2015 年 6 月 18 日 北九州市教育委員会 委員長 古城 和子 教育長 垣迫 裕俊 様 様 全教北九州市教職員組合 執行委員長 中村賢太郎 教育条件整備に関する要求書 貴職におかれましては、昨年の労使交渉以降、私たち全教北九州市教職員組合の要求書について鋭 意ご検討されている事とお察し申し上げます。 教職員の労働条件は、教育委員会も認めているように、長時間、過密労働が改善されることなく現 在も継続し、さらに、精神疾患等による病休者も減少は見られません。そこで、効率的な公務執行体 制の確立や厳格な労働時間管理をさらに徹底し、実効あるものにしていただきたいと思います。教職 員が、その本務である教育実践に希望と情熱をもって取り組める教育、労働環境の改善・見直しを使 用者である教育委員会及び管理職が責任をもって行うことを強く要求します。 教育委員会は「効率的な公務執行体制の確立に努め、時間外勤務縮減に取り組むこと」といってき ています。しかし、昨年1月から6月の半年で勤務時間外における在校時間が月100時間以上また は2ヵ月の平均が月平均80時間以上ある教職員が、延べ各1003人(一昨年同時期965人) 、3 23人(一昨年同時期488人)いたと報告されています。また、産業医の面談を受ける時間を惜し むあまり正確な在校時間を記録しない教職員も多いと聞きます。これは職場がいかに過酷な労働環境 に置かれているかという一側面を示しているとともに、労働者の健康・安全を守るための労働安全衛 生法がまったく機能していないブラック職場になっていることを如実に示しています。 教育現場は学力向上プラン・対策、土曜授業、生徒指導、報告書作成、教材研究・成績処理、小中 一貫・連携教育等限られた勤務時間のなかでやるべき仕事の量が年々増加し、超過勤務が増え、多忙 化がすすむ一方で、退職金の大幅な削減、給与の総合的な見直しも相まってモチベーションもあがら ず、よい教育実践など出来る状況ではないことは教育委員会もご存じのとおりです。 教育委員会には、教職員の時間外勤務などの労働条件の実態把握を行うとともに、その原因を明確 にし、 教育・労働条件の改善並びに効率的な公務の確立をより一層推進していただきたいと思います。 さて、北九州市の学校教育に於ける問題点を排除し、以下の要求をいたします。 記 1 教職員がその本務である教育実践に希望と情熱をもって取り組むことができる教育環境、労働条 件改善、見直しに関する要求項目 (1)教職員の超過勤務、過密労働排除のための施策に関する要求 ① 子どもと向き合う時間の確保や学力向上のための教材研究の時間確保、成績・評価、採点の時 間、事務処理など教員の本務遂行に必要な時間を確保するための具体的方策として、教員の授業 時数を削減すること。全ての教員の授業時数を小学校では20時間以下、中学校では、16時間 以下とし、授業時数や校務分掌などで過重な負担を強いられている教員が多数いる現状を改善す ること。 1 ② 専科教員をすべての小学校に配置すること。 ③ 市独自の予算措置により教員定数を増やし、小、中学校すべての学級を35人以下学級とする こと。 ④ 超過勤務削減のため、校時表見直しや帯取りの活用、休憩時間の後取りなどにより児童・生徒 の下校時間を早めること。また、超過勤務削減の方策、対策を校長会とも協議し、具体化させる こと。 ⑤ 定時退校日の趣旨を管理職に徹底し、各職場において確実に実施させること。また、確実な実 施に向けて行事や会議、研修の削減・精選を推進するなど、職場の労働環境の改善、整備を合わ せておこなうこと。 ⑥ 児童生徒支援加配の日々の勤務実態を把握すること。公教育に照らし教育活動に反する勤務実 態、事象に対しては毅然とした態度で改善のための指導を行うこと。 ⑦ 若年教職員に対する過重な研修や教育論文の強要は行わないこと。また、新採宿泊研修での勤 務・労働条件や研修環境等のあり方を改善すること。 ⑧ 小中一貫、連携教育の実施に当たっては、当該教職員の意見を十分反映させること。一貫・連 携教育の実施がすでに破たんしているという認識のもと、さらなる超過勤務、多忙化の要因にな らぬように、現場の実態を十分考慮し、画一的な実施の強制は行わないこと。 ⑨ 今年度市費講師未配置が多く、教育に穴をあけた状態が続いている。安全で充実した学校教育 を送るために人的配置は不可欠である。早急に配置を行い、今後このような事態を招かないよう にすること。 (2)勤務時間の適正管理及び超過勤務に対する適切な削減措置に関する要求 ① 学期末、学年末などに行う成績、評価などの必要不可欠な職務遂行に対しては、勤務時間内で 行えるよう短縮授業などを活用し適正な時間を確保すること。また、生徒指導、保護者対応など により時間外勤務が発生する場合は、その超過分に見合う適切な割り振りを補償すること。 ② 宿泊を伴う行事では、その実情や実態を充分勘案し、適切に勤務時間の割り振りをおこなうこ と。 ③ 管理職は、出退勤記録をもとに教職員の在校時間を常に把握し、超過勤務や過重労働など健康 破壊につながる勤務実態が明らかな場合には、削減のために必要な具体的措置を講じること。 ④ 生徒指導上の問題への対応や教員の補欠授業のため、学級担任外(フリー)の加配教員をすべ ての学校に配置すること。 (3) 校務支援システムを教職員の管理・統制の強化に用いず、教員と子どもとふれ合う時間 確保に活用する為の要求 2 ① 校務支援システムを利用しなければいけない業務とそうでない業務を明確にわけ、導入前 の確認を十分に行い、導入による過重な負担や混乱を招かないようにすること。また、校務 支援システムによる週案記入の強制や特別支援教育などにみられる、システムを活用した報 告書作成の増加などにより子どもとふれ合う時間が奪われているという状況を改善するこ と。 ② 出退勤時間については、管理職が確実に職員の出退勤時間を把握し、事実と違う時刻の入 力などがないようにすること。 (4)中学校における勤務軽減に関する要求 ① 週1回の「ノー部活動」の日を徹底し、担当教諭や生徒が心身ともに休養できる日をつくるこ と。また、休日の部活動に参加した教職員には適切な手当の支給・割振りや元気回復措置を行う こと。 (5)子どもの安全や、教育環境の充実のための施策に関する要求 ① 定数内の教諭が兼務する図書司書教諭の配置ではなく、子どもの読書指導など教育的観点に立 って指導、援助できる専任の図書司書をすべての学校に配置すること。当面、学校図書職員を全 中学校校区に配置すること。 ② 「学校環境衛生基準」に沿って教育及び労働環境を改善するため特別教室にもエアコンを設置 すること。同様に室内の適切な照度、騒音等良好な教育環境を確保すること。 ③ すべての学校の保健室・プールに温水シャワーを設置すること。 ④ 男女別休憩室・更衣室・シャワー室の設置を進めること。 ⑤ 養護教諭が1人配置の学校における修学旅行等宿泊行事には看護師を配置し、学校に養護教諭 が不在とならないようにし、児童生徒の安全を確保すること。 (6)特別に支援が必要な児童、生徒に対する人的配置の充実に関する要求 ① ADHD・高機能自閉症・アスペルガー症候群・学習障害などの困難を有する児童・生徒に対 する教育的支援を行うため、すべての小・中学校に専任の特別支援教育コーディネーターや学習・ 生活支援員を配置すること。 ② 小・中学校に特別支援が必要な児童・生徒が一人でもいる場合は、特別支援学級を設置するこ と。また、設置基準月を柔軟に運用し、学校からの要望があれば 7 月を過ぎても県教委に設置要 望をあげること。 ③ 基準日を過ぎても、特別支援学級では定数よりも 1 名児童生徒が増えたら、教員を 1 名加配す ること。 ④ 情緒の特別支援学級は、一人ひとりへの個別支援が大きく、現行の定数8名を減らすこと。 3 ⑤ 介助員の勤務時間及び労働内容が、介助を必要とする児童・生徒の活動時間や内容とずれがあ り、職場に支障をきたしている。介助が必要な児童・生徒の登校から下校まで介助員を置くこと。 (7)いじめ・不登校・暴力行為等困難な教育課題を解決のための要求 ① いじめ・不登校・暴力行為・非行など困難な教育問題を実践的に解決していくため、すべての 小・中学校にスクールカウンセラーを常時配置すること。さらに、中学校には専任生徒指導教員 を配置するなど人的支援をおこなうこと。 ② 市教委による生徒指導研修などを学校に強制しないこと。 2.指導に困難を有する児童・生徒が年々増え、一方的に理不尽な要求をしてくる対応困難な保護者 が増えている中で、学級担任の精神的・身体的負担は増える一方である。学級担任の負担軽減のた めの要求 ① 学校支援のためにスクールソーシャルワーカーを増員すること。 ② 訴訟等の法的なトラブルに備え、弁護士の相談を受けられるようにすること。 ③ 児童生徒、保護者と直接関わっている現場の教職員の要求に沿えるように、教育委員会と管理 職は現場教職員への支援を行うこと。 3.教育現場にそぐわない競争原理を導入し、学校から豊かに人間関係を 育む土壌をなくす等のゆ がみを助長する「全国学力テスト」 (全国・学習状況調査)は多くの問題をはらんでいます。また、 新学習指導要領に より授業数が増えている中、 「活用する力を高めるワーク」の配布などで、教師 や児童・生徒をさらに多忙化に追い込むことはしないこと。 本年度については、以下のことを要望する。 ① 「全国学力テスト」の学校別結果を公表しないこと。 ② 「全国学力テスト」 (全国・学習状況調査)は、抽出校のみで実施することを文科省に要望する こと。 ③ 「活用する力を高めるワーク」や「家庭学習チャレンジハンドブック」 「市独自のテストやワー ク」等、教職員や児童生徒の負担を増やすものを作り配布する予算があれば、35人学級対象 の学年を増やすこと。 ④ ⑤ 学力テストの結果、平均点を下回る教科があっても、その教科教員を対象とする「特別研修」 等は実施しないこと。 学校に更なる負担を強いる、ひまわり学習塾をやめること。 4. 「新しい職」の制度が、管理統制のためにならないよう通達すること。また、公募制については、 多くの問題点が報告されているので今後は実施しないこと。 5.ILO・ユネスコ「共同専門家委員会(CEART)」が日本政府に 対して出した、 「教員の地 位に関する勧告」に則り、この評価システムの廃止、もしくは、誰もが客観的に納得のいく単純シ ステムに変更することを要求する。もし今年度も実施するならば、今年度の評価に当たっては以下 の点を要求する。 ① 評価の観点・基準を明確化し、評価については必ず本人に結果と理由を返すこと。 4 ② 不服申し立てについては、評価内容を作った教育委員会内部に苦情処理委員会を設けるので はなく、労使双方に中立的弁護士を含む第三者機関に判断をゆだねること。 ③ 自己評価・自己申告書の裏にある「教育委員会施策に対する提言」に書かれた内容について は、回答を含め全教職員に公表すること。 ④ 評価結果を賃金(ボーナスを含む)に反映させないこと。 6.子どもたちの食を保障し、食育を推進していく観点からも、中学校に給食が実施されたことは一 定の前進と考える。しかし、中学校給食における問題点が改善されず、どの学校にも、一律に残食 ゼロを強制するような新たな問題も多々浮き彫りとなった。よって、以下のことを要望する。 ① 「親子方式」のため、配達校となった小学校では、調理現場が多忙化危険化している。また、 配達校の行事によって給食が実施されない日があることから、自校方式を基本とした方式に転換 すること。 ② 定期考査期間中において、学校現場を混乱させるような給食実施は強制しないこと。 ③ 給食実施に伴い「昼休み」が分割付与され、休憩時間がとれていない実態を解消させること。 7 教員免許更新について、教員が免許失効による失職におびえながら教育を行うことは、教育活動 や子どもたちに対しても悪影響を与えかねない。加えて、今日の教育をめぐる問題や子どもたちの 抱える諸問題を、教員の資質の問題にすり替え、教育内容や教員の管理統制を強化しようとする制 度には反対である。 ① 教員免許の失効=失職のシステムをやめるよう国、文科省に働き掛けること。 ② 受講については、教員の身分や本務に関わる講習であるので、土日の講習であっても出張扱い とし、振替措置を行うこと。 ③ 受講手続きを職場でもできるようにすること。大学に対しても募集枠を拡大するように求める こと。(放送大学について、北九州サテライトスペースの増員を要請すること。) 8 学校に勤務するすべての職員の勤務条件改善のための要求 ① 嘱託校務員・事務職員などの任用期限を廃止し、希望する職員に関しては異動を行うことによ り継続して任用すること。 ② 今年度、校務員が不足しハローワークで期限付き採用の臨時職員が配置されている。学校で重 要な職責を担っている学校校務員が不足する事態に陥らないよう努力すること。 ③ 次年度も引き続き任用を希望している講師に関して、次年度採用の有無について遅くとも3月 1日までに本人に文書で通知すること。 ④ 校納金システム導入により、嘱託事務職員の精神的、肉体的疲労が増している一方で、超勤も 常態化している。それらの職員に対し、労働条件の改善を行うこと。また超過勤務に対しては、必 ず残業手当の申請を行うように指導すること。 5 ⑤ 年度末に次年度の講師採用が確定するようにするとともに、健康保険証を返却しなくてよいよ うにすること。また、新規に採用する講師については、任用後はすみやかに保険証を発行するこ と。 ⑥ 9 県費常勤講師の任用は勤務の実態に応じて改めること。 土曜日授業について 土曜日授業を強いて、過重な学習負担を押しかぶせることは、子どものストレスをいっそう増幅 させることにつながる。それはかえって学習意欲の低下、減退につながり、こうした方向で学力向 上は果たせるものではない。 また、条例改正により、前 8 週後 16 週の内に振替をとるようになっているが、回数が増えていけ ば、3期の休業日に全ての振替はとりがたい状況にある。 ① 現在行っている学期に1~2回の土曜日授業を増やさないこと。 ② 年度の途中で産休に入ったり任用が切れたりする教職員や条例外の市費講師に、割り振りを確 実に取らせること。 10 労働安全衛生委員会の趣旨をいかすため、職場に配置されている衛生推進者を機能させること。 また、北九州市教育委員会安全衛生委員会に全教北九州市教職員組合の委員を加え、現場の教職員 の切実な声が反映されるようにすること。それまでは、オブザーバー参加を認めること。 11 人事異動の内示は、発令日の遅くとも 5 日以前までには行うこと。 12 労働基本権回復を睨み、要求書に基づいた交渉がさらに実効あるものになるようにするため、教 育長、学務部長との直接交渉の場を今後設けること。 13 現在「懲戒処分の指針」にパワーハラスメント条項が盛り込まれているが、パワーハラスメント そのものの認識が未だ全職員に浸透しているとは言い難い。教職員のメンタルヘルスを守り,働き やすい職場を作るために以下の事を要求する。 ① パワーハラスメント、及びセクシャルハラスメントの実態を調査すること。 ② 各学校長、教育関係における各部署に向けて,パワーハラスメント及びセクシャルハラスメン トを防止するための指導文書を出し、職員研修を行うよう指導すること。 ③ ハラスメントは「どこの職場でもある」という認識のもと、これまでの研修のみでの対策を真 摯に反省し、教職員が安心して働ける環境を整えること。 ④ 相談窓口(広域通報制度を含む)を全職員に周知、徹底すること。 14 特別支援学校の統廃合による「門司総合特別支援学校」開設に当たって、心身症や発達障害の 児童・生徒が行き場を失わないようにすること。 上記内容について、文書で回答すること。 6
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