乱流予混合火炎の局所火炎構造と乱流特性長さ

第 14回数値流体力学シンポジウム
A04-1
乱流予混合火炎の局所火炎構造と乱流特性長さ
Characteristic Length Scale and Local Flame Structure in Turbulent Premixed Flames
於 云林, 東工大院I= = 〒NROJURRO 目黒区大岡山 OJNOJNI=bJã~áäW=óìóìåäáå]ãÉëKíáíÉÅÜK~ÅKàé
店橋 護I
東工大工I=bJã~áäW=ãí~å~Ü~ë]ãÉëKíáíÉÅÜK~ÅKàé
宮内 敏雄I 東工大工I=bJã~áäW=íãáó~ìÅÜ]ãÉëKíáíÉÅÜK~ÅKàé
vìåäáå=vrI=qçâóç=fåëíK=çÑ=qÉÅÜKI=OJNOJN=lçâ~ó~ã~I=jÉÖìêçJâìI=qçâóçI=NROJURROI=g~é~å
j~ãçêì=q^k^e^pef
qçëÜáç=jfv^r`ef
aáêÉÅí=åìãÉêáÅ~ä=ëáãìä~íáçåë=çÑ=ÜóÇêçÖÉåJ~áê=íìêÄìäÉåí=éêÉãáñÉÇ=Ñä~ãÉë=éêçé~Ö~íáåÖ=áå=íïçJÇáãÉåëáçå~ä
ÜçãçÖÉåÉçìë= áëçíêçéáÅ= íìêÄìäÉåÅÉ= ~êÉ= ÅçåÇìÅíÉÇ= íç= áåîÉëíáÖ~íÉ= íÜÉ= ÉÑÑÉÅíë= çÑ= íìêÄìäÉåÅÉ= äÉåÖíÜ= ëÅ~äÉ= çå
íÜÉ=ëíêìÅíìêÉ=çÑ=íìêÄìäÉåí=éêÉãáñÉÇ=Ñä~ãÉëK= = aÉí~áäÉÇ=âáåÉíáÅ=ãÉÅÜ~åáëã=áåÅäìÇáåÖ=NO=êÉ~ÅíáîÉ=ëéÉÅáÉë=~åÇ
OT=ÉäÉãÉåí~êó=êÉ~Åíáçåë=áë=ìëÉÇ=íç=ëáãìä~íÉ=eOJlOJkO=êÉ~Åíáçå=áå=íìêÄìäÉåÅÉK= = akp=~êÉ=ÅçåÇìÅíÉÇ=Ñçê=íÜÉ
Å~ëÉë= çÑ= íìêÄìäÉåÅÉ= äÉåÖíÜ= ëÅ~äÉ= çÑ= OKQOI= QKUQ= ~åÇ= TKOS= íáãÉë= çÑ= íÜÉ= ä~ãáå~ê= Ñä~ãÉ= íÜáÅâåÉëë= ìåÇÉê= íÜÉ
Åçåëí~åí=íìêÄìäÉåÅÉ=áåíÉåëáíóK= = táíÜ=íÜÉ=ÇÉÅêÉ~ëÉ=çÑ=íÜÉ=íìêÄìäÉåÅÉ=äÉåÖíÜ=ëÅ~äÉI=é~êíáÅìä~ê=Ñä~ãÉ=ëíêìÅíìêÉ
Å~å=ÄÉ=çÄëÉêîÉÇ=áå=ïÜáÅÜ=ÇáëíêáÄìíáçåë=çÑ=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ=ê~íÉ=~åÇ=ã~àçê=ê~ÇáÅ~äë=ëìÅÜ=~ë=eI=l=~åÇ=le=ëÜçï
êÉä~íáîÉäó= ëãççíÜ= éêçÑáäÉë= ïÜÉêÉ~ë= íÜçëÉ= çÑ= íÉãéÉê~íìêÉI= ÇÉåëáíó= ~åÇ= ãáåçê= ê~ÇáÅ~äë= ëÜçï= ÅçãéäáÅ~íÉÇ
é~ííÉêåë=áå=Ñêçåí=çÑ=íÜÉ=Ñä~ãÉK= = qÜÉëÉ=äçÅ~ä=Ñä~ãÉ=ëíêìÅíìêÉë=ëÉÉã=íç=êÉéêÉëÉåí=íÜÉ=êÉÖáãÉ=çÑ=}ïÉää=ëíáêêÉÇ
êÉ~Åíáçå= òçåÉD= áå= íÜÉ= íìêÄìäÉåí= ÅçãÄìëíáçå= Çá~Öê~ãK= = qÜÉ= äçÅ~ä= Ñä~ãÉ= ÉäÉãÉåíë= áå= íìêÄìäÉåÅÉ= ïÉêÉ
áÇÉåíáÑáÉÇ=Äó=ìëáåÖ=äçÅ~ä=ã~ñáãìã=íÉãéÉê~íìêÉ=Öê~ÇáÉåíë=~åÇ=ëí~íáëíáÅë=çÑ=íìêÄìäÉåí=éêÉãáñÉÇ=Ñä~ãÉë=ïÉêÉ
áåîÉëíáÖ~íÉÇK= = s~êá~åÅÉ=çÑ=äçÅ~ä=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ=ê~íÉ=áåÅêÉ~ëÉë=ïáíÜ=íÜÉ=ÇÉÅêÉ~ëÉ=çÑ=íÜÉ=íìêÄìäÉåÅÉ=äÉåÖíÜ=ëÅ~äÉK
sÉêó=íÜáå=Ñä~ãÉ=ÉäÉãÉåíë=ïÜáÅÜ=Ü~îÉ=äÉëë=íÜ~å=~=Ü~äÑ=çÑ=ä~ãáå~ê=Ñä~ãÉ=íÜáÅâåÉëë=~åÇ=ãçêÉ=íÜ~å=íïáÅÉ=çÑ
íÜÉ= ã~ñáãìã= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= çÑ= íÜÉ= ÅçêêÉëéçåÇáåÖ= ä~ãáå~ê= Ñä~ãÉ= ~ééÉ~ê= Ñçê= íÜÉ= ëã~ääÉëí= Å~ëÉK
eçïÉîÉêI=ãÉ~å= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= ~åÇ= Ñä~ãÉ= íÜáÅâåÉëëI=ïÜáÅÜ= ~êÉ= ~îÉê~ÖÉÇ= ~äçåÖ= íÜÉ= Ñä~ãÉ= ÑêçåíI= Çç=åçí
ÇÉéÉåÇ= çå= íÜÉ= íìêÄìäÉåÅÉ= äÉåÖíÜ= ëÅ~äÉK= = qÜÉ= äçÅ~ä= Ñä~ãÉ= íÜáÅâåÉëë= ~åÇ= äçÅ~ä= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= ~êÉ= ïÉää
ÅçêêÉä~íÉÇ=ïáíÜ=íÜÉ=í~åÖÉåíá~ä=ëíê~áå=ê~íÉ=~í=íÜÉ=Ñä~ãÉ=ÑêçåíI=ïÜáäÉ=íÜÉ=ÅçêêÉä~íáçåë=ÄÉÅçãÉë=ïÉ~âÉê=ïáíÜ=íÜÉ
ÇÉÅêÉ~ëÉ=çÑ=íÜÉ=íìêÄìäÉåÅÉ=äÉåÖíÜ=ëÅ~äÉK= = lå=íÜÉ=çíÜÉê=Ü~åÇI=íÜÉ=ÅçêêÉä~íáçå=ÄÉíïÉÉå=íÜÉ=äçÅ~ä=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ
ê~íÉ=~åÇ=íÜÉ=Åìêî~íìêÉ=çÑ=íÜÉ=Ñä~ãÉ=Ñêçåí=íÉåÇ=íç=ÄÉÅçãÉ=ëíêçåÖ=Ñçê=íÜÉ=Å~ëÉ=çÑ=ëã~ääÉëí=íìêÄìäÉåÅÉ=äÉåÖíÜ
ëÅ~äÉI=ïÜÉêÉ=íÜÉ=Ñä~ãÉ=ÉäÉãÉåíë=ÅçåîÉñ=íçï~êÇ=íÜÉ=ÄìêåÉÇ=ëáÇÉ=ëÜçï=ä~êÖÉ=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ=ê~íÉK
1.緒論
乱流予混合火炎の特性は,層流燃焼速度EpiFに対する乱流
強度EìDêãëFの比及び層流火炎厚さEδiFに対する乱流場の特性
長さE積分長W= äFの比を用いて分類可能であると考えられてい
る.ìDêãëLpi と äLδi の関係から,乱流予混合火炎の形態は
ïêáåâäÉÇ= ä~ãáå~ê= Ñä~ãÉë,ÇáëíêáÄìíÉÇ= êÉ~Åíáçå= òçåÉ,ïÉää
ëíáêêÉÇ= êÉ~Åíáçå= òçåÉ,íÜáå= êÉ~Åíáçå= òçåÉ 等に分類される
ENFEOFEPFEQF
.ïêáåâäÉÇ=ä~ãáå~ê=Ñä~ãÉë の領域では,局所的な火炎
要素の特性は層流火炎と同じであり,火炎面面積の増大によ
って乱流燃焼速度が増加すると考えられている.
これに対して,ÇáëíêáÄìíÉÇ= êÉ~Åíáçå= òçåÉ や ïÉää= ëíáêêÉÇ
êÉ~Åíáçå=òçåÉ 等の領域では,局所的な火炎要素の特性は層流
火炎と全く異なっており,もはや火炎面と呼べる構造は存在
し な い と 考 え ら れ て い る . し か し , 実 際 に ÇáëíêáÄìíÉÇ
êÉ~Åíáçå=òçåÉ や ïÉää=ëíáêêÉÇ=êÉ~Åíáçå=òçåÉ 等が存在すること
は検証されておらず,それらの詳細な構造も明らかにされて
いない.これは,ìDêãëLpi と äLδi の関係を系統的に変化させ
た実験を行い,局所的な火炎構造を計測することが困難なた
めである.
近年,計算機の高速・大容量化に伴い,詳細化学反応機構
と輸送係数・物性値の温度依存性を考慮に入れた乱流燃焼の
直接数値計算EakpFが可能となり,乱流中での火炎構造を詳
細に検討することが可能となってきている._~ìã らERFは詳
細化学反応機構を用いて水素・酸素・窒素乱流予混合火炎の
akp を行い,局所火炎構造に対する化学反応機構の影響を
明らかにするとともに,乱流強度や乱流の特性長さ等の乱流
特性と乱流火炎の局所構造との関係を明らかにしている.著
者らは,詳細化学反応機構を用いて水素・空気乱流予混合火
炎の akp を行い,局所火炎構造と化学種の拡散係数の関係
ESFETF
や火炎面のフラクタル特性EUFなどを明らかにするととも
に,それらに対する当量比や予熱温度の影響EUFEVFを明らかに
した.また,bÅÜÉââá と `ÜÉåENMFは Q 段階の簡略化学反応機
構を用いたメタン・空気乱流予混合火炎の akp 結果に対し
て同様な解析を行い,メタン・空気乱流予混合火炎の局所構
造を明らかにしている.さらに,彼らは詳細化学反応機構を
用いてメタン・空気乱流予混合火炎の akp を行い,既燃ガ
ス中での未燃予混合気塊の生成機構を明らかにしているENNF.
最近では,プロパンやメタンの詳細化学反応機構を考慮に入
れた akpENOFENPFENQFや詳細化学反応機構を用いた水素・空気乱
流予混合火炎の三次元 akpENRFENSFも報告されている.
乱流燃焼の akp では,ìDêãëLpi と äLδi の関係を系統的に
変化させることが可能であるが,上述の多くの akp は比較
的 ìDêãëLpi が小さく,äLδi が中程度の場合を対象としており,
ÇáëíêáÄìíÉÇ=êÉ~Åíáçå=òçåÉ や ïÉää=ëíáêêÉÇ=êÉ~Åíáçå=òçåÉ 等の存
在の有無を検証し,それらの構造を明らかにするまでには至
っていない.そこで,著者らの以前の研究ENTFでは,äLδi が約
QKU の場合について ìDêãëLpi が異なる水素・空気乱流予混合火
炎の akp を行い,火炎構造に対する乱流強度の影響を明ら
かにした.本研究では,以前の研究に引き続いて,比較的高
い乱流強度の水素・空気乱流予混合火炎を対象として,詳細
化学反応機構と輸送係数・物性値の温度依存性を考慮に入れ
た akp を行い,乱流特性長さが火炎構造に与える影響を明
らかにすることを目的としている.
N
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
q~ÄäÉ=N= = kìãÉêáÅ~ä=é~ê~ãÉíÉêë=çÑ=akpK= = oÉä=Z=äìDêãëLνI=oÉλ=Z=λìDêãëLνI=iá=W=äÉåÖíÜ=çÑ=íÜÉ=Åçãéìí~íáçå~ä=Ççã~áå=áå=íÜÉ=á=ÇáêÉÅíáçåI
ká=W=ÖêáÇ=éçáåíë=áå=áå=íÜÉ=á=ÇáêÉÅíáçåK
`~ëÉ
ìDêãëLpi
oÉä
äLδi
oÉλ
iñ×ió
kñ×kó
N
OMKM
OKQO
SPR
OMP
OKMÅã×NKMÅã
NRPT×TSU
O
OMKM
QKUQ
NPMP
QMN
OKMÅã×OKMÅã
NRPT×TSU
P
OMKM
TKOS
NVTN
RVR
PKMÅã×PKMÅã
NRPT×TSU
Periodic boundary condition
äLδi ZOKQO
UKM
p q =Lp i
burnt gas
NSCBC
NSCBC
unburned gas
NMKM
äLδi ZQKUQ
äLδi ZTKOS
SKM
QKM
OKM
SL+u’
y
MKM
MKM
x
Periodic boundary condition
cáÖK=N= = dÉçãÉíêó=çÑ=íÜÉ=Åçãéìí~íáçå~ä=Ççã~áåK
NKM
NKR
íL τä
OKM
OKR
PKM
cáÖK=O= = aÉîÉäçéãÉí=çÑ=íÜÉ=íìêÄìäÉåí=ÄìêåáåÖ=îÉäçÅáíóK
性乱流の速度場としては,
非反応性一様等方性乱流の akp
結果を用いた.ただし,初期条件の影響が無くなり十分発
達した N= ÉÇÇó= íìêåçîÉê= íáãÉ= EτäZäMLìDêãëIMFにおける結果を
用いている.ここで,äM は初期積分長,ìDêãëIM は初期二乗平
均速度である.二方向に周期的境界条件のもとで計算され
た乱流場は,q~óäçê の仮説と位相シフト法を用いて初期及
び流入乱流場へと変換した.
2.乱流予混合火炎の直接数値計算
2.1 支配方程式及び計算方法
本研究では,外力,pçêÉí 効果,aìÑçìê 効果,圧力勾配
拡散,体積粘性及び放射熱流束が無視できると仮定するこ
とにより導かれる質量,運動量,エネルギー及び化学種の
保存方程式と状態方程式を基礎方程式とした.基礎方程式
の詳細については著者らの以前の研究ETFEUFENTFを参照のこと.
本研究では,図 N に示すような二次元一様等方性乱流中
を伝播する水素・空気乱流予混合火炎を対象とし,eO,e,
lO,l,le,elO,eOlO,eOl,k,kl,klO,kO の
NO 種類の化学種と OT の素反応からなる詳細化学反応機構
ENUF
を用いた.反応速度と物性値及び輸送係数の温度依存性
は `ÜÉãâáåENVFEOMFを用いて与えた.ただし,`ÜÉãâáå はベ
クトル化と並列化が容易に行えるように変更されている.
離散化は流れ方向(ñ 方向)には Q 次精度中心差分,流れ
と垂直方向(ó 方向)にはスペクトル法を用いて行い,時
間前進には O 次精度 ^Ç~ãëJ_~ëÜÑçêíÜ 法を用いた.境界条
件としては,ñ 方向に kp`_`EONFEOOFを,ó 方向に周期的境界
条件を用いた.
流入条件における混合気としては,MKNjm~,OVUKNRh,
当量比 NKM の水素と空気の予混合気を与えた.未燃予混合
気は窒素により希釈されており,窒素と酸素のモル分率比
は VKPT とした.これらの条件は以前の乱流強度の影響を明
らかにした研究ENTFと同様である.
流入速度条件は次のように与えた.
u in (y ,t ) = S L + u ′(y ,t )
ENF
2.2 計算条件
表 N は本研究で行った水素・空気乱流予混合火炎の akp
の計算条件を示している.計算は層流燃焼速度に対する乱
流強度の比を OMKM に固定し,積分長と層流火炎厚さの比が
OKQO,QKUQ 及び TKOS の場合について行った.表中の oÉä は
積分長に基づくレイノルズ数であり,oÉλはテイラー・マ
イクロスケールに基づくレイノルズ数である.また,iñ と
ió 及び kñ と kó はそれぞれ ñ 方向と ó 方向の計算領域の大
きさと格子点数である.mÉíÉêëEPFによる乱流燃焼ダイアグ
ラムによると,
`~ëÉ=N は ïÉää=ëíáêêÉÇ=êÉ~Åíáçå=òçåÉ に,
`~ëÉ
O と `~ëÉ= P は ÇáëíêáÄìíÉÇ= êÉ~Åíáçå= òçåÉ と ïÉää= ëíáêêÉÇ
êÉ~Åíáçå=òçåÉ の境界域に分類される.
本研究では,火炎構造に対する乱流特性長さの影響をよ
り明確に議論可能なように,大規模スケールの運動がほぼ
相似な乱流場を一様等方性乱流の予備計算により求め,そ
れらを初期乱流場として与えた.すなわち,一様等方性乱
流の予備計算の初期エネルギー・スペクトル分布に同じ関
数を用い,同一の乱数を用いて各波数成分の位相を与えた.
このように作成した初期乱流場から一様等方性乱流の予
備計算を行うことにより,微細スケールの構造は異なるが,
大規模スケールの構造がほぼ相似な乱流場を得ることが
できる.
本研究で行った乱流予混合火炎の akp は東京大学情報
基盤センターの超並列コンピュータ poOOMN の NOUmb モー
ドを用いて実行され,それぞれの akp に要した `mr 時間
は約 OMMM 時間である.
ここで,ìDは十分発達した二次元一様等方性乱流の速度場
である.また,次のように定義される層流燃焼速度は
MKQSOãLë であり,一次元層流予混合火炎の予備計算によ
り決定した.
1
SL = −
EOF
òw H dx
ρuY H ,u
MKR
2
2
ここで,下付き添字 ì は未燃側の物理量を示す.また,以
下のように定義される層流火炎厚さは PKMUı×NMJQã である.
æ ∂T ö
δ L = (Tb − Tu ) /çç
÷÷
EPF
è ∂x ømax
3.乱流予混合火炎の構造
3.1 火炎構造
図 O は次のように定義される乱流燃焼速度の時間変化を
示している.
ここで,下付き添字 Ä は既燃側の物理量を示す.一様等方
O
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
E~F
EÅF
E~F
EÄF
EÅF
EÄF
ω
E~F
q
EÅF
E~F
EÅF
^
EÄF
EÄF
ρ
∆e
cáÖK=P= = aáëíêáÄìíáçåë=çÑ=îçêíáÅáíóI=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ=ê~íÉI=íÉãéÉê~íìêÉ=~åÇ=ÇÉåëáíó=~í= íZOKMτäK= = E~FW=äLδi=ZOKQOI=EÄFW=äLδi=ZQKUQI= EÅFW
äLδi=ZTKOSK
ST = −
1
ρuY H ,u L y
ò òw
H2
dxdy
た.図 P から,火炎帯は äLδi の増加とともに広がっており,
未燃予混合気の乱流特性長さが火炎帯幅を決定する重要
な要素であることがわかる.また,すべての場合について
既燃側に分離された未燃予混合気塊が形成されている.こ
れらの未燃予混合気塊の形成は,`ÜÉå らによるメタン・
空気乱流予混合火炎の akpENNFや著者らの以前の研究ENTFに
おいても報告されている.
火炎面の細部に関しては äLδi に依存しており,äLδi が大
きいほど火炎面は火炎面付近に存在する渦に巻き込まれ
るようになり,より複雑な形状を有している.これは,äLδi
が小さい場合,渦の大きさに対して火炎厚さが厚くなるた
め,渦が火炎面を巻き込むことが物理的に困難になるため
である.さらに,3.2節で示すように,äLδi が小さい場
合大きな歪み速度が火炎面に作用し,局所的な消炎が生じ
るENPFENTF.
以前の研究ENTFでは,äLδi= ZQKUQ,ìDêãëLpi= ZPMKM の akp
結果から,熱発生率の大きなシート状の火炎面が幾重にも
折り畳まれた比較的温度の高い領域が形成され,そのよう
な火炎形態は ÇáëíêáÄìíÉÇ= êÉ~Åíáçå= òçåÉ に分類される乱流
予混合火炎である可能性があることを示した.本研究で対
象とした äLδi=ZOKQO,ìDêãëLpi=ZOMKM の場合には,図 P の ^
に示すように熱発生率の大きな火炎面は比較的滑らかで
連続的であるのに対して,温度と密度分布が非常に複雑な
分布を示す領域が形成されている.図 Q は図 P の ^ の領域
における火炎構造を示している.図に示すように,le,
e,l などの主要な中間生成物の質量分率は,熱発生率と
同様に比較的滑らかな分布を示しているが,火炎前縁で生
成される elO や eOlO の質量分率は温度及び密度と同様に
EQF
2
ここで,時間 í は初期乱流場の ÉÇÇó=íìêåçîÉê=íáãÉ を用い
て無次元化されている.図 O から,時間の経過とともに乱
流燃焼速度は増加し,未燃予混合気の乱流場の積分長が長
いほど乱流燃焼速度が大きくなることがわかる.äLδiZTKOS
の場合,乱流燃焼速度は íZNKUτä を越えると増加率は低下し,
íZOKOτä 以降では約 VKRpi でほぼ一定値を示している.äLδi
ZQKUQ の場合,íZNKUτä を越えると äLδiZTKOS の場合と同様に
乱流燃焼速度の増加率は低下するが,その後も乱流燃焼速
度は増加し続けている.äLδi が最も小さな場合,乱流燃焼
速度は時間に対してほぼ線形に増加し続けている.本研究
では,íZOKMτä の計算結果を用いて,乱流予混合火炎の諸特
性に対する乱流特性長さの影響を検討する.
図 P は,í= ZOKM= τä における渦度,熱発生率,温度及び密
度の分布を示している.ここで,渦度の等値線は,実線が
正の値を,破線が負の値を示している.また,等値線の間
隔は,äLδiZOKQO の場合∆ω=VIMMMxNLëz,äLδiZQKUQ の場合
∆ω=SIMMMxNLëz,äLδiZTKOS の場合∆ω=PIMMMxNLëzである.
熱発生率,温度及び密度の分布は,白が最小値,黒が最大
値に対応する.乱流強度の影響に関する以前の研究ENTFと同
様に,未燃側に存在する渦は火炎面を通過する際に急速に
減衰しているが,一部の未燃側の渦は既燃側深くまで侵入
し,火炎面を複雑に湾曲させている.熱発生率,温度及び
密度の分布から,火炎面の大きな変動パターンは äLδi が異
なってもほぼ相似であり,それらは äLδi に大きく依存しな
いことがわかる.以前の研究ENTFでは,火炎面が存在してい
る火炎帯の幅は乱流強度に大きく依存しないことを示し
P
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
e
ρ
ïe
ve
q
velO
vle
ωelO
cáÖK=Q= = içÅ~ä=Ñä~ãÉ=ëíêìÅíìêÉ=Ñçê=íÜÉ=Å~ëÉ=ïáíÜ=ëã~ää=äLδiK= = ∆eW=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ=ê~íÉI= ρW=ÇÉåëáíóI=qW=íÉãéÉê~íìêÉI=vleW=le=ã~ëë
Ñê~ÅíáçåI=veW=e=ã~ëë=Ñê~ÅíáçåI=velOW=elO=ã~ëë=Ñê~ÅíáçåI=ωeW=e=êÉ~Åíáçå=ê~íÉ=~åÇ=ωelOW=elO=êÉ~Åíáçå=ê~íÉK
NM
N
äLδ ZOKQO
i
äLδ ZQKUQ
i
M
äLδ ZTKOS
i
é
NM
NM
JN
NM
JO
MKR
NKM
NKR
∆e
OKM
OKR
G
cáÖK=S= = mêçÄ~Äáäáíó=ÇÉåëáíó=ÑìåÅíáçåë=çÑ=íÜÉ=äçÅ~ä=ÜÉ~í=êÉäÉ~ëÉ
ê~íÉK
cáÖK= R= = cä~ãÉ= Ñêçåí= ÇÉÑáåÉÇ= Äó= íÜÉ= äçÅ~ä= íÉãéÉê~íìêÉ
Öê~ÇáÉåíë=EäLδi=ZTKOSFK
炎面に対して法線方向の単位ベクトルである.図 R は äLδi
ZTKOS の場合について íZOKMτä の akp 結果から決定された火
炎面を示している.決定された火炎面は,図 P に示した温度
と密度が急激に変化する位置と非常に良く対応している.
図 S は,各火炎要素の最大熱発生率の確率密度関数を示し
ている.ここで,最大熱発生率は層流火炎の最大熱発生率
E∆eiFを用いて無次元化されている.以下,Gを付した物理量
は層流燃焼速度,層流火炎厚さ及び層流火炎の最大熱発生率
を用いて無次元化されている.すべての場合について,最大
熱発生率の確率密度関数がピークを示す値は,層流火炎の熱
発生率よりも大きい.以前の研究ENTFでは,一定の äLδi に対し
て,熱発生率の最頻値は ìDêãëLpi の増加とともに小さくなる
傾向にあることを示した.本研究で対象とした ìDêãëLpi が一
定で äLδi を変化させた場合,局所熱発生率の最頻値は層流火
炎の最大熱発生率の約 NKP 倍程度でほとんど変化していない.
このように äLδi が異なっても熱発生率の最頻値はほとんど
変化しないが,熱発生率の分散は äLδi が小さいほど大きくな
る.すなわち,火炎要素の熱発生率の最大値は äLδi が小さい
ほど大きくなり,äLδi=Z=OKQO の場合には層流火炎の約 OKP 倍
と非常に大きな熱発生率を持つ火炎要素が存在する.小さな
熱発生率を示す火炎要素の存在確率も äLδi の減少とともに
増加する.火炎面に沿って平均した熱発生率は,äLδi=ZOKQO,
QKUQ,TKOS の場合に対してそれぞれ NKNS ∆ei,NKOO ∆ei 及び
NKON ∆ei であり,äLδi が異なってもほとんど変化しない.し
渦によって湾曲を受けた複雑な分布を示している.
これらの差違は,中間生成物の反応速度に依存するものと
考えられる.図 Q に示すように l 原子等の主要な中間生成
物の反応帯の厚さは渦のスケールに比べて厚く,渦運動によ
って生じる温度と密度の小さな変動に追随できない.これに
対して,elO 等の反応帯が薄い中間生成物は温度と密度の変
動に追随できるため,それらと同様な分布を示す.しかし,
このような小さな変動に le,e,l などの主要な中間生成
物の反応が追随できないため,これらの領域で火炎は維持で
きず未燃側に既燃予混合塊が形成される.このような未燃側
での既燃予混合気塊は äLδi が小さい場合にのみ観察される.
このような火炎構造は,従来予測されている ïÉää= ëíáêêÉÇ
êÉ~Åíáçå=òçåÉ に対応する可能性がある.äLδi がさらに小さい
場合,反応速度の速いこれらの中間生成物も渦運動に追随す
ることが困難になることが予想されるが,そのような条件で
の火炎構造については今後の課題である.
3.2 火炎要素の統計的性質
局所的な火炎構造に対する äLδi の影響を明らかにするた
めに,akp 結果から局所的な火炎要素を抽出し,それらの
統計的性質を検討する.本研究では,火炎面を以前の研究
ETFEUFENTF
と同様に (∂T / ∂n )max により定義した.ここで,å は火
Q
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
NM
N
NM M
E~F
äLδ ZOKQO
i
äLδ ZQKUQ
äLδ ZTKOS
é
NM
äLδi ZTKOS
i
é
NM
äLδi ZQKUQ
NM JN
i
M
äLδi ZOKQO
NM JO
JN
NM JP
NM
JO
MKM
MKR
NKM
NKR
δ
OKM
NM JQ
JOMKM
OKR
MKM
NMKM
OMKM
PMKM
QMKM
~ íG
NM M
cáÖK= T= = mêçÄ~Äáäáíó= ÇÉåëáíó= ÑìåÅíáçåë= çÑ= íÜÉ= äçÅ~ä= Ñä~ãÉ
íÜáÅâåÉëëK
NM
JNMKM
∗
EÄF
NM
M
äLδi ZOKQO
äLδi ZQKUQ
JN
äLδi ZTKOS
äLδ ZOKQO
i
NM
JO
NM
JP
äLδ ZQKUQ
é
NM
JN
i
NM JO
äLδ ZTKOS
é
i
NM JP
NM JQ
JRKM
MKM
RKM
NMKM
~ íτ ä
NM
JQ
JPMKM
JOMKM
JNMKM
MKM
â
NMKM
OMKM
cáÖK=V= = mêçÄ~Äáäáíó=ÇÉåëáíó=ÑìåÅíáçåë=çÑ=íÜÉ=í~åÖÉåíá~ä=ëíê~áå
ê~íÉ= ~í= íÜÉ= Ñä~ãÉ= Ñêçåíë= åçêã~äáòÉÇ= Äó= íÜÉ= ä~ãáå~ê= Ñä~ãÉ
íÜáÅâåÉëë= ~åÇ= ä~ãáå~ê= ÄìêåáåÖ= îÉäçÅáíó= E~F= ~åÇ= Äó= íÜÉ
áåíÉÖê~ä=äÉåÖíÜ=ëÅ~äÉ=~åÇ=íìêÄìäÉåÅÉ=áåíÉåëáíó=EÄFK
PMKM
G
cáÖK=U= = mêçÄ~Äáäáíó=ÇÉåëáíó=ÑìåÅíáçåë=çÑ=íÜÉ=Åìêî~íìêÉ=çÑ=íÜÉ
Ñä~ãÉ=ÑêçåíK
OKR
かし,上述のように個々と火炎要素の熱発生率は異なってい
る.
図 T は,次のように定義される局所火炎厚さの確率密度関
数を示している.
æ ∂T ö
δ = (Tb −Tu ) /çç
ERF
÷÷ I
è ∂n ømax
E~F
∆e
G
OKM
NKR
NKM
MKR
MKM
OKR
ここで,図中の火炎厚さは層流火炎の火炎厚さを用いて無次
元化されている.乱流中の火炎厚さの最頻値は,äLδi の低下
とともに減少する傾向にある.すなわち,乱流の積分長が層
流火炎厚さに比べて短いほど,平均的に薄い火炎要素が形成
されるようになる.さらに,最小火炎厚さも äLδi の低下とと
もに小さくなり,äLδi= ZOKQO の場合には層流火炎の半分以下
の厚さを持つ非常に薄い火炎要素が形成されている.また,
äLδi の低下とともに,厚い火炎要素の存在確率もわずかでは
あるが増加する傾向にある.このため,平均火炎厚さは,äLδi
ZOKQO,QKUQ,TKOS の場合に対してそれぞれ MKUT= δi,MKUR= δi
及び MKUT=δi となり,乱流特性長さが異なっても火炎厚さの平
均値はほとんど変化しない.
図 U は火炎面の曲率の確率密度関数を示している.ここで,
曲率は既燃側に凸を正とした.すべての場合について,曲率
の確率密度関数はほぼ零でピークを示しており,曲率の絶対
値が小さな範囲EöâGöYRF= では,äLδi が異なっても確率密度関
数は非常に良く一致している.しかし,曲率の絶対値が大き
な火炎要素の確率は äLδi に依存しており,äLδi が大きい場合
非常に大きな曲率,すなわち鋭く折れ曲がった火炎要素が形
成されている.これは,図 P に示した火炎構造の可視化結果
とも一致している.
図 V は,乱流運動により火炎面の接線方向に作用する歪み
速度の確率密度関数を示している.接線方向歪み速度は次の
ように定義されるEOPF.
∆e G
OKM
MKR
NKM
MKR
NKM
MKR
NKM
δG
NKR
OKM
OKR
NKR
OKM
OKR
NKR
OKM
OKR
EÄF
NKR
NKM
MKR
MKM
OKR
∆e G
OKM
δG
EÅF
NKR
NKM
MKR
MKM
δG
cáÖK= NM= = pÅ~ííÉê= éäçíë= çÑ= íÜÉ= äçÅ~ä= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= ~åÇ= íÜÉ
äçÅ~ä= Ñä~ãÉ= íÜáÅâåÉëëK= = E~FW= äLδi= ZOKQOI= EÄFW= äLδi= ZQKUQI= EÅFW
äLδi=ZTKOSK
at = tt : ∇u I
ESF
ここで,í は火炎面に対して接線方向の単位ベクトルである.
接線方向歪み速度は伸張を正とし,図 VE~Fでは層流火炎厚さ
と層流燃焼速度を用いて,図 VEÄFでは乱流強度と積分長を用
いて無次元化されている.これらは,それぞれ火炎の時間ス
ケールEτcZ= δiLpiFと乱流場の時間スケールEτäFの逆数を用い
て無次元化したことに対応する.以前の研究と同様にETFEUFENTF,
R
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
PM
OKM
NM
∆eG
~íG
OKR
E~F
OM
M
MKM
PM
NKM
δG
NKR
OKM
MKR
JOMKM
OKR
OKR
OKM
NM
∆eG
~íG
MKR
EÄF
OM
M
MKM
PM
NKM
δG
NKR
OKM
MKM
JNMKM
MKM
JNMKM
MKM
~ íG
NMKM
OMKM
PMKM
NMKM
OMKM
PMKM
NMKM
OMKM
PMKM
EÄF
NKR
MKR
JOMKM
OKR
OKR
OKM
NM
∆eG
~íG
MKR
EÅF
OM
M
~ íG
EÅF
NKR
NKM
JNM
JOM
JNMKM
NKM
JNM
JOM
NKR
NKM
JNM
JOM
E~F
MKM
MKR
NKM
δG
NKR
OKM
MKR
JOMKM
OKR
cáÖK= NN= = pÅ~ííÉê= éäçíë= çÑ= íÜÉ= í~åÖÉåíá~ä= ëíê~áå= ê~íÉ= ~åÇ= íÜÉ
äçÅ~ä= Ñä~ãÉ= íÜáÅâåÉëëK= = E~FW= äLδi= ZOKQOI= EÄFW= äLδi= ZQKUQI= EÅFW
äLδi=ZTKOSK
~ íG
cáÖK= NO= = pÅ~ííÉê= éäçíë= çÑ= íÜÉ= äçÅ~ä= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= ~åÇ= íÜÉ
í~åÖÉåíá~ä=ëíê~áå=ê~íÉK= = E~FW=äLδi=ZOKQOI=EÄFW=äLδi=ZQKUQI=EÅFW=äLδi
ZTKOSK
OKR
火炎面に作用する接線方向歪み速度の確率密度関数は,正の
値でピークを示しており,平均的に火炎面が接線方向に伸張
を受けていることがわかる.また,図 VE~Fから äLδi の低下と
ともに確率密度関数がピークを示す歪み速度とその分散は
大きくなることがわかる.この傾向は,一定の äLδi の条件下
で ìDêãëLpi を増加させた場合と同様であるENTF.図 VEÄFからわ
かるように,乱流特性長さが異なる場合でも接線方向歪み速
度の最頻値は,乱流場の時間スケールを用いて整理すること
ができ,ほぼ ~íZNLτä となる.また,このように無次元化し
た場合,歪み速度の確率密度関数の形状もほぼ一致する.こ
の結果も,以前の äLδi が一定で ìDêãëLpi が異なる場合の結果
ENTF
と一致していることから,乱流予混合火炎の火炎要素に作
用する歪み速度は,未燃側の乱流場の特性により決定されて
いることがわかる.
図 NM は火炎要素の最大熱発生率と火炎厚さの関係を示し
ている.すべての場合について,薄い火炎要素ほど大きな熱
発生率を示す傾向にあることがわかる.また,äLδi の低下と
ともに最も大きな熱発生率を示す火炎要素は薄くなり,それ
らの熱発生率も大きくなる.äLδi= ZOKQO の場合,最も薄い火
炎要素の厚さは約 MKQδi であり,OKO∆ei 以上の非常に大きな
熱発生率を示す.図 NN は局所火炎厚さと接線方向歪み速度
の関係を示している.以前の研究ENTFで示したように,ìDêãëLpi
ZNMKM を越えるような高乱流強度の予混合火炎では,火炎要
素の厚さと火炎面に作用する接線方向歪み速度の間に強い
相関があり,薄い火炎要素ほど接線方向に強い伸張を受けて
いる.図 NNE~Fからわかるように,この関係は äLδi が小さい
場合についても成り立っている.ただし,äLδi が小さいほど,
同じ大きさの接線方向歪み速度が作用している火炎要素で
あっても,火炎厚さの分散は大きくなる.
図 NO は局所熱発生率と接線方向歪み速度の関係を示して
いる.乱流強度に依らず,火炎要素の熱発生率と接線方向歪
み速度の間には明確な相関があり,伸張を受けた火炎要素ほ
ど大きな熱発生率を示すことが明らかにされているETFEUFENTF.
ただし,高乱流強度の場合には,ìDêãëLpi の増加とともに大
きな接線方向歪み速度を受けていながら,小さな熱発生率を
示す火炎要素の存在確率も増加するENTF.図 NO からわかるよ
うに,ìDêãëLpi を一定として äLδi を低下させた場合にも同じ
∆eG
OKM
E~F
NKR
NKM
MKR
JNMKM
OKR
∆eG
OKM
MKM
âG
NMKM
MKM
âG
NMKM
MKM
âG
NMKM
EÄF
NKR
NKM
MKR
JNMKM
OKR
∆eG
OKM
EÅF
NKR
NKM
MKR
JNMKM
cáÖK= NP= = pÅ~ííÉê= éäçíë= çÑ= íÜÉ= äçÅ~ä= ÜÉ~í= êÉäÉ~ëÉ= ê~íÉ= ~åÇ= íÜÉ
Åìêî~íìêÉ=çÑ=íÜÉ=Ñä~ãÉ=ÑêçåíK= = E~FW=äLδi=ZOKQOI=EÄFW=äLδi=ZQKUQI
EÅFW=äLδi=ZTKOSK
傾向がある.これは,以前のメタン・空気乱流予混合火炎の
akpENPFにおいて明らかにした強い接線方向歪み速度による
乱流予混合火炎の局所消炎によるものである.
乱流強度の増加とともに,低乱流強度の場合に観察された
火炎面の曲率と局所熱発生率の間の相関は失われるENTF.低乱
流強度の場合,当量比 N 前後の予混合気では既燃側に凸の火
炎要素ほど大きな熱発生率を示すが,当量比の小さな希薄側
では逆に未燃側に凸の火炎要素ほど大きな熱発生率を示すEUF.
図 NP は局所熱発生率と曲率の関係を示しているが,ìDêãëLpi
が一定の場合,äLδi が小さくなると局所熱発生率と曲率の間
に相関が現れている.すなわち,大きな曲率を持った火炎要
素E既燃側に凸の火炎要素Fほど大きな熱発生率を示すように
なる.
S
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca
4.結論
本研究では,乱流予混合火炎の火炎構造に対する乱流特性
長さの影響を明らかにするために,窒素によって希釈した当
量比 N,ìDêãëLpi の水素・空気乱流予混合火炎の直接数値計算
を行い,以下のような結論を得た.
ENF äLδi が小さくなると,熱発生率や l,e,le などの主要
な中間生成物は滑らかな分布を示し,温度,密度及び elO
や eOlO 等の反応速度の速い化学種は火炎面前縁で複雑
な分布を示す火炎構造が形成される.これらの特徴は,
乱流燃焼ダイアグラムにおける ïÉää= ëíáêêÉÇ= êÉ~Åíáçå
òçåÉ の火炎構造の一端を表している可能性がある.
EOF äLδi が小さい場合,局所火炎要素の熱発生率の分散は大
きくなり,薄い火炎要素の出現確率が高くなる.しかし,
火炎面に沿って平均した平均熱発生率と平均火炎厚さは
äLδi にほとんど依存しない.
EPF 局所熱発生率と局所火炎厚さ及び接線方向歪み速度との
間に強い相関があり,火炎厚さが薄く接線方向に強い伸
張を受けた火炎要素ほど大きな熱発生率を示す.しかし,
äLδi が小さくなるとこれらの相関は弱くなる傾向にある.
これに対して,局所熱発生率と火炎面の曲率との間の相
関は,äLδi の減少とともに強くなる傾向にあり,既燃側
に凸の火炎要素ほど大きな熱発生率を示すようになる.
ENVVUFI=NP∼OOK
EVF 宮内・店橋・名田W= 水素・空気乱流予混合火炎の局所構
造I= 第 PQ 回伝熱シンポジウム講演論文集I= ENVVTF= RUP∼
RUQK
ENMF qK= bÅÜÉââá= ~åÇ= gK= eK= `ÜÉåW= råëíÉ~Çó= píê~áå= o~íÉ= ~åÇ
`ìêî~íìêÉ= bÑÑÉÅíë= áå= qìêÄìäÉåí= mêÉãáñÉÇ= jÉíÜ~åÉJ^áê
cä~ãÉëI=`çãÄìëíK=cä~ãÉI=NMS=ENVVSFI=NUQ∼OMOK
ENNF gK= eK= `ÜÉåI= qK= bÅÜÉââá= ~åÇ= tK= hçääã~ååW= qÜÉ
jÉÅÜ~åáëã= çÑ= qïçJÇáãÉåëáçå~ä= mçÅâÉí= cçêã~íáçå= áå
iÉ~å= mêÉãáñÉÇ= jÉíÜ~åÉJ^áê= cä~ãÉë= ïáíÜ= fãéäáÅ~íáçåë
íç= qìêÄìäÉåí= `çãÄìëíáçåI= `çãÄìëíK= cä~ãÉI= NNS= ENVVUFI
NR∼QUK
ENOF aK= e~ïçêíÜI= _K= `ìÉåçíI= qK= mçáåëçí= ~åÇ= oK= _äáåíW
kìãÉêáÅ~ä= páãìä~íáçå= çÑ= qìêÄìäÉåí= mêçé~åÉJ^áê
`çãÄìëíáçå= ïáíÜ= kçåJeçãçÖÉåÉçìë= oÉ~Åí~åíëI
_ìääÉíáå= çÑ= íÜÉ= ^ãÉêáÅ~å= mÜóëáÅ~ä= pçÅáÉíóI= QPJV= ENVVUFI
OMSOK
ENPF jK=q~å~Ü~ëÜáI=qK=jáó~ìÅÜáI=qK=p~áíç=~åÇ=jK=pÜáã~ãìê~W
içÅ~ä= bñíáåÅíáçå= ~åÇ= klñ= cçêã~íáçå= áå= jÉíÜ~åÉJ^áê
qìêÄìäÉåí=mêÉãáñÉÇ=cä~ãÉëI=mêçÅK=OåÇ=^ëá~Jm~ÅáÑáÅ=`çåÑK
`çãÄìëíKI=ENVVVF=RMM∼RMPK
ENQF jK= q~å~Ü~ëÜáI= qK= p~áíçI= vK= q~â~Ü~ëÜá= ~åÇ= qK= jáó~ìÅÜáW
akp= çÑ= eóÇêçÅ~êÄçåJ^áê= qìêÄìäÉåí= mêÉãáñÉÇ= cä~ãÉë
ïáíÜ= aÉí~áäÉÇ= háåÉíáÅ= jÉÅÜ~åáëãI= cáêëí= pf^j
`çåÑÉêÉåÅÉ=çå=`çãéìí~íáçå~ä=pÅáÉåÅÉ=~åÇ=båÖáåÉÉêáåÖI
OMMMK
ENRF jK= q~å~Ü~ëÜáI= qK= jáó~ìÅÜá= ~åÇ= vK= k~Ç~W= cáåÉ= pÅ~äÉ
píêìÅíìêÉ= çÑ= eOJ^áê= qìêÄìäÉåí= mêÉãáñÉÇ= cä~ãÉëI
qìêÄìäÉåÅÉ= ~åÇ= pÜÉ~ê= cäçï= mÜÉåçãÉå~JNI= bÇëK= pK
_~å~ÉêàÉÉ= C= gK= hK= b~íçåI= _ÉÖÉää= eçìëÉ= fåÅKI= ENVVVFI= RV∼
SQK
ENSF jK= q~å~Ü~ëÜáI= jK= cìàáãìê~= ~åÇ= qK= jáó~ìÅÜáW= `çÜÉêÉåí
cáåÉ= pÅ~äÉ= bÇÇáÉë= áå= qìêÄìäÉåí= mêÉãáñÉÇ= cä~ãÉëI= mêçÅK
`çãÄìëíK=fåëíKI=OUI=EOMMMF=áå=éêÉëëK
ENTF 店橋・於・宮内W= 高強度乱流予混合火炎の構造I= 日本機会
学会論文集E_ 編FI= 印刷中K
ENUF bK=dìíÜÉáäI=dK=_~ä~âêáëÜå~å=~åÇ=cK=^K=táääá~ãëW=oÉÇìÅÉÇ
háåÉíáÅ= jÉÅÜ~åáëãë= Ñçê= ^ééäáÅ~íáçåë= áå= `çãÄìëíáçå
póëíÉãëI= bÇëK= kK= mÉíÉê= ~åÇ= _K= oçÖÖI= péêáåÖÉêJsÉêä~ÖI
ENVVPF=NTT∼NVRK
ENVF oK= gK= hÉÉI= cK= jK= oìéäÉó= ~åÇ= gK= ^K= jáääÉêW= `ÜÉãâáåJffW= ~
cçêíê~å=ÅÜÉãáÅ~ä=âáåÉíáÅë=é~Åâ~ÖÉ=Ñçê=íÜÉ=~å~äóëáë=çÑ=Ö~ë
éÜ~ëÉ=ÅÜÉãáÅ~ä=âáåÉíáÅëI=p~åÇá~=oÉéçêíI= p^kaUVJUMMV_
ENVUVFK
EOMF oK=gK=hÉÉI=dK=aáñçåJiÉïáëI=gK=t~êå~íòI=jK=bK=`çäíêáå=~åÇ=gK
^K= jáääÉêW= ^= cçêíê~å= ÅçãéìíÉê= ÅçÇÉ= é~Åâ~ÖÉ= Ñçê= íÜÉ
Éî~äì~íáçå= çÑ= Ö~ëJéÜ~ëÉ= ãìäíáÅçãéçåÉåí= íê~åëéçêí
éêçéÉêíáÉëI=p~åÇá~=oÉéçêíI=p^kaUSJUOQS=ENVUSFK
EONF qK= gK= mçáåëçí= ~åÇ= pK= hK= iÉäÉW= _çìåÇ~êó= ÅçåÇáíáçåë= Ñçê
ÇáêÉÅí= ëáãìä~íáçåë= çÑ= ÅçãéêÉëëáÄäÉ= îáëÅçìë= ÑäçïëI= gK
`çãéìíK=mÜóëKI=NMN=ENVVOFI=NMQ∼NOVK
EOOF jK= _~ìãI= qK= mçáåëçí= ~åÇ= aK= qÜÉîÉåáåW= ^ÅÅìê~íÉ
_çìåÇ~êó= `çåÇáíáçåë= Ñçê= jìäíáÅçãéçåÉåí= oÉ~ÅíáîÉ
cäçïëI=gK=`çãéìíK=mÜóëKI=NNS=ENVVQFI=OQT∼OSNK
EOPF pK= jK= `~åÇÉä= ~åÇ= qK= gK= mçáåëçíW= cä~ãÉ= píêÉíÅÜ= ~åÇ= íÜÉ
_~ä~åÅÉ= bèì~íáçå= Ñçê= íÜÉ= cä~ãÉ= ^êÉ~I= `çãÄìëíK= pÅáK
qÉÅÜKI=TM=ENVVMFI=N∼NRK
謝辞
本研究の一部は,科学研究費基盤研究E^FEkçK= NOPMRMNRF
及び科学技術庁開放的融合研究「乱流制御による新機能熱流
体システムの創出」に基づき,知的乱流制御研究センターの
研究活動の一環として行われた.また,akp を行うにあた
り,東京大学情報基盤センターに多大なご協力を頂いた.こ
こに記して謝意を表す.
参考文献
ENF cK= ^K= táääá~ãëW= `çãÄìëíáçå= qÜÉçêóI= OåÇ= ÉÇI= _Éåàá~ãáå
`ìããáåÖëI=ENVURFK
EOF qK= gK= mçáåëçíI= aK= sÉóå~åíÉ= ~åÇ= pK= `~åÇÉäW= aá~Öê~ãë= çÑ
mêÉãáñÉÇ= qìêÄìäÉåí= `çãÄìëíáçå= Ä~ëÉÇ= çå= aáêÉÅí
páãìä~íáçåI=mêçÅK=`çãÄìëíK=fåëíKI=OP=ENVVMFI=SNP∼SNVK
EPF kK= mÉíÉêëI= iÉåÖíÜ= ~åÇ= qáãÉ= pÅ~äÉë= áå= qìêÄìäÉåí
`çãÄìëíáçåI= qìêÄìäÉåí= oÉ~ÅíáîÉ= cäçïëI= bÇëK= oK= _çêÖÜá
C= pK= kK= _K= jìêíÜóI= iÉÅíìêÉ= kçíÉë= áå= båÖáåÉÉêáåÖI= QM
ENVUVFI=OQO∼ORSK
EQF kK= mÉíÉêëI= qÜÉ= qìêÄìäÉåí= _ìêåáåÖ= sÉäçÅáíó= Ñçê= i~êÖÉJ
ëÅ~äÉ= ~åÇ= pã~ääJëÅ~äÉ= qìêÄìäÉåÅÉI= gK= cäìáÇ= jÉÅÜKI= PUQ
ENVVVFI=NMT∼NPOK
ERF jK=_~ìãI=qK=gK=mçáåëçíI=aK=`K=e~ïçêíÜ=~åÇ=kK=a~ê~ÄáÜ~W
aáêÉÅí=kìãÉêáÅ~ä=páãìä~íáçå=çÑ=eOLlOLkO=cä~ãÉë=ïáíÜ
`çãéäÉñ= `ÜÉãáëíêó= áå= qïçJaáãÉåëáçå~ä= qìêÄìäÉåí
cäçïëI=gK=cäìáÇ=jÉÅÜKI=OUN=ENVVQFI=N∼POK
ESF qK= jáó~ìÅÜáI= jK= q~å~Ü~ëÜáI= vK= fã~ãìê~= ~åÇ= vK= k~Ç~W
píêìÅíìêÉ= ~åÇ= cê~Åí~ä= `Ü~ê~ÅíÉêáëíáÅë= çÑ= eOJ^áê
qìêÄìäÉåí=mêÉãáñÉÇ=cä~ãÉëI=mêçÅK=Nëí=^ëá~Jm~ÅáÑáÅ=`çåÑK
`çãÄìëíKI=ENVVTF=OTU∼OUNK
ETF 店橋・宮内・名田・今村W= 水素・空気乱流予混合火炎の
局所構造I= 日本機械学会論文集E_ 編FI=SQJSOQ=ENVVUFI=OSSO
∼OSSUK
EUF 店橋・宮内・名田W= 水素・空気乱流予混合火炎における
乱流と火炎の相互作用I= 燃焼の科学と技術I= S= ëìééäK
T
`çéóêáÖÜí=«=OMMM=Äó=gp`ca