 と 21 日間 NOEC はそれぞれ 7.5 mg/L と 2.2 mg/L である。
魚類のメダカ(Oryzias latipes)の試験では,96 時間と 14 日間の LC50 の値はどちらも 10 mg/L 以上
である。陸生生物に関するデータは入手できなかった。
ヒトの健康
2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオニトリル)は皮膚と眼に対して刺激性を持たず,皮膚感作性物質でも
ないと考えられている。OECD のラットを用いた 2,10,50 mg/kg/日の複合反復投与生殖/発生毒性試験
で,本物質は肝臓および腎臓に対して毒性を示した。腎臓の好酸性小体の増加と尿細管上皮細胞の好塩基性
変化が,投与した雄ラットだけに認められた。この雄ラットに特異的な腎臓毒性は,可能性のあるメカニズ
ムの 1 つとしてα 2u ‐マクログロブリンの蓄積が原因であると思われる。小葉中央部の肝細胞の肥大とそれ
に関連する肝臓毒性血液検査項目の変化が中用量と高用量の雌雄両性に検出された。反復投与毒性の
NOAEL* は肝臓毒性に基づいて 2 mg/kg/日と考えられた。おそらく母体毒性が原因であると思われる高用
量の投与後の仔の生存率と体重の低下のみが認められたことから,生殖毒性の NOAEL は50 mg/kg/日と考
えられた。細菌突然変異試験と染色体異常in vivo試験の結果が陰性であったことに基づくと,本物質は遺伝
毒性を持たないだろう。
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ばく露
2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオニトリル)の生産量は 1993 年の日本で 1,100 トン/年である。本
物質はポリマー産業において重合開始剤として閉鎖系で使用され,消費者製品には含有されず,それゆえ消
費者ばく露は起こらないと思われる。
本物質は製造・加工現場から環境に放出され,1 例として,12 トン/年を扱う 1 加工業者による放出量
は 1 kg/年と報告された。一般フガシティーモデル(Mackey レベル III)から,本物質が水に排出された後,
その大部分(98.6%)が水相に分布することが示される。
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