監修:伊藤病院薬剤室 室長 野中 榮夫 伊藤病院 院長 伊藤 公一 甲状腺ホルモンは、甲状腺組織から分泌される物質で、人間を含めた動物の代 謝や細胞の機能を正常に保つのに不可欠な物質です。甲状腺ホルモン剤は、この 甲状腺ホルモンを化学的に合成したもの(チラーヂンS錠・S散) 、あるいは有効 な成分を動物の甲状腺から取り出したもの(チラーヂン末)です。 服用する訳は いつ服用したらよいか ◦甲状腺から出るホルモンの量が普通より少な ◦このお薬は血中半減期が約1週間 ◦甲状腺が肥大しているため、甲状腺ホルモン けると血中濃度はほとんど変わら いので、それを補うため と非常に長く、継続して服用し続 剤を服用して甲状腺刺激ホルモン(TSH)を ないため、毎日決まった時間に服 抑制し、肥大した甲状腺の縮小をはかるため 用することが大切です ◦甲状腺機能亢進症の治療において、抗甲状腺 剤(チアマゾール錠、プロピ ◦ただし、就寝前、起床時、空腹時に 服用すると吸収 ルチオウラシル錠など)と併 が良くなるとの 用するため 報告があり医師 ◦甲状腺癌の再発防止のため ◦その他 より指示される ことがあります 飲み忘れたときは ◦1日1回服用されている方は、思い出したときに1回量をその日のうちに服 用してください ◦1日量を2〜3回に分けて服用されている方は、思い出したときにその1 回分の量を服用し、次の回から通常の時間帯で服用してください ◦翌日気づいた場合は、前日分は服用せず、当日分だけを服用してください 妊娠した場合 勝手に服用を中止してはいけません。 甲状腺ホルモンが足りないと、胎児に悪い影響を与えることがあります。 また、妊娠中は、妊娠していないときに比べて1.25〜1.5倍の甲状腺ホ ルモンを必要とすることもあるといわれています。 妊娠した場合は医師に相談し、必ずその指示に従いましょう。 授乳している場合 勝手に服用を中止しないでください。 おかあさんの甲状腺機能を正常に維持する量であれば、乳児に悪影響を 及ぼしません。 他のお薬との相互作用は 下記のお薬は、チラーヂンS錠と同時に服用すると長時間チラーヂンS錠の吸収を妨げる ことがあります。併用する場合は、服用時間をずらす必要がありますので、医師または 薬剤師にご相談ください。 造血薬(鉄剤) スローフィー、フェルム、フェロミアなど アルミニウムを含む制酸薬 マーロックスなど スクラルファートを含む胃薬 アルサルミン、スクラート胃腸薬など 亜鉛を含む胃薬 プロマック 炭酸カルシウムを含む薬 沈降炭酸カルシウム、炭カルなど 陰イオン交換樹脂薬 クエストラン、コレバイン また、他の医療機関を受診する場合は、チラーヂンS錠を内服してい ることを医師にお伝えください。 医師の指示なしに自分の判断で飲むことを止めないでください。
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