■第Ⅱ部 細胞再生能をどう治療に応用するか 精子幹細胞: 次世代 幹細胞の21世紀医学への貢献 しのはら 講師: 篠 原 たかし 隆 司 (京都大学大学院医学研究科 教授) ■ 講演要旨 精子形成は精子幹細胞の分裂に基づいた幹細胞システムである。我々は 2003 年にマウス精子幹細 胞の長期培養系の確立に成功し、これを Germline stem(GS)細胞と名付けた。GS 細胞は 2 年間以上の 期間にわたり精子形成能を維持しつつ対数増殖することが可能であり(>1085-fold)、Embryonic stem (ES)細胞と同様に遺伝子トラップや相同組換え法によりノックアウト動物を作成することができる、 新しい生殖系列幹細胞である。 さらに我々はこの培養条件において、新生児マウスの精巣から ES 細胞とほぼ同等な機能を持つ多 能性生殖幹細胞 (multipotent germline stem cell, mGS 細胞)の樹立にも最近成功した。mGS 細胞は ES 細胞とゲノムインプリントのパターンが異なるのみで試験管内でさまざまな体細胞へと分化可能 であり、胚盤胞内に移植すると生殖細胞にも分化することが分かった。GS, mGS 細胞は多様な動物の ゲノム機能解析や再生医療のための貴重な材料となるものと期待される。
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