No.115

LAAN-J-MS115
GC-MS
Gas Chromatograph Mass Spectrometer
食品中の残留農薬分析における検量線試料調製
の自動化
115
Automation of the calibration curve sample preparation in pesticide
residue analysis in foods
多機能オートサンプラ AOC-6000 は、容量の異なるシリンジを自動で交換する機能と試料を撹拌する機能を備えてい
ます。本アプリケーションデータシートでは、それらの機能を使って内部標準と疑似マトリックスを添加した農薬の標準試
料系列を自動調製し、GCMS-TQ8040で分析した結果について報告します。
分析条件
農薬標準原液(10 μg/mL, アセトン溶液)をアセトン:ヘキサン(体積比1:1)で希釈し、1 μg/mL農薬標準液を調製しまし
た。農薬サロゲート混合標準原液(20 μg/mL, アセトン溶液)をアセトン:ヘキサン(体積比1:1)で希釈し、10 μg/mL内部標
準液を調製しました。ポリエチレングリコール300をアセトン:ヘキサン(体積比1:1)で希釈し、100 mg/mL疑似マトリックス
試料を調製しました。自動化はFig. 1に示しますシステムを用い、Table 1に示す条件で測定しました。本システムでは、
Fig. 2に示す各標準液や疑似マトリックス試料、空バイアル、希釈溶媒を装着後は、自動的に調製されます。(Fig. 3)
Table 1 分析条件
[装置構成]
オートサンプラ:
GC-MS:
カラム:
ガラスインサート:
AOC-6000 (ハイエンドモデル)
GCMS-TQ8040
Rxi-5Sil MS (長さ30 m, 0.25 mm I.D., df=0.25 µm) (島津ジーエルシー, P/N:13623)
Sky Liner, Splitless Single Taper Gooseneck w/Wool (島津ジーエルシー, P/N:567366)
[検量線試料の自動調製条件]
希釈倍率:
1000, 200, 100, 20, 10倍
希釈後の濃度:
1, 5, 10, 50, 100 ng/mL
希釈試料の最終体積:
500 μL
内部標準液の添加量:
10 μL
擬似マトリックスの添加量: 1 μL
[GC-MS/MS]
GC-MS/MSの分析条件は、“Quick-DB 「GC/MS残留農薬分析用データベース」”に登録されている条件を使用しました。
空バイアル (検量線の濃度点数分)
液体注入用シリンジ
希釈溶媒
ボルテックス
サンプルラック
Fig. 1 AOC-6000付きGC-MS/MSシステム
溶媒
農薬標準液
(1) 希釈
内部標準液
左から 農薬標準液、内部標準液、擬似マトリックス試料
Fig. 2 サンプルラックに装着したバイアル
擬似マトリックス試料
(2) 内部標準試料と擬似マトリックスの添加
Fig. 3 標準試料調製フロー
(3) 攪拌
(4) GC-MS/MS測定
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分析結果
5回自動調製した100 ng/mL農薬標準試料をGC-MS/MSで測定しました。代表的な7種農薬の繰り返し分析精度を
Table 2に示します。%RSD は、4.2 % (エトフェンプロックス)以下となり、良好な結果が得られました。
Table 2 7種農薬標準試料の繰り返し分析精度 (100 ng/mL, 面積)
農薬
データ1
データ2
データ3
データ4
データ5
平均
%RSD
ダイアジノン
259821
254480
252259
269370
259173
259021
2.6
イプロベンホス
834017
838790
839281
914304
864153
858109
3.9
クロルピリホスメチル
272681
268938
275955
288632
287979
278837
3.2
メトラクロール
2591179
2508642
2558336
2648199
2629109
2587093
2.2
チアベンダゾール
1248274
1266538
1311997
1363488
1342165
1306492
3.7
165477
165806
162462
174687
164912
166669
2.8
1773129
1626398
1608742
1690189
1610465
1661785
4.2
イソプロチオラン
エトフェンプロックス
自動調製した農薬標準試料(1, 5, 10, 50, 100 ng/mL)の測定結果を用いて検量線を作成しました。検量線をFig. 4に
示します。相関係数 (R)は0.999379 (クロルピリホスメチル)以上となり、良好な直線性が得られました。
面積比
0.6
面積比
R = 0.9999167
0.5
0.5
面積比
面積比
R = 0.9999812
1.25
R = 0.999379
0.75
0.4
0.4
1.00
0.3
0.75
0.2
0.50
0.1
0.25
0.50
0.3
0.2
0.25
0.1
0.0
0.00
0.25
濃度比
0.00
0.00
0.25
ダイアジノン
0.0
0.00
イプロベンホス
面積比
0.5
濃度比
0.6
R = 0.999961
濃度比
クロルピリホスメチル
面積比
0.5
0.25
0.00
0.00
R = 0.999923
0.25
濃度比
メトラクロール
面積比
R = 0.999955
0.6
R = 0.999867
0.5
0.4
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
0.00
0.0
0.00
0.25
濃度比
チアベンダゾール
0.3
0.2
0.1
0.25
濃度比
イソプロチオラン
0.0
0.00
0.25
濃度比
エトフェンプロックス
Fig. 4 7種農薬の検量線と相関係数 (R)
結論
AOC-6000 を用いて自動調製した農薬標準試料をGCMS-TQ8040で測定した結果、良好な繰り返し分析精度が得ら
れました。また、自動調製した標準試料系列を分析し得らえた検量線は良好な直線性を示しました。
AOC-6000を用いて検量線標準試料の調製を自動化することで、作業時間の短縮や人為的誤差を避けることができ、
分析ラボの生産性と信頼性向上に有効であることが明らかとなりました。
初版発行:2015年 9 月
© Shimadzu Corporation, 2015