胃がん検診 [実施状況] 胃がん検診は、胃部検診車(愛称:“房総号”17台

胃がん検診
[実施状況]
胃がん検診は、胃部検診車(愛称:“房総号”17台、及び“わかしお号”1台)18台で対応し、
前年度と同じく県内市町村のうち35の自治体から委託を受け検診を行った。なお、受託率は全
市町村の64.8%である。
平成23年度の受診者数は119,151人で前年度より580人減少した(図1)。受診者数の減少は
ここ数年度続いているが、減少幅は最小であった。なお、減少要因には、受託市町村における特
定健康診査の導入、個別検診など受診方法の多様化による影響が挙げられる。
図1 胃がん検診 年度別受診者数
140,000
123,953
119,731
119,151
21年度
22年度
23年度
120,000
受 100,000
診 80,000
者
数 60,000
(人) 40,000
20,000
0
図2 胃がん検診 年度別要精検者の状況
要精検者数
要精検率
14.0
14,000
要
精
検
者
数
(人)
12,000
12.0
11,027
4,000
10.0 要
精
8.0
検
7.6
6.0 率
(%)
4.0
2,000
2.0
0
0.0
9,932
10,000
8.9
8,000
9,019
8.3
6,000
21年度
22年度
23年度
厚生労働省の22年度地域保
健・健康増進事業報告(健康
増進編)によると、千葉県の
胃がん検診対象者数は
1,959,468人、検診機関等に
おける胃がん検診実施数は
233,748人であり、胃がん検
診実施率は10.9%である。
21年度の12.6%より1.7ポイ
ントも実施率が減少してい
る。
今後も県及び実施主体で
ある市町村、そして総合健診
機関である当財団の受診率
向上の努力が必要である。
[検診方法]
胃部検診車におけるエッ
クス線撮影は日本消化器が
ん検診学会標準撮影法に準
拠し、8枚撮影法で行った。
造影剤は高濃度造影剤(濃
度:200W/V%、量:145
ml)を使用している。
[判定方法]
消化器の専門医師が二重
読影を行い読影・判定をす
る。第一読影を行った後、
別途に第二読影を行い、読
影・判定結果としている。
[考察・評価]
執筆者:総合健診センター診療部診療科部長 山口 和也
平成 23 年度の胃がん発見数は 159 人、がん発見率は 0.13%(図3)
、進行度別では早期がん
105 人、進行がん 40 人及び進行度不明 14 人であった。また、がん疑いは 13 人であった。
また、要精密検査
図3 胃がん検診 年度別がん発見数、がん発見率
(要精検)者は 9,019
人、要精検率は 7.6%
であった(図2)。要
がん発見数
がん発見率
精検となり、精密検査
250
0.20
0.17
0.18
を当財団又は他の医
0.16
200
0.16
療機関で受診した結
210
が
0.13
191
0.14 が
果の詳細は表2、3の
ん 150
0.12 ん
159
とおりである。図4に
発
0.10 発
がん関係と胃潰瘍等
見 100
0.08 見
の主要所見の内訳を
数
0.06 率
(人) 50
示した。
0.04 (%)
0.02
0.00
0
21年度
22年度
23年度
図4 胃がん精密検査結果の主要所見延べ人数
[平成23年度・地域集団]
胃がん
(人)
13
159
9
322
胃がん疑
785
食道がん
胃潰瘍(疑・瘢痕含む)
異型上皮巣
胃ポリープ(疑含む)
十二指腸潰瘍(疑・瘢痕含む)
1,289
36
受診者数とがん発見数の分布割合を年齢階級別に示したものが図5である。受診者数の割合は
40 歳代から始まり 65~69 歳代がピークである。以後は減少しているが、がん発見数の分布割
合ではやはり高年齢の方が多く、60 歳以上で全体の 93.7%、そのうち 65~79 歳では全体の 67.3%
を占めている。
図5 胃がん検診 年齢階級別受診者数及びがん発見数分布
年
齢
階
級
29歳以下
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
55~59
60~64
65~69
70~74
75~79
80歳以上
受診者数割合
1.0
0.6
0.0
1.9
0.6
がん発見数割合
7.6
6.0
5.9
8.0
3.1
17.6
10.7
20.2
23.9
18.0
10.9
4.7
0.0
5.0
10.0
26.4
17.0
15.7
15.0
分布(%)
20.0
25.0
30.0
次に、二次保健医療圏別の実施状況(「安房」は受診者数なしのため除いた。)は、東葛北部圏
が 37,231 人(割合では 31.2%)で最も多く、次いで山武長生夷隅圏、東葛南部圏の順であった
(表1)。図6はがん発見数とがん発見率を示したもので、がん発見数は東葛北部圏が 39 人で
前年と同様に最も多く、がん発見率では東葛南部圏の 0.19%が高率であった。
表1 胃がん検診 二次保健医療圏別実施状況
要精検
二次保健 が ん が ん 発
医療圏名 発見数 見率(%) 受診者数 者 数
(人)
精 検
受診者
把握数
がん進行度
胃がん
早期 進行 不明 疑 い
食道
がん
葉
8
0.09
8,472
398
271
6
2
0
0
1
東葛南部
31
0.19
16,081
1,143
1,031
22
5
4
3
2
東葛北部
39
0.10
37,231
2,765
2,252
23
11
5
4
0
印
旛
13
0.11
12,003
993
911
10
3
0
1
0
香取海匝
24
0.18
13,160
1,193
1,143
17
6
1
1
0
山武長生
夷隅
25
0.14
17,354
1,420
1,219
16
7
2
2
3
君
津
13
0.14
9,408
667
604
7
4
2
2
0
市
原
6
0.11
5,442
440
407
4
2
0
0
3
0.13
119,151
7,838
105
40
14
13
9
千
合 計
159
9,019
図6
胃がん検診 二次保健医療圏別がん発見数、がん発見率
がん発見数
が
ん
発
見
数
(人)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0.19
0.25
39
0.18
0.20
0.14
31
24
0.09
8
がん発見率
0.11
25
0.11
0.10
0.14
0.10
13
13
0.15
6
0.05
0.00
千葉
東葛南部 東葛北部
印旛
香取海匝 山武長生
夷隅
君津
市原
集団検診受診者数は昨年度とほぼ同様である。検診の個別化傾向が続いていると考える。当財
団総合健診センターでも胃がん個別検診を行っているが、胃がん検診と、特定健診や他のがん検
診と同日に受診できるいわゆる総合健診(検診)の人気が利便性の点で上がってきている。今後
もこの傾向は続くと予想される。
胃がん検診発見がんの完治が望める早期がん率は 7 割程度を維持しているが、日本のみなら
ず千葉県において、胃レントゲン検診を受けずに過ごしてきた対象者がこれまで多く、千葉県に
おいても、胃がんが原因で亡くなる方はまだまだ多数である。平成 23 年度は、東金市において、
胃レントゲン検診受診者を対象に、血液検査でヘリコバクターピロリ、ペプシノーゲン測定を行
い、胃の健康調査を行った。60 歳以上の方は、約半数以上が胃がんのリスクが高く、毎年のレ
ントゲンあるいは内視鏡の画像診断による胃がん検診が必要という結果であった。若年になるに
したがい、高リスク者が減少することも明らかになった。自分が胃がんのリスクが高いという認
識が無く、これまで胃レントゲン検診を受けてこなかった方々が、特に 60 歳以上の方で多いの
で、一度検診を受診してみることをお勧めしたい。また、健康保険は適応されないが、できれば
ピロリ菌の有無は明らかにしておく事をお勧めする。若年であっても、リスクの高い方がいるの
で、情報提供や、啓蒙活動にも力をいれたい。