久留米市立長門石小学校 主幹教諭 塚本 斉

研究主題
重点目標の達成に向けた主幹教諭としての教務運営の在り方
~学校プランと4つの役割を絡めたマトリックス表の活用を通して~
久留米市立長門石小学校
- 59 -
主幹教諭
塚本
斉
要
旨
本 校 児 童 の 課 題 は 、「 学 力 の 向 上 」 と 「 自 尊 感 情 の 高 揚 」 等 で あ る 。
これらの課題を改善するため、長門石小学校プランを設定し、全職員の
協働・共同のもと学校運営を行っていく必要がある。しかし、主幹教諭
として何をすべきか正直わからなかった。そんな時「主幹教諭の4つの
役割をそれぞれ、学校プランの4つの柱に当てはめて考えてみたら、よ
り自分のすべきことが明確になってくるのでは」と教頭先生からご指導
をいただいた。
そ こ で 、 重 点 目 標 達 成 の た め に 、 4 つ の 柱 で あ る 「確 か な 学 力 の 育 成 」
「豊 か な 心 の 育 成 」「 健 や か な 体 の 育 成 」 「家 庭 ・ 地 域 と の 連 携 、 学 校 力
の 向 上 」の そ れ ぞ れ を 横 糸 、 ど の よ う に 働 き か け れ ば よ い の か 、 「補 佐 」
「 調 整 」 「 人 材 育 成 」「 指 導 ・ 助 言 ・ 指 示 」 の 4 つ の 役 割 を 縦 糸 と し て 、
主 幹 教 諭 と し て の 自 分 の『 具 体 的 な 行 動 方 針 』を 明 確 に し た 表 を 作 成 し 、
実践するとともに今後の主幹教諭としての自分の動きが明らかにできれ
ばと思い本実践を行った。
そ の 結 果 、「 重 点 目 標 に 迫 る 子 供 の 姿 」 か ら 、 少 し ず つ 改 善 が 見 ら れ
る よ う に な っ て き た 。「 主 幹 教 諭 と し て の 役 割 」 か ら も 、 学 校 の 組 織 運
営体制の整備・充実に向け寄与するとともに、三学期や来年度の教育課
程編成に向けて、主幹教諭としての方針を持つことができた。
課題としては、食育、安全教育をより重視していくことから、学級活
動指導実施シートを提案したり、クラス担任と養護教諭、栄養教諭の授
業をコーディネートしたりしながら先生方と養護教諭、栄養教諭との連
携 の 強 化 し て い く こ と (「 調 整 」「 人 材 育 成 」) と 、 家 庭 、 地 域 と の 連 携
を深めるとともに、ひいては学校力の向上のために、学校の取組のよさ
や 先 生 方 の 経 営 努 力 を 保 護 者 地 域 に 広 報 ・ 発 信 し て い く こ と(「 補 佐 」)、
があげられる。
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重点目標の達成に向けた主幹教諭としての教務運営の在り方
~学校プランと4つの役割を絡めたマトリックス表の活用を通して~
もくじ
もくじ
62
1.主題設定の理由から
62
2.主題の意味について
63
3.副主題の意味について
64
4.実践のねらい
65
5.実践の実際と考察
65
6.成果と課題
73
○引用・参考文献
76
1.主題設定の理由から
(1)本校の子どもの実態と本校の経営課題から
昨年度(平成25年度)12月実施の久留米市学力・生活実態調査より以下のことが明らか
になっている。
・質問紙で「学校の授業がよくわかる」と答えた児童の割合が全国より高い。その反面、す
べての学年の国語科、算数科の観点別の評価については全国の達成率より低い傾向にあり、
自分の考えを交流に生かすことが不十分である。
・「自分のことが好きである」「自分のよいところがある」「授業の中で話し合ったり、自分
の考えを表現したりする機会が少ない」の項目では、10ポイントあまり低い傾向にある。
また、本校区は、家庭の教育力が全体的に弱まっているが、「基礎学力をつけてほしい」「挨
拶や正しい言葉遣いができる子に育てたい」等の学校に対する家庭・地域の期待も大きい。こ
れらの実態と課題から、設定されたのが重点目標である。
これらの課題を改善し、目標を達成していくためには、主幹教諭として「学校組織運営体制
の整備・充実」に向けて、くさびを打ち込みつつ全職員の協働・共同のもとに行わなければな
らず、その具体的方策を明らかにしていき、重点目標を達成すべく本主題を設定した。
(2)主幹教諭としての職務から
本年度4月、教務担当の主幹教諭として本校に赴任した。学級担任だった今までと違い、学
校全体のお世話ということで、何をしていけばよいのかわからないというのが正直なところだ
った。文科省は、平成 20 年 4 月の「学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し
等に関する検討会議」の「審議のまとめ」の中で「学校の組織運営体制の整備・充実」をはか
るために、
学校は、子どもたちの教育を担う教員が子どもと向き合う時間を確保した上で、学校とし
ての明確な教育方針の下に、個々の教職員の活動を有機的に結びつけ、組織的、一体的な教
育活動を展開していくことが必要である。そして、それが可能となるよう、組織的な学校運
営を行う体制を整備することが必要である。また、副校長や主幹教諭、主任などが、校長を
補佐し、中間的にそれぞれのグループの取りまとめや調整を行うなどして、組織的に運営が
行われることが必要である。
(下線:塚本)
としている。
そこで、年度当初、教頭先生から指導を仰ぎ、「主幹教諭の4つの役割をそれぞれ、学校プ
ランの4つの柱に当てはめて考えてみたら、より自分のすべきことが明確になってくるのでは」
という指導・助言のもと、組織的な運営とはどういうものかを考え実践していくようにした。
- 62 -
2.主題の意味について
(1)「重点目標」とは
昨年度の教育課題であった「聞く力、話す力、交流する力を育てる」ことと経営課題であ
った「学校総体で共通実践を行う」こと等から決定された平成26年度に長門石小学校で達
成すべき目標のことである。平成26年度の重点目標は、
正しい言葉づかいで、考えや思いを伝え合おう。
である。
(2)「重点目標の達成」とは
この重点目標を達成するために、「健やかな体」「豊かな心」「確かな学力」の3側面から目
指す子どもの姿とそのための主幹教諭としてすべきことを明らかにし、具現化していくこと
である。
目指す子どもの姿とそのための主幹教諭としてすべきことを表したのが下の表1である。
3側面
子どもの姿
主幹教諭としてすべきこと
「健やかな体」 ○運動への関心・意欲を持ち、課題 となる握力 高めていく運 動環境の整備
友だちとともに遊んだり運動 と学級活動(2)において、全学年で食を題材
したりしようとする子ども
にした指導の充実
「豊かな心」 ○自他の生き方や生命を大切 いじめ防止基本方針に基づく、言葉づかいや
にし、ともに夢と志を持って 挨拶をはじめとする言語環境の充実
前進する子ども
「確かな学力」 ○自分の思いや考えを自信を 基礎・基本の補充を目指す「長門石っ子タイ
持って表現し、ともに高まり ム」「学びタイム」の実施と日常の授業に生か
合う子ども
す校内研修等の取組
なお、これらの子どもの姿は、 表1
豊かな学級の土壌や協力的な
地域の上に成り立つものであ
る こ と か ら 「学 校 力 の 向 上 、
家 庭 ・ 地 域 と の 連 携 」を 踏 ま
目指す子どもの姿と主幹教諭としてすべきこと
学校の教育目標
一人ひとりがいきいきとかがやく学校の創造
本年度の重点目標
正しい言葉づかいで,考えや思いを伝え合おう。
えた上で端的に図に表したも
のが図1である。
また、「健やかな体」「豊か
な 心 」 「確 か な 学 力 」「学 校 力
の向上、家庭・地域との連携」
に係る具体的な子どもの課題
と実態、目標達成の指標につ
「健やかな体」の育成
○運動への関心・意欲
を持ち、友だちとともに
遊んだり運動したりし
用とする子ども
・課題となる握力を高めて
いく運動環境の整備
「豊かな心」の育成
○自他の生き方や生命を
大切にし、ともに夢と志をも
って前進する子ども
・いじめ防止基本方針に
基づく,言葉遣いやあい
さつをはじめとする言語
環境の充実
「確かな学力」の育成
○自分の思いや考えを自
信をもって表現し、ともに
高まり合う子ども
・基礎・基本の補充をめ
ざす「長門石っ子タイム」
「学びタイム」の実施
・日常の授業に生かす
校内研修の取組
い て は 、 次 項 目 の 「副 主 題 の
意味」で述べる。
学校力の向上,家庭・地域との連携
○今後の教育活動に生かす保護者アンケートの実施
図1
目指す子どもの姿と主幹教諭としてすべきこと
(3)「重点目標の達成に向けた主幹教諭の役割」とは
主幹教諭の役割としては、下記のように4点あると考えている。
①全教職員による協働・共同のもとで円滑に機能し、活性化するような「補佐」の役割
②運営上の課題の解決策について、実践層の考えや目標をもとに総合的に判断し、学校と
しての方針や考え方にまとめる「調整」の役割
- 63 -
③校内研修の推進、日常の授業づくりを通して専門的力量を高めるOJTを通した「人材
育成」の役割
④教育課程の内容管理や進行管理を確実に行い、その完全実施を図る過程での「指導・助
言・指示」の役割
「重点目標の達成に向けた主幹教諭の役割」とは、重点目標の達成に対して、これらの
「補佐」「調整」「人材育成」「指導・助言・指示」の4つの役割から児童や職員に働きかけ、
学校総体として教育活動を推進していくことである。
3.副主題の意味について
(1)「学校プラン」とは
長門石小学校プランのことである。以下、平成26年度長門石小学校プランの課題と目標達
成の評価指数を示す。
実態と課題
確かな学力
目標達成の指標
・市学力実態調査の算数科において、「知 ・市学力実態調査において、算数
識・理解」「数学的な考え方」に課題があ 科「知識・理解」「数学的な考え
り、基礎・ 基本の定着が必要である。
方」が目標に達している児童が7
割以上
・市学力実態調査の国語科において、「書く ・市学力実態調査において、国語
力」に大きな課題があり、言語活動のさらな 科「書く力 」が目標に達している
る充実と支援の工夫が必要である。
豊かな心
児童が7割以上
・市生活実態調査で、「自分のことが好き」と ・ 市 生 活 実 態 調査 で 、 「 自 分の こ と
答えた児童の割合が58%しかなく、自尊感 が好 きである 」 と答える 割合が 、全
情の低さ克服が課題である。
健やかな体
児童の65%以上
・学級活動(2)で、食を題材にした指導が不十 ・学級活動(2)において年間1時間以
分だった。給食では残食が多く、食への理解 上 の食 に 関す る 指導 を実施 。給食
や感謝の念が不足していた。
家庭・地域との
では、残食量が前年度より1割減。
・校内研修の研究授業や授業検討会が日 ・校内研修での研究授業を全員各
連 携 、 学 校 力 の 常 の 授 業 改 善 に な か な か つ な が っ て い か 1回実施するとともに、教師持ち
向上
ず、研修の日常化が大きな課題である。
回りの自主的ミニ学習会を年間6
回実施
(2)「学校プランと4つの役割を絡めたマトリックス表」とは
前述した学校プランの課題を踏まえ、目標達成にむけた4つの柱である「確かな学力の育
成」「豊かな心の育成」「健やかな体の育成」「家庭・地域との連携、学校力の向上」のそれぞ
れを横糸、どのように働きかければよいのかを、「補佐」「調整」「人材育成」「指導・助言
・指示」の4つの役割を縦糸として、主幹教諭としての自分の『具体的な行動方針』を明確
にした表(資料1)のことである。
資料1のような、「4つの役割と学校プランを絡めたマトリックス表」を作成することは、
それを元に主幹教諭の仕事を遂行していく上で、具体的な見通しが持て、方策と対応がより明
確になってくると考えた。
なお、この「4つの役割と学校プランを絡めたマトリックス表」については、次ページの資
料1のように記しているが、常に、主幹教諭としての仕事内容を付加・修正していくものとし
ている。
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主幹教諭の役割から
「補佐」
「調整」
「人材育成」
「指導・助言・指示」
・全国学力実態調
・子どもの基礎基本
の力を高める学びタ
イムの実施
ⅲ)学生ボランティ
ア学習会の参加対象
のとりまとめと実施
➎校内研修(模擬授
業)や初任者指導で
の実践的指導力の育
成
ⅳ)ちょこっと研修
での思考力の育成
ⅰ)週指導計画案で
の量的・内容管理
ⅰ)月一回生活アン
ⅲ)ぽかぽかポスト
の取組について
ⅱ)外国語活動の効
果的な実施への基盤
づくり
・子どもよさ,指導
のよさを担任に伝達
・自尊感情を高める
教室環境づくりへの
提案
確 査・市学力実態調査
か に向けての下準備
な ⅱ)1学期終業式で
学 のふりかえり
力
学
校
プ
ラ
ン
の
内
容
か
ら
豊 ケートの実施
か ・2学期終業式での
な ふりかえり
心
家庭
地域
との
連携
ⅰ)運動コーナー
(やってみようコー
ナー)設置に向けた
提案
・栄養教諭参加型の
食育に関する学級活
動の実施
健
や
か
な
体
ⅰ)保護者アンケー
トの結果と指導内容
の報告
・学生ボランティア
学習会の実施
ⅱ)学校HP作成に
よる保護者への広報
資料1
・学級通信を「行事
通信」から「授業通
信」と変える促し
4つの役割と学校プランを絡めたマトリックス表
4.実践のねらい
重点目標達成のための、主幹教諭としての「補佐」「調整」「人材育成」
「指導・助言・指示」
の4つ役割の在り方を学校プランの4つの柱と絡めたマトリックス表を活用して明らかに
するとともに、3学期や来年度に向けての今後の課題を明確にする。
5.実践の実際と考察
本項の実践では、マトリックス表の斜め文字で示した取組を中心に、学校プランの4つの柱
ごとに述べていく。
(1)「確かな学力」を育成するための主幹教諭の役割
ⅰ)
実践
週指導計画案での量的・内容管理
教育課程の内容管理や進行管理を確実に行い、その完全実施を図る過程での「指導・助
言・指示」としての役割
教育課程の内容管理や進行管理を確実に行い、その完全実施を図るために、まず、毎週発行
の週予定表に一週間の各学年の教科等の時数やそれまでの週の累計時数を載せたものを提案し
ている。さらに、資料2のように、月ごとの目安時数を入れ込んだものを使って時数計算を
行っている。例えば6月16日(月)に出された週案の生活科と音楽科の累計時数を見て
「生活科の目安が、あと7時間です。計画的な運用をお願いいたします。また、音楽の時
数が、若干少ないようですので合わせてお願いいたします。」といったように週案にコメン
トを書き、量的な管理を行っている。また、内容管理については、授業研がある先生には、
「6月2日(月)・19日の授業研お世話おかけします。学級活動(2)は『自分としての
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課題』
『自分で決定すること』の2点はとても大切です。必ず指導案に明記してください。」
とコメントし、指導案を一緒に考えた。
6月16日(月)
・生活科の目安が,あと7時間です。計画的な運
用をお願いいたします。また,音楽の時数が,若
干少ないようですので合わせてお願いいたしま
す。
6月2日(月)
・19日の授業研お世話おかけします。学
級活動(2)は「自分としての課題」「自分で
決定すること」の2点はとても大切です。必
ず指導案に明記してください。
資料2
時数管理表
また、資料2の時数管理表を担任に配布し、週案に量的管理に係るコメントを書いたこと
は、先生方の教育課程の管理に関する意識を高める上で効果的であった。
今後の方向性
→3学期は、教育課程の完全実施に向けて、月の初めに、一人一人の先生方に「どの教科
がどのくらい足りていないか」具体的に示していく(「指導・助言・指示」)必要がある。
ⅱ)
実践
「重点目標」の終業式での振り返り
全職員に再度「重点目標」を意識化し
てもらうとともに、協働・共同のもと
に円滑に機能し、活性化していくため
の校長の「補佐」としての役割
校長の強い願いである重点目標が達成
しているか、また、本校の目標を子ども
たちにもう一度意識させるために、一学
期の終業式にプレゼン(資料3)を使っ
て「一学期の振り返り」を行った。話の
内容としては、一学期の子どものすばら
しい姿を写真でみせ、長門石小学校が大
切にしていることを、校内の掲示物を使
って説明した。また、残念ながら、反対
に「死ね、消えろ、うざい」などの課題
の姿も見られたので、ちょっと厳しい口
調と表情で諭した後、友達が笑顔になる
言葉かけをペアになっておこなった。最
資料3
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一学期終業式に使ったプレゼン
後に校長先生や先生たちの願いを話した。このことは、視覚的に目指す子ども像を学校全
体で共有できたものと考えている。
なお、2学期の終業式の日も、9ページ記載の『ぽかぽかポスト』の取り組みにおいて『ぽ
かぽかカード』書かれた子供たちの行動のよさを意味づけして全校児童に紹介し、『正しい
言葉遣いで、思いや考えを伝え合う』の意義について再度、全校児童で確認した。
今後の方向性
→今後も重点目標に係る伝達事項や校長・教頭の経営層の考えを具体的に可視化して伝え
ていく「補佐」としての役割を行っていくための具体的な場を模索・検討していく。
ⅲ)
実践
学生ボランティア学習会の参加対象のとりまとめと実施
学生ボランティア学習会を効果的に進めるために、1学期実施の反省を踏まえての2学
期実施の在り方について先生方から意見を聞き、提案する「調整」としての役割
1学期実施した学生ボランティア学習
会では、児童の参加人数に対し、それに
関わる学生や教員の数が足りず、個に応
じた十分な指導ができなかった。このよ
うな課題を踏まえ、2学期からは、学力
的に厳しい学年に絞り、「できた」という
喜びを味わわせ、意欲を高めていくこと
に焦点を当て実施していくように「調整」
を行った。右の資料4が先生方に提案し
たプリントである。
また、全国学力状況調査の過去問題(資
料5)を使い、小数のたし算の位取りの
正しさを問う問題(誤答)の理由を述べ
るといった学習プリントを用意し、基礎
・基本の問題をさせながら表現力を育成
すると行った活動も重視した。
結果、担当以外の先生方も参加していた
資料4
先生方に提案したプリント
だき、個に応じたきめ細かな指導で子ど
もの学習意欲も高まってきたと考えてい
る。
しかし、学習意欲や計算技能は高まっ
ても、類似問題と関連させたり、筋道を
立てて考えたりするまでには至っていな
い。そういった関連づけたり、ほかのも
のとの関わりで物事を判断する思考力を
身につけさせることが、学力を身につけ
る上で重要だと考えた。
そのためには、日常の学習で先生方が
もっと、思考力や表現力の育成を重視し
た授業を推し進めていくことを意識するこ
資料5
とが大切だと感じた。
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全国学力状況調査のアレンジ問題
今後の方向性
→日々の算数の授業の中で、思考力を育成するための取り組みを示唆したり、情報を提供
したりしながらこれからの授業の方向性をもってもらうように「人材育成」を行っていく。
ⅳ)
実践
ちょこっと研修で思考力・表現力の育成
日常の授業作りを通して専門的力量を高めるOJTを通した「人材育成」としての役割
本校では、指導教諭に、水曜日の時間外に「ちょこっと研究」と題して、それぞれの得意、
専門分野から、もちまわりでミニ講話を行う時間を随時設定していただいている。
資料6
「思考力を育成するために」のプレゼン
11月に時間をいただいたので、資料6のプレゼンを用いて「思考力を育成するために」
という題で、演習を元に、先生方に話をさせていただいた。話した内容は次の4点である。
➊具体操作、図、式などの様々な表現を関連づけること、❷式を提示して、どのような考え
に当てはまるか説明し、選択させる場などを設定すること(1単位時間の後段に活用問題を
位置づけること)、❸一時間の振り返りを既知の数理と関連づけてまとめるなどの工夫をす
ること、❹技能習得一辺倒の宿題形式から宿題の質を今後工夫していくこと、などである。
「これからの授業の方向性がわかった」と先生方に言っていただいたが、しかし、実際に先
生方に授業を行っていただくことが大切である。
今後の方向性
→見る視点を持って教室訪問を実施したり、日々の算数の授業に実際に入ったりしなが
ら、実践的な指導方法を「指導・助言・指示」していく。
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(2)「豊かな心」を育成するための主幹教諭の役割
ⅰ)
実践
いじめ防止基本方針に基づいた月一回生活アンケートの実施
子ども一人ひとりの思いを受け止め、安心安全な学校を協働・共同でつくっていくた
めの「補佐」と担当部局との「調整」としての役割
先生方の「なかなか時間がない」とか「すぐできて効果的なアンケートができないだろうか」などと
いった悩みを聞き、そういった先生方の意見を校長、教頭の経営層に伝えた。簡単に児童の様子
を的確に捉え、重点目標を意識したアンケートができないものだろうかと考え、担当の先生に提案
したのが資料7のアンケートになる。
項目①では、学校の重点目標である「正しい言葉づかいで、考えや思いを伝え合おう」
から、具体的な優しい言葉遣いができているか聞き取れるものになっている。
項 目② は 、先 月に
比 べ「 今 のク ラス
学校の重点目標
「正しい言葉づかいで,考えや
思いを伝え合おう」から
は 楽し い か」 を問
い 、は い ・ふ つう
・ いい え に丸 をつ
け るだ け の簡 単な
1 個別の聞き取りを行う
ふつう・いいえと答えた理由は
何か
①友達関係②学業
③教師との関係
2 意図的計画的に場を設定
する
①活動の場
②賞賛する場
も のに な って い
る 。「 ふ つ う ・ い
い え」 に 記入 した
児 童に 理 由を 聞き
取 った 後 で、 意図
的 に活 動 や賞 賛す
る 場を 仕 組ん でい
くことも担当と話し
資料7
月一回生活簡易アンケート
合い、職員に提案していただいた。
このアンケートで実施したことは、手早くでき、しかも、クラスが前に比べて楽しいか
との問に、ふつう、いいえと書いた子どもの個別相談を行うことで、子どもたちの悩みを
聞き取り、以後の指導に生かせるものになった。今後は、クラス内の情報を学年、ブロッ
ク単位で共有し、共同で子供たちを見守り、支援していくために生徒指導部会等と有機的
にリンクさせていく必要がある。
今後の方向性
→月第3週の生徒指導部会の議題の一つとして定着させ、各クラスの情報を共有するため
に、生徒指導部会を職員会議につなげていくよう今後人的・物理的な「調整」が必要である。
ⅱ)
実践
外国語活動の効果的な実施への基盤作り
豊かな心を育成するために必要なコミュニケーション力をはぐくむ外国語活動の指導力
を高めるための「人材育成」としての役割
城南中校区は、京町小をはじめ外国語活動が盛んな校区である。本校も、5、6年生だ
けでなく、昨年度から低学年も独自の時間で英語の授業を行っていたと聞いていた。しか
し、先生方の意識に差があり、ほとんどの先生がALT任せだった。そこで、外国語活動
担当の先生と話合い、職員会の中でミニミニ研修会(資料8)をしようと話し合った。
プレゼンを使い、私が国の動向や外国語活動の必然性、外国語活動担当教諭が「だれも
- 69 -
ができる外国語活動」ということで先生方に話をしたり、演習を行ったりした。
また、5月にイングリッシュルームをつくり、夏季休業中に、2学期に備え外国語活動
の教材作りを職員
作業で行った。
その結果、「常に
Hi"friendsの CDと
パソコンを準備す
る必要がなくなっ
て授業がしやすく
なった。」と先生方
に喜ばれた。さら
に、主体的に授業
を「やってみよう
かな」という気持
5月 イングリッシュルームの設置
8月28日 校内研修
ちになられている
先生方も多くなっ
全職員による教材作り
た。
資料8
職員会の中のミニミニ研修会
今後の方向性
→外国語活動の授業や低・中学年ブロックの英語の学習に抵抗がある職員には、「人材
育成」のために T2 として補佐しながら、外国語活動の意義等を伝えるとともに、力量
を高めていけるようにする。
ⅲ)
実践
ぽかぽかポストの取組
児童の自尊感情を高めるとともに、児童相互の優しい言葉遣いを推進していくための
管理職の「補佐」と担当部署との「調整」としての役割
互いの良さを見つけ合い、認め合うことは、本校
の課題である「自尊感情の低さ」を解消し、考えや
思いを伝え合うことになり、重点目標に迫ることが
できると考えたのが「ぽかぽかポストの取組」(資料
9)である。
当初、人権・同和教育部会からの提案(資料10)
と言うことで担当の先生と「調整」を行っていって
いたが、児童に「優しい言葉遣い」を意識させるた
めには、教師サイドから「します」ではなく、児童
会(運営委員会)からの取組で「児童の手で、提案、
実施」したほうがより効果的ではないかといった先
生方からのご意見をいただいた。
運営委員会の先生方も快く引き受けていただいた
ので、運営委員会より代表委員会に提案していただ
き、実施の運びとなった。実施は、11月の中旬か
らの一ヶ月の期間で、ポストの中のカードに書かれ
た「紹介したい友達とその理由、カードを書いた友
達」を、運営委員会の児童が給食時間中に発表してい
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資料9
ぽかぽかポストの取組
くものである。写真1は、職員室
前に掲示された「ぽかぽかカード」
である。これらの取組は、学校全
体の一年間の目当てとも言える重
点目標の「正しい言葉遣いで、考
えや思いを伝え合おう」を児童や
教職員のみんなで達成していこう
という姿であり、とても効果的な
取組であったと考える。
写真1
掲示されたぽかぽかカード
資料10
ぽかぽかポストの提案文書
今後の方向性
→この「ぽかぽかポスト」の取組を一過性のものにするのでなく、継続的な取組としてい
くために今後実施方法や担当部局との「調整」が必要である。
(3)「健やかな体」を育成するための主幹教諭の役割
ⅰ)
実践
運動コーナーの設置
体力テストの結果からの課題克服のためのコーナーの設置についての案の提示と具体的
な方向性を体育部の実践層に「指示」を行う役割
体力テストの分析結果から、本校では『握力』についての課題が見られる。そのため体育
の学習の準備運動時において、登り棒、雲てい、鉄棒を使ったサーキットトレーニング等を
重視しているが、そのほかに握力器を使ったり、簡単な運動をしたりする測定コーナーを設
置できないか体育部担当と話しを行っていたが、「設置するに当たって安全性を確保するた
めの場所が見つからない。」と言うことでそのままになっていた。
今後、体育部の部会において実践層からアイデアを聞き取りながらもいくつかの案をまと
め、校長・教頭へ伝え、指示を仰ぎたいと思う。
今後の方向性
→体力テストの結果からの課題克服のためのコーナーの設置についての実践層からのアイ
デアを聞き取り、校長・教頭への経営層に伝える「調整」としての役割
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(4)「学校力の向上、家庭・地域との連携」を高めるための主幹教諭の役割
ⅰ)
実践
保護者アンケートと指導内容の報告
各行事等の保護者アンケートの分析から、全職員による協働・共同のもとに円滑な指導
に下ろすための管理職の「補佐」としての役割
5月の土曜授業の保護者アンケート、交通パトロールの保護者の意見、日常に話す中で
の保護者の意見で、例えば、「本を読みながら帰っている子がいます」「教室はきれいです
が、廊下はほこりがあります。気管支の弱い子やアレルギーがある子は大丈夫でしょうか」
というものがあった。これらは、児童の命や安全を脅かすものであることから、その意見
の内容と改善
ちょっと気になる保護者の意見
点を簡単にま
とめ、校長、
教頭に報告し
5月土曜授業のアンケートから
た。そういっ
・教室はきれいですが,廊下などは,ほこりやごみが多いと思います。気管支の弱い子やアレルギー
のある子は大丈夫だろうかと思いました。
た中で、毎週
・お手洗いがにおうときがあるようです。
出している週
⇒ 先生方で掃除指導の際,まどのさんなどのほこりのたまりやすい所の確認をお願いいたします
予定表の裏に
資料11のよう
パトロール保護者の意見から
に書き込んだ
・本を読みながら帰っている子がいました。・大人が見てないところでは横断歩道でないところを渡っ
ている子がいました。
り、終礼の中
・左右を確認せずに道路に飛び出す子がいました。
で 、「 窓 の さ
・挨拶をしている子とそうでない子がいて,老人会の方には特に挨拶をしてほしいと思いました。
んの埃のたま
⇒朝や帰りの会で早急に,ご指導お願いいたします
りやすいとこ
その他
ろを確認をお
・郵便受けを勝手に見て,郵便物をもって帰っている(捨てている)子がいます。
願いします」
・駐車場で遊んでいる低学年の子がいます。
など具体的に
⇒朝や帰りの会で早急に,ご指導お願いいたします
こうしてほしい
資料11
週予定表裏の先生方への伝達事項の実際
というところまで、先生方に伝えた。
このように、保護者の願いを即座に教職員に伝え、改善を図っていくことは、地域や保護
者からの信頼を得るものであり、ひいては、地域や保護者の学校への協力につながっていく
ものだと感じている。
今後の方向性
→様々な学校行事における保護者アンケートを素早く分析し、PTA の保護者からの情報
をもとに改善点を校長・教頭の経営層に提案し、それらを実践層に伝える「補佐」として
の役割の徹底をはかる。
ⅱ)
実践
学校HP作成による地域・保護者への広報
伝え合うことを大切にしている児童の姿をHP上に紹介し、地域や家庭に発信し、学校
の重点目標を意識してもらうための「調整」としての役割
2学期、委員会活動の児童が「考えや思いを伝え合う」活動を行った。一つは運営委員会
による「ぽかぽかポスト」の活動。もう一つは、放送委員会による「いきなり、教室訪問」
の活動である。「ぽかぽかポスト」活動は、児童相互で、よい活動やあたたかい言葉かけを
賞賛し合い、それをぽかぽかカードに書いてポストに投函し、給食の時間に紹介するという
- 72 -
活動である。『いきなり、教室訪問』とは、事前に用意した質問項目にそって、給食時間中
にクラスの児童に質問していくという取組である。「考えや思いを伝え合う」活動を児童が
主体的に行っているすばらしい活動であり、それをホームページに掲載(資料 12)するこ
とにより、保護者・地域にも重点目標についての理解をしていただければと考えた。
HPの学校生活で、
重点目標「正しい言葉づかい
で,考えや思いを伝え合う」
を意識して、学校の取組を紹
介する。
資料12
ホームページによる保護者地域への広報
今後、学校 HP を保護者・地域に見ていただけるように広報していく必要がある。
今後の方向性
→学校長の願い(重点目標達成の願い)を保護者・地域に伝え、地域と連携していくため
に、もっと HP の広報活動を盛んにする(「補佐」)としての役割
5.成果と課題
(1)成果
ⅰ)
重点目標達成に迫る子供の姿から
「副主題の意味について」の項で述
べた長門石小学校プラン「豊かな心」
「確
かな学力」の目標達成の評価指数につ
いては、本年度久留米市学力・生活実
態調査の結果が出ていないので、本年
度 12 月実施した児童、保護者アンケー
トの結果からデータで示す。
・重点目標の達成について
右のグラフ1は、
「自分の考えや思い
グラフ1「自分の考えや思いを人に伝えているか」
- 73 -
を人に伝えているか」という項目での保護者と児童の昨年度からの変容を表したものである。
保護者児童双方ともに、肯定的に回答した数値が、昨年度から 10 ポイント伸びていること
から、本年度の重点目標に向けて学校全体で改善していることがわかる。
・「確かな学力の育成」の面から
グラフ2の「学校の勉強がわかって
いるか」という項目での回答について
は、児童に至っては、昨年度より肯定
的に答える児童が6ポイント増加して
いる。しかし、主観的な回答であるた
め、明らかに意欲は高まってきたもの
の、知識や技能等の資質・能力が確か
に伸びたとは言えない。今後、より客
観的なデータでの詳細な分析が必要で
ある。
グラフ2「学校の勉強がわかっているか」
・「豊かな心の育成」の面から
グラフ3の「友達に優しい態度で接
しているか」という項目での回答につ
いては、児童に至っては、昨年度より
肯定的に答える児童が4ポイント増加
している。このことから、本年度、い
じめ防止基本方針に基づいて、生活ア
ンケートの実施や言葉づかいや挨拶を
はじめとする言語環境の充実を職員で
協働して取り組んできた成果だと言え
る。
グラフ3「友達に優しい態度で接しているか」
資料13
保護者アンケートより一部抜粋
また、上記の資料13は、保護者アンケートより一部抜粋したものである。学習に対する計
画性の向上への喜び、集団生活への適応や子どものよさを賞賛していくことへの保護者の願
いが書かれてある。
このことからも、現在本校が取り組んでいる重点目標達成のための方向性について間違っ
ていないことがうかがえるものである。
上記の結果から「確かな学力の育成」「豊かな心の育成」の両方の面から児童の変容が見
られる。このことは、本年度の重点目標である『正しい言葉づかいで、考えや思いを伝え合
う。』子供の育成に向けて、少しずつ具現化してきていることだととらえるものである。
- 74 -
ⅱ)
主幹教諭としての役割から
・
学校プランの課題を踏まえ、目標達成にむけた4つの柱である「確かな学力の育成」「豊
かな心の育成」「健やかな体の育成」「家庭・地域との連携、学校力の向上」のそれぞれ
を横糸、どのように働きかければよいのかを、「補佐」「調整」「人材育成」「指導・助
言・指示」の4つの役割を縦糸としたマトリックス表を活用したことは、主幹教諭とし
ての自分の『具体的な行動方針』を明確にし、学校の組織運営体制の整備・充実に向け
寄与することができた。
・
次年度の課題を「補佐」「調整」「人材育成」「指導・助言・指示」の4つの役割から
さらに明らかにすることができたことで、来年度の教育課程編成に向けて、主幹教諭と
しての方針を持つことができるとともに、主幹教諭の仕事に対して見通しを持つことが
できた。(実践編で「今後の方向性」として、明記済み)
(2)課題
課題としては大きく2点考えられる。
ⅰ)食育、安全教育に係る先生方と養護教諭、栄養教諭との連携の強化
1、2学期に栄養教諭
とコラボレーションして
食育の授業を取り組んだ
クラスや、養護教諭と安
全教育について学級活動
を行ったクラスも少なく
ない。専門的な知識を持
った教諭と担任でチーム
を組んで授業を行い効果
的だったとの話を聞いて
いる。しかし、まだ小数
のクラスであり、学級活
動の授業を行うとなると
綿密な打ち合わせ等も必
要なことから、資料 14 の
ような学級活動指導実施
シートを提案し、クラス
担任と養護教諭、栄養教
諭の授業をコーディネー
トしていく必要があると
考えた。
資料 14 の学級活動指導
実施シートは、学級活動
(2)の基本的な流れに
のっとって養護教諭や栄
養教諭が授業を行うため
の、簡単なメモである。
資料14
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学級活動指導実施シート
このようなメモを提示することで、打合せ時間の短縮等ができるのではないかと考えた。
この「調整」「人材育成」としての役割は、前述した長門石小学校プラン「健やかな体」の
育成の目標達成の評価指数である『 学級活動(2)において年間1時間以上の食に関する指導を実
施。給食では、残食量が前年度より1割減。』 に迫るための大きな主幹教諭の役割になると考え
る。
ⅱ)学校の取組のよさや経営努力を保護者地域に広報・発信していくこと
前述のグラフ2の「学校の勉強がわかっているか」、グラフ3の「友達に優しい態度で接し
ているか」の結果から、児童は変容しているにもかかわらず、保護者との考えに乖離が見られ
た。このことから、先生方の取組のよさを主幹教諭として、きちんととらえておくこと。さら
には、その情報を校長や教頭の経営層にはもちろん、全職員にも週予定計画表や終礼を通じて
伝えていくこと。さらに、HP や学力・生活実態調査を受けて保護者へ向けての便りの中で、
学校での取組(先生方のがんばり)をアピールしていくこと。などが今後ますます大切になっ
てくると感じている。
この「補佐」としての役割は、家庭、地域との連携を深めるとともに、ひいては学校力の向
上につながると考えるからである。
主幹教諭は、『職員室の担任』『主幹教諭は学校の鍵を握る』と諸先輩方から言われたこと
がある。これからも、人と人を、諸施策や行事等を“つなぐ”という意識を持って努力してい
きたい。
○主な引用・参考文献
・文部科学省
・長門石小学校
・文部科学省
「学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会
議」の「審議のまとめ」
(平成20年4月)
平成26年度長門石小学校学校要覧
(平成26年5月)
「生徒指導提要」
・福岡県教育委員会
・文部科学省
教育図書
(平成22年1月)
「活力ある学校運営の手引き」
「小学校指導要領解説算数編」
東洋出版
(平成23年3月)
(平成20年8月)
・筑後地区算数教育研究会 「今求められている算数の指導 Q&A」 (平成22年11月)
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