全労連・非正規センターニュース - 非正規雇用労働者全国センター

24 号 (2015.8.27)
パート・臨時・派遣・ヘルパーの仲間は手をつなごう!
全労連・非正規センターニュース
発行: 全労連
℡ 03-5842-5611
東京都文京区湯島 2-4-4
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職務に応じた待遇確保法案は修正で骨抜きに
参院厚生労働委員会は19日、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律
案(職務に応じた待遇確保法案)について参考人質疑を行いました。同法案は、維新の会が原案を提案
し、自公与党による修正を飲んで共同提出されたものです。
当初提出された法案は、「雇用形態が多様化する中で、労働者の待遇や雇用の安定性について格差が
存在し、それが社会における格差の固定化につながることが懸念されている」「それらの状況を是正す
るため、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の基本理念を定め」「国の責務等を明らかに
するとともに、労働者の雇用形態による職務及び待遇の相違の実態、雇用形態の転換の状況等に関する
調査研究等について定める」ことを目的に「政府は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策
を実施するため、必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講ずるものとする」としてい
ます。
18 日の質疑では、「均等待遇」に並べて「均衡配慮」を加える修正案が提案されたことに格差処遇を
認めるものと批判が相次ぎました。
「労働者の職務に応じた待遇確保法案」参考人質疑
生協労連
北口明代
中央執行委員長が発言
雇用形態の違いによる差別は人権侵害だと常々思っており、同一価値労働同一賃金原則を日本に根付
かせたい、そのためには職務評価が必要だと考えていま
す。
まず、今回の労働者派遣法の改正案は、不安定な雇用
である派遣労働者を増大させるもので、絶対に反対です。
むしろ、均等待遇原則を盛り込み、派遣労働者は臨時的
一時的業務に限定させるよう、法改正すべきです。
本日のテーマである、本法案については、調査・研究
の後、3 年後に法改正を求めており、その道筋をつけたこ
参議院 厚生労働委員会で発言する
北口生協労連委員長(国会中継より)
とについては一歩前進と考えます。しかし、その実効力
については多いに疑問です。
非正規労働者の待遇改善を願い、生協労連で実施した
「職務評価」について、発言をさせていただきます。
生協労連は、全国の地域生協、大学生協、学校生協などではたらく労働組合の連合会です。約 6 万 5
千人の組合員のうち、7 割がパートなど非正規労働者です。直行直帰型の登録パートも組織化していま
す。
2004 年より「すべての労働者のディーセントワークの実現とジェンダー平等社会の実現」をめざし、
非正規課題を生協労連の主軸とすることと、7 割を構成するパートなど非正規労働者が運動の真ん中に
たちあがるように、とりくみをすすめ、最低賃金の大幅引き上げ、均等待遇の実現、無期雇用への転換
などを中心に、社会対話、春闘・秋闘での理事会へ要求し、大きな前進を勝ち取ってきました。
無期雇用への転換については、労働契約法が改正されたことを力に、35 生協約 35000 人の、パートや
アルバイトなど非正規労働者の無期雇用を実現させました。無期雇用契約はパート労働者の長年の要求
であり、大きな岩が動いた、という実感です。
残された課題は、均等待遇の実現です。福利厚生や特別休暇制度などの均等待遇については、春闘や
秋闘で、一歩一歩着実に前進させています。労働契約法やパート法も大いに活用しています。
したがって、本当に残された課題は、賃金の均等待遇の実現です。
生協労連は 1980 年にパート部会を結成しパートの主体的な運動と組織化を促し、待遇改善のために
パート法や労働契約法などの法律の整備を求めてきました。パート法については、制定時から改正運動
を続け、2003 年には差別禁止規定も盛り込まれましたが、抜本的な改善にいたっていません。パート法
も労契法も「強制力がない」ことが大きな不備です。しかもパート法や派遣法では、正規と非正規は人
事管理上違うとし、雇用形態差別を認めています。昨年のパート法の改正では、差別禁止の「3 要件」、
①職務・責任 ②人材活用のしくみ ③無期か有期かのうち、無期か有期かは削除されましたが、依然
として「人材活用のしくみ」は残り、ほとんどのパートは対象外のままです。これを改善しないと均等
待遇は望めません。
だからこそ、同じ価値の仕事をしたら同じ賃金を支払うようにしないと、非正規労働者の待遇改善は
一向にすすみません。パートや派遣は安くて当たり前、は非常識です。早急に、導入すべき時期に来て
います。
その理由として、第一に、多くの国では「同一価値労働同一賃金原則」
(仕事を基準として同じ価値の
仕事をしていたら同じ処遇とする)により賃金を決めています。「性・年齢・人権・信条・雇用形態な
どを理由とした賃金格差は差別にある」ということが国際社会の常識です。
第二に、ILO 条約適用専門家委員会、国連女性差別撤廃委員会からも、男女、雇用形態間の賃金格差
の是正が求められています。非正規労働者は女性に多いことから、間接差別にあたるとの指摘もありま
す。女性の地位向上のためにも非正規労働者の待遇改善は有効です。
第三に、男性が働き、女性は家計補助的な労働との家族モデルは崩壊しつつあり、「非自発的」非正
規労働者が増大しています。
第四に、約 4 割の非正規労働者はすでに職務賃金です。終身・年功賃金制度の正規労働者の比率は減
少しています。生協でも、職能資格制度から役割等級制度への変更する生協もあります。
第五に、グローバル経済のもと、多国籍企業もふえ、日本だけの固有の制度を保つのは、限界が来て
います。国際基準で一本化することが企業にとってもプラスです。
日本では、ヨーロッパのような職務給ではない、産別の労働市場が形成されていないとの意見があり
ますが、だからこそ、仕事の価値を客観視できる、職務評価が有効なのです。
つぎに生協労連で実施した「職務評価」について、説明します。
お手元の資料を参照ください。跡見女子大学の禿准教授のご援助で実施した、コープあいちでの調査
について報告します。ここでは得点要素法を用いています。
職務評価とは、仕事の価値をはかるものです。やり方としては、評価の基準として、職務評価ファク
ター(モノサシ、目盛り、点数表)を作成します。ここではアンケート方式で労働者に回答いただき、
集計をしました。仕事の価値は正規 100 に対し、パートは 88.7%、ほぼ 9 割との結果です。また、表に
はありませんが、担当者レベルの正規と中核をになうパートとの比較では 100 対 98 とほぼ同じ点数とな
りました。支給される平均賃金は時給換算で、正規職員は 2051 円に対しパートは 1159 円、正規 100 に
対しパート 56%と 6 割にも届いていません。しかも、一時金を含めると正規 2409 円に対し、パートは
1220 円と 51%と、ほぼ半分となってしまいます。パートなど非正規は、一時金がない、あっても月数
はほんのわずかなので、格差が広がる結果となります。ほぼ 9 割のしごとに対し、賃金は半分との結果
です。これを職務の価値に見合った時給にすると、パートは 1820 円、一時金込みならば 2138 円が妥当
との結果になります。このように、正規は、仕事の価値の数値は高くなるのは当然ですが、パートだか
らといって単純定型作業ではなく、責任ある仕事を担っているのが現状です。いかに、低賃金に抑えら
れているのかがあきらかになりました。退職金や年金を考えると格差はいっそうひろがります。
第三に、生協ではたらくパートの実態についてご紹介します。お手元のパート労働黒書2 を参照く
ださい。時間の関係で、詳細は省きますが、離婚後のシングルマザー、介護離職やリストラ後の中高年
とその家族など、非自発のパート・非正規労働者が増大し、ダブルワーク・トリプルワークで生活し、
自身の健康や子どもの教育の権利を奪う実態が広がっています。格差の縮小、貧困撲滅のためにも、パ
ートや非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題です。
第四に、この法案について、いくつか意見を述べさせていただきます。「雇用の多様化」とあります
が、企業にとって使い勝手がよいだけで、実際に労働者は選択できません。シングルマザーや、青年の
多くが非自発的に非正規雇用を選ばざるをえない実態からもあきらかです。一旦正社員をやめてしまう
と非正規の就職口しかないのが現状です。
また、均等待遇に加え、均衡待遇という概念が盛り込まれていますが、この均衡というのは、「バラ
ンス」という意味で、その水準も明確になっておらず、有効ではありません。削除すべきです。
「意欲・能力に応じて」とありますが、職務評価ファクターを見ていただければあきらかなように、
仕事の価値評価には、このような文言はありません。「意欲・能力」も「人」につくもので、同一価値
労働同一賃金原則には当てはまりません。したがって、厚生労働省に要請したいのは、厚生労働省のつ
くった職務評価マニュアルは意味がないので、「同一価値労働同一賃金」による職務評価のひな形を作
成して広報していただきたいということです。
最後に、「賃金は労使で決定すべき」、といいますが、日本における組織率は年々低下しており、残
念ながら労働組合の力は弱くなっているのが現状です。特に非正規労働者は、9 割以上が未組織です。
派遣労働者は解雇を覚悟で労組に加入し闘わなければならないのが現状です。法律による規制が必要で
す。この法案は、フルタイムで働く人を対象にしていますが、3 年後に「同一価値労働同一賃金原則」が
盛り込まれた有効な法律が施行されれば、パート法への影響は大きいと考えます。非正規労働者の待遇
改善にむけ、ぜひ、的確な調査を行い、3 年後の実効ある法整備を望みます。
山口 最賃審で意見陳述
「地域格差の是正を」
7 月 31 日に山口県の最賃審で参考人として平島真木子商業労組委員長(県労連非正規部会長)と宮浜
克好県労連事務局長が意見陳述を行いました。
平島さんは、生協労連が取り組んだ「パート労働黒書」を資料として提出、生協労働者の生活実態を
告発しました。コープやまぐちにはたらく非正規労働者の割合は 8 割近く、低すぎる賃金によって、ダ
ブルワーク・トリプルワークをこなさなければ生活できない、文化的な生活などとは程遠いと述べ、最
低賃金の大幅な引き上げとともに地域格差の是正を求めました。
宮浜事務局長は、2 月に実施した「最低賃金生活体験」や、公務共闘が毎年行っている「自治体キャラ
バン」のアンケートをもとに陳述。
「こんな低い賃金なら山口から出ていこうと思う」という青年の感想
や、公務職場で働く非正規労働者の賃金が、最低賃金ぎりぎりでしかない実態について述べ、今年度、
せめてAランクを上回る引き上げで格差の是正を求めました。
山口県労連「山口県労連」第 309 号(2015/8/15)より編集の上、転載
大阪 労働局前で、ディーセントワーク宣伝実施
8 月 21 日、大阪府の最低賃金金額を決定する最低賃金審議会の開催にあたり、労働局前で最低賃金の
大幅な引き上げを求める宣伝行動を行い 26 名が参加しました。
「今回の最低賃金引き上げ 20 円、858 円では、まともな働き方、まともな生活はできない。」
「最低賃
金をせめて 1000 円以上に引き上げていこう。」と訴える中、審議会参加する公・労・使の審議会委員が
ビラを受け取りながら会場に入っていきました。
大阪府最低賃金 10/1 より 858 円に!
続いて、8:45 から大阪府最低賃金審議会第 315 回総会が開
催され、大阪労連からは 12 名が傍聴しました。大阪府最低賃金
審議会は、最低賃金審議会の意見に関する異議の申出については
棄却とし、8 月 5 日付け答申どおり決定することが適当であると
労働局に答申しました。
異議申出は、使用者側から意見陳述も行ったアサカ・パーソナ
ル・リレーションズ株式会社、大阪タクシー協会から出され、労
働者側は、大阪労連・大阪労連組織のみの結果となっています。
取扱いについて、労働者委員は、
「労働組合から出されている内容は、私も理解するところだ。しかし、
専門部会で真摯に議論をしてきた結果であり、リビングウェッジ 999 円に届かなかったことは残念だが、
20 円については一定の評価をする。女性労働者の一定の底上げが出来たことや、中小企業支援について
労使で理解出来たこともあり、今回の異議申出については棄却することが適当である。」使用者委員から
は、
「引き続き中小企業支援への配慮を申し述べたい。
」公益委員からは、
「労働側から、労働者がダブル
ワーク・トリプルワークで働かなくていけない実態や公務・民間問わず非正規労働者が増え、長年働い
ても同じ賃金であること。使用者からは、それぞれの業界の実態から見た引き上げ額について意見が出
され、丁寧な審議がされてきた。特に女性労働の賃金水準は、労働局から出された調査に基づき、その
ことを重く念頭に置いた上で審議された。その上で、1 円プラスの重い結果となった。今回の答申には、
女性や非正規に配慮するという文言が入り、また、中小企業支援も盛り込むことができた。誠意ある審
議内容であり、答申どおりに決定することが適当である。」との意見がだされ、全会一致で決定されまし
た。
審議会傍聴参加者からは、
「丁寧な議論をしたと言っても 1 円しかプラスになっていない。」
「女性の賃
金水準の底上げと言うが、まだまだ実態が分っていない。」との感想が出されていました。
今後、最賃引き上げの周知を行うとともに、引き続き、大幅引き上げを訴えていきましょう。また、職
場のたたかいとして、すべての労働者の賃金引き上げとなるよう取り組んでいきましょう。
大阪労連 「2015 年度最低賃金闘争ニュース No13」
(2015/8/21)より転載