Page 1 Page 2 アジアの季節風と梅雨 mas 第ー図 イン ド西岸の南西

551.553.21(5)r 551.577.32
アジアの季節風と梅雨
荒 川 秀 俊*
近頃,梅雨の現象が広範囲に亘る現象として,具体的
にいえばチベット高原のジェット気流に及ぼす影響とし
て論ぜられている.その論説は,気象力学の背景をもっ
て説得力を誇っているように思われる.また朝倉 正氏
(1955)は梅雨の入りとモンスーン(インドの南西季節
風)の入りとの相関を論「じ,1930年から1944年までの都
合のよい15箇年の資料だけを択びとって,梅雨とモンス
ーンの入りの日が年々ほとんど一致していることを指摘
している.
Ramdas(1949,1954)は1891年から1950年まで60年
間にわたるインド半島の西海岸にある4地点における南
西季節風の入り(establishment)の起日表をあげてい
る.その二地点(Travancore−CochinとKolaba)分の
起日表を第1表に筆写しておいた.インドは広いから,
1921
V[ 1 V[ 12
1922
1923
1924
1925
1926
1927
1928
1929
1930
V 25 V[ 12
V[ 4 VI 13
V 31 V[ 12
1931
1932
1933
V 23 V[ 14
1934
1935
1936
1937
1938
1939
1940
この二地点における南西季節風の入りの日でさえ,平均
1941
10日(Travancore−Cochin5月29日±6.8日,Kolaba
6月8日±5.9日)のちがいがあるのである.
1942
1943
1944
1945
1946
1947
1948
1949
1950
年次
イソド西海岸における南
西季節風の入りの起日
Travancore−
Kolaba
Cochin
1891
1892
1893
1894
1895
1896
1897
1898
1899
1900
1901
1902
1903
1904
1905
1906
1907
1908
1909
1910
1911
1912
1913
1914
1915
1916
1917
1918
19!9
1920
21
V 27
31
V
V 22
V 22 w 10
1
7
w 308 VI 15
1
V 30
7
V
斑
2 VI 108
23
V
VI
6 w 9
V[
V[
V[
V[
V[
V[
V[
1
31
VI
VI
7
12
V
8 VI
w 12
29
8
V
VI
6 w 10
8
u 313
V
w 1111
VI
8 w
VI
1 w
3
VI
28
3
V
V[
V[
VI
1
4
VI
VI
VI
VI
4
u 24
7
V 28
13
V
18
u 263
1
V
V 26 VI 255
V 167 VIV
V 27 VI 6
6
V
V[
V[
12
東京にお
ける梅雨
の走りの
ジヤワ西
部におけ
る乾期の
起日
初日
V[
1
V[
V
V
V
u皿
V[
VI
日
標準偏
差(単
最も早
い起日
最も遅
い起日
V[
V 14 V[ 3
V 22 V[ 1
VI 6 Vl 10
VI 10 V[ 14
V 20 V[ 1
VI 3 Vl 12
VI l W 4
珊 6 V[ 9
VI 15
V 21
W 20
V 4
W 22
W l
W 30
V 6
V 6
V 7
四 19
四 19
W 27
V l4
V 14
V 7
V[ 7 Vl 18
VI 5
V 23 Vl 16
V[ 1
V[ 6
V 12 V 21
V 14
V 18
V 17
V 29
VI l
V 23
V 24
V 24
W 28
11.6
12.5
V[ 4 V[ 13
V 29 V[ 10
V[ 1 V[ 13
V 29 V[ 2
V 31 V[ 8
V 25’ V[ 8
V 23 V 25
V 26 V[ 10
V 29 、π 8
6.8
5.9
V 9
V[ 13
V 7 V 21
W 30
皿 30
V[ 10 V[21
W 22
V 14
東京における梅雨の走り(onset)の起日表は佐々木
8
4
27
V[
V 29 V[ 6
V 21 W g
皿 30
(皿は3月,Wは4月,Vは5月,V[は6月を表わす)
19
15
10
V
V 1128
V
V 18
V 22
V 25
V 28
V 8
V 17
3
V 17
9
N 30
V 31 ∼旺 7
N 16
V 6
V 12
四 30
位日)
4
4
12
*気…象研究所 一1957年12月5目受理一
1958年3月
平均起
V 1722
V
V 257
V 19
V
wVI 1010
V 22
V 27 V 29
V 28 VI 10
V 23 VI IO
V 30
V 12
V 14
V 19
V 10
V 12
W 22
V 24
V 12
V 12
VI 2
V 12
V 17
V 28
V 26
V 15
V[ 1
(1937),杉本(1951)両氏によって与えられているが,
それも第1表の4行目に筆写してある.いま第1表に示
すところにしたがって,東京における梅雨の走りの起日
と,インド西海岸の二地点における南西季節風の入りの
起日との間の相関係数(1891年から1950年まで)を計算
してみると,
V
w 27
w 12
N
V 189
14
18
Travancore−Cochine と +0.16
Kolabaと 一〇.24
となって,東京の梅雨の走りの起日と,インドの南西季
節風の入りの起日とは殆んど無関係におこっていると結
lV’
論せざるを得ないであろう.第1図には,第1表の資料
をグラフ化したものであるが,梅雨の走りの起日と南西
15一
80
アジアの季節風と梅雨
9箱
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20
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1
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91 1895
1891 1895
10n環 101咤
1905
1915
1925
1935
10り【 1Aり【
1945
ぎ
1950一
第1図 イソド西岸の南西季節風の入りの起日と,東京の梅雨の走りの起日
季節風の入りの起日との間には,なんの平行性も認める
ことはできないと思う.たら朝倉氏の指摘した1930年
から1944年の15年についての分だけは不思議と両者が平
行しておこっているように見えるだけである.(同じ資
第2図には東京における梅雨の走りの起日と,ジャワ西
部の東の季節風の初日とを1915年から1940年までグラフ
料を用いながら,反対の結果に注目されたい.)
化して示しておいた.第1図と第2図とを比較してみる
と,梅雨とインドの南西季節風とが関係があるといわれ
ている以上に,梅雨とインドネシアの東の季節風との方
東亜における顕著な季節風としては,この外にインド
が密接な関係があると結論せざるを得ない.すなわち,
ネシアにおける季節風がある.SchmidtとVecht(1952)
により1915年から1940年までの東の季節風(乾期の始ま
り)の初日の表が与えられている.そのうちジャワ西部
の分を第1表の終りの行に筆写しておいた.この資料に
季節変動の問題を1日単位の日付で論ずる点に問題が残
もとづいて,東京における梅雨の走りの起日と,ジャワ
各地の東の季節風の初日との相関係数を計算「してみる
ると思われるが,チベツト高原と偏西風とを媒介として
インドの季節風が梅雨に対して影響をもつといわれてい
るけれども,それと同程度若しくは:それ以上に,南北両
半球の大気の干渉を通してインドネシアの東の季節風が
梅雨に対して影響をもつといっては過言であろうか.
交 献
と,
朝倉 正,1955:梅雨の入りとモソス’一ンの入り,
ジヤワ西部と+0.35,ジヤワ中部と+0.31,ジヤ
ワ南東部と+0.20,ジヤワ北東部と+0.23
天気第2巻第7号18頁;もしくは高橋浩一郎,朝
倉 正,1955:梅雨はなぜ起るか,科学第25巻第
となる.
8号382−387頁。
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Ramdas,L A.,Jagannathan,P.,and Rao,S.
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1915
1920
Ramdas,L A.,1949:Rainfall of India,A br−
ief review,Indian Journal of Agricultural
Science,vo1.19,pt.1,1−19.
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1925
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16
ishment of southwest monsoon along the West
Coast of India,Indian Jonmal of Meteorolgy
and Geophysics,vo1.5,305−314.
佐々木孝一,1937:東京地方の梅雨予想,測候時報
第8巻第12号 195−199頁,なお杉本氏がその後
の資料を追補している。
Schmidt,F.H.,and J.van der Vecht,1952:
目l
l l
1930
1935
第2図 ジヤワ西岸の東の季節風の初日と,東京の
梅雨の走りの起日
1
Gopa,1,1954:Prediction of the date of estab1−
1940
East monsoon fluctuations in Java and Ma−
dura during the period1880−1940,Verhand−
elingen edited by the Djawatan Meteorologi
dan Geofisik of Indonesla,No.43.
、天気” 5.3