カテナリー

カテナリー
■ 数学 III で曲線の長さを扱うとき,パラメータ表示された関数で
ない場合には,カテナリーが教科書に例題として登場することが多
い.
そもそも,曲線    () ( ≦  ≦ ) の長さ



1  {  ()}2  の積分計算が容易にできる関数が限られて

いるから,扱われる関数も同じようなものになる.
■ 曲線の長さの公式を導いた後,カテナリ
ーの紹介をする.
そのとき,「この曲線は何でしょう?」と
言って,チェーンの両端を持って垂らしてみ
せる.殆どの場合,「放物線」という返答が
ある.
「そうかな?」と言って,放物線を印刷し
た紙を黒板に貼り付け,それに沿わせるよう
に垂らすと,ビミョーな誤差がある.
チェーンが手元にないときは,ゼムクリップを繋いで作れば十分
に事足りる.
■
そこで「この曲線はカテナリー・懸垂線と呼ばれ,



   (     ) という形をしているんだ」と話を進める.
2
2
4
6
さらに,        3   5   と表示でき,放物線とは
2 24
720
異なるものだという紹介をする.
担当する生徒の状況に応じて,   1 として話をすることも多い.
■ 微分して公式に代入し,ルートが外せることが計算上の重要な
ポイントである.ルートのままだと,ルートの中が 1 次式とかでな
いと計算が辛い(あるいは,不定積分が求まらない).
■ 計算後,
「電力会社や電気工事会社の人たちは,必要な送電線の
長さをこうやって積分計算しているのかも知れないね」と話すと,
「なるほど」という顔をする生徒も少なからずいる.
先日,このコラムの「働く数学のリアル」に書いたが,実際は放
物線として扱って計算しているというから,何か残念な気がする.
■ 確かに,図のような送電線
があったとき,このカテナリー
の方程式は  と  に対して,
 の方程式




 ( 2    2 )     の解で

2
決まるが,この方程式を解くことは容易でない.
一方,これを放物線としてしまえば,   42  2 と合同であるこ

とがただちに分かる.先のコラムでも触れたが,これで計算すると
2

/2
0
2
1   82    
 

16 2   2   2 log 16 2   2  4
2
8

である.この式を WolframAlpha のサイトにより    でローラン展
2
4
6
開すると     8  323  2565   となるそうで,電気工事
3
5
7
2
士の試験では,     8 という公式が使われているらしい.
3
この近似式の精度
が気になったので,
  10 として 2 つの
グラフをかいてみた.
横軸が  であり,青
(上側)が近似式である.
 の値が大きけれ
ば,誤差は殆ど無視で
きるという,何とも優れた近似式なのであった.
2015 年 9 月 14 日