遺伝子改変技術 遺伝子改変動物 遺伝子導入技術の利用 遺伝子導入

遺伝子改変動物
• 同種あるいは異種に由来する遺伝子を外部から
人為的に導入して作成された動物を「遺伝子導入
動物」あるいは「トランスジェニック動物」と呼ぶ。
遺伝子改変技術
• 特定の遺伝子の機能を破壊する遺伝子ノックアウ
ト技術やゲノム単位での遺伝子改変を行う技術に
由来する動物を含む広義での名称として、「遺伝
子改変動物」あるいは「形質転換動物」 という呼
称もある。
遺伝子導入技術の利用
遺伝子導入技術の利用
• 実験動物
(1) 農学研究
• 家畜
(1) 家畜の遺伝的改良
(2) 家畜生産物組成の改変
(3) 有用物質の生産 - 動物工場
(4) バイオリアクターの開発
(5) ヒト疾患モデルの開発
(6) 代替臓器の開発
- 家畜への応用の
ための基礎研究
(2) 生物学研究 - 遺伝子機能解析
遺伝子制御領域解析
(3) 医学研究 - 病態モデル
疾患モデル
遺伝子治療モデル
ベクターの例(GFP)
歴史
ニワトリβアクチン
プロモータ
グリーンマウス
アンピシリン
耐性遺伝子
GFP遺伝子
1980 Gordon 初期胚前核へのプラスミドDNA顕微注入によるTG
マウスの作出
1981 Gordon & Ruddle TGマウスの導入遺伝子の次世代への移行
を証明
1982 Palmiterら ヒト成長ホルモン遺伝子を導入してスーパーマウス
を作出
1985 Brinsterら マウス 遺伝子導入効率に関係する原因を解析
Hammerら 中家畜(ヒツジ)で初めて遺伝子導入に成功
1989 Roschhaus ウシで初めて遺伝子導入に成功
1991 Krimperfortら 体外受精技術を応用したTGウシの作出
1999 Eyestone 体外受精技術を利用したTGウシの商業的利用
1
遺伝子導入法
1.初期胚前核注入法(顕微注入法)
(マイクロインジェクション法)
2.精子ベクター法
精子にDNAを持ち込ませる
3.体細胞核移植法
遺伝子注入細胞との核置換法
4.キメラ作成法 -ES細胞の利用
5.ウイルスベクター法
6.トランスポゾンの利用
前核注入法
前核期胚への遺伝子導入
家畜の前核期卵への遺伝子導入
家畜卵子は脂肪顆粒のため、内部を観察できない。
そのため、遠心分離を行い脂肪顆粒を片寄らせて
から操作を行う。
2
精子ベクター法
体細胞核移植法
• 精子にDNAを持ち込ませる方法。精巣上体精子
や射出精子を環状あるいは直鎖状DNAを含む
培養液で培養して精子表面にDNAを付着させた
り、受精培地中にDNAを浮遊させたりして、人工
授精や体外受精で精子と同時に卵子内に持ち込
ませる。
• 前核注入法に比べて、サイズの大きな(100kb以
上)外来遺伝子分子を導入するのに適している。
• 核移植技術を利用し、遺伝子導入細胞との核置
換法により遺伝子導入個体を作成する。
• 核移植による正常個体の作成効率が低いが、ES
細胞の利用できない家畜種で有用である。
• 導入細胞は、一般体細胞を用い、導入コピー数や
発現レベル解析などの解析後、最適な細胞を用
いて遺伝子導入個体を作製する。
核移植を利用した遺伝子導入
キメラ動物の利用
キメラとは
2個以上の受精卵や受精卵と体細
胞など、遺伝的に起源を異にした細
胞集団から構成された生物個体
キメラ(chimera)
ギリシャ神話の怪物。
獅子と雌ヤギと蛇の
頭をもつ合成獣。
キメラ作成
(集合法)
3
キメラ作成
(注入法)
キメラ作成法を用いた
トランスジェニックマウスの
作出法(1)
ウイルスベクター法
• ウイルスの感染力を利用し、ウイルス中に目的の遺伝子
を組み込んで、ウイルスとともに導入する。
• ウイルスの胚への感染は、胚の状況に影響を受ける。
• 組み込むことができる遺伝子の大きさに制約がある。
ウイルスベクターの比較
ゲノム
導入遺伝子サイズ
ゲノムへの組み込み
キメラ作成法を用いた
トランスジェニックマウスの
作出法(2)
発現期間
非増殖細胞への感染
毒性
レトロウイルス
RNA
レンチウイルス
RNA
アデノウイルス
DNA
約8kb
約8kb
約8kb
○
○
×
長い
長い
短い
×
○
○
なし
なし
あり
トランスポゾンを用いた遺伝子組換え
トランスポゾン:ゲノム上を転移できる塩基配列で、転移因
子とも呼ばれる。遺伝子組換えには、DNA型トランスポゾン
を使用する。トランスポゼース(transposase)という転移酵
素がトランスポゾンの両末端にある逆向き配列(inverted
repeat)を認識してゲノムから切り出し、切り出されたトラン
スポゾンDNAをゲノム上の別の位置に再び挿入させる。
レトロウイルス
発現システム
レンチウイルス
発現システム
ウィルスベクターによる発現システム
アデノウイルス
発現システム
• Speeping Beauty 硬骨魚類のトランスポゾンから人工
的に作成。
• Piggy Bac 蛾由来
• Tol2
メダカゲノムから発見された
(コスモバイオ Webページより)
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トランスポゾンを用いた遺伝子組み換え
再切り出ししたトランスポ
ゾンが他の場所に再組み込
みされないように、最近では、
トランスポゾンをゲノムから
切り出すが、それを別の位
置へ入れ直さないように改
変されたトランスポザーゼが
作られている。
piggyBacの場合、一度ゲノ
ムに入れたトランスポゾンを
切り出すと、ゲノムにトラン
スポゾンが入る前と同じ状
態に戻るので、除去が必要
な場合には、 piggyBacが利
用される
導入遺伝子の発現
• 組織特異的発現
特定の組織で発現する遺伝子のプロモータを利用するこ
とにより、導入遺伝子を特定の組織で発現させることが
できる。
• 時期特異的発現
個体発生の特定の時期に発現する遺伝子としてβ鎖グロ
ビン遺伝子群などで、制御領域が解明されている。
スーパーマウス(左側)
ウシ成長ホルモン遺伝子組換えブタ。皮下脂肪厚が減少し
赤味部分が増加している。
アンチセンスDNAを導入したミニラット
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動物工場
遺伝子導入
• ランダムな組み込み
一般には、染色体上の任意の場所に導入さ
れる。
• 相同組換え
導入された遺伝子が染色体上の塩基配列と
相同性を持つ場合は、その場所で相同組換
えが起こる。←「DNAの損傷を元通り修復し
たり、種の多様性を作り出すための仕組み」
(テキストp103)
ヒトα1アンチトリプシンを
発現しているヒツジ
MRN複合体による認識(RecBCD複合
体相当) ヘリカーゼ・ヌクレアーゼ活性
により一本鎖生成、一本鎖DNA結合蛋
白質(RPA)による安定化。
Rad52蛋白により、RPAがRad51と
入れ替わり、ヌクレオフィラメント形成。
相同塩基配列を検索し、対合して鎖交
換反応を行う。
ランダム挿入
ネオマイシン
耐性遺伝子
挿入用遺伝子
Neor
DNAを修復合成
組換え中間体(ホリデイ構造)形成
細胞遺伝子
リゾルベース(解離酵素)による
切断。高等真核生物では、未確定。
Neor
リガーゼによる結合
遺伝子が挿入された細胞遺伝子
相同組換え
挿入用遺伝子
相同組み換え
ネオマイシン
耐性遺伝子
Neor
ターゲティングベクター
置換遺伝子
X
ランダム挿入
相同領域
相同領域
ゲノムDNA
細胞遺伝子
ポジティブ・ネガティブセレクション法
neo
Positive
marker
標的遺伝子
TK
X
Negative
marker
相同組換え
置換遺伝子
Neor
変異遺伝子
neo
置換遺伝子
neo
TK
遺伝子が置換された細胞遺伝子
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相同組み換え
相同組換え体の選択
ポジティブ・ネガティブセレクション法
相同組換え
• ポジティブセレクション
導入遺伝子が組み込まれて発現すると、薬物耐
性遺伝子も発現するので、薬物添加培地で培養す
ると、発現細胞が生き残る。ランダム挿入されたも
のも、生き残ってしまう。
• ネガティブセレクション
相同領域外に配置された自殺遺伝子は、相同組
換え体では発現しないので生存するが、ランダム
挿入では、発現して細胞は死ぬ。
置換遺伝子
ランダム挿入
neo
置換遺伝子
neo
TK
1. ネオマイシン誘導体G418添加培地で培養すると、ネオマイシ
ン耐性遺伝子(neo)発現株のみが、選択的に生き残る。
(ポジティブセレクション)
2. ガンシクロビル(GCV)は、チミジンキナーゼ(TK)によって活性
型に変化し、細胞毒性を持つようになるので、ランダム挿入に
より、TKが発現している細胞は、死滅する。
(ネガティブセレクション)
条件付き標的遺伝子組換え
(コンディショナルノックアウト)
形質転換動物
1.
遺伝子導入動物
(1) トランスジェニック動物 (Transgenic animal)
特定の遺伝子を導入した動物
(2) ノックイン動物 (Knock-in animal)
特定の場所に特定の遺伝子を入れた(あるいは置
換した)遺伝子を導入した動物
2. 遺伝子欠損動物
ノックアウト動物 (Knock-out animal)
特定の場所の遺伝子を破壊(あるいは不活性化)し
た遺伝子を導入したマウス
Cre発現依存的遺伝子欠損(コンディショナルノックアウト)
Web 脳科学辞典より
Cre/loxPシステム
2つのloxP配列が同方向に位置している場合、CreによりloxP
配列間の遺伝子は切り出され環状化する
Web 脳科学辞典より
Cre発現依存的遺伝子発現
Web 脳科学辞典より
7
遺伝子置換
(ノックイン)
ジーントラップ法
任意のゲノム領域に新たな遺伝子を導入すること。
1.点変異の導入
部位特異的変異導入により、特定の遺伝子を置換
2.遺伝子置換
特定の遺伝子の置換だけではなく、レポーター遺伝子を
導入することで、置換(遺伝子破壊)されたことを確認できる。
ジーントラップ法とは、プロモータをもたないレポー
ター遺伝子をゲノム中の構造遺伝子に挿入するこ
とで、その遺伝子の発現パターンなどを調べる分
子遺伝学的手法。
•
プロモータートラップ法
ES細胞で発現している遺伝子しか破壊できない
•
ポリAトラップ法
すべての遺伝子をトラップして破壊できる
Web 脳科学辞典より
遺伝子ノックダウン
• 遺伝子ノックダウンとは、特定の遺伝子の転写量を減少
させる操作を指す。遺伝子ノックアウトとは異なり、遺伝
子の機能を大きく減弱させるものの完全には失わせない。
方法としては、siRNAやmicroRNAなどを用いたRNAiと
呼ばれる現象を利用して遺伝子の発現量を減少させるこ
とが多い。
• 遺伝子ノックダウンは実験的に容易にかつ短期間のうち
に結果を得ることができるので、ノックアウト実験をする
かどうかの指標として行われることが多いが、ノックダウ
ンは遺伝子の発現が残るため、現象にノックダウンした
効果がなくても、単純にその遺伝子が現象に関与してい
ないとは結論できない。
図 RNAi経路の一般的模式。Mittel(2004)より引用。 コスモバイオHPより
ノックアウト動物の応用
ジンクフィンガーモチーフ(ZFN)法
2つのZFNがセンスとアンチセンスのDNAを認識すると、
FokI2量体が形成され、DNA切断活性を発揮する。
TALEN法
TALエフェクターがDNAを認識
• コンディショナルノックアウト
特定の時期や組織に遺伝子を欠損
• ダブルノックアウト・トリプルノックアウト
ノックアウト動物の交配などにより複数
の形質のノックアウトを持つ動物を作成
CRISPR/Cas法
gRNAの5'末端の20塩基が標的DNAを認識。gRNAにリクルートさ
れたCas9は、PAM配列上流の。番3と4番目の塩基の間を切断。
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