評価マニュアル

ダイヤ式介護技術チェックシート
評価マニュアル
このマニュアルには、ダイヤ式介護技術チェックシートを使用する際の留意事項が記されてい
ます。
ダイヤ式介護技術チェックシートによって介護技術を適切に評価するためには、本マニュアル
に忠実に従うことが必要です。評価者は事前にこのマニュアルを熟読し、正確に理解しておかな
ければなりません。
評価者のための事前講習会を開催し、「ダイヤ式介護技術チェックシート」と「ダイヤ式介護
技術チェックシートの概要」(いずれも PDF ファイルでダウンロードできます)、および本マ
ニュアルを使って、詳細な打ち合わせと学習をすることが必要です。
なお、本マニュアルを受験者に見せてはいけません。
目次
1. 評価の準備
...........................................................................
1
............................................................
3
3. 課題の開始と終了 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
4. 評価票への記入方法
...............................................................
5
...........................................................................
7
2. 評価者とモデルの役割
5. 課題の解説
課題 1:おむつ交換
................................................................
..............................................
13
.......................................................
18
..........................................................
23
..............................................................................
31
課題 2:嚥下困難者への食事介助
課題 3:ベッド上での洗髪
課題 4:車いすへの移乗
6. 採点方法
7
Copyright (C) 2005
The Dia Foundation for Research on Ageing Societies
ダイヤ式介護技術チェックシート
1. 評価の準備
(1) 人の準備
① 受験者(評価を受ける人)
訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修 2 級課程修了以上の人.
服装は介護用の制服、あるいはジャージなどの動きやすいもの.
② 評価者
ホームヘルパー 2 級介護技術指導者の有資格者,もしくはそれと同等以上の技術・経験
のある人.各ベッドに 2 名ずつ.
③ モデル
訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修 2 級課程修了以上の人.各ベッドに 1 人ずつ.
ジャージの上にパジャマを着用する.
④ その他
受付,誘導,会場整理,準備等に必要な人員.
(2) 会場と物品の準備
① 会場
介護用ベッドを置いてその周囲に実技と評価者のためのスペースを確保できる広さ.課
題の開始時に受験者を立たせる「スタート位置」を床面に記しておく.
複数のベッドを使って並行して評価を行う場合は,隣のベッドが見えないこと.隣の音
が聞こえないことが望ましい.
また,受験者の控室が別にあることが望ましい.
② 物品
・ 介護用ベッド(2 モーター)
頭側の柱に印を付け,ベッド上面の角度がわかるようにしておく(15 ページ参照)
・ シーツ
[ベッド数分]
ベッドの折れ目の位置に印をしておく
・枕
[ベッド数分]
・ ストップウォッチ
・ パジャマ
[ベッド数分]
[ベッド数分]
・ テープ式紙おむつ
・ バスタオル
・ タオル
[ベッド数×2]
[ベッド数分]
[ベッド数分]
・ クッション(大・小)
・ いす
[ベッド数分]
[ベッド数分]
・ ケリーパッド
・ ビニールシート
[ベッド数分]
[ベッド数分]
1
ダイヤ式介護技術チェックシート
・ ビニール袋(45ℓ)
[ベッド数分]
・ バケツ
[ベッド数分]
・ 車いす
[ベッド数分]
・ 使用物品を乗せておくテーブル
③ チェックシート
[ベッド数分]
[受験者数×2]
④ 課題提示カード(5 枚セット)
[ベッド数×2 - ひとつはモデル用]
課題提示カードの 1 枚目は全体の説明であるから,あらかじめ受験者に渡して,控室で
読ませることができればそのほうがよい.
⑤ 評価マニュアル(このマニュアル)
[評価者数分]
(3) 所要時間とベッドの台数
各課題の制限時間はいずれも 4 分ですから、所要時間は最大で 16 分になります。しかし、
およそ 9 割の受験者は 10 分以内にすべての課題を完了しますから、課題前後の準備と移動
を含めても受験者 1 人あたり 15 分を見込めば十分です。これを参考にベッドの数を決めて
ください。
受験者の数が多いとき、あるいは使用する会場や介護用ベッドの数に制約があるときには、
ベッドごとに課題を決め、受験者を移動させてもかまいません。この場合、評価者とモデル
はベッドに固定します。なお、受験者を移動させる場合でも、課題の順序を変えてはいけま
せん。
2
ダイヤ式介護技術チェックシート
2. 評価者とモデルの役割
(1) 評価者の役割
① 本マニュアルに依拠して、受験者の介護技術を客観的に評価するのが評価者の役割で
す。評価の基準などが自分の考えと違っていても、評価の際には本マニュアルに従って
いただきます。わからないことや腑に落ちないことについては事前講習会で質問し、不
明な点を残して評価に臨むことがないようにしてください。
② 各ベッドには 2 名の評価者が配置されます。うち 1 名は時間計測係を兼ねてください。
③ 評価結果を評価者間で見せ合ったり、相談したりしてはいけません。また、評価結果を
受験者に伝えてはいけません。
④ 受験者が途中で悩んだり、間違っていたりした場合にも、訂正や助言をしてはいけませ
ん。ただし、全く手が出ないでいる時には、わかる部分だけでよいことを伝え、先に進
むように促してください。
⑤ 途中でモデルが著しい苦痛を訴えた場合には、その時点で評価を打ち切り、次の課題に
移らせてください。
(2) モデルの役割
① 課題に応じて被介護者の状態を演じることがモデルの役割です。課題提示カードの「課
題の説明」を熟読し、そこに記された被介護者の状態を演じてください。
② 自分から体を動かして受験者に協力してはいけません。
③ 受験者が途中で悩んだり、間違っていたりした場合にも、訂正や助言をしてはいけませ
ん。
④ 受験者の声かけに対しては、黙ってうなずいて了解したことを伝えてください。
⑤ 課題の遂行中は無言でいてください。ただし、著しい苦痛を感じたときには声を上げ、
評価者に伝えてください。
3
ダイヤ式介護技術チェックシート
3. 課題の開始と終了
① 受験者を所定のスタート位置に立たせ、課題提示カードを渡して熟読させます。
受験者に渡す課題提示カードは、その課題のカードのみです。
控室等で課題提示カードの 1 枚目(全体の説明)を受験者に示すことができない場合に
は、課題 1 に入る前に、課題提示カードの 1 枚目を読ませます。
課題についての受験者の質問に答えてはいけません。
課題提示カードを読み終えたことを確認して、カードを回収します。
② 評価者 A(時間計測係)が「はじめ」の合図をします。
受験者はベッドサイドに移動します。評価者はストップウォッチを押して、見やすい位
置に移動します。
③ 受験者の「終わりました」、または評価者 A の「そこまで」(制限時間に達した場合)
の声で終了です。
評価者 A はストップウォッチを押して、所要時間をチェックシートに記入します。
受験者を所定のスタート位置に戻します。
④ 途中でモデルが著しい苦痛を訴えた場合には、その時点で評価を打ち切り、受験者を所
定のスタート位置に戻します。
評価者 A はストップウォッチを押して、所要時間をチェックシートに記入します。
チェックシートの特記事項欄に、モデルが苦痛を訴えたために打ち切りにした旨を記し
ます。打ち切りが援助過程のどこであったかを必ず記録してください。
評価者 B
「はじめ」
合図
モデル
モデル
評価者は受験者の移動後に,チ
ェックしやすい位置に移動す
る.
スタート位置
評価者 B
受験者
評価者 A
受験者
4
評価者 A
ダイヤ式介護技術チェックシート
4. 評価票への記入方法
① 受験者番号と評価者名を表紙に記入します。
受験者番号を忘れずに評価票に記入してください。また、評価者の氏名を評価者欄に記
入もしくはスタンプしてください。
評価者が課題ごとに異なる場合は、各ページの評価者欄に記入もしくはスタンプしてく
ださい。
② 「できる」「できなかった」のいずれかに ✔ を記入します。
チェック項目ごとに、必ずどちらかの欄に ✔ を記入してください。
修正するときは、取り消す方の ✔ に 2 本線を引き( ✔ )、正しい欄に ✔ を記入し
てください。
③ 見逃したり、判断できなかったりした時には、空欄のままにしておきます。
受験者の行為が見えなかったり、判断がつかなかったりした時には、✔ を記入せず、
空欄のままにしておいてください。そして、特記事項にその旨を記入してください。
④ 所要時間を記入します。
評価者 A(時間計測係)は、「はじめ」の合図と同時に計測を始め、受験者の「終わり
ました」の申告までに要した時間をシートの所要時間欄に記入してください。
⑤ 時間切れの場合には、時間切れの □ に ✔ を記入します。
制限時間内に課題を終了できなかった場合は、その時点の項目の横にある「時間切れ」
の □ に ✔ を記入してください。また、それ以降のチェック項目についても同様に
「時間切れ」の □ に ✔ を記入してください。
※ 評価は評価者個人の判断で行い、他の評価者と相談しないでください。また、評価結果を
受験者に伝えないでください。
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ダイヤ式介護技術チェックシート
記入見本
評 価 (該当する欄に✔)
No.
行為を見逃した時
判定できない時
→ 空欄のままに
1
膝を立て、足を開かせる
2
汚れたおむつを丸めて陰部の下まで差し入れる
3
4
5
できた
できな
かった
時間
切れ
✔
□
□
✔
□
被介護者の背中が介護者の方を向くようにして(背面法)側臥位
にする
ここで時間切れになった
→ これ以降の時間切れ
おむつの上端を骨盤の位置に合わせ、おむつの端を体の下に差し
欄にチェックを入れる
入れる
□
✔
□
おむつのギャザーをそけい部に密着させる
所要時間
4 分
秒
時間切れの時は
制限時間を記入
特記事項
No. 2. 受験者の影になって、おむつが丸まっていたかどうかを見逃してしまった。
No. 3 以降は、手順を忘れて立ち往生しているうちに時間切れになった。
評価の際に見逃した部分,
気になったこと等を記入
6
ダイヤ式介護技術チェックシート
5. 課題の解説
課題 1: おむつ交換
■ 課題の説明
下肢に力がなく自分の力で腰を上げることができない被介護者に対して、臥位の
援助の内容
状態でおむつをはずし、新しいおむつを装着する。(おむつはテープ式紙おむ
つ)
被介護者の
状態
課題開始時
の設定
下肢に力がなく自分の力で腰を上げることはできないが、短い時間なら膝を立て
ることができる。
視覚・聴覚および知的機能は正常で、コミュニケーションは可能。
モデル:パジャマの下におむつを着用し、ベッド上に仰臥位で寝た状態
受験者:所定のスタート位置で待機
ベッド:水平で、高さは一番低い状態
介護用ベッド
シーツ
枕
使用物品
ストップウォッチ
パジャマ
紙おむつ(テープ式紙おむつ) 2 枚
バスタオル
テーブル
■ 課題の意図
座位保持ができない被介護者のおむつ交換は臥位での援助となるため、仰臥位から側臥位への
体位変換と差し入れ動作の活用が必要になる。また新しいおむつを装着する際には、正しい位置
と動きを妨げない・漏れないおむつの当て方が重要であり、さらに被介護者の羞恥心や清潔の管
理に配慮する必要がある。
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ダイヤ式介護技術チェックシート
■ 援助の流れと評価項目・評価基準
【援助過程】
【評価項目・評価基準】
① おむつを交換することを知らせ
る
② ベッドの高さを調整することを
知らせる
③ ズボンをおろす
1. 膝を立て、足を開かせる
評価基準
出来ている基準
○ 両方の膝が少しでも立ててあり、かつ膝頭と
足がともに開いていること
④ 膝を立て、足を開かせる
出来ていない例
× 膝が立っていない
× 膝頭が開いていない
× 両踵が開いていない
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ダイヤ式介護技術チェックシート
⑤ 着けているおむつを開く
2. 汚れたおむつを丸めて陰部の下まで差し入
れる
評価基準
出来ている基準
○ 丸めたおむつが臀部の下まで差し入れられ、
かつ開かないこと
おむつは、たたんであっても、開かないよう
になっていればよい
⑥ 汚れたおむつを丸めて陰部の下
まで差し入れる
出来ていない例
× 丸めていない
× 途中でおむつが開いてしまった
× 臀部の下におむつを差し入れていない
⑦ 汚れを陰部から肛門に向けて拭
き取る
9
ダイヤ式介護技術チェックシート
3. 被介護者の背中が介護者の方を向くように
して(背面法)側臥位にする
評価基準
出来ている基準
○ 介護者と反対側に身体を向かせ、安定した側
臥位になっていること(背面法側臥位にする
方法は問わない)
⑧ 被介護者の背中が介護者の方を
向くようにして(背面法)側臥
位にする
出来ていない例
× 介護者側に身体を向かせている(対面法)
× 上半身が開いた不安定な状態(半側臥位)に
なっている
⑨ 新しいおむつを丸めて臀部の横
に置く
4. おむつの上端を骨盤の位置に合わせ、おむ
つの端を体の下に差し入れる
評価基準
出来ている基準
○ おむつの上端を骨盤の位置に合わせ、おむつ
の一部が体の下に差し入れられていること
なお、上端はウエストにあってもよい
⑩ おむつの上端を骨盤の位置に合
わせ、丸めたおむつの端を体の
下に差し入れる
出来ていない例
× おむつの上端がウエストより上にある
× おむつの上端が骨盤より下にある
× おむつの一部が体の下に差し入れられていな
い
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ダイヤ式介護技術チェックシート
⑪ 仰臥位に戻し、おむつを広げる
5. おむつのギャザーをそけい部に密着させる
評価基準
終了 (「終わりました」) 直後に、評価者はそれぞれ
ギャザーの内側に指を入れて、おむつの密着の具合
を確認する。
なお、制限時間内に終了しなかった場合でも、この
動作が終わっていれば、確認と評価を行う。
⑫ おむつのギャザーをそけい部に
密着させる
出来ている基準
○ ギャザーがそけい部にあたり、隙間がないこ
と
出来ていない例
× ギャザーがそけい部にあたっていない
× ギャザーと体の間にゆるみがある
⑬ 緩みがないか確認する
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ダイヤ式介護技術チェックシート
⑭ ズボンをはかせる
⑮ おむつ交換が終わったことを知
らせる
終了
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ダイヤ式介護技術チェックシート
課題2: 嚥下困難者への食事介助
■ 課題の説明
嚥下障害がある被介護者に対して、ベッド上での食事介助を行うための体位確
援助の内容
保。寝た状態の被介護者を適切な角度に起こし、介護者が食事介助のためのいす
に座るまで行う。
被介護者の
状態
課題開始時
の設定
下肢に力がなく自分の力で腰を上げることはできないが、短い時間なら膝を立て
ることができる。
視覚・聴覚および知的機能は正常で、コミュニケーションは可能。
モデル:ベッド上に仰臥位で寝た状態
受験者:所定のスタート位置で待機
ベッド:水平で、高さは一番低い状態
介護用ベッド
シーツ
枕
ストップウォッチ
使用物品
パジャマ
バスタオル
タオル
クッション大小
いす
テーブル
■ 課題の意図
食物の取り込みや送りこみに障害がある被介護者の場合、90 度の姿勢では、口から食物がこ
ぼれ易く、食べづらい。30 度の仰臥位をとれば、取り込み・送り込みが容易であることを理解
していることが重要。
その上で、ベッドの調整や差し入れ動作を活用して 30 度の仰臥位を確保する手順が習得され
ているかを確認する。安定した安楽な体位を正確に作れることが、誤嚥防止や食欲を促す意味か
らも食事介助の基本となる。
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ダイヤ式介護技術チェックシート
■ 援助の流れと評価項目・評価基準
【援助過程】
【評価項目・評価基準】
1. これから食事であることを知らせる
評価基準
出来ている基準
○ 「食事の時間ですよ」「食事の準備をしても
よろしいですか」「食事ですよ」「ごはんで
すよ」などの声かけがなされていること
① これから食事であることを知ら
せる
出来ていない例
× 最初に食事であることを告げていない
× 聞き取れるように声をかけていない
× 挨拶や体調の確認だけの声かけをしている
② 膝を立てる
③ 両膝の下にクッションを差し入
れる
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ダイヤ式介護技術チェックシート
2. ベッドの上部を上げることを知らせる
評価基準
出来ている基準
○ 「ベッドを少し上げさせていただきます」
「ベッドの頭の方が少し上がります」など、
ベッドの高さが変わることを伝えていること
④ ベッドの上部を上げることを知
らせる
出来ていない例
× 無言でベッドを動かした
× 聞き取れるように声をかけていない
3. 上体が 30 度になるようにベッドを上げる
評価基準
ベッドに付けられたマークにより判断する。
⑤ 上体が 30 度になるようにベッ
ドを上げる
(45度)
①
(35度)
②
(25度)
③
(15度)
④
25~35 度の範囲にベッドの上面
があれば「できた」ものとする
4. ベッドの折れ目に臀部を合わせる
評価基準
シーツに付けられた折れ目の印を基準に判断する。
なお、ベッドを上げる前に位置が合っていても、その後に
ずれたら「できなかった」にする
出来ている基準
⑥ ベッドの折れ目に臀部を合わせ
る
○ ベッドの折れ目の印の位置に臀部があること
出来ていない例
× 被介護者の腰の位置に折れ目の印がある
× 被介護者の太ももの位置に折れ目の印がある
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ダイヤ式介護技術チェックシート
5. 頸部が前屈の姿勢になるように枕の位置を
調整する
評価基準
出来ている基準
○ 必要に応じて枕を動かし、あるいはタオルを
頭の下に差し入れて、被介護者に前屈の姿勢
を取らせていること
⑦ 頸部が前屈の姿勢になるように
枕の位置を調整する
出来ていない例
× 被介護者の顎が上がっている
× 顎を引きすぎている(介護者から喉が見えな
い状態にある)
⑧ 上半身が安定するように、両腋
の下に当て物を差し入れる
⑨ 鎖骨から胸にかけて タオル をか
ける
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ダイヤ式介護技術チェックシート
⑩ ベッドの高さを調整し、被介護者
と向いあう位置に座る
終了
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ダイヤ式介護技術チェックシート
課題3: ベッド上での洗髪
■ 課題の説明
援助の内容
座位保持ができない被介護者に対してケリーパッドを用いてベッド上で洗髪を行
うための、準備までを行う。(洗髪は行わない)
被介護者の
上下肢に力がなくベッドに寝た状態。
状態
視覚・聴覚および知的機能は正常で、コミュニケーションは可能。
課題開始時
の設定
モデル:ベッド上に仰臥位で寝た状態
受験者:所定のスタート位置で待機
ベッド:水平で、高さは一番低い状態
介護用ベッド
シーツ
枕
ストップウォッチ
パジャマ
タオル
使用物品
バスタオル
クッション大小
ケリーパッド
ビニールシート(防水布)
ビニール袋(45ℓ)
バケツ
テーブル
■ 課題の意図
上下肢に力がなくベッドで寝た状態の被介護者の洗髪では、被介護者の安楽な体位を確保する
ことが重要なポイントになる。被介護者に水がかからないように配慮して、あて物や防水布、ケ
リーパッド等を適切な位置に差し入れることができているかを評価する。
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ダイヤ式介護技術チェックシート
■ 援助の流れと評価項目・評価基準
【援助過程】
【評価項目・評価基準】
① これから頭を洗うことを知らせ
る
1. 被介護者の頭を介護者の側に引き寄せ、足
を介護者の反対側に置く
評価基準
出来ている基準
○ 被介護者の頭がベッドのへり近くまで来てお
り、足がベッドの反対側にあること
出来ていない例
× 被介護者の体全体がベッドの端に寄っている
× 被介護者の体の一部がベッドからはみ出して
いる
× 被介護者の体がくの字になっている
× 被介護者の体をまったく動かさなかった
② 被介護者の頭を介護者の側に引
き寄せ、足を介護者の反対側に
置く
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ダイヤ式介護技術チェックシート
2. 両膝の下にクッションを差し入れる
評価基準
出来ている基準
○ クッションが大腿部から膝下にかけて当たっ
ていること
③ 両膝の下にクッションを差し入
れる
出来ていない例
× クッションを差し入れていない
× クッションが膝下から下腿部にしか当たって
いない
× クッションが大腿部にだけ当たっている
3. 防水布とバスタオルを重ねた敷物を、肩の
下に差し入れる
評価基準
出来ている基準
○ 敷物が両肩の下に差し入れられていること
④ 防水布とバスタオルを重ねた敷
物を、肩の下に差し入れる
出来ていない例
× 敷物を差し入れていない
× 防水布もしくはバスタオルのいずれか一方の
みを差し入れている
× 敷物を片方の肩の下にしか差し入れていない
× 敷物を首の下までしか差し入れていない
× 防水布の下にバスタオルを重ねている
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ダイヤ式介護技術チェックシート
4. タオルを首に巻く
評価基準
出来ている基準
○ タオルを首の後ろにまわし、前で交差させて
いること
ただし、前は重ねているだけでもよいし、タ
オルが扇子折りになっていなくてもよい
⑤ タオルを首に巻く
出来ていない例
× タオルを首の後ろに入れていない
× タオルを首の前で交差させていない
5. 後頭部の下にケリーパッドを差し入れる
評価基準
出来ている基準
..
○ 首がケリーパッドのへり に乗って、頭部全体
がケリーパッドに入っていること
出来ていない例
⑥ 後頭部の下にケリーパッドを差
し入れる
× ケリーパッドを差し入れない
× ケリーパッドが正しい向き(先端が汚水バケ
ツの方向)になっていない
× 後頭部がケリパーッドの中に入っていない
× 頭頂部がケリーパッドからはみ出している
× ケリーパッドに肩まで入っている
⑦ ケリーパッドの先端をバケツに入
れる
21
ダイヤ式介護技術チェックシート
⑧ 苦しくないか被介護者にたずね
る
終了
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ダイヤ式介護技術チェックシート
課題4: 車いすへの移乗
■ 課題の説明
援助の内容
被介護者の
状態
課題開始時
の設定
自分では起き上がることができない被介護者を、ベッドから立たせて、車いすに
移乗させる。
自分の力で起き上がることはできないが、支えがあれば立つことができる。座位
は可能。
視覚・聴覚および知的機能は正常で、コミュニケーションは可能。
モデル:ベッド上に仰臥位で寝た状態
受験者:所定のスタート位置で待機
ベッド:水平で、高さは一番低い状態
介護用ベッド
シーツ
使用物品
枕
ストップウォッチ
パジャマ
車いす
■ 課題の意図
自分の力で起き上がることができない被介護者の車いすへの移乗では、ボディメカニクスに則
った重心の移動やテコの活用が基本になる。
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ダイヤ式介護技術チェックシート
■ 援助の流れと評価項目・評価基準
【評価項目・評価基準】
【援助過程】
1. これから起きて車いすに移ることを知らせ
る
評価基準
出来ている基準
○ 「起きて車いすに乗りましょう」など同意を
得るための声かけがなされていること
出来ていない例
① これから起きて車いすに移るこ
とを知らせる
× 最初に車いすに移ることを告げていない
× 聞き取れるように声をかけていない
× 挨拶や体調の確認だけの声かけをしている
② 車いすをベッドにつけ、10~20
度の角度に置く
③ ベッドの高さを調整する
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ダイヤ式介護技術チェックシート
2. 腕を被介護者の肩の下から差し入れ、脇の
下で支える
評価基準
出来ている基準
○ 介護者の肘関節を被介護者の頸部まで通し、
手の掌を腋の下まで差し入れていること
出来ていない例
④ 腕を被介護者の肩の下から差し入
れ、脇の下で支える
×
×
×
×
腕を差し入れていない
脇の下から腕を差し入れている
頸部だけで支えている
介護者の手先が被介護者の脇から出ていない
3. 差し入れた介護者の腕の肘をベッドにつけ
て(テコのようにして)被介護者を側臥位
にする
解説
介護者の肘に重心をかけて介護者側に向かせる
評価基準
出来ている基準
⑤ 差し入れた介護者の肘をベッド
につけて(テコのようにして)
被介護者を側臥位にする
○ 介護者の肘をベッドにつけて、被介護者を側
臥位にしていること
出来ていない例
×
×
×
×
×
×
側臥位にしていない
腕を差し入れていない
首をつかんで起こしている
首を支えていない
介護者の肘がベッドについていない
肘が枕の上にある
25
ダイヤ式介護技術チェックシート
⑥ 被介護者を起き上がらせる
⑦ 臀部を軸にして回転させる
⑧ ベッドの高さを調整することを
知らせる
26
ダイヤ式介護技術チェックシート
4. ベッドに浅く座らせ、足底を床につける
評価基準
出来ている基準
○ 被介護者がベッドに浅く腰かけ、両足の足底
の全面を床につけていること
着座位置は、太腿~膝頭の 1/3 くらいがベッド
に乗った状態であること
出来ていない例
×
×
×
×
×
深く座っている
膝の裏がベッドについている
足が床についていない
片足だけが床についている
つまさきだけが床についている
⑨ ベッドに浅く座らせ、足底を床
につける
⑩ 介護者は移乗位置と反対の足を
被介護者の足の間に入れ、もう
一方の足のつま先を車いすの方
向に向ける
27
ダイヤ式介護技術チェックシート
5. 体を密着させ、被介護者のウエストに手を
回して立たせる
評価基準
出来ている基準
○ 介護者は膝を曲げ、腰を落として被介護者の
⑪ 体を密着させ、被介護者のウエス
トに手を回して立たせる
ウエストで手を組んで立たせていること
なお、体格によっては、手を組んでいなくて
もよいが、その場合には左右の手が上下にず
れていること
出来ていない例
× 介護者の腰が引けて体が離れている
× 介護者が腰を落としていない
× 介護者の両腕が被介護者の腋の下に入ってい
る
× ズボンのゴムやベルトを掴んで立たせた
× 手を組んでいないとき、両手が上下にずれて
いない
⑫ 被介護者の体の向きを移乗する
側にかえる
⑬ 腰を落として、被介護者を車い
すに座らせる
28
ダイヤ式介護技術チェックシート
⑭ 被介護者の肩を片方ずつ傾かせ
て腰を浮かせる
⑮ 介護者の腕を大腿部の下に深く
差し入れ臀部を後ろに移動させ
る
⑯ 被介護者の足をフットレストに
載せ、全体を確認する
29
ダイヤ式介護技術チェックシート
終了
30
ダイヤ式介護技術チェックシート
5. 採点方法
採点は、すべての課題を終了した後に、2 人の評価者の評価結果をもとに行います。最初にチ
ェック項目ごとの点数を求め、次いで得点を算出します。
(1) チェック項目ごとの点数の算出
評価者の評価結果は、それぞれの項目について、「できた」「できなかった」のいずれかです
が、場合によっては「見逃した」(チェックが記入されていない)があるかもしれません。そこ
で、次の表によって、項目ごとの点数を求めます。表中の数字が点数です。
「時間切れ」は「できなかった」ものとみなします。
評価者 B の評価
できた
できなかった
見逃し
1
0.5
1
0.5
0
0
1
0
0.5
できた
評価者 A の評価
できなかった
見逃し
31
ダイヤ式介護技術チェックシート
(2) 得点の算出
ダイヤ式介護技術チェックシートでは、受験者の介護技術の水準を表す 2 種類の得点を算出す
ることができます。10 項目版と 20 項目版の得点です。
得点の算出方法は次の通りです。
① 10 項目版の得点
次の 10 項目の得点を足し合わせます。
課題 1 おむつ交換
2. 汚れたおむつを丸めて陰部の下まで差し入れる
3. 被介護者の背中が介護者の方を向くようにして(背
面法)側臥位にする
課題 2 嚥下困難者への食事介助
1. これから食事であることを知らせる
2. ベッドの上部を上げることを知らせる
4. ベッドの折れ目に臀部を合わせる
課題 3 ベッド上での洗髪
2. 両膝の下にクッションを差し入れる
3. 防水布とバスタオルを重ねた敷物を、肩の下に差し
入れる
課題 4 車いすへの移乗
1. これから起きて車いすに移ることを知らせる
2. 腕を被介護者の肩の下から差し入れ、腋の下で支え
る
5. 体を密着させ、被介護者のウエストに手を回して立
たせる
② 20 項目版の得点
各チェック項目の得点をすべて足し合わせます。
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