市区道等の生活道路へのアセットマネジメント導入について

市区道等の生活道路へのアセットマネジメント導入について
文京区土木部道路課
パシフィックコンサルタンツ(株)
1.はじめに
文京区が管理している区道(総延長 172km)は、
幅員 5.5m未満が総延長の約 60%、13m未満でほぼ
有坂 和彦
村田 博章
正会員 大石 健二
○正会員 大路 修平
○振動は、主に路面の横断方向の目地上を車両が通
行することにより発生している
○横断方向の目地は、占用工事により発生している
100%となっており、その多くが生活道路系の路線
ケースが多い
という特徴を有している。その一方で、バス路線等
なお、17 年度に実施した舗装点検では、ひび割れ、
幹線道路も存在し、路線区間に応じて、利用状況・
わだち掘れ及び平坦性について把握しているが、横
ユーザーニーズや路面の経年劣化状況も異なってい
目地に関しては把握しておらず、実態は不明であっ
るのが実態である。
た。
文京区では、こうした特徴を持つ区道における舗
装の維持管理運営を対象とした改善方策について、
道路C_平坦性(mm)
生活道路系/平坦性と経過年数
12
平成 17 年度から検討を行っている。17 年度には、
10
ユーザーの視点を採り入れた舗装のマネジメント体
8
系を構築するとともに、目標設定(指標と水準)や
密粒舗装
開粒舗装
平坦性
2~8mm 間で一様に分布
…経年劣化傾向はみられない!
6
4
ライフサイクルコスト等個別要素の検討を踏まえ、
幹線道路系(2 車線以上)においては最適な中長期
計画及び短期補修計画を立案した。一方、生活道路
系(1 車線道路)においては、幹線道路系とは異な
る特有の損傷に着目し、新たな管理指標として設定
することを立案した。ただし、新たな管理指標に対
応する路面状況の把握はしておらず、計画立案まで
には至らなかったことが課題として残された。
そこで、18 年度は生活道路系を対象として、新た
な管理指標に関する路面調査及び評価を実施し、補
修計画を立案した。本稿は、その調査・検討結果の
概要について述べるものである。
2.生活道路における舗装の実態
生活道路系における舗装の実態については、損傷
やユーザーニーズの観点から以下のように整理でき
2
0
0
5
図-1
10
15
経過年数
20
25
30
生活道路における損傷と経過年数との関係
3.生活道路における調査・検討
3.1 新たな管理指標の設定
以上のような実態から、占用工事による影響を把
握するための新しい指標が必要と判断した。そこで、
ユーザーニーズの実態を踏まえ、生活道路系におけ
る新たな管理指標「つぎはぎ指数」を考案した。こ
れは、路面上の横目地に着目し、「車道幅員相当の
横目地がどのくらいの間隔で出現するか」を数量化
するための指標であり、次式により求められる。
対象区間の車道面積 ( m 2 )
つぎはぎ指数= 横目地延長 ( m)
る。
○損傷は、主に企業者による占用工事の復旧跡(つ
ぎはぎ)に起因しているものと推察されるが、占
用工事は実施時期・規模・箇所などが不定である
○つぎはぎには、幹線道路系で見られる経年的な劣
化状況はうかがえない(図-1 参照)
○ユーザー意見として苦情に着目すると、「振動の
解消」に対するニーズが高い
※指数が小さいほど路面の状態が悪い(振動発生の可能性が高い)と判断できる。
横目地の長さを車道幅員に関連付けることにより、
現場又は机上においても路面状況のイメージが容易
となる。
3.2 管理指標に対応した路面状況調査の実施
区道のつぎはぎ指数を路面状況調査により計測し
た。なお、計測対象は生活道路系(L=152km)と
キーワード: 生活道路、舗装、維持管理、アセットマネジメント、サービス水準
連絡先:〒163-0730 東京都新宿区西新宿 2-7-1 Tel 03-3344-0491 Fax 03-3344-1699
し、測定は人力で行った。調査の結果、以下のこと
また、18 年度補修実施箇所の生活道路系について、
が明らかになった。
つぎはぎ指数を調べると 3.5 程度と小さく、実態と
○横目地のない区間は 7%に過ぎず、生活道路系の
してつぎはぎの多い箇所を補修対象として選定して
ほとんどには何らかのつぎはぎが発生している。
いることがわかった。
また、つぎはぎ指数 10 未満の区間が調査対象の
以上のことから、つぎはぎ指数は、つぎはぎや横
半数を占めるなど、横目地の多い路線が多数存在
目地の状況を示す指標及び補修箇所選定の際に用い
する。(図-2 参照)
る指標として適切であると判断した。
横目地多い
3.3 目標の設定
横目地少ない
つぎはぎ指数の分布
20
18
10.5%
9.6%
9.5%
16
つぎはぎ指数 10
未満が全体の
5 割を占める
12
6.4%
10
管理水準は 3.5 程度といえる。この水準は、主な補
9.1%
7.0%
修理由である「振動に対する苦情が寄せられる状
4.6%
態」にあるものと表現することができる。
30~
つぎはぎ指数
図-2
そこで、目標とする水準を現状維持の「つぎはぎ
つぎはぎなし
29~30
0.5% 0.4% 0.4%
28~29
0.9% 0.9% 0.7% 0.7%
27~28
0.5%
26~27
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
8~9
7~8
9~10
6~7
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
1未満
1.0% 1.0% 1.0% 1.0%
25~26
1.5%1.5%
24~25
1.8%
23~24
2.6%
2 0.0% 0.2%
0
22~23
2.1% 2.0%
4
例:つぎはぎ指数 4.5 の路線状況
21~22
3.3% 3.3%
20~21
3.9%
3.4%
6
19~20
8
18~19
路線延長(km)
14
次年度補修予定箇所のつぎはぎ指数より、現状の
8.7%
指数 3.5」に設定し、つぎはぎの分布状況と補修費
用、投資可能な予算等を踏まえ、今後 5 箇年でつぎ
つぎはぎ指数の分布状況
○つぎはぎ指数とつぎはぎ箇所(占用工事の復旧箇
所)には相関が見られ、占用工事は横目地発生の
主要因であることを確認した。(図-3 参照)
はぎ指数 3.5 未満の箇所を解消するものとした。
以上から、「成果」を“振動による苦情が発生し
ない路面状態の確保”とし、これを 5 箇年で解消す
ることを「成果目標」として補修計画を作成した。
つぎはぎ箇所数とつぎはぎ指数との関連
1
y = 1.9771x + 0.0682
R2 = 0.5804
0.9
つぎはぎ指数【逆数】
0.8
4.おわりに
0.7
0.6
今回の調査・検討により、生活道路における新た
0.5
つぎはぎ指数と
つぎはぎ箇所には
相関が見られる
0.4
0.3
な管理指標を策定し、今後の補修計画を立案した。
こうした市区レベルの生活道路に対する舗装補修
0.2
0.1
0
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
計画は、全国でも初めての試みであり、今後も必要
0.40
単位面積当たりつぎはぎ箇所数(箇所/m2)
図-3
な情報の収集蓄積と検証を通じて、指標や計画を継
つぎはぎ指数とつぎはぎ箇所との関連
続的に改善していくことが必要であると考える。そ
○つぎはぎ指数と経過年数及びその他の路面性状
(ひび割れ、わだち掘れ、平坦性)との明確な関
げられる。
連はみられず、年数や一般的な路面性状では横目
○占用工事データの記録蓄積
地状況の把握は困難であることを確認した。
(図-4 参照)
0.5
0.4
0.4
y = 0.0053x
R2 = -0.1669
0.3
0.2
つぎはぎ指数(逆数)
つぎはぎ指数(逆数)
つぎはぎ指数×ひび割れ
0.5
実施が不要となる
y = 0.0122x
R2 = -1.6783
0.3
○ユーザー評価による成果目標の見直し
0.2
ユーザーが許容する路面状態(つぎはぎ指数)を
0
0
20
経過年数(年)
30
0
40
5
10
15
20
ひび割れ率(%)
いずれも明確な
関連は見られない
つぎはぎ指数×わだち掘れ
y = 0.02x
R2 = -0.4137
0.3
0.2
0
0
図-4
10
わだち掘れ量(mm)
15
20
今後も、効率的な舗装マネジメントの実現に向け、
0.2
0.1
5
y = 0.0282x
R2 = -0.1359
0.3
0.1
0
くことが必要である
0.4
つぎはぎ指数(逆数)
0.4
満足度調査等により把握し、成果目標へ反映してい
つぎはぎ指数×平坦性
0.5
0.5
つぎはぎ指数(逆数)
等の見直しが柔軟に行えるようになり、路面調査の
0.1
0.1
10
占用工事履歴から横目地の増加分を随時把握し、
最新のつぎはぎ指数を算出することによって、計画
つぎはぎ指数×経過年数
0
のために必要な具体的取組として、以下の 2 点が挙
引き続き検討と実践を行っていく予定である。
0
2
4
6
8
平坦性(mm)
つぎはぎ指数と経過年数・路面性状との関連
10