全労連・非正規センターニュース - 非正規雇用労働者全国センター

21 号 (2015.8.7)
パート・臨時・派遣・ヘルパーの仲間は手をつなごう!
全労連・非正規センターニュース
発行: 全労連
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ジェンダー平等に関する国際セミナー
8 月 6 日、日本 ILO 協議会の「ジ
ェンダー平等に関する国際セミナ
ー」が、国際労働機関(ILO)ジュ
ネーヴ本部のジェンダー・平等・
ダイバーシティ部長ショーナ・オ
ルネイ Shauna Olney 氏(右写真左
から 2 人目)を迎え明治大学女性
条約研究会および ILO 駐日事務所
の後援で明治大学において開催さ
れました。オルネイ氏は「先進諸国におけるジェンダー平等の動向」と題して、同一価値労働同一
賃金(100 号条約)、雇用・職業上の差別禁止(111 号条約)、ワーク&ライフ(156 号条約)、母
性保護(183 号条約)、の実現が世界各国でどのように取り組まれているか報告。セミナーでは、こ
れらの諸条約の意義を再度確認して、日本の現状と今後の課題について考えあおうと開催されたも
のです。
<オイネイ氏報告要旨>
今年はミレニアム目標の終了の年であり、95 年に北京女性会議で女性差別撤廃へのロードマップが示
されてから 20 年の節目、これまでの進捗状況を点検すべき時を迎えている。国際社会は 2015 年から 30
年間の持続可能な社会のためのアジェンダを 9 月に発表する。
この間、世界の変化はまちまちである。100 号条約未批准は 15 か国、ほとんどアラブ諸国である。
111 号条約未批准は 14 か国、14 か国中先進国である G20 の中で唯一日米両国が入っており、あとはほ
とんどがアジア諸国である。2000 年に改訂された母性保護条約は 29 か国の批准にとどまっている。8
億人以上が産休の恩恵にあずかれていない。
しかし、国家的政策を持った国では、革新的な法整備も進められてきている。男性の産後休暇を導入
する国も増えている。育休も多くの国で導入された。育休は、自然に任せると女性が休業してしまうの
で、北欧諸国では育休に男性の割り当てを定めている。育休を取った男性の話を聞くと「子どもの世話
は大変。早く職場に戻りたい」と一様にいう。女性のこれまでになってきた家族的責任の理解が進んで
いる。一方、女性が外で働くことにより必要となってくる保育・介護・医療などの職種に対する低評価
問題は改善できていない。
ILO は最近賃金格差を詳細に分析している。学歴、経験、業種、資格、経歴などを指標とするが、説
明のつく格差を求めると女性が男性より多く賃金をもらわなければおかしいという国が多い。説明のつ
かない部分が差別である。
100 号条約の概念は ILO 設立当初から一貫して推進してきたもの。条約には 2 つのポイントがあり報
酬の定義はあらゆる付加給付を含んでいること、同一の職務だけではなく違う職務であっても、技能・
負担・責任・労働条件の 4 つの客観的な基準に基づき価値をはかるべきという点である。欧州において
は賃金透明性確保のためにモニタリングを行っている。モニタリングは是正措置を講ずる上で重要であ
る。フィンランドでは 30 人以上の企業に平等計画策定を義務付けモニターは賃金も含んでいる。スウェ
ーデンではすべての企業が賃金マップを作成する義務を負い、3 年ごとに調査が義務付けられ、行動計
画策定が労組とともに行われている。欧州では、職務評価の仕組みが開発され企業に提供されている。
気を付けるべきことは、伝統的に男性中心の技能に高いウエイトをかけすぎない(ジェンダーバイアス
を入れない)ことだ。
しかし、賃金の平等だけでは不十分だ。雇用に対するアクセス、訓練、解雇などライフサイクル全般
的にジェンダー平等化を点検することが求められる。1958 年に高い希望を掲げ、差別撤廃に向けての国
家的努力を求める 111 号条約を導入した。その後の女性差別撤廃条約、人種差別撤廃条約など国連の条
約に大きな影響を与えてきた。差別は常に変化・進化する。111 号条約第 11 条b項は差別の追加にも言
及している。条約は差別をすべてなくすことを求めているのではなく、差別をなくすプロセスを求めて
いる。平等のために国家的な政策立案、専門機関の設置が必要である。北欧では、各種のオンブズパー
ソンを統合した。差別は多面的で、包括的に対応することが求められるからである。また、差別是正の
ためには、政府調達を使うことも有効であると報告されている。
156 条約も男女の問題としてとらえることが重要だ。家庭の平等が実現しなければ職場の平等は実現
しない。また、女性が生む性である以上平等に不可欠なのは母性保護である。すべての条約が関連し合
いながらジェンダー平等が成立する。
ショーナ・オルネイ氏略歴
カナダ
ブリティッシュ・コロンビア州出身。ブリティッシュ・コロンビア大学法学部卒業。英国オック
スフォード大学大学院で労使関係・人権問題を学ぶ。カナダでは弁護士として活躍。オタワの連邦最高裁判
所にも勤務。1991 年、ILO 入局。平等・労使関係・国際労働基準・労働法・結社の自由などの仕事に携わる。