ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html 腸上皮化生(140515) GIF にて腸上皮化生を確認。 よく見る所見といえばそうなのだが、今回は腸上皮化生について復習しておく。 1983 年 H. pylori が発見されてからは、現在、胃粘膜における腸上皮化生の発生はそのほ とんどが H.pylori の感染が原因であることが分かった。主として幼児期に経口的に感染した 後、若年者においては前庭部中心の慢性胃炎から、胃固有腺の消失がおき、萎縮性胃炎が 起こり、その後徐々に萎縮性胃炎は胃体部に進展していく。この萎縮の進展により腸上皮化 生が発生してくる。2) 慢性胃炎は、非萎縮性胃炎(表層性胃炎)から数十年の年月をかけて萎縮性胃炎へと進展 し、さらに十数年かけて腸上皮化生が生じてくる。Correa は、この進展過程を“正常→表層性 胃炎→萎縮性胃炎→腸上皮化生→胃癌”シークエンスとして発表している。1) 腸上皮化生は分化型癌に深く関係しており、分化型癌の前癌病変と考えられてきた。1) 大部分の分化型胃癌の背景粘膜は腸上皮化生を伴っているが、腸上皮化生粘膜自体が分 化型胃癌の発生原因であるか否かについては以前より議論の尽きないところであり問題を 抱えている。2) H.Pylori 感染はこの連鎖の最初の部分、すなわち、正常から表層性胃炎に至る段階でかか わってくる。1) 分化型微小胃癌の周囲粘膜において必ずしも腸上皮化生が存在するわけではないことや、 癌と周囲粘膜の組織像の詳細な検討、また微小胃癌と背景粘膜の粘液形質に必ずしも関連 性がないことなどから、腸上皮化生は前癌病変(precancerous lesion)というよりも、癌と発 生の要因を共有する傍癌病変(paracacerous lesion)とする考え方が受け入れられている。 3) 腸上皮化生粘膜は H.Pylori が存在するには不利な環境であり、腸上皮化生が存在する局 所からは排除されるようになる。しかし、腸上皮化生を有する症例のそれ以外の部位の胃粘 膜に H.Pylori 感染が存在する頻度は高い。腸上皮化生を有する胃には高率に H.Pylori 感 染が存在しており、腸上皮化生の発生と進展により局所からは H.Pylori は排除されるもの の、胃内全体から消失するのは腸上皮化生が高度に拡大した場合であると考えられる。1) もちろん H. pylori が存在していて炎症が激しい状態における胃粘膜からも胃癌が発生してく る。このときは腸上皮化生の形成は不完全であり胃粘膜も残存していて、H. pylori が直接関 与して胃癌を起こさせることも十分想像できる。そして、H. pylori の存在とともに炎症のある 状態では分化型胃癌のみならず未分化型胃癌も発生してくる。2) ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html H.Pylori 感染と胃癌発症について調べた Uemura らの 7.8 年に及ぶ follow-up study の結 果では、腸上皮化生ありの場合の発癌相対リスクは、なしに対して、6.4(95%信頼区間:2.6 ~16.1)と高値である。H.pylori 胃炎で腸上皮化生が生じた症例で、胃癌の発症リスクが高 いことが示されている。1) 腸上皮化生は前庭部に限局している場合にくらべて、体部に及ぶ場合に癌の危険性が高く、 その存在のみならず胃内での分布が癌の危険性と関連していることが報告されている。3) 高齢者において進展した腸上皮化生粘膜には粘膜固有層内の炎症細胞の浸潤が減少して おり、炎症からの発癌という考え方にも疑問が出てくる。2) 不完全型腸上皮化生には胃型の粘膜がなお残っている。そのためこの残存した胃粘膜細胞 から胃癌が発生するという見方がある。2) H.Pylori 除菌後に腸上皮化生が改善するかどうかについては、まだはっきりとしたことはわ からない。腸上皮化生が胃内に広く生じてしまった段階で除菌しても、腸上皮化生が改善す ることは困難と思われる。胃癌発症の予防のために除菌をおこなうのであれば、腸上皮化生 が生じる前段階のほうが望ましいと思われる。1) 除菌によって腸上皮化生が改善するか否かは不明である。しかし、少なくとも高齢者におけ る非常に進展した腸上皮化生粘膜が除菌によって改善することは望めない。この進展した腸 上皮化生では炎症細胞の浸潤も軽減しており、H. pylori の付着もない。2) H. pylori の関係する胃癌の原因が単一なものではないことは十分肝に銘じるべきであろう。 しかし、少なくとも、腸上皮化生のある胃は内視鏡による定期的な注意深い経過観察が必要 である。2) 癌のハイリスクという認識をもって、内視鏡による注意深い経過観察が重要だ。 参考文献 1. 佐藤貴一.腸上皮化生-発生から進展,胃発癌過程における Helicobacter pylori 感染の関与 - .Helicobacter Research 10(1): 45-52, 2006. 2. 武藤弘行.腸上皮化生と発癌.日本ヘリコバクター学会誌 7(1): 13-18, 2005. 3. 上堂文也, 神崎洋光, 石原立.腸上皮化生の内視鏡診断 .Helicobacter Research 16(2): 94-101, 2012. ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
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