ワイヤ放電加工における高付加価値加工の最新活用事例

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放電加工
C−11
ワイヤ放電加工における高付加価値加工の最新活用事例
The latest practical and high added value processing technology in Wire−cut EDM
〔Sodick Co., Ltd.〕㈱ソディック 山 田
英 司*
1.はじめに
みで決まる。前者は CNC 駆動単位の高分解能化やピ
飛躍的な精度の向上、高付加価値を実現してきたワ
ッチ補正などの付加価値機能の充実により、現在では
イヤ放電加工機にとって、テーパ加工はなくてはなら
μm オーダー以下の制御が当たり前となっている。
ない存在である。プレス金型のダイ逃がしのように 1°
後者はワイヤ電極径や加工厚さ、上下ガイド間距離の
に満たない角度から、工具刃物やスライドコアに見ら
影響を受けるものの、ワイヤテンション制御、コーナ
れる 10°を超えるものまで幅広く使われている。細
ー制御、タイコ量制御など、形状の真直度を向上する
かいところでは 0.
001°といった微小角度も可能で、
技術の進歩により、よく使われるワイヤ電極径φ0.
2
被加工物の上下寸法の微調整にも利用されている。
mm、加工厚み 40 mm などにおいてはμm オーダー
2.ストレート形状(非テーパ形状)の加工精度
ストレート形状の加工精度は、主に上下ガイドの位
置精度と上下ガイド間に供給されたワイヤ電極のたわ
の加工精度が一般的である。
3.テーパ形状の加工精度
テーパ加工は、図 1 に示す TU・TL の値をもとに
上下ガイドを独立駆動し、上下ガイドの水平方向相対
*
Eiji Yamada:放電加工機事業部 加工技術部
〒224−8522 横浜市都筑区仲町台 3−12−1
位置を制御することで、ワイヤ電極を所望の角度に傾
斜させる。
TU・TL の値は、ガイド R 中心と異なるため、ワ
テーパ加工
ストレート加工
イヤ電極を TU・TL 測定用治具に接触させて求める
ワイヤ
上ガイド
被加工物
下ガイド
が、それだけでは精度の面で不十分なことも多く、
TU・TL の測定が済んだらテーパ形状の予備加工を
行い、加工したテーパ形状の角度と寸法に合わせて
TU・TL を補正する。この作業を繰り返すことで次
第に精度は高まるが、テーパ角度の大小やワイヤ電極
ガイド R
の傾斜方向で TU・TL が変化することもあり、スト
θ TL:テーブル―下ガイド間距離
TL
θ
実際の TU
TU:テーブル―上ガイド間距離
ガイド R 中心
レート形状と同等の精度を得るのは総じて難しい。
TU
4.テーパ形状の加工性能向上への取組み
当社は前項で述べたテーパ加工の問題を解決すべく
テーパ加工システム「テーパフレックス NEO(以下、
TX−NEO と記載)
」を開発した。
図 1 テーパ加工の概要と TU・TL
TX−NEO は角度や傾斜方向に応じた複数の TU・
TL を扱えるため、複数の角度で構成された形状(図
2)においても、各角度に応じた TU・TL で加工す
ることで、形状全体にわたり高い精度が得られる。
20°
なお、TX−NEO を使わないで精度を上げるには、
15°
30° 32.48°
各角度の誤差を把握し、例えば 5°の個所の指令値を
4.
990°などと場所により角度やオフセットの指令値
を変えなければならず、大変な労力が必要となる。
図 3 はφ10 mm の円筒形状と基底部がφ10 mm
の上広がりテーパ形状を、ワイヤ電極を V−方向に
図 2 複数の角度で構成されたテーパ形状
058
傾斜させた際の TU・TL で全周加工した結果と、TX