TJ 海洋生物学にゲノムを応用 Freedom EVO® プラットフォー ムは、海洋生物学と生態学の 分野で世界トップクラスの研究 機関、アントン・ドーン臨海実 験所(イタリア)で幅広い海洋 生物の自動ゲノム解析サービス に利用されている。 「Freedom EVO の豊かな 柔軟性は、幅広いアプリケー ションを可能にします。」 ナポリのアントン・ドーン臨海実験所では、分子 イクロプレートを操作するグリッパーが搭載されて 生物学・バイオインフォマティクス部門が DNA いる。また MIO ™ インキュベータ 2 台、Te- シーケンシングや qPCR、NGS などの解析サー Shake ™ シェーカー、Te-VacS ™ 真空マニホー ビス、および分子生物学分野の技術支援や指 ルド、プレートホテル、その他 in situ ハイブリダ 導などの幅広い研究サービスを実施している。そ イゼーションの自動化に必要なすべてのツールや、 のひとつがオンデマンドのプロトコール開発であ 冷却装置付き循環水槽も備えられている。 さら る。 同研究所は、欧州海洋生物資源センター に E-Gel® システム(Life Technologies 社製) (EMBRC)のひとつとして、新たな海洋生物 を用いた自動電気泳動プロトコールもランできる。 の研究を可能にするため、多彩なプロトコール の開発と最適化に注力する中核的なラボであ Biffali 博士は続けた。「私たちの理念は、最 る。 自動化は、サービスの柔軟性を最大限に 大限の柔軟性を発揮し、これを維持することで 高め、同部門が高品質の配列解析を迅速に提 す。 これまで使用していたシステムのサポート 供するために重要な役割を果たす。Elio Biffali 期間が終了し、買い替えが必要になった時、柔 博士はサービスの内容について次のように述べ 軟性とスピードだけでなくもちろん品質にも注目 る。「当部門は、サンガー法や次世代シーケン し、これらの性能がいずれも最高クラスのシステ シング、リアルタイム PCR、プラスミド DNA の ムを探しました。 さまざまなメーカーと協議した結 少量調製などの標準的サービスを、アントン・ ドー 果、Freedom EVO を選択しました。コストやス ン臨海実験所だけでなく外部の研究機関にも提 ループット、柔軟性の面で最高の製品だったから 供しています。海洋環境の研究は、独特の難し です。 またこのシステムは、in situ ハイブリダイ さがありますが、これが魅力のひとつでもありま ゼーションの自動化プロトコールに必要である高 す。生物多様性の幅が広いため、さまざまな生 度な技術を備え、ニーズに応じて自由に構成でき 物を組み合わせて研究することができます。 海 ます。 そのため高品質かつ柔軟性の高いプロト 洋生物学では、マウスやラットといった一般的な コールの開発が可能です。」 モデル生物を使用せず、藻類その他の海洋生 物を直接使用しますが、これらはモデル生物より EMBRC のイタリア窓口を務める Marco Borra も取り扱いが困難です。たとえば海洋では、サ 博士も次のように語る。「Freedom EVO はとて ンプルや生物の利用や採取が困難なため、実 も直感的で使いやすく、ニーズが変化してもシス 験材料が不足しがちです。また生物の組織構造 テムの再構成やデッキレイアウトの調節が容易 が塩分の多い環境に適応するよう進化していま です。また Freedom EVOware® ソフトウェア す。藻類の中には泡を発生するものもあります。 は、オープンで使い勝手が良く、必要な機能が 海水由来の塩が残留している場合は、DNA や すべて搭載されています。Tecan は、私たちが RNA を抽出・精製する前に除去しなければなり システムに慣れ、新たなプロトコールの作成と最 ません。リファレンス物質も不足しています。こ 適化ができるよう充実したオンサイトトレーニングも のような生物多様性の豊かな環境では、何も標 実施してくれます。そのおかげで使用頻度の高 準化することができません。」 いキットの大半が手作業を前提としているにもか かわらず、キットの自動化プロトコールを独自に開 同部門は、この解析サービスを強化するため、 発できるようになりました。」 Freedom EVO 200 リキッドハンドリングプラッ トフォームを導入し、より複雑でハイスループッ 「Freedom EVO は、ハイスループットスクリー 16 GENOMICS TECAN JOURNAL 2/2015 トを要するプロジェクトの自動化を実現した。 こ ニングのプロトコールを簡単に切り替え、ランの のシステムには、2 本のリキッドハンドリングアー 途中で 96 ウェルと 384 ウェルのフォーマットを ム(96 または 384 ウェルフォーマットのピペッ 自動で瞬時に変更できます。その結果、以前の ティング用 MultiChannel Arm ™ 384 と 高容 システムに比べ処理能力が飛躍的に向上しまし 量・低容量シリンジ各 4 本付きの 8 チャンネル た。Freedom EVO を使い始めて 1 年ほどにな リキッドハンドリングアーム)およびデッキ上でマ りますが、リアルタイム PCR やサンガーシーケン TJ シング、ミニプレップ、gDNA 抽出といった日常 的なプロトコールはすべてこのシステムで処理で きるようにしています。いずれライブラリ調製やさ まざまなライブラリ濃縮手順なども含めた次世代 シーケンシングのプロトコールも導入する予定で す やがてはすべての PCR シーケンシング反応 を Freedom EVO 上でランするつもりです。ラ イブラリスクリーニング向けの自動選別も実現で きればと願っています。Freedom EVO の豊か な柔軟性は、幅広いアプリケーションを可能にし ます。」と Borra 博士は締めくくった。 Tecan のゲノミクスソリューションに関する詳細は、 www.tecan.co.jp/applications/genomics/ を参照してください。 アントン・ドーン臨 海 実 験 所の分 子 生 物 学・ バイオインフォマティクス部門に関する詳細は、 www.szn.it および www.sbmweb.it/ を参 照してください。 ■この記事は 2015 年 6 月発行 Tecan Journal 2/2015 に掲載されているユーザーストーリーをテカンジャパ ンが日本語翻訳したものです。翻訳文の表現等に疑義 が生じた場合は、原文をご参照ください。 テカンジャパン株式会社 分子生物学・バイオインフォマティクス部門の Elio Biffali 博士と Marco Borra 博士 TEL. 044-556-7311/FAX. 044-556-7312 E-mail: [email protected] GENOMICS TECAN JOURNAL 2/2015 17
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