オレオサイエンスフェア2nd開催に向けて −日本油化学会にメディエイト

オレオサイエンス 第 15 巻第 7 号(2015)
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巻 頭 言
オレオサイエンスフェア 2nd 開催に向けて
−日本油化学会にメディエイトされた新たな協生系の創発−
オレオサイエンスフェア 2nd 実行委員会副委員長 朝 倉 浩 一
3 年前の 2012 年夏,日本油化学会は創立 60 年を記念
大きくなるイベントでなくてはなりません。前回のオレ
して,初めての一般市民向け大規模イベント「オレオサ
オサイエンスフェアでは,普段から良い研究をしたい,
イエンスフェア」を開催しました。
「親子で学ぶオレオ
良い製品を作りたい,良い製品を売りたいと頑張ってき
サイエンスの教育と展示の祭典」と銘打って,実験,ク
た多くの研究者技術者の方々が,所属組織の垣根を越え
イズ,デモンストレーション,展示,遊び広場,シンポ
て,本当に自発的に一生懸命ご尽力くださいました。そ
ジウムなどを執り行い,2 日間で約 1 千名のご来場者を
してその場へ,身の回りの製品に関する科学をもっと知
お迎えすることができました。
りたいと思っている消費者の方々,もっと勉強したいと
その好評に際し,本年 8 月 7 日(金)
,8 日(土)の 2
思っている子供達が自発的に集まってきました。その結
日間,前回と同様に慶應義塾大学日吉キャンパスにて,
果,通常よく語られる産・官・学の連携のみならず,同
「オレオサイエンスフェア 2nd」を開催することとなり
業種ライバル企業間,異業種企業間,保育園・幼稚園か
ました。ただし,今回は記念事業ではないため,祭典色
ら小中高等学校,大学までの教育機関間,大学と周辺地
のない純粋な学びの場としてのイベントです。具体的に
域といった様々な連携に支えられたネットワークが自発
は,小中学生の実験を中心とし,それにクイズや小規模
的に発生していく様子を見ることができました。すなわ
なデモンストレーションと展示が加わります。
ち,日本油化学会にメディエイトされた「新たな協生系
そしてこの度,前回に引き続き実行委員会副委員長の
の創発」を感じることができました。
役を仰せつかり,また会場校勤務者でもあることから,
本巻頭言を担当させていただくこととなりました。
広辞苑では,
「創発」とは「生物の進化過程やシステ
ムの発展過程において,先行する条件からは予測や説明
オレオサイエンスフェア 2nd は,前回のオレオサイ
のできない新しい特性が生み出されること」と説明され
エンスフェアと同様,普段は大学,国公立研究所,企業
ています。システムの構成要素の振る舞いの結果,シス
などに勤務している研究者ならびに技術者が,スタッフ
テム全体として新たな性質が発現し,その性質が各要素
となって作り上げるイベントです。したがって,研究者
の振る舞いを変化させ,さらにそれが集積複合化するこ
技術者がこのイベントスタッフとなることで,学術の進
とで,システム全体が今までと全く異なった特性や機能
展へ寄与できる時間が奪われ,日本油化学会が定款の中
を発現するのが「創発」で,トップダウン的な大きな力
でその目的として掲げる「油脂・脂質 , 界面活性剤及び
でシステムが動く現象ではありません。生物システムの
それらの関連物質に関する科学と技術の進歩を図り,産
進化におけるカンブリア爆発,社会システムにおける都
業の発展及び生活と健康の向上に寄与すること」に反す
市や国家などの組織の発生が,「創発」の代表例です。
る結果をもたらす可能性もあります。また,フェア開催
オレオサイエンスフェア 2nd もより良い協生系の創
の予算を,より直接的に学術および産業の進展へ向けた
発を目指し,自発的に学びたい参加者が集うよう,全員,
事業に充当すべきかもしれません。そのような中,
「フェ
完全公募抽選制とし,特定の学校や団体に所属する方々
ア開催の根拠は?」と尋ねられたならば,やはり定款の
をご招待することはいたしません。その広報のための
中で掲げている行うべき 6 つの事業の内「
(1)研究成果
リーフレット 2 万部が,ただ今刷り上がったばかりです。
の公開事業,
(2)人材教育,研究の奨励及び研究業績の
本号にそのリーフレットが挟み込まれていますので,日
表彰事業,
(4)地域の学術振興及び普及事業,に該当す
本油化学会員の皆様方,ふるってご家族でご参加いただ
るから」というのが回答かと思います。
けますようお願い致します。
ただし,ネガティブな効果よりもポジティブな効果が
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(慶應義塾大学理工学部 教授)