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防災上の弱点を見つけ、最悪の事態を避けるための
イメージトレーニング
マニュアル
はじめに
わが国は、これまでに数多くの自然災害に襲われ、そ
のたびに数多くの尊い命が失われてきました。過去5年
間だけでも、2009年9月の台風第9号による兵庫県など
での水害・土砂災害、2011年3月の東日本大震災(地
震・火災・津波災害)
、2011年9月の台風12号による紀
伊半島大水害(水害・土砂災害)
、2012年5月のつくば
市の竜巻災害、2014年8月の広島市の土砂災害、2014
年9月の御嶽山(火山)の噴火災害など、さまざまな種
類の自然災害に見舞われています。これらの自然災害か
ら、大切な人(家族など)や物(財産など)を守るにはど
うすればよいのでしょうか?
孫子の言葉に“敵を知り、己を知れば、百戦危うから
ず”があります。防災において“敵を知る”とは、自然災
害の脅威を知ることです。しかし、ふだんの生活の中で
は、自分の身の周りにどのような災害の危険性があるか
を知ることは難しいものです。災害は繰り返しやって来
ますので、まずは、地元の災害の歴史を調べることがよ
いでしょう。また、将来起こりうる災害については、市
役所や町村役場がハザードマップ(災害予測地図)を作
成していますので、それを取り寄せて、地域の災害につ
いての知識・理解を深めるように心がけましょう。
一方、
“己を知る”とは、いったいどういうことでしょ
うか? それは、まず、あなたが災害から守りたい人・
物を知ることです。将来、災害が起こったときに絶対に
失いたくない人・物を思い浮かべてみましょう。つぎに、
それらの大切な人・物の災害に対する弱点を知ることが
大切です。なぜなら、その弱点を解消すること、それこ
そが大切な人・物を守ることにつながる防災対策だか
らです。しかし、この弱点についても、ふだんは隠れて
いるため、事前に知ることは難しいと言えます。
そこで、本マニュアルで紹介するイメージトレーニン
グでは、将来の災害によって大切な人・物を失ってし
まった状況(最悪の事態)をイメージして、なぜそのよう
な事態に至ってしまったのか、その原因(弱点)を事前に
発見・解消しておくことで、最悪の事態に至らずに済む
ことを目的としています。
人を助けたい、という人の大学
千葉科学大学
イメージトレーニングのすすめ方
、模造紙(A3サイズ程度)、ペン
用意するもの 付せん紙(7.5cm×2.5cm程度)
図1の ∼ のステップを踏むことで、最悪の事態に至る
「弱点」を発見できます。
1 4
すすめ方
図1
イメージトレーニングの
すすめ方
1
2
原 因
逃げない
最悪の結果
自宅で津波に
襲われる
最悪の結果
逃げられない
逃げたのに
戻ってしまう
自宅で津波に
襲われる
3
1次原因
原 因
結 果
4
逃げない
原 因
2次原因
3次原因
逃げない
最悪の結果
自宅で津波に
襲われる
原 因
原 因
最悪の結果
自宅で津波に
襲われる
逃げられない
逃げたのに
戻ってしまう
逃げられない
逃げたのに
戻ってしまう
1次原因
1次原因
2次原因
1 災害による最悪の結果をイメージします。
最悪の結果は、自分の人生において決して起きてほしくない事態です。具体的には、自分にとって、
最も危険な災害と最も大切な人・物の組み合わせから、例えば、
“自宅にいる祖父母が津波に襲われる”、
“地震(揺れ)によって自宅でわが子が大ケガをする”、
“地震後の火災で自宅が全焼する”などとします。
最悪の結果を付せん紙に書き込んで、模造紙の左端の場所に貼ってください。
2 最悪の結果が起こる原因(1次原因)を考えます。
なぜ最悪の結果になってしまうのか、その原因を考えます。最悪の結果に至る原因は1つだけとは限
りません。少なくとも3つ以上は1次原因を考えましょう。付せん紙に1次原因を書き込んで、模造紙
の最悪の結果が貼られている場所の右隣に貼ってください。
3 1次原因が引き起こされる原因(2次原因)を考えます。
2
の場合と同様に、1次原因に至る原因は1つだけとは限りません。少なくとも3つ以上は2次原因
を考えましょう。付せん紙に2次原因を書き込んで、模造紙の1次原因が貼られている場所の右隣に
貼ってください。
4 2次原因が引き起こされる原因(3次原因)を考えます。
付せん紙に3次原因を書き込んで、模造紙の2次原因が貼られている場所の右隣に貼ってください。
因果関係図の作成例
作成例
津波が来ないと
津波が来
来ないと
安心する
安
する
る
冷静になれない
冷静にな
なれない
初期消火が
消火が
ない
できない
精神的ダメージ
精神的ダメ
水がなかった
水がなか
かった
備えがなかった
備えがなか
逃げない
ない
津波発生
津波発生の
生の
情報がな
ない
情報がない
周りの人が
逃げない
体の具合が悪い
ブ
ブレーカーを
ブレーカ
カーを
を
切るのを
を忘れた
切るのを忘れた
位置が
わからなか
か た
かった
わからなかった
ソケ トを
ソケットを
ソケット
ト
抜かなか
かった
抜かなかった
数が多すぎたから
古い家屋
古い家屋で配線が
屋で配線が
わからな
なかった
わからなかった
知識不足
避難場所が
避難場所
所が
わからな
な
ない
わからない
防火用水がない
防火用水
水がない
配置場所がない
配置場所が
がない
大切な人
大切な人を
人を
助け 行った
助けに行
た
助けに行った
負傷している
負傷して
ている
判断できない
判断できな
大地震の後
震の後
が全焼する
自宅が全焼する
通電火災を
火災を
ない
防げない
周辺からの
からの
延焼を防げない
を防げない
家が近い
い
都市計画が悪い
高校生が学校で
生が学校で
に襲われる
津波に襲われる
逃げられない
れない
逃げたのに
たのに
戻ってしまった
しまった
負傷している
負傷して
ている
て
る
友達がい
いる
友達がいる
忘れ物を
取りに行った
逃げた場所にも
逃げた場所
津波が来た
飲食料を
取りに行った
発見が遅れたから
遅れたから
最悪の結果:大地震の後、自宅が全焼する
悪の結果:大
の結果:大
大地震の後、自宅が全焼す
大地震の後
地震の後、自宅が全焼す
地震の後
自宅が全焼す
自
宅が全焼す
する
る
最悪の結果:高校生が学校で津波に襲われる
の結果 高校生が学校で
の結果:高校
校生が学校で津波に襲わ
で津波に襲わ
で
津波に襲わ
弱点を解消しましょう
弱点を発見できたら、つぎは、その弱点を解消しましょう。完成した最悪の結果と1~3次原因(弱点)の関係図(因
果関係図)を見て、致命的な弱点や共通する弱点から優先的に解消してください。図2は、因果関係図(最悪の結果:
地震の揺れによって、わが家でケガをする)の一例ですが、家具を固定していない や 物を置くスペースが足りない が
共通の原因(弱点)であることがわかります。これらの弱点を解消するには、家具を固定したり、不要品を処分して整
理整頓したりするといった防災対策を実施することが有効といえるでしょう。
2次原因
3次原因
1次原因
慌てて逃げよう
とする
わが家が倒壊するかも
しれないと思う
転倒する
床に置いてある物につまづく
(部屋が片付けられていない)
物を置くスペースが
足りない
落下物・転倒物・
移動物につまづく
暗くて物が見えない
物を積み上げている
物を置くスペースが
足りない
家具を固定して
いない
手間がかかる
机の下に潜らない
大きな揺れには
ならないと思う
キャスター付き家具が
ロックされていない
ロックするのを
忘れている
家具を固定して
いない
手間がかかる
物が倒れる範囲で
寝ている
物を置くスペースが
足りない
図2 因果関係図の例
最悪の結果
地震の揺れによって、
わが家で大ケガをする
落下物がぶつかる
転倒物・移動物が
ぶつかる
1人でやってみましょう!
市販の付せん紙と模造紙さえあれば、自分1人で簡単に実施できます。まず、あなた自身が最悪の事態になってし
まう状況をイメージしてやってみましょう。あなた自身の命が守れていないと、あなたにとって大切な人・物を守る
ことはできません。
みんなでやってみましょう!
自宅・学校・職場などで、いっしょに過ごす時間が多い人たち(家族、友達、同僚など)が集まって、みんなでやって
みましょう。自分1人では気づかなかった弱点を知ることができるかもしれません。また、ふだんは隠れている弱点
の存在をみんなで共有することにもなります。
文部科学省 平成26年度大学改革推進事業「地(知)の拠点整備事業」
(事業名:防災・郷土教育を積み上げた、人に優しく安心して住める地域創り)
お問い合わせ先
学校法人 加計学園
〒288-0025 千葉県銚子市潮見町3番地
千葉科学大学
CHIBA INSTITUTE OF SCIENCE
0120-919-126
URL
http://www.cis.ac.jp